フレイルとは、健康な状態と要介護状態の間にある「移行状態」のことです。厚生労働省の介護予防マニュアル第4版は、フレイルを「近い将来要介護状態に陥るリスクを抱えている」一方で、「早期に発見し適切な対策をすれば再び健常な状態に戻れる可能性が秘められた状態」と説明しています。

つまり、フレイルはまだ引き返せる段階だということです。この記事では、厚労省の原文を確認したうえで、フレイルの定義・自分でできるチェック方法・予防の3本柱を整理しました。サルコペニアやロコモとの違いも併せて解説します。

この記事でわかること

  • フレイルの正確な定義(厚労省マニュアルの原文)
  • フレイルは「戻れる状態」であるという最重要ポイント
  • 身体・精神心理・社会の3種類のフレイル
  • 厚労省の基本チェックリストによる判定基準
  • J-CHS基準による5項目のフレイル判定
  • サルコペニア・ロコモとの違い
  • 予防の3本柱(運動・栄養・社会参加)
  • 高齢者が目標とすべきBMIの範囲

フレイルとは?健康と要介護の間の状態

フレイルは、英語の「Frailty(虚弱)」に由来する言葉です。日本老年医学会が2014年に提唱した用語で、加齢に伴って心身の予備能力が低下し、ストレスに対して弱くなった状態を指します。

厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」(令和4年3月)は、次のように記載しています。

厚労省マニュアルの記載(原文)

「フレイルは、健常な状態と要介護状態の間にあるいわば『移行状態』であり、近い将来要介護状態に陥るリスクを抱えている。一方で、早期に発見し適切な対策をすれば再び健常な状態に戻れる可能性が秘められた状態でもあり、実際にフレイルの高齢者を対象とした運動プログラムによって運動機能の向上が認められることが示されている」

ここで押さえるべきは2点です。

1つは、フレイルは病名ではなく「状態」だということ。診断がつくものではなく、生活の中の変化として現れます。もう1つは、可逆的(元に戻れる)だという点です。要介護状態は一度なると戻りにくいのに対し、フレイルは介入によって健常に戻れる可能性があります。この差は非常に大きいです。

訪問リハビリの現場でも、「まだ要介護1で、なんとか自分で買い物に行けている」という段階で入れたケースと、転倒骨折後に入ったケースでは、半年後の姿がまったく違います。早さがそのまま結果になる領域です。

ちびウルフちびウルフ

ただの「年のせい」とどう違うんですか?

リハウルフリハウルフ

「年のせい」で片づけると何もしません。フレイルという言葉を使う意味は、そこに打つ手があると示すことにあります。体重が減った、外出が減った、歩くのが遅くなった。この3つが揃ったら年のせいではなく、対策のサインです。

フレイルの3つの種類

フレイルは身体面だけの問題ではありません。厚労省のマニュアルでも、身体的フレイルに加えて精神心理的フレイル・社会的フレイルが図示されています。

① 身体的フレイル

筋力低下、歩行速度の低下、体重減少、疲労感など。サルコペニアや低栄養と重なります。最もイメージしやすく、対策も立てやすい部分です。

② 精神心理的フレイル

意欲の低下、抑うつ、認知機能の低下など。基本チェックリストにも「毎日の生活に充実感がない」「これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった」といった項目が入っています。

③ 社会的フレイル

閉じこもり、独居、経済的な困窮、社会とのつながりの減少など。実は、この社会的フレイルが最初に始まることが多いです。配偶者を亡くした、友人が施設に入った、運転免許を返納した。こうした出来事の後、外出が減り、食事が簡素になり、筋力が落ちていきます。

体の問題として現れたときには、すでに社会的な変化が半年〜1年先行していることが多いです。家族が気づけるとしたら、この社会的な変化のほうです。

④ オーラルフレイル(口の機能の衰え)

厚労省マニュアルは、日本歯科医師会の定義を引用して、オーラルフレイルを「老化に伴う様々な口腔の状態の変化に、口腔健康への関心の低下や心身の予備能力の低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与える一連の現象および過程」と説明しています。

マニュアルは、軽微な口腔機能の低下であってもサルコペニアや要介護認定、死亡のリスクを高めることが大規模縦断研究で示されたとしています。「最近むせるようになった」「固いものが食べにくい」は、想像以上に重要なサインです。

フレイルのチェック方法

自分で確認する方法は2つあります。まず、厚生労働省が定めた公式のものから紹介します。

① 基本チェックリスト(厚労省・25項目)

市町村が介護予防事業の対象者を判定するために使う、公式のチェックリストです。25項目あり、領域ごとに該当基準が定められています。

領域項目番号該当基準
運動器No.6〜103項目以上に該当
栄養No.11・122項目に該当
口腔No.13〜152項目以上に該当
閉じこもりNo.16・17No.16に該当
認知機能No.18〜201項目以上に該当
うつNo.21〜252項目以上に該当
全体No.1〜2010項目以上に該当

主な質問項目を、原文の表現のまま挙げます。

  • 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか(いいえ=該当)
  • 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか(いいえ=該当)
  • 15分位続けて歩いていますか(いいえ=該当)
  • この1年間に転んだことがありますか(はい=該当)
  • 転倒に対する不安は大きいですか(はい=該当)
  • 6ヵ月間で2〜3kg以上の体重減少がありましたか(はい=該当)
  • BMIが18.5未満(該当)
  • 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか(はい=該当)
  • お茶や汁物等でむせることがありますか(はい=該当)
  • 週に1回以上は外出していますか(いいえ=該当)
  • 昨年と比べて外出の回数が減っていますか(はい=該当)

BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算します。該当が多ければ、地域包括支援センターに相談してください。全25項目は厚労省のマニュアル(記事末尾にリンク)で確認できます。

② J-CHS基準(5項目)

研究・臨床でよく使われる身体的フレイルの判定基準です。2020年に改訂されました。

項目判定基準
体重減少6か月で2kg以上の意図しない体重減少
疲労感ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度通常歩行速度が秒速1.0m未満(5mを5秒以上かけて歩く)
筋力低下握力が男性28kg未満、女性18kg未満
身体活動軽い運動・体操も、定期的な運動・スポーツもしていない

3項目以上でフレイル、1〜2項目でプレフレイル(前段階)と判定します。

※J-CHS基準の数値は、複数の二次情報で一致しており信頼できますが(確度:中)、厚労省の告示・通知として定められたものではありません。公的な事業の対象者判定には、上記の基本チェックリストが使われます。

家庭でできる簡易チェック

握力計がなくても、横断歩道を青信号で渡り切れるかで歩行速度の目安がつきます。日本の横断歩道の信号は、おおむね秒速1mで渡り切れる設定です。「最近、青が点滅してから焦る」なら、歩行速度が落ちているサインかもしれません。

サルコペニア・ロコモとの違い

混同されやすい3つの言葉を整理します。

用語指すもの範囲
フレイル心身の予備能力が低下し、要介護に近づいた状態最も広い。身体・精神・社会を含む
サルコペニア加齢による筋肉量・筋力の低下筋肉に限定。身体的フレイルの主要因
ロコモ(ロコモティブシンドローム)骨・関節・筋肉など運動器の障害で移動機能が低下した状態運動器全体。関節疾患や骨粗鬆症も含む

関係としては、サルコペニア ⊂ ロコモ ⊂ フレイルというイメージが実務的には分かりやすいです(厳密には重なり方が異なりますが、対策の優先順位を考えるうえではこれで十分です)。

厚労省の身体活動・運動ガイド2023も、筋トレの実施割合が低い高齢者や女性について「ロコモティブシンドロームやフレイル、骨粗鬆症を特に発症しやすいことが知られています」として、筋トレの積極的な推奨を求めています。

フレイル予防の3本柱

予防の柱は、運動・栄養・社会参加の3つです。どれか1つでは足りません。

① 運動

厚労省の身体活動・運動ガイド2023は、高齢者に対して次を推奨しています。

  • 3メッツ以上の身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上に相当)
  • 筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上
  • 筋力トレーニングを週2〜3日
  • 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する

ガイドは同時に、「推奨値に満たなくとも、少しでも身体活動を行うことを推奨する」「身体活動の少ない人ほど、少しの身体活動で大きな健康増進効果が期待できます」ともしています。6,000歩に届かないことを理由に諦めるのが最も損です。

② 栄養

厚労省マニュアルは、地域で生活する高齢者について「低栄養またはそのリスクがある者が約4割いるという報告がある」とし、低栄養の高齢者は「死亡率や要介護の増大、再入院、QOL低下などの問題が起きやすい」「その多くがフレイルやサルコペニアを合併している」と記載しています。

重要なのは目標とするBMIです。マニュアルは、65歳以上では日本人の食事摂取基準(2020年版)が当面目標とするBMIの範囲を21.5〜24.9kg/m²と設定していることから、BMIが18.5〜21.5の高齢者についても栄養改善プログラムの実施を検討するよう求めています。

高齢者の「痩せ」は危険信号

中年期のダイエット意識をそのまま持ち込むと、高齢期には害になります。BMI 20前後は、若い世代なら「標準」でも、65歳以上では目標範囲(21.5〜24.9)を下回っています。半年で2〜3kg減ったなら、その時点で対応が必要です。

マニュアルは、運動と栄養摂取を組み合わせたプログラムが「サルコペニアやフレイル高齢者の筋肉量や筋力、身体パフォーマンスを改善させる効果が示されている」としています。運動だけ・食事だけでは足りないという点が、一次情報にはっきり書かれています。

③ 社会参加

厚労省の身体活動・運動ガイド2023は「高齢者の外出や社会参加の機会を増やす取組が求められ」ると述べ、生活活動の機会を増やす社会環境整備として「地域活動の活性化、高齢者の社会参加の機会を増やす」ことを挙げています。

実務的に最も効くのは、週1回、外に出る用事をつくることです。体操教室でも、買い物でも、友人と会うのでも構いません。「運動のための運動」より、用事があって出かけるほうが圧倒的に続きます。

ちびウルフちびウルフ

3つ全部やるのは大変です。優先順位はありますか?

リハウルフリハウルフ

体重が減っているなら、まず栄養です。低栄養のまま運動すると、かえって筋肉が落ちます。体重が保てているなら運動から。そして、どちらの場合も「外に出る用事」は同時に仕込んでおくのが現実的です。

フレイルに気づいたらどこに相談するか

最初の窓口は地域包括支援センターです。市町村が設置しており、要介護認定がなくても無料で相談できます。基本チェックリストを使って事業対象者と判定されれば、介護予防・日常生活支援総合事業のサービスを利用できる場合があります。

状況相談先
要介護認定を受けていない地域包括支援センター
要支援1・2の認定がある地域包括支援センター(介護予防ケアマネジメント)
要介護1以上の認定がある担当のケアマネジャー
体重減少・むせるなどの医学的な心配があるまず主治医

なお、厚労省マニュアルによる短期集中予防サービスは3か月から6か月の期間で行われます。マニュアル自身が「この短期集中プログラムには身体機能を向上させる効果が期待できるが、中長期的に効果が持続するわけではない」と明記しており、終了後に個人または集団で運動を継続できるようになることを目指すとしています。サービスは卒業前提だということを、最初に知っておいてください。

よくある質問

フレイルは治りますか?

元に戻れる可能性があります。厚労省の介護予防マニュアル第4版は、フレイルを「早期に発見し適切な対策をすれば再び健常な状態に戻れる可能性が秘められた状態」と記載しており、運動プログラムによって運動機能の向上が認められることが示されているとしています。

フレイルは何歳から気をつけるべきですか?

一般には65歳以上が対象ですが、年齢で線を引くより変化で判断してください。厚労省の身体活動・運動ガイド2023も「特定の年齢で区切ることは適当でなく、個人の状況に応じて取組を行うことが重要」としています。

フレイルとサルコペニアの違いは何ですか?

サルコペニアは加齢による筋肉量・筋力の低下を指し、身体面に限定されます。フレイルはそれを含みつつ、精神心理面や社会面まで含む、より広い概念です。サルコペニアは身体的フレイルの主要な原因です。

高齢者のBMIはいくつを目指せばいいですか?

65歳以上では、日本人の食事摂取基準(2020年版)が当面目標とするBMIの範囲を21.5〜24.9kg/m²としています。18.5未満は基本チェックリストの該当項目ですが、18.5〜21.5の場合も栄養改善の検討対象とされています。

基本チェックリストはどこで受けられますか?

地域包括支援センターや市町村の窓口で実施しています。要介護認定を受けていなくても相談でき、該当すれば介護予防・日常生活支援総合事業のサービス利用につながります。

握力計がないのですが、どう判断すればいいですか?

ペットボトルのふたが開けにくくなった、買い物袋を持つのがつらくなった、といった生活の変化で見てください。より客観的に知りたい場合は、地域包括支援センターや通いの場で測定できることがあります。

食事量が減っています。何から増やせばいいですか?

たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品)を優先してください。量を増やすのが難しい場合は、1回の食事に1品足す、間食を栄養のあるものに変える、という方向が現実的です。具体的な量は持病(腎機能など)によって異なるため、主治医・管理栄養士にご相談ください。

オーラルフレイルとは何ですか?

口の機能の衰えです。厚労省マニュアルは、軽微な口腔機能の低下であってもサルコペニアや要介護認定、死亡のリスクを高めることが示されているとしています。「固いものが食べにくい」「お茶や汁物でむせる」が代表的なサインで、歯科での相談対象です。

一人暮らしだとフレイルになりやすいですか?

独居は社会的フレイルの要因の一つとされています。ただし独居そのものより、外出頻度と人と話す機会の減少が問題です。週1回以上の外出があるかを目安にしてください。基本チェックリストにも「週に1回以上は外出していますか」という項目があります。

介護予防のサービスは何か月使えますか?

厚労省マニュアルの短期集中予防サービスは3〜6か月の設計です。マニュアル自身が中長期的に効果が持続するわけではないとしており、終了後に自分で運動を継続できることを目標にしています。期間や内容は市町村によって異なります。

まとめ

  • フレイルは健康と要介護の間にある「移行状態」(厚労省マニュアル)
  • 早期に発見して対策すれば、健常な状態に戻れる可能性がある
  • 身体的・精神心理的・社会的の3種類があり、社会的フレイルが先行しやすい
  • オーラルフレイル(口の衰え)も、要介護・死亡リスクを高める
  • 公的な判定は厚労省の基本チェックリスト25項目で行う
  • 運動器は No.6〜10 のうち3項目以上、栄養は No.11・12 の2項目該当が基準
  • J-CHS基準は5項目中3項目以上でフレイル、1〜2項目でプレフレイル
  • 横断歩道を青信号で渡り切れるかが、歩行速度の簡易チェックになる
  • サルコペニアは筋肉、ロコモは運動器、フレイルは心身全体
  • 予防の柱は運動・栄養・社会参加の3つ。1つでは足りない
  • 65歳以上の目標BMIは21.5〜24.9。18.5〜21.5も栄養改善の検討対象
  • 運動と栄養を組み合わせたプログラムに改善効果が示されている
  • 相談窓口は地域包括支援センター。要介護認定がなくても相談できる

参考にした情報

※本記事の定義・基準値は、厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」および「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」にもとづいて整理したものです。J-CHS基準の数値は学会等の二次情報で確認したもので、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません。実際の判定・サービス利用にあたっては原文および市町村の窓口にご確認ください。介護予防事業の内容・対象・期間・費用は市町村によって異なります。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。予防の進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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