床ずれの予防|家庭でできる対策と借りられる用具

床ずれ(褥瘡)は、できてから治すのが非常に大変です。そして予防の主役は、人の手による体位変換ではなく、体圧分散マットレスです。
ここで多くの家庭がつまずきます。「要介護2以上でないと借りられない」と思われているためです。しかし告示には別の定めがあります。この記事では、原文を確認して、予防の手順と用具を借りる条件を整理しました。
この記事でわかること
- 床ずれができる仕組み
- できやすい場所(姿勢別)
- 見逃してはいけない最初のサイン
- 予防で最初にやるべきこと
- 床ずれ防止用具を借りられる条件(告示の原文)
- 要支援でも借りられる場合があること
- ベッドの角度と「ずれ」の関係
- すぐ相談すべき状態
床ずれ(褥瘡)ができる仕組み
同じ場所が圧迫され続けると、その部分の血流が止まります。血液が届かない時間が続くと、皮膚とその下の組織が傷んでいきます。これが床ずれです。
関わる要素は3つです。
- 圧迫…体重が一点にかかり続ける
- ずれ…ベッドを起こしたときなどに、皮膚と骨が別方向に引っぱられる
- 湿り…汗や尿で皮膚がふやけ、弱くなる
圧迫だけが原因と思われがちですが、実際に厄介なのは「ずれ」です。ベッドの背を起こすと、体はマットの上を下方向にずり落ちます。このとき皮膚は摩擦で止まり、内側の骨だけが動く。表面は無事に見えても、内部で組織が傷んでいきます。
床ずれができやすい場所
骨が出ている場所にできます。姿勢によって変わります。
| 姿勢 | できやすい場所 |
|---|---|
| 仰向け | 仙骨(お尻の中央)、かかと、後頭部、肩甲骨、ひじ |
| 横向き | 大転子(腰の横の出っぱり)、くるぶし、耳、肩、ひざの内側 |
| 座っている | 坐骨(お尻の左右)、尾骨、背中 |
| うつ伏せ | ひざ、つま先、あばら、頬 |
最も多いのは仙骨部です。次にかかと。かかとは見落とされます。布団をかけていると気づかないまま進行します。
車椅子に長く座る方では坐骨にできます。「寝たきりでなければ大丈夫」ではありません。
見逃してはいけない最初のサイン
最初は赤みだけです。ここで気づけるかどうかで結果が変わります。
確認方法
赤くなっている部分を指で軽く押してみてください。押して白くなり、離すと赤に戻るなら、まだ一時的な充血です。押しても白くならない赤みは、床ずれの始まりを疑います。
ほかに、次の変化も初期のサインです。
- 皮膚がふやけている、白くなっている
- さわると硬い、または逆にぶよぶよする
- 周りより温かい、または冷たい
- 痛みやしみる感じを訴える
- 皮がむけている、水ぶくれがある
おむつ交換や着替え、入浴のときが確認のチャンスです。1日1回、仙骨とかかとだけでも見る習慣をつけてください。
床ずれ(褥瘡)の予防で最初にやること
順番があります。人力の体位変換から始めると続きません。
- マットレスを変える…体圧分散できる寝具にする。ここが最も効果が大きい
- 姿勢を整える…かかとを浮かせる、クッションで体を支える
- 体位変換の間隔を決める…完全に同じ姿勢が続かないようにする
- ずれを作らない…ベッドの角度と、上げ下げの順番に注意する
- 皮膚を清潔に保つ…汚れと湿りを残さない
- 食べる量を確保する…栄養が足りないと皮膚は持たない
体位変換の間隔は、一般に2時間を超えない範囲が基本とされ、体圧分散マットレスを使っている場合はそれより長い間隔でよいとされることもあります。間隔は状態と使っている寝具によって変わるため、担当の看護師・理学療法士に確認してください。
現実的な話をすると、家族が夜中に2時間ごとに起きる方法は続きません。続かない方法は予防になりません。まず用具で条件を変えるべきです。
床ずれ防止用具を借りられる条件
介護保険の福祉用具貸与には「床ずれ防止用具」という種目があります。告示は次のように定義しています。
告示の原文(床ずれ防止用具)
「次のいずれかに該当するものに限る。
一 送風装置又は空気圧調整装置を備えた空気マット
二 水等によって減圧による体圧分散効果をもつ全身用のマット」
いわゆるエアマットレスです。あわせて「体位変換器」も貸与の種目にあり、こちらは「空気パッド等を身体の下に挿入することにより(中略)体位を容易に変換できる機能を有するもの」とされ、体位の保持のみを目的とするものは除かれます。
つまり、体を支えるだけのクッションは貸与の対象外です。ここは誤解が多い部分です。
要支援・要介護1でも借りられる場合がある
床ずれ防止用具は原則として要介護2以上が対象です。しかし、これには例外の定めがあります。
告示の原文(例外給付の対象者)
「(3) 床ずれ防止用具及び体位変換器 日常的に寝返りが困難な者」
判断基準は要介護度ではなく、「日常的に寝返りが困難かどうか」です。この状態に該当すれば、要支援1・2や要介護1の方でも貸与の対象になりえます。
実際の手続きでは、主治医の意見などをもとに市町村が確認します。「要介護1だから無理」とあきらめる前に、ケアマネジャーに例外給付の相談をしてください。
ちなみに特殊寝台(介護ベッド)の例外給付は「日常的に起きあがりが困難な者」または「日常的に寝返りが困難な者」です。条件が違います。詳しくは介護ベッドの選び方|レンタルの条件とモーター数をご覧ください。
福祉用具の全体像は福祉用具レンタル13品目一覧と自己負担額を解説にまとめています。
ちびウルフエアマットにすれば、体位変換はしなくていいの?
リハウルフゼロにはできません。ただ間隔は変わります。それと、柔らかすぎるマットは自分で動く力を奪うことがあります。動ける方にいきなり最上位のマットを入れるのは逆効果なので、状態に合わせて選んでください。
ベッドの角度と「ずれ」の防ぎ方
用具を入れても、使い方で床ずれはできます。特に背上げです。
- 先に脚を上げてから、背を上げる…体が下にずり落ちるのを防ぐ
- 背を上げた後に背抜きをする…背中とマットの間に手を入れ、皮膚のつっぱりを逃がす
- おしり抜き・かかと抜きも行う…同じように圧とずれを解放する
- 30度を超える角度を長時間続けない…角度が大きいほど仙骨に圧がかかる
- 下げるときも脚から…順番を逆にすると体がずれる
背抜きは、知っているかどうかだけの差です。背を起こした後に一度体を前に倒して、背中に手を差し入れて滑らせる。これだけで皮膚の引っぱりが解放されます。訪問時に家族にお伝えすると、たいてい「知らなかった」と言われます。
かかとは、クッションをふくらはぎの下に入れて浮かせるのが基本です。かかとの下に何かを敷くのではなく、かかと自体を宙に浮かせます。
皮膚と栄養の管理
圧迫を減らしても、皮膚が弱っていれば壊れます。
| 項目 | すること |
|---|---|
| 清潔 | 汗・尿・便を残さない。おむつ内の湿りを長時間放置しない |
| 洗い方 | こすらず、泡でやさしく。熱すぎるお湯は避ける |
| 保湿 | 乾燥した皮膚は傷つきやすい。入浴後に保湿する |
| 摩擦対策 | シーツのしわを伸ばす。引きずって動かさない |
| 栄養 | 体重減少があれば要注意。たんぱく質と全体量を確保する |
栄養は軽視されがちですが、床ずれの予防と治りに直結します。体重が落ちてきている人は、床ずれができやすい状態です。詳しくは高齢者の体重減少|危険な目安と原因・対策をご覧ください。
また、動かない状態が続くこと自体が全身の機能を落とします。廃用症候群とは?症状とリハビリの進め方もあわせてご確認ください。
すぐ相談すべき状態
次の場合は、自宅での対応だけで進めないでください。
- 押しても白くならない赤みが続いている
- 皮がむけている、水ぶくれ、えぐれている
- 膿が出ている、においがある
- 周囲が赤く腫れて熱をもっている
- 発熱がある
- 痛みが強い
- 黒い部分がある
床ずれは、見えている範囲より内部が広いことがあります。市販の塗り薬や絆創膏で様子を見る対象ではありません。訪問看護、主治医、ケアマネジャーに連絡してください。
すでに床ずれがある場合、訪問看護の対象になります。医療保険での訪問看護が使える状態もあるため、費用面もあわせて相談してください。
よくある質問
床ずれはどこにできやすいですか?
仰向けでは仙骨とかかと、横向きでは大転子とくるぶし、座位では坐骨です。最も多いのは仙骨部で、次にかかとが見落とされやすい場所です。
赤みがあるだけなら様子を見ていいですか?
指で押して白くなるなら一時的な充血です。押しても白くならない赤みは床ずれの始まりを疑い、早めに相談してください。
体位変換は何時間おきに行いますか?
一般に2時間を超えない範囲が基本とされますが、体圧分散マットレスを使用している場合はそれより長い間隔でよいとされることもあります。状態と寝具により異なるため、看護師や理学療法士に確認してください。
エアマットを使えば体位変換は不要ですか?
不要にはなりません。間隔は変わります。また柔らかすぎるマットは自分で動く力を妨げることがあるため、状態に合ったものを選ぶ必要があります。
床ずれ防止用具は介護保険で借りられますか?
借りられます。告示は「送風装置又は空気圧調整装置を備えた空気マット」「水等によって減圧による体圧分散効果をもつ全身用のマット」を種目として定めています。
要介護1でもエアマットを借りられますか?
借りられる場合があります。告示は例外給付の対象を「床ずれ防止用具及び体位変換器 日常的に寝返りが困難な者」と定めています。ケアマネジャーに相談してください。
体を支えるクッションもレンタルできますか?
体位変換器は「体位の保持のみを目的とするもの」が除かれています。支えるだけのクッションは対象外です。
ベッドを起こすときのコツはありますか?
先に脚を上げてから背を上げ、起こした後に背抜きをしてください。下げるときも脚からです。順番を逆にすると体がずれて皮膚が引っぱられます。
かかとはどう守ればいいですか?
ふくらはぎの下にクッションを入れて、かかと自体を浮かせます。かかとの下に敷くのではありません。
できてしまった床ずれは自宅で処置していいですか?
自己判断で処置しないでください。見えている範囲より内部が広いことがあります。膿、におい、発熱、黒い部分がある場合は特に急いで相談してください。
まとめ
- 床ずれは圧迫・ずれ・湿りの3つで起こる
- 厄介なのは「ずれ」。表面が無事でも内部が傷む
- 仙骨とかかとが最も多い。座位では坐骨
- 押しても白くならない赤みは床ずれの始まり
- 1日1回、仙骨とかかとを確認する習慣をつける
- 予防の主役は体圧分散マットレス
- 人力の体位変換だけに頼る方法は続かない
- 体位変換の間隔は状態と寝具により異なる
- 床ずれ防止用具は空気マットや水等によるマットが対象
- 体位の保持だけが目的のものは貸与の対象外
- 例外給付の基準は「日常的に寝返りが困難な者」
- 要支援・要介護1でも該当すれば借りられる場合がある
- 背上げは脚から。起こしたら背抜きをする
- かかとはふくらはぎを支えて浮かせる
- 膿・におい・発熱・黒い部分があればすぐ相談
参考にした情報
- 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)
※福祉用具の種目および例外給付の対象者に関する記述は、平成11年厚生省告示第93号および平成27年厚生労働省告示第94号にもとづいて整理したものです。例外給付の適用にあたっては、主治医の意見等をもとに市町村(保険者)が確認するため、運用は保険者によって異なります。体位変換の間隔、姿勢、スキンケアに関する記述は一般的な整理であり、適切な方法は個々の状態・寝具・皮膚の状況によって異なります。床ずれの処置・治療は医療行為です。診断と治療は医師が行います。自己判断で市販薬等による処置を行わず、訪問看護師・主治医にご相談ください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。





