先に結論をお伝えします。歯がない・入れ歯が合わない親の食事は、「やわらかくする」前に「噛めないのか、飲み込めないのか」を見分けることが大切です。噛む力だけの問題なら、ミキサー食まで形を崩さなくても、調理の工夫や入れ歯の調整で食べられるものはたくさんあります。

この記事では、歯や入れ歯の問題で食べにくくなった高齢の親の食事について、やわらかくする調理の工夫、食べにくい食材、市販品の選び方、栄養が偏らないための注意点を整理しました。歯の本数のデータは厚生労働省の情報サイト(e-ヘルスネット)を確認して書いています。

この記事でわかること
  • 高齢者の歯の本数と入れ歯の使用状況
  • 「噛めない」と「飲み込めない」の見分け方
  • 入れ歯が合わないときに最初にすること
  • 家でできる、やわらかくする調理の工夫
  • 市販の介護食を選ぶときの目安と栄養の注意点

歯がない・入れ歯が合わない親の食事で起きること

年齢とともに、自分の歯は少なくなっていきます。e-ヘルスネットによると、後期高齢者(75歳以上)の残っている歯の数の平均は約16本で、何らかの義歯(ブリッジ・部分入れ歯・総入れ歯)を使っている人は84%、総入れ歯の人は約3割です(2016年の歯科疾患実態調査)。入れ歯は、高齢の親の多くにとって身近なものです。

歯が少なくなったり入れ歯が合わなくなったりすると、食事には次のような変化が起きやすくなります。

  • 肉・生野菜・漬物など、硬いものや繊維の多いものを避けるようになる
  • おかゆ・うどん・パンなど、やわらかい炭水化物ばかりになる
  • 食べるのに時間がかかり、途中で疲れて残す
  • 入れ歯が痛くて、食事のときに外してしまう

こうした状態が続くと、たんぱく質や野菜が不足し、体重が減ったり筋力が落ちたりする原因になります。「食べる量は減っていないのに痩せてきた」ときは、食べている物の中身が偏っていないか見直してください。体重減少の目安は高齢者の体重減少|危険な目安と原因・対策で解説しています。

まず「噛めない」のか「飲み込めない」のかを見分ける

やわらかい食事を考えるときにいちばん大事なのが、この見分けです。噛む力の問題と、飲み込む力の問題では、必要な食事の形がまったく違います。

噛めない(咀嚼の問題)飲み込めない(嚥下の問題)
よくある様子硬い物を残す、口の中にいつまでも食べ物が残る、入れ歯が痛い食事中や食後にむせる、声がガラガラする、飲み込むのに時間がかかる
主な原因歯が少ない、入れ歯が合わない、歯ぐきの痛みのどの筋力の低下、脳卒中やパーキンソン病などの病気
必要な食事やわらかく煮る、小さく切る、繊維を断つなどまとまりやすく、ばらけない形。とろみが必要なこともある
相談先歯科(入れ歯の調整)主治医、言語聴覚士(ST)

噛む力だけの問題なのに、何でもミキサーにかけてしまうと、見た目も味も分からなくなり、食欲が落ちてしまうことがあります。反対に、飲み込みに問題がある人に「やわらかいから大丈夫」と細かく刻んだ物を出すと、口の中でばらけてかえってむせやすくなります。むせが気になるときはむせやすいのは病気?原因・嚥下障害のサインも確認してください。

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入れ歯を外したまま食べてるんだけど、それでもいいの?

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歯ぐきだけで噛める物は限られるので、どうしても食べられる物が偏ってしまいます。入れ歯が痛くて外しているなら、まずは歯科で調整してもらいましょう。合う入れ歯になるだけで、食べられる物がぐっと増える方は多いですよ。

入れ歯が合わないなら、まず歯科で調整する

入れ歯は、一度作ったら終わりではありません。歯ぐきや顎の骨は年齢とともにやせていくため、何年か使ううちに合わなくなるのはふつうのことです。次のようなサインがあれば、歯科で調整を相談してください。

  • 食事のときに入れ歯が外れる、ずれる、カタカタ音がする
  • 入れ歯が当たって歯ぐきが痛い、傷ができている
  • 入れ歯を外して食べるようになった
  • 入れ歯を作ってから何年もたち、一度も調整していない

通院が難しい場合は、歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設に来てくれる訪問歯科という方法もあります。介護保険の認定を受けている人は、歯科医師・歯科衛生士による「居宅療養管理指導」で、口の中の管理や助言を受けられることがあります。担当のケアマネジャーに相談してみてください。施設に入っている場合の歯科受診は老健で歯科受診はできる?訪問歯科の費用と口腔ケアで解説しています。

家でできる、やわらかくする調理の工夫

噛む力が弱い親でも、調理の工夫で食べやすくなる物はたくさんあります。家族と同じ料理を少しアレンジするだけでも十分です。

  • 長めに煮る・圧力鍋を使う:根菜や肉は、やわらかくなるまで煮込む
  • 繊維を断つように切る:肉や野菜は繊維に対して直角に切ると噛み切りやすい
  • 隠し包丁を入れる:肉やいかなどに細かく切り込みを入れておく
  • やわらかい食材を選ぶ:ひき肉、豆腐、卵、白身魚、はんぺんなど
  • あんかけやとろみでまとめる:ぱさつく物やばらける物は、あんをからめると食べやすい
  • 水分を含ませる:パンは牛乳やスープにひたす、煮物は汁ごと出す

食べにくい食材と、食べやすくする工夫

食べにくい食材理由工夫の例
厚切りの肉・塊の肉噛み切れず、口に残る薄切りやひき肉に変える、煮込み料理にする
生野菜(キャベツ・レタスなど)繊維が多く、すりつぶしにくい加熱して煮浸しやスープにする
ごぼう・れんこんなど根菜硬く繊維が強い薄く切って長めに煮る、すりおろして使う
いか・たこ・こんにゃく弾力があり噛み切れない細かく切り込みを入れる、無理に使わない
焼き魚身がぱさつき、ばらける煮魚や蒸し魚にする、あんをかける
もち噛み切れず、のどに詰まりやすい噛む力や飲み込む力に不安があるときは避ける

やわらかくしすぎて形がなくなると、見た目で食欲が落ちることがあります。噛む力だけの問題なら、形を残したまま「やわらかく」するのが理想です。ミキサーやフードプロセッサーを使う場合の選び方は介護食・嚥下食におすすめのミキサーで紹介しています。

市販の介護食・宅配食を使うときの目安

毎食やわらかく作るのは大変です。市販のレトルトや冷凍の宅配食を上手に組み合わせると、作る人の負担が減ります。市販の介護食には、日本介護食品協議会が定めた「ユニバーサルデザインフード」の区分が表示されているものがあり、選ぶときの目安になります。

区分目安になる人
区分1:容易にかめる硬い物や大きい物はやや食べにくい
区分2:歯ぐきでつぶせる硬い物や大きい物は食べにくい
区分3:舌でつぶせる細かくてやわらかければ食べられる
区分4:かまなくてよい固形物は小さくても食べにくい

入れ歯が合わない、歯が少ないといった噛む力の問題が中心なら、区分1〜2あたりから試してみるとよいでしょう。飲み込みに不安がある場合は、自己判断で区分を決めず、主治医や言語聴覚士に合う形を確認してください。レトルトの介護食は介護食レトルトおすすめで区分別に紹介しています。

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栄養が偏らないために気をつけたいこと

やわらかい物ばかりになると、どうしても炭水化物が中心になり、たんぱく質や野菜が不足しがちです。次のような食材を意識して取り入れてください。

  • たんぱく質:卵、豆腐、納豆(ひきわり)、白身魚、ツナ、ヨーグルト、牛乳
  • 野菜:煮物、スープ、ポタージュ、煮浸しなど加熱した物
  • エネルギーを足す:おかゆにすりごまや卵を加える、スープに牛乳を足す

1回にたくさん食べられない場合は、食事の回数を増やしたり、間食でヨーグルトやプリンを取り入れたりするのも一つの方法です。体重が減り続けるときは、早めに主治医に相談してください。

よくある質問

歯がない親には、ミキサー食にしたほうがいいですか?

噛む力だけの問題なら、ミキサー食まで形を崩す必要がないことが多いです。やわらかく煮る、繊維を断って切るなどの工夫で食べられる物はたくさんあります。むせるなど飲み込みに問題がある場合は、主治医や言語聴覚士に合う形を確認してください。

入れ歯を外して食べてもいいですか?

歯ぐきだけで噛める物は限られるため、食べられる物が偏りやすくなります。入れ歯が痛くて外しているなら、歯科で調整してもらうことをおすすめします。

通院できない親の入れ歯は、どうやって調整すればいいですか?

歯科医師が自宅や施設に来てくれる訪問歯科があります。介護保険の認定を受けている人は、歯科医師・歯科衛生士による居宅療養管理指導を受けられることもあるので、ケアマネジャーに相談してください。

きざみ食にすれば食べやすくなりますか?

噛む力が弱い人には食べやすくなることがありますが、飲み込む力が弱い人では、口の中でばらけてむせやすくなることがあります。きざむ場合は、あんやとろみでまとめると食べやすくなります。

市販の介護食はどれを選べばいいですか?

ユニバーサルデザインフードの区分(容易にかめる・歯ぐきでつぶせる・舌でつぶせる・かまなくてよい)が目安になります。噛む力の問題が中心なら、区分1〜2から試してみてください。

まとめ
  • 後期高齢者の84%が何らかの義歯を使い、約3割が総入れ歯
  • やわらかくする前に「噛めない」のか「飲み込めない」のかを見分ける
  • 入れ歯が合わないなら、まず歯科で調整する(通院が難しければ訪問歯科)
  • 煮込む・繊維を断つ・あんでまとめるなど、形を残してやわらかくする
  • 市販品はユニバーサルデザインフードの区分を目安に選ぶ
  • たんぱく質と野菜が不足しないよう、食材を意識して取り入れる
参考にした情報

※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。歯の本数・義歯の使用状況は、e-ヘルスネットに掲載された歯科疾患実態調査(2016年)の数値です(2026年10月確認)。食事の形態は、噛む力・飲み込む力の状態によって適したものが異なります。飲み込みに不安がある場合は、主治医や言語聴覚士に相談してください。調理の工夫や食材の選び方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、医学的な診断・指導に代わるものではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味