圧迫骨折でやってはいけないこと|リハビリと生活の注意

圧迫骨折でやってはいけないことは、突き詰めると背中を丸める動作です。前かがみになる、体を丸めて腹筋をする、床の物を拾う、重い物を持ち上げる。これらはすべて、つぶれた背骨の前側にさらに圧をかけます。
そしてもう一つ知っておくべきなのは、圧迫骨折は転ばなくても起こるということです。くしゃみ、尻もち、重い物を持った瞬間――あるいは、はっきりしたきっかけすらないこともあります。この記事では、してはいけない動作と、やるべきリハビリを整理しました。
この記事でわかること
- 圧迫骨折でやってはいけない動作の一覧
- 背中を丸める動作がなぜ危険なのか
- 物を拾う・靴下を履くときの正しい方法
- 時期別のリハビリ内容
- コルセットを使う期間と外すタイミング
- 圧迫骨折の後に起こりやすい二次的な問題
- 骨粗鬆症の運動が骨密度に効く根拠
- 次の骨折を防ぐためにやること
圧迫骨折でやってはいけないこと
脊椎圧迫骨折は、背骨(椎体)が体重や外力でつぶれる骨折です。骨粗鬆症が背景にあると、軽い力でも起こります。
つぶれるのは主に椎体の前側です。そして、背中を丸める(前屈する)と、椎体の前側に圧が集中します。つまり、前かがみの動作はすべて「つぶれた場所をさらに押しつぶす方向」の力になります。ここが、やってはいけないことの原理です。
やってはいけない動作
- 前かがみになる:洗面、掃除機、草むしり、床の物を拾う
- 体を丸める腹筋運動:上体起こしは禁忌に近い動作です
- 重い物を持ち上げる:特に前かがみで持ち上げる動作
- 急に体をひねる:振り向く、寝返りで上半身だけひねる
- 長時間同じ姿勢で座る:特に背もたれのない椅子・柔らかいソファ
- やわらかすぎる布団・ソファ:起き上がるときに体が丸まります
- 痛みを我慢して動き続ける:つぶれが進行することがあります
物を拾うときの正しい方法
床の物を拾うのは、日常で最も頻度が高い危険動作です。
- 背中はまっすぐのまま、膝と股関節を曲げてしゃがむ
- 片手で机や椅子を支えにする
- 物に近づいてから拾う(腕だけ伸ばさない)
- 膝が痛くてしゃがめない場合は、マジックハンド(リーチャー)を使う
靴下を履く、爪を切るといった動作も同じです。足を台に乗せて高さを上げる、ソックスエイドを使うなど、前屈しなくて済む方法に変えてください。これらは作業療法士が最も得意とする領域です。
ちびウルフでは、ずっと寝ていたほうが安全ですか?
リハウルフそれが最悪の選択です。寝ていると骨密度はさらに下がり、筋力も落ち、次の骨折が近づきます。禁止なのは「丸める動作」であって「動くこと」ではありません。背骨をまっすぐ保ったまま動く方法を覚えるのがリハビリです。
起き上がり方を変える
圧迫骨折の直後、最も痛いのが起き上がりです。ここを正しく行えるかどうかで、痛みも回復も変わります。
- 仰向けのまま、両膝を立てる
- 体を丸めずに、肩と骨盤を同時に、丸太を転がすように横向きへ回す
- 両膝をベッドの端から下ろす
- 下の腕で体を押し、脚が下がる重さを使って起き上がる(上体を持ち上げない)
- 端座位で一呼吸おいてから立ち上がる
この方法を「ログロール(丸太転がし)」と呼びます。ポイントは2番目で、上半身と下半身をねじらずに一体で回すことです。腹筋を使って真上に起き上がるのが、最もやってはいけない起き方です。
圧迫骨折はどう見つかるか
「いつのまにか骨折」と呼ばれるとおり、本人も家族も気づかないまま進んでいることがあります。
- 身長が縮んだ:若い頃より4cm以上低くなっていれば要注意
- 背中が丸くなってきた:壁に背中・かかと・お尻をつけて立ち、後頭部が壁につかない
- 寝返りや起き上がりのときだけ痛む:動き始めの痛みが特徴的
- 仰向けで寝ると背中が痛い:横向きなら楽になる
- 立っていると背中が重だるい:長く立っていられない
これらがあれば整形外科で相談してください。レントゲンで判断がつかない場合、MRIで新しい骨折かどうかを判別することがあります。「古い骨折」か「今つぶれたもの」かで、対応がまったく変わります。
すぐ受診すべきサイン
- 脚のしびれ、力が入らない
- 足先の感覚が鈍い
- 排尿・排便がしにくくなった
- 安静にしていても激しく痛む
- 発熱を伴う背部痛
これらは、神経の圧迫や感染などが背景にある可能性があります。様子を見ずに受診してください。
痛みとの付き合い方
圧迫骨折の痛みは、動き始めに強く、安定した姿勢では軽くなるのが典型です。
- 痛み止めは我慢せず使う:痛みで動けないことのほうが害になります。使い方は主治医に確認を
- 横向きで寝るときは両膝の間にクッション:腰のねじれを防ぎます
- 仰向けなら膝の下にクッション:腰の反りが減って楽になります
- 座るときは背もたれのある椅子に深く:背中が丸まらない高さのものを
- 同じ姿勢を30分以上続けない:こまめに姿勢を変える
「痛み止めに頼りたくない」という方は多いですが、痛みで動けない期間が長引くと、廃用症候群が進みます。痛みを抑えて動けるようにするのは、リハビリを進めるための手段です。
時期別のリハビリ
急性期(受傷直後〜数週間)
痛みが強い時期です。目的は痛みのコントロールと、廃用症候群の予防。
- コルセット(装具)の装着:医師の指示に従う
- 足首の運動・深呼吸:血栓と肺炎の予防
- 痛みの範囲で離床:安静を必要以上に長引かせない
- ログロールでの起き上がり練習
- 股関節・膝の運動:背骨に負担をかけずにできる部分を維持
回復期(数週間〜数か月)
- 背筋(脊柱起立筋)のトレーニング:うつ伏せや四つ這いで、背中をまっすぐ保つ
- お尻の筋肉(大殿筋):ブリッジ、立ち座り
- 下肢の筋力トレーニング:立ち座り、かかと上げ
- 歩行練習:距離を少しずつ伸ばす
- バランス練習:転倒すれば次の骨折になります
鍛えるのは腹筋ではなく背筋
腰痛対策として「腹筋を鍛えましょう」と言われることがありますが、圧迫骨折では上体起こし型の腹筋運動は避けます。体を丸めるからです。お腹に力を入れる必要があるなら、息を吐きながらお腹を凹ませるドローイン(関節を動かさない方法)にしてください。背骨をまっすぐ支えるのは背筋の役割です。
コルセットについて
コルセットは、背骨が丸まるのを防ぎ、痛みを減らすために使います。
- 装着期間は医師の指示に従う:一般に数週間〜数か月
- 寝ているときは外してよい場合が多い:ただし指示によります
- いつまでも使い続けない:体幹の筋力が落ちます
- 自己判断で早くやめない:つぶれが進行することがあります
ここは「早すぎる中止」も「漫然とした継続」もどちらも問題になる部分です。外す時期は必ず主治医に確認してください。外した後に体幹の筋力トレーニングを始める、という段取りを組むのが理想です。
圧迫骨折の後に起こりやすい問題
骨折そのものより、その後に起こる連鎖のほうが生活への影響が大きいことがあります。
| 問題 | なぜ起こるか | 影響 |
|---|---|---|
| 背中が丸くなる(円背) | 椎体の前側がつぶれたまま治る | 前を見て歩きにくい、バランスが悪くなる |
| 次の椎体の骨折 | 1か所つぶれると隣に負担が集中する | 骨折が連鎖し、円背が進む |
| 逆流性食道炎・食欲低下 | 円背で腹部が圧迫される | 食べられなくなり、低栄養へ |
| 息苦しさ | 胸郭が狭くなる | 活動量の低下 |
| 転倒しやすくなる | 重心が前に偏る | 大腿骨骨折などのリスク上昇 |
特に注意したいのは骨折の連鎖です。1か所つぶれると、その上下の椎体に力がかかり、次の骨折が起こりやすくなります。1本目の骨折は、2本目を防ぐための警告だと考えてください。
骨粗鬆症の運動|骨密度に効く根拠
「骨がもろいのだから運動しないほうがいい」は誤りです。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、筋トレによって「筋力、身体機能、骨密度が改善し、高齢者では転倒や骨折のリスク低下」につながると整理しています。
さらに同ガイドは、筋トレの実施割合が低い高齢者や女性について「ロコモティブシンドロームやフレイル、骨粗鬆症を特に発症しやすいことが知られています」とし、筋力及び身体機能、骨密度の維持改善が期待できる筋トレを積極的に推奨する必要があるとしています。
厚労省ガイドが示す筋トレと骨の関係(原文)
骨粗鬆症があると運動を控えたくなりますが、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、筋トレの効果について次のように整理しています。
ガイドの記載(原文より)
「筋力、身体機能、骨密度が改善し、高齢者では転倒や骨折のリスク低下」につながるとされています。
また「筋トレの実施割合は、高齢者や女性で低い傾向にあります。このような人々はロコモティブシンドロームやフレイル、骨粗鬆症を特に発症しやすいことが知られています。そのため、筋力及び身体機能、骨密度の維持改善が期待できる筋トレを、積極的に推奨していく必要があります」としています。
つまり、骨粗鬆症があるから運動を控えるのではなく、骨粗鬆症だからこそ筋トレが推奨されるという位置づけです。ただし圧迫骨折がある場合は、前屈を伴わない種目を選ぶことが前提になります。
やり方を間違えなければ運動は味方
避けるべきなのは「背中を丸める動作」であって、「運動そのもの」ではありません。立ち座り、かかと上げ、横への脚上げ、背筋のトレーニング。これらは背骨を丸めずに行えます。
同ガイドは負荷の高め方についても「少しずつ負荷を高めていく(=漸進性過負荷の原則)ことが重要」「しっかりと筋肉を休める時間(休息日)をとることも同じく重要」としています。急に強い負荷をかけないことが、骨折の予防にもつながります。
| ガイドの推奨(高齢者) | 内容 |
|---|---|
| 身体活動 | 3メッツ以上を1日40分以上(1日約6,000歩以上に相当) |
| 多要素な運動 | 筋力・バランス・柔軟性など、週3日以上 |
| 筋力トレーニング | 週2〜3日 |
| 座位行動 | 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意 |
圧迫骨折がある場合は、前屈を伴わない種目を選びます。立ち座り、かかと上げ、横への脚上げ、背筋のトレーニング。これらは背骨を丸めずに行えます。具体的なやり方は高齢者の筋トレメニュー9選で解説しています。
運動を控えるべき数値基準
厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」は、安静時に次のいずれかに該当する場合は運動を実施しないとしています。
- 収縮期血圧 180mmHg以上、または 80mmHg未満
- 拡張期血圧 110mmHg以上
- 体温 37.5℃以上
- 脈拍が 120拍/分以上
- いつもと異なる脈の不整がある場合
- 関節痛など慢性的な症状の悪化
次の骨折を防ぐためにやること
- 骨粗鬆症の検査と治療を受ける:骨折したのに骨密度を測っていない、は避けたい状態です
- 処方された薬を自己判断でやめない:自覚症状がないため中断されやすい薬です
- 体重を落とさない:65歳以上の目標BMIは21.5〜24.9(介護予防マニュアル第4版)
- 前屈しない生活動作に変える:リーチャー、ソックスエイド、高さのある家具
- 転倒予防:足元灯、手すり、床の物の撤去
- 運動を続ける:骨密度と筋力の両方に効く
転倒対策は高齢者の転倒予防|原因と自宅でできる対策、栄養面はフレイルとは?チェック方法と予防の3本柱もあわせてご覧ください。
医療保険のリハビリは150日が限度
診療報酬の運動器リハビリテーション料は、発症・手術・急性増悪または最初に診断された日から150日を限度として算定されます((Ⅰ)185点・(Ⅱ)170点・(Ⅲ)85点)。150日を超えた場合は原則として1月13単位までですが、医学的に改善が期待できる場合の除外規定もあります。介護保険のリハビリは日数制限なく利用できるため、要介護認定があれば訪問リハビリ・通所リハビリへ移行する形になります。
よくある質問
圧迫骨折でやってはいけないことは何ですか?
背中を丸める動作全般です。前かがみ、上体起こし型の腹筋運動、重い物を前かがみで持ち上げる、急に体をひねる。いずれもつぶれた椎体の前側にさらに圧をかけます。
安静にしていたほうがいいですか?
必要以上の安静は逆効果です。骨密度がさらに低下し、筋力も落ち、次の骨折リスクが上がります。禁止なのは「丸める動作」であって「動くこと」ではありません。背骨をまっすぐ保ったまま動く方法を身につけてください。
起き上がるときのコツはありますか?
ログロール(丸太転がし)です。両膝を立て、肩と骨盤を同時に横向きへ回し、両膝をベッドから下ろして、脚の重さを使って起き上がります。腹筋で真上に起き上がるのは避けてください。
コルセットはいつまで着けますか?
医師の指示に従ってください。一般に数週間〜数か月です。自己判断で早くやめるとつぶれが進行することがあり、逆に漫然と続けると体幹の筋力が落ちます。外す時期は必ず確認してください。
床の物はどう拾えばいいですか?
背中をまっすぐ保ったまま、膝と股関節を曲げてしゃがみます。片手で机などを支えにしてください。膝が痛くてしゃがめない場合は、マジックハンド(リーチャー)を使うのが確実です。
腹筋は鍛えないほうがいいですか?
上体起こし型の腹筋運動は避けてください。お腹に力を入れたい場合は、息を吐きながらお腹を凹ませるドローイン(体を動かさない方法)にしてください。背骨を支えるのは主に背筋の役割です。
転んでいないのに骨折することはありますか?
あります。くしゃみ、尻もち、重い物を持った瞬間、あるいはきっかけが不明なこともあります。骨粗鬆症が進んでいる場合、日常の動作だけで椎体がつぶれることがあります。
また骨折しやすいと聞きました。
1か所つぶれると上下の椎体に力が集中し、連鎖しやすくなります。だからこそ、1本目の骨折を機に骨粗鬆症の検査と治療を受けることが重要です。
骨粗鬆症でも運動していいですか?
むしろ推奨されます。厚労省の身体活動・運動ガイド2023は、筋トレによって筋力・身体機能・骨密度が改善し、転倒や骨折のリスク低下につながるとしています。前屈を伴わない種目を選んでください。
医療保険のリハビリは何日受けられますか?
運動器リハビリテーション料は、発症・手術・急性増悪または最初に診断された日から150日が限度です。その後は1月13単位までの算定や、介護保険のリハビリへの移行という選択肢があります。
まとめ
- 圧迫骨折でやってはいけないのは、背中を丸める動作全般
- つぶれるのは椎体の前側で、前屈はそこに圧を集中させる
- 前かがみ、上体起こし、重い物の持ち上げ、急なひねりは避ける
- 床の物は膝と股関節を曲げて拾う。リーチャーの活用も有効
- 靴下・爪切りも前屈しない方法に変える
- 過度な安静は骨密度も筋力も落とし、次の骨折を招く
- 起き上がりはログロール。肩と骨盤を一体で回す
- 鍛えるのは腹筋ではなく背筋。腹部はドローインで
- コルセットは早すぎる中止も漫然とした継続も避ける
- 圧迫骨折の後は円背、骨折の連鎖、逆流性食道炎、食欲低下が起こりやすい
- 1か所つぶれると上下の椎体に負担が集中し連鎖する
- 厚労省ガイドは筋トレが骨密度を改善し骨折リスクを下げるとしている
- 骨粗鬆症だからこそ筋トレが積極的に推奨されると明記されている
- 避けるべきは「背中を丸める動作」であって運動そのものではない
- 推奨は筋トレ週2〜3日、多要素な運動を週3日以上
- 骨折を機に骨粗鬆症の検査と治療を必ず受ける
- 運動器リハビリテーション料は150日が限度。その後は介護保険へ
参考にした情報
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(令和6年1月)
- 厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」(令和4年3月)
- 診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)第7部 リハビリテーション
- 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」Ⅳ 介護の状況
※本記事の運動に関する推奨および基準値は、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」「介護予防マニュアル【第4版】」にもとづいて整理したものです。点数・算定要件は診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)によります。やってはいけない動作および起き上がり方に関する記述は、リハビリテーション領域で一般に用いられている方法および筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません(確度:中)。安静度・コルセットの装着期間・運動開始時期は、骨折の部位やつぶれの程度によって異なります。必ず主治医および担当の理学療法士の指示に従ってください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。





