介護ベッドの選び方|レンタルの条件とモーター数

介護ベッドを選ぶとき、最初に決めるべきなのはモーターの数です。1モーター・2モーター・3モーターのどれにするかで、できることと費用が変わります。そして多くの場合、最も重要な機能は「背上げ」ではなく「高さ調整」です。
もう一つ知っておきたいのは、要介護1や要支援でも借りられる場合があるということです。告示には例外の要件が明記されており、しかもその基準は「歩けるかどうか」ではありません。この記事では原文を確認したうえで、選び方・費用・安全面を整理しました。
この記事でわかること
- 介護保険が定める介護ベッド(特殊寝台)の要件
- モーター数の違いと選び方
- 高さ調整が最も重要な理由
- マットレス・サイドレール・介助バーの選び方
- 要介護1・要支援でも借りられる例外給付の要件(告示原文)
- レンタル費用と手続き
- 介助者の腰を守るベッドの高さ(厚労省の指針)
- サイドレールの挟み込み事故を防ぐ
介護ベッド(特殊寝台)とは|介護保険の定義
介護保険の世界では、介護ベッドは「特殊寝台」と呼ばれます。「厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目」(平成11年厚生省告示第93号)の第3号に定義があります。
告示の原文(3 特殊寝台)
「サイドレールが取り付けてあるもの又は取り付けることが可能なものであって、次に掲げる機能のいずれかを有するもの
一 背部又は脚部の傾斜角度が調整できる機能
二 床板の高さが無段階に調整できる機能」
また第4号「特殊寝台付属品」は、「マットレス、サイドレール等であって、特殊寝台と一体的に使用されるものに限る」とされています。
ここから読み取れることが3つあります。
- サイドレールが付けられることが前提になっている
- 背上げ(または脚上げ)か、高さ調整のいずれかがあればよい
- 高さ調整は「無段階に」調整できることが要件
そしてマットレスとサイドレールは「特殊寝台付属品」として別にレンタルできます。ベッド本体とセットで借りるのが一般的です。
介護ベッドの選び方|モーター数で決まる
介護ベッドは、動かせる箇所の数=モーター数で分類されます。
| 種類 | 動く機能 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 1モーター | 背上げのみ(または高さのみ) | 自分で起き上がれるが、上体を起こす補助がほしい |
| 2モーター | 背上げ+高さ調整(または背上げ+脚上げ) | 起き上がりに介助が必要。立ち上がりも支援したい |
| 3モーター | 背上げ+脚上げ+高さ調整 | 介助量が多い。ベッド上で過ごす時間が長い |
迷ったら「高さ調整が付いているもの」
背上げ機能は目立ちますが、生活を変えるのは高さ調整です。
- 低くすれば:足裏が床にしっかり着き、立ち上がりやすくなる。転落時の高さも下がる
- 高くすれば:介助者が前かがみにならずに介助でき、腰を痛めない
1つの動作の中で高さを変えられることに意味があります。本人が立つときは低く、介助するときは高く。この使い分けができるかどうかで、在宅介護の負担がまるで違います。
ちびウルフ普通のベッドに手すりを付けるだけではだめですか?
リハウルフ起き上がりだけが問題ならそれでも足ります。ただ、高さが合っていないベッドは、それだけで立てない原因になります。低すぎると立ち上がれず、高すぎると足が浮いて前にずり落ちる。まず今のベッドの高さを測ってみてください。
背上げを使うときの注意
背上げを行うと、体がマットレスとの間でずれてずり下がりが起きます。そのまま放置すると、お尻や背中に「ずれる力」がかかり続け、褥瘡の原因になります。
- 先に膝(脚部)を少し上げてから背を上げる:体が足元へ滑るのを防ぎます
- 背上げ後に背抜きをする:一度体を前に起こすか、背中とマットの間に手を入れてずれを逃がす
- 下げるときは背を先に下げ、次に脚を下げる
「背抜き」は、褥瘡予防で最も費用のかからない有効な手段です。背上げのたびに30秒かけるだけで違います。
付属品の選び方
マットレス
| 種類 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 一般的なウレタンマットレス | 寝心地重視。動きやすい | 自分で寝返りができる |
| 体圧分散マットレス(静止型) | 柔らかく圧を分散 | 褥瘡リスクがある。寝返りはできる |
| エアマットレス(床ずれ防止用具) | 送風装置で圧を切り替える | 自分で寝返りができない |
なお「床ずれ防止用具」は特殊寝台付属品とは別の種目で、告示は「送風装置又は空気圧調整装置を備えた空気マット」「水等によって減圧による体圧分散効果をもつ全身用のマット」のいずれかに該当するものとしています。
柔らかいほど良いわけではない
体圧分散に優れたマットレスほど体が沈み、寝返りや起き上がりがしにくくなります。自分で動ける方に過剰な除圧マットレスを入れると、動けなくなって廃用が進むことがあります。
「褥瘡予防」と「動きやすさ」はトレードオフです。どちらを優先すべきかは、自分で寝返りができるかどうかで判断します。
サイドレール・介助バー
- サイドレール(ベッド柵):転落防止。布団の落下防止にも
- 介助バー(スイングアーム介助バー):握って起き上がる、立ち上がるための支え。開閉できるタイプが便利
- テーブル:ベッド上での食事・作業に
起き上がりや立ち上がりに使うなら、サイドレールではなく介助バーです。サイドレールは支えとして設計されていないため、体重をかけると外れたり倒れたりする危険があります。
要介護1・要支援でも借りられる例外
特殊寝台・特殊寝台付属品は、原則として要介護2以上が貸与の対象です。しかし「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年厚生労働省告示第94号)に例外が規定されています。
告示の原文(福祉用具貸与費の注6の厚生労働大臣が定める者)
「(2) 特殊寝台及び特殊寝台付属品 次のいずれかに該当する者
(一) 日常的に起きあがりが困難な者
(二) 日常的に寝返りが困難な者」
あわせて「(3) 床ずれ防止用具及び体位変換器 日常的に寝返りが困難な者」も規定されています。
ここで重要なのは、要件が「起き上がり」と「寝返り」で定められている点です。歩けるかどうか、外出できるかどうかではありません。
日中は杖で歩けても、朝の起き上がりに毎回苦労している方は珍しくありません。その場合、要介護1でも該当する可能性があります。
「要介護1だから無理」で諦めない
例外給付を受けるには、該当を判断するための資料(主治医の意見やサービス担当者会議での検討など)が必要で、手続きや必要書類の運用は市町村(保険者)によって異なります。
ただし、要介護度だけで一律に決まるものではないことは告示に明記されています。朝の起き上がりや寝返りに苦労している場合は、ケアマネジャーに例外給付の可否を確認してもらってください。
費用と手続き
自己負担は原則1割(所得により2割・3割)です。介護ベッド本体+マットレス+サイドレールをセットで借りた場合、1割負担で月1,000〜2,000円程度になることが多くあります(商品・事業者により異なります)。
- 要介護認定を申請する(未取得の場合)
- ケアマネジャー(要支援なら地域包括支援センター)に相談する
- 福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、設置場所と機種を検討する
- ケアプランに位置づけ、契約する
- 搬入・組み立て・使い方の説明を受ける
- 定期的なモニタリングを受け、合わなければ変更する
費用の詳細は福祉用具貸与の自己負担額と上限額、対象品目の全体像は福祉用具レンタル13品目一覧をご覧ください。
設置場所は「トイレまでの距離」で決める
介護ベッドは大きく、一度置くと動かしにくい。設置場所を決める基準は、トイレまでの距離と動線です。
夜間にトイレへ行く回数が多い方の場合、寝室が2階でトイレが1階、という配置は現実的ではありません。1階の居間にベッドを置いたほうが安全なことがあります。「寝室はここ」という思い込みを一度外して考えてください。
ベッドの高さが介助者を守る
厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日 基発0618第1号)は、介護・看護作業について具体的な高さの目安を示しています。
指針の原文
「ベッドの高さ調節、位置や向きの変更、作業空間の確保、スライディングシート等の活用により、前屈やひねり等の姿勢を取らせないようにすること。特にベッドサイドの介護・看護作業では、労働者が立位で前屈にならない高さまで電動で上がるベッドを使用し、各自で作業高を調整させること」
解説部分では「ベッドの高さは、労働者等がベッドサイドに立って大腿上部から腰上部付近まで上がることが望ましい」とされています。
この指針は事業者向けですが、家族が介護する場合も腰にかかる負担は同じです。おむつ交換や清拭のたびに前かがみになっていれば、遅かれ早かれ腰を痛めます。
介護者が腰を壊した時点で、在宅生活は続けられなくなります。高さ調整機能は、本人のためであると同時に介護者を守る機能です。
介助の具体的な方法は移乗介助のやり方|ベッドと車椅子の手順で解説しています。
事故と安全
サイドレールの挟み込みに注意
介護ベッドでは、サイドレールの隙間やベッド本体との間に頭・首・手足が挟まる事故が報告されています。特に、体が動く方や認知症のある方では注意が必要です。
- すき間を埋めるカバーを使う
- サイドレールの本数と位置を見直す
- マットレスとサイドレールの間にすき間がないか確認する
- ベッドから出ようとする方に、柵で囲って閉じ込めない(かえって乗り越えて転落します)
気になる点があれば、福祉用具専門相談員に相談してください。製品ごとに対策部品が用意されていることがあります。
- 操作リモコンの置き場所を決める:本人が誤って操作しないよう配慮が必要な場合も
- 電源コードを動線に置かない:つまずきの原因になります
- ベッド周囲に物を置かない:転落したときに危険です
- 高さを下げた状態で離れる:介助後に高いままにしない
- キャスターのロックを確認する
よくある質問
介護ベッドは何モーターを選べばいいですか?
迷ったら高さ調整が付いているものを選んでください。背上げより高さ調整のほうが生活への影響が大きいです。本人が立つときは低く、介助するときは高くできることに意味があります。
要介護1ですが借りられませんか?
借りられる場合があります。告示には「日常的に起きあがりが困難な者」「日常的に寝返りが困難な者」は対象になる旨が規定されています。歩けるかどうかではなく、起き上がりと寝返りが基準です。ケアマネジャーにご確認ください。
レンタル料はいくらですか?
ベッド本体+マットレス+サイドレールで、1割負担なら月1,000〜2,000円程度のことが多いです。商品・事業者により異なるため、福祉用具専門相談員にご確認ください。
背上げをするとずり下がってしまいます。
先に膝(脚部)を少し上げてから背を上げてください。また背上げ後に「背抜き」(体とマットレスの間のずれを逃がす)を行うと、褥瘡予防になります。下げるときは背を先に下げます。
マットレスは柔らかいほうがいいですか?
一概には言えません。体圧分散に優れたマットレスほど体が沈み、寝返りや起き上がりがしにくくなります。自分で寝返りができるなら動きやすさを優先し、できないなら除圧を優先します。
サイドレールにつかまって起き上がってもいいですか?
避けてください。サイドレールは転落防止用で、体重を支える設計ではありません。起き上がりや立ち上がりに使うなら、介助バー(スイングアーム介助バー)を付けてください。
ベッドはどこに置けばいいですか?
トイレまでの距離と動線で決めてください。夜間の移動が多い方は、寝室にこだわらず1階の居間に置いたほうが安全なこともあります。
介助するときのベッドの高さは?
厚労省の腰痛予防対策指針は、介助者がベッドサイドに立って大腿上部から腰上部付近まで上がる高さが望ましいとしています。前かがみにならない高さが基準です。
柵で囲っておけば転落しませんか?
かえって危険な場合があります。ベッドから出ようとする方を柵で囲うと、乗り越えようとして転落し、より重大な事故になります。また挟み込み事故のリスクもあります。福祉用具専門相談員に相談してください。
購入したほうが安いのでは?
介護ベッドは高額で、身体状況が変われば必要な機能も変わります。レンタルなら交換でき、メンテナンスも事業者が行います。原則としてレンタルをおすすめします。
まとめ
- 介護保険では介護ベッドを「特殊寝台」と呼ぶ
- 告示の要件は、サイドレールが付けられ、背部・脚部の傾斜調整か床板の高さ無段階調整のいずれかを持つこと
- マットレス・サイドレールは「特殊寝台付属品」として借りられる
- モーター数は1・2・3。迷ったら高さ調整付きを選ぶ
- 高さ調整は本人の立ち上がりと介助者の腰の両方を守る
- 背上げは先に膝を上げてから。背上げ後は背抜きをする
- マットレスは柔らかいほど良いわけではない。動けなくなることがある
- 起き上がりに使うのはサイドレールではなく介助バー
- 要支援・要介護1でも「起きあがり困難」「寝返り困難」なら対象になり得る
- 例外給付の要件は歩行能力ではなく起き上がり・寝返り
- 1割負担ならベッド一式で月1,000〜2,000円程度が目安
- 設置場所はトイレまでの距離と動線で決める
- 厚労省の指針は介助時のベッド高さを大腿上部から腰上部付近としている
- サイドレールの挟み込み事故に注意。柵で囲い込むのは逆効果
参考にした情報
- 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」
- 厚生労働省「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」
※本記事の福祉用具の種目・例外給付の要件は、厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号)および厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)にもとづいて整理したものです。ベッドの高さに関する記述は「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日 基発0618第1号)によります。同指針は事業者に向けたものであり、家庭での介護を直接規律するものではありません。軽度者への例外給付にあたっては、該当を判断するための資料や手続きが必要であり、その運用は市町村(保険者)によって異なります。レンタル料金は商品・事業者によって異なります。実際の選定・契約にあたっては、ケアマネジャーおよび福祉用具専門相談員にご確認ください。背抜きやマットレスの選び方に関する記述は、リハビリテーション・看護領域で一般に用いられている整理および筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづくものであり、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません(確度:中)。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。





