「手すりを買おうと思っているんですが」——訪問先でこう言われたら、私はまず止めます。介護保険でレンタルできるものを、実費で買ってしまう方が本当に多い。月数百円で借りられるものに、数万円払う必要はありません。

この記事では、理学療法士・介護支援専門員として福祉用具の選定に関わってきた立場から、介護保険でレンタルできる13品目と、自己負担がどう決まるのかを、厚生労働省の公表内容にもとづいて整理します。要介護度によって借りられない品目があるので、そこも押さえてください。

この記事でわかること
  • 福祉用具貸与の対象13品目の一覧
  • 要介護度によって借りられない品目
  • 自己負担額がどう決まるか
  • 「貸与と販売を選べる」4品目のこと
  • 買うしかない9品目(特定福祉用具販売)
  • 借りるまでの流れと、失敗しないポイント

福祉用具貸与とは

厚生労働省の説明はこうです。指定を受けた事業者が、利用者の心身の状況、希望およびその生活環境等をふまえ、適切な福祉用具を選ぶための援助・取り付け・調整などを行い、福祉用具を貸与するサービス。目的は、日常生活上の便宜を図ることと、家族の介護の負担軽減です。

要介護1〜5の方だけでなく、要支援1・2の方も介護予防福祉用具貸与として利用できます

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ここで見落とされがちなのが、「選ぶための援助・取り付け・調整」が含まれている点です。物を届けて終わりではありません。合わなければ交換もできます。この人的なサポートが、レンタルの本当の価値だと思っています。

レンタルできる13品目

1. 車いす自走用、介助用、電動など
2. 車いす付属品クッション、電動補助装置など
3. 特殊寝台いわゆる介護ベッド。背上げ・高さ調節ができるもの
4. 特殊寝台付属品サイドレール、マットレス、介助用ベルトなど
5. 床ずれ防止用具エアマットレス、体圧分散マットレスなど
6. 体位変換器寝返りや起き上がりを助ける用具
7. 手すり工事を伴わないもの(据置型、突っ張り型など)
8. スロープ工事を伴わないもの。段差の解消用
9. 歩行器歩行を支える枠状の用具。歩行車を含む
10. 歩行補助つえ松葉づえ、多点杖、ロフストランドクラッチなど
11. 認知症老人徘徊感知機器外出しようとしたことを家族等に知らせる機器
12. 移動用リフトつり具の部分を除く。ベッドから車いすへの移乗などに使う
13. 自動排泄処理装置排泄物を自動で吸引する装置(交換可能部品を除く)
手すりとスロープに注意7と8は工事を伴わないものがレンタル対象です。壁に取り付けるような工事を伴う手すりは、レンタルではなく住宅改修の扱いになります。ここは制度が分かれるので、ケアマネジャーに確認してください。

要介護度で借りられない品目がある

ここが最大のつまずきどころです。厚生労働省の説明を、そのまま整理します。

要支援1・2、要介護1は原則対象外車いす/車いす付属品/特殊寝台/特殊寝台付属品/床ずれ防止用具/体位変換器/認知症老人徘徊感知機器/移動用リフト(8品目)
要支援1・2、要介護1・2・3は原則対象外自動排泄処理装置
要介護度を問わず使える手すり/スロープ/歩行器/歩行補助つえ(4品目)
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要介護1だと介護ベッドが借りられないの? 起き上がりがつらい人もいると思うけど…

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厚労省の記載は「原則」です。状態によって例外的に認められる仕組みがありますが、判断は市区町村ごとの運用によります。諦める前に、必ずケアマネジャーに相談してください。ここで引き下がって自費購入してしまう方が、本当に多いんです。

福祉用具レンタルの自己負担額はどう決まるか

福祉用具貸与には、他のサービスのような「1回いくら」という全国一律の単価表がありません。商品ごとにレンタル価格が違うためです。決まり方は次のとおりです。

自己負担の計算そのレンタル品の月額料金 × 負担割合(1割/2割/3割)= 毎月の自己負担額

厚生労働省は、福祉用具の貸与に係る費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)を利用者が負担すると説明しています。負担割合は、市区町村から交付される介護保険負担割合証で確認できます。

支給限度額の枠を共有している

もう一点、重要な仕組みがあります。厚生労働省は、要介護度別に1か月間の支給限度額が決まっているため、他の介護サービスとの組合せの中で限度額に応じた福祉用具をレンタルする必要があるとしています。

つまり、デイサービスや訪問介護と同じ枠を使うということです。限度額を超えた分は全額自己負担になるため、「用具を増やしたらデイの回数を減らすことになった」という調整が現実に起こります。ケアプランの中でどう配分するかは、ケアマネジャーと相談してください。

具体的な金額を知る方法品目ごとの金額はこの記事では示せません。商品によって価格が異なるためです。正確に知りたい場合は、福祉用具貸与事業所が提示する価格表(カタログ)を見せてもらってください。見積もりは必ず契約前に、書面でもらうこと。複数商品を比較して提案してもらうこともできます。

「借りる」か「買う」かを選べる4品目

制度改正で新しく加わった仕組みです。次の4つは、貸与と販売のいずれかを選択できます

  • 固定用スロープ
  • 歩行器(歩行車は除く)
  • 単点杖(松葉づえは除く)
  • 多点杖

厚生労働省は、これらの用具について「利用者の方に対して、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員が提案を行います」としています。自分で決めなければならないわけではありません。

選ぶときの考え方単純化すると、長く同じものを使い続ける見込みなら購入、状態が変わりそうならレンタルです。認知症や進行性の病気で身体の状態が変わっていく場合は、交換や調整ができるレンタルのほうが合うことが多いと感じています。判断材料は専門相談員に出してもらってください。

レンタルできない、買うしかない9品目

入浴や排泄に使う用具は、貸与になじまないとして販売の対象になります。これが特定福祉用具販売です。

1. 腰掛便座ポータブルトイレ、便座の高さを補う用具など
2. 自動排泄処理装置の交換可能部品本体はレンタル、部品は購入
3. 排泄予測支援機器膀胱の状態から排尿のタイミングを知らせる機器
4. 入浴補助用具シャワーチェア、浴槽用手すり、すのこ、バスボードなど
5. 簡易浴槽持ち運びできる浴槽
6. 移動用リフトのつり具の部品※リフト部分は含みません
7. 固定用スロープ※貸与との選択制
8. 歩行器※歩行車は除く。貸与との選択制
9. 歩行補助つえ※松葉杖は除く。貸与との選択制
支払い方が違います販売は償還払いです。厚生労働省の説明では、利用者がいったん全額を支払った後、費用の9割(一定以上所得者の場合は8割または7割)が介護保険から払い戻されます。また、同一年度で購入できるのは10万円までで、利用者負担が1割の方の場合、9万円が介護保険から給付されます。

注意点は2つ。いったん全額を立て替える必要があることと、指定を受けた事業者から買わないと対象にならないことです。ネット通販で買っても給付の対象になりません。必ず事前にケアマネジャーへ相談してください。

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先に買っちゃったら戻ってこないんだ。危ないなあ

借りるまでの流れ

STEP 1要介護認定を受ける

まだなら市区町村または地域包括支援センターで申請します。福祉用具貸与は認定がなければ使えません。

STEP 2ケアマネジャーに相談する

「何に困っているか」を伝えます。用具名から入らなくて構いません。「夜トイレに行くのが怖い」で十分です。

STEP 3福祉用具専門相談員が訪問する

自宅の状況を見て、候補を提案します。段差、間取り、動線を実際に見てもらうことが重要です。

STEP 4デモ機を試す

これを飛ばさないでください。カタログで決めると、まず失敗します。実際に本人が使ってみて判断します。

STEP 5ケアプランに位置づけ、契約する

見積書と契約書を確認します。月額料金と自己負担額を必ず書面で確認してください。

STEP 6納品・取り付け・調整

高さや角度の調整まで行ってもらいます。ここまでがサービスに含まれています。

STEP 7定期的に見直す

状態が変われば用具も変えます。合わなくなったら遠慮なく相談してください。

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デモ機って頼めば出してもらえるんだね。知らなかった

失敗しないための5つのポイント

1買う前に必ず相談する:手すり、歩行器、杖、車いす。実費で買う前に「これ、借りられますか」の一言を。取り返しがつくのは買う前だけです。
2必ずデモ機を試す:同じ「歩行器」でも、重さも幅も操作性も違います。本人が使えなければ意味がありません。
3複数の候補を出してもらう:1つだけ提案されたら、「他の選択肢はありますか」と聞いてください。価格も性能も幅があります。
4限度額の残りを確認する:用具を増やすと、他のサービスを削ることになる場合があります。全体の配分をケアマネジャーと確認してください。
5合わなくなったら言う:レンタルの利点は交換できることです。使っていない用具を借り続けるのは、限度額の無駄遣いです。
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訪問していて、押し入れに眠っている歩行器をよく見ます。使っていないなら返す。その分の限度額で、今必要なものを借りたほうがいい。用具は「置いてあること」ではなく「使えていること」に意味があります。

よくある質問
要介護1でも介護ベッドを借りられませんか?
厚生労働省の記載は「原則保険給付の対象となりません」であり、状態によって例外的に認められる仕組みがあります。判断や必要書類は市区町村の運用によるため、ケアマネジャーに相談してください。諦めて自費購入する前に、必ず確認を。
レンタル料は毎月いくらですか?
商品によって異なるため、一律には示せません。福祉用具貸与事業所の価格表で確認し、契約前に見積書を書面でもらってください。自己負担額は、月額料金にご自身の負担割合(1割・2割・3割)を掛けたものになります。
ネットで買った入浴用のいすも介護保険の対象になりますか?
なりません。特定福祉用具販売は、指定を受けた事業者から購入したものが対象です。また償還払いのため、事前にケアマネジャーへ相談し、正しい手順で購入する必要があります。
年度をまたげば、また10万円分買えますか?
厚生労働省は「同一年度で購入できるのは10万円まで」としています。年度の区切りや同一品目の再購入の可否など、細かい取扱いは市区町村にご確認ください。
壁に手すりを取り付けたいのですが、レンタルできますか?
できません。レンタル対象は工事を伴わない手すりです。壁に固定するものは住宅改修の扱いになります。どちらが適切かは、自宅の状況と本人の動作を見たうえで判断されるため、ケアマネジャーと福祉用具専門相談員に相談してください。
まとめ
  • 福祉用具貸与の対象は13品目。要支援1・2の方も介護予防福祉用具貸与として使える。
  • 13品目は、車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置。
  • 手すりとスロープは工事を伴わないものが対象。工事を伴うものは住宅改修。
  • 要支援1・2と要介護1は、車いす・特殊寝台など8品目が原則対象外。
  • 自動排泄処理装置は、要支援1・2と要介護1・2・3が原則対象外。
  • いずれも「原則」であり、例外が認められる場合がある。諦める前にケアマネジャーへ。
  • 自己負担は「月額レンタル料 × 負担割合(1割・2割・3割)」。負担割合は負担割合証で確認。
  • 他の介護サービスと同じ支給限度額の枠を使う。超えた分は全額自己負担。
  • 固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖は貸与と販売の選択制。
  • 入浴・排泄用具など9品目は購入。償還払いで、同一年度10万円まで。
  • 購入は指定事業者から。ネット通販では給付の対象にならない。
  • 必ずデモ機を試す。合わなくなったら交換・返却する。
参考にした情報

※本記事の制度に関する記述は、厚生労働省の介護サービス情報公表システムの公表内容にもとづきます。レンタル料金は商品および事業所によって異なるため、本記事では具体的な金額を示していません。要介護度による給付制限の例外的な取扱い、支給限度額、負担割合、特定福祉用具販売の細かい運用は、要介護度・所得・市区町村によって異なります。個別の判断は、必ず市区町村・地域包括支援センター・担当ケアマネジャー・福祉用具貸与事業所にご確認ください。内容は2026年8月時点の情報です。

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リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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