補聴器の助成・補助はある?医療費控除の条件も解説

先に結論をお伝えします。補聴器の購入に使える公的な支援は、大きく「身体障害者手帳による補装具費」「市区町村の高齢者向け助成」「医療費控除」の3つです。どれも、耳鼻咽喉科を受診して医師の判断をもらうところから始まります。補聴器店で先に買ってしまうと使えないものがあるので、順番に注意してください。
この記事では、補聴器の購入費用の補助・助成のしくみと、医療費控除の対象になる条件を、障害者総合支援法・身体障害者福祉法施行規則の条文と国税庁の情報を確認して整理しました。介護保険で補聴器が買えるのか、という疑問にもお答えします。
- 補聴器の購入に使える3つの公的な支援
- 身体障害者手帳(聴覚障害)の対象になる聴力の目安
- 市区町村の高齢者向け補聴器助成の調べ方
- 補聴器が医療費控除の対象になる条件
- 補聴器を買うまでの正しい順番
補聴器の購入に使える助成・補助は3つ
補聴器は、両耳で数十万円になることもある高い買い物です。購入費用の負担を減らせる公的な支援には、次の3つがあります。
| 支援 | 対象になる人 | 窓口 |
|---|---|---|
| ①補装具費の支給 | 聴覚障害で身体障害者手帳を持っている人 | 市区町村の障害福祉の窓口 |
| ②高齢者向けの補聴器購入費助成 | 手帳の対象にならない程度の難聴の高齢者(実施している市区町村のみ) | 市区町村の高齢福祉の窓口 |
| ③医療費控除 | 補聴器相談医が「診療等のために直接必要」と証明した人 | 確定申告(税務署) |
①と②は、購入費用の一部を市区町村が負担するしくみです。③は、払った費用を確定申告で所得から差し引くしくみで、税金の一部が戻ってきます。①と②は、申請して決定を受ける前に買ったものは対象にならないのが一般的なので、補聴器店に行く前に窓口に相談してください。
介護保険では補聴器は買えない
よく聞かれるのが「介護保険で補聴器を買えないか」という質問です。介護保険の福祉用具(レンタル・購入)の対象品目に補聴器は含まれていないため、介護保険では買えません。介護保険の対象外になる用品は福祉用具の介護保険対象外品目一覧にまとめています。
①身体障害者手帳がある人は「補装具費」
補聴器は、障害者総合支援法の「補装具」にあたります。同法第76条では、市町村は、障害の状態からみて補装具の購入が必要と認めるときに、購入にかかった費用について補装具費を支給すると定めています。
手帳の対象になる聴力の目安
聴覚障害で身体障害者手帳の対象になるのは、身体障害者福祉法施行規則の別表で定める障害の程度に当てはまる場合です。いちばん軽い6級は次のとおりです。
①両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)
②一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの
つまり、耳元で話さないと会話がわかりにくい程度の難聴が目安です。「テレビの音が大きい」「聞き返しが増えた」程度の軽い難聴では、手帳の対象にならないことが多いです。手帳を持つと受けられるほかの支援は身体障害者手帳のメリット一覧で解説しています。
自己負担は原則1割
補装具費は、国が定める基準額から本人の負担分を差し引いた額が支給されます。本人の負担は、家計の負担能力に応じて政令で決まる額で、基準額の1割が上限です(障害者総合支援法第76条第2項)。ただし、本人や世帯員に一定以上の所得がある場合は、支給の対象になりません(同条第1項ただし書)。基準額を超える高い機種を選んだ場合、その差額は自己負担になります。
ちびウルフ手帳の申請って、何から始めればいいの?
リハウルフまずは耳鼻咽喉科を受診して、聴力検査を受けてください。手帳の診断書は、都道府県などから指定を受けた医師しか書けません。受診するときに「身体障害者手帳の申請を考えている」と伝えると話が早いですよ。
②市区町村の高齢者向け補聴器助成
手帳の対象にならない軽度・中等度の難聴の高齢者向けに、独自に補聴器の購入費を助成している市区町村があります。国の制度ではないため、実施しているかどうか、対象年齢・金額・条件は市区町村ごとに違います。
多くの市区町村で見られる条件は、次のようなものです。
- 一定の年齢以上で、その市区町村に住んでいる
- 聴覚障害で身体障害者手帳の対象になっていない
- 耳鼻咽喉科の医師(補聴器相談医など)が補聴器が必要と判断している
- 住民税が非課税であるなど、所得の条件がある場合もある
- 申請して決定を受けてから購入する
調べるときは、「お住まいの市区町村名 補聴器 助成」で検索するか、市区町村の高齢福祉の窓口や地域包括支援センターに問い合わせてください。
③補聴器が医療費控除の対象になる条件
補聴器の購入費用は、条件を満たせば医療費控除の対象になります。国税庁は、厚生労働省からの照会に対して次のように回答しています(平成30年4月16日 個人課税課情報第3号)。
医師による診療や治療などのために直接必要な補聴器の購入のための費用で、一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額は、医療費控除の対象となります。一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会が認定した補聴器相談医が、「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」により、補聴器が診療等のために直接必要である旨を証明している場合には、当該補聴器の購入費用は医療費控除の対象になります。
ポイントは、補聴器相談医に「補聴器適合に関する診療情報提供書」を書いてもらうことです。この書類がないまま補聴器店で買った場合は、医療費控除の対象として扱ってもらえないことがあります。確定申告のときに必要になるので、診療情報提供書の写しと補聴器の領収書は保管しておきましょう。
医療費控除は、補聴器だけでなく、その年に家族の分も含めて払った医療費を合計して計算します。介護サービスのうち医療費控除の対象になるものは介護の医療費控除|対象になるサービス一覧で解説しています。
補聴器を買うまでの正しい順番
助成や医療費控除を使うなら、次の順番で進めると、使えるはずの支援を取りこぼさずにすみます。
- 耳鼻咽喉科(できれば補聴器相談医がいる医療機関)を受診し、聴力検査を受ける
- 難聴の程度を聞き、身体障害者手帳の対象になるか確認する
- 手帳の対象なら障害福祉の窓口、対象外なら高齢福祉の窓口に助成の有無を問い合わせる
- 補聴器相談医に「補聴器適合に関する診療情報提供書」を書いてもらう
- 助成の決定を受けてから、認定補聴器専門店などで試聴・調整をして購入する
- 領収書と診療情報提供書の写しを保管し、確定申告で医療費控除を申告する
補聴器は、買って終わりではありません。購入後も、聞こえ方に合わせて何度か調整を受けることで、少しずつ慣れていきます。試聴や貸し出しの期間がある店を選ぶと、合わなかったときの失敗を減らせます。
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補聴器を使いたがらない親への声かけ
助成のしくみがわかっても、本人が「まだ聞こえる」「年寄りくさい」と補聴器をいやがることは少なくありません。そんなときは、次のような伝え方を試してみてください。
- 「聞こえていない」と責めず、「もっと話したいから」と家族の気持ちとして伝える
- まずは耳鼻咽喉科の受診だけをすすめ、補聴器の話は医師からしてもらう
- 試聴できる店で、実際に音の違いを体験してもらう
- テレビの音だけが問題なら、テレビ用のスピーカーなど別の方法から試す
テレビの音量でもめている場合の対策は高齢者がテレビの音を聞き取りやすくする方法、音量が大きくなる原因は高齢者のテレビ音量が大きい原因とは?で解説しています。
よくある質問
補聴器は介護保険で買えますか?
買えません。介護保険の福祉用具の対象品目に補聴器は含まれていません。身体障害者手帳の補装具費や、市区町村の助成、医療費控除を検討してください。
身体障害者手帳がもらえるのはどのくらいの難聴からですか?
いちばん軽い6級は、両耳の聴力レベルが70デシベル以上(40センチメートル以上離れた会話語がわからない程度)、または片耳が90デシベル以上でもう片耳が50デシベル以上の場合です(身体障害者福祉法施行規則 別表第5号)。
すでに買った補聴器でも助成を受けられますか?
補装具費や市区町村の助成は、申請して決定を受けてから購入するのが一般的で、先に買ったものは対象にならないことが多いです。医療費控除は、購入前に補聴器相談医の診療情報提供書を受けているかがポイントになります。
補聴器を医療費控除の対象にするには何が必要ですか?
補聴器相談医が「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」で、補聴器が診療等のために直接必要であると証明していることが必要です。確定申告に備えて、診療情報提供書の写しと領収書を保管しておきましょう。
高齢者向けの補聴器助成は、どこの市区町村でもありますか?
国の制度ではないため、実施していない市区町村もあります。対象年齢や金額も市区町村ごとに違うので、お住まいの市区町村の高齢福祉の窓口や地域包括支援センターに確認してください。
- 補聴器の支援は「補装具費」「市区町村の助成」「医療費控除」の3つ
- 介護保険では補聴器は買えない
- 手帳の6級は、両耳70デシベル以上などが目安
- 市区町村の高齢者向け助成は、実施の有無も条件も地域ごとに違う
- 医療費控除には、補聴器相談医の診療情報提供書が必要
- どの支援も、補聴器店より先に耳鼻咽喉科を受診するのが出発点
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(e-Gov法令検索)第5条・第76条
- 身体障害者福祉法施行規則(e-Gov法令検索)別表第5号
- 補聴器の購入費用に係る医療費控除の取扱いについて(情報)(国税庁)
- No.1122 医療費控除の対象となる医療費(国税庁)
※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。補装具費・身体障害者手帳の障害程度・医療費控除に関する記述は、各法令の条文と国税庁の情報にもとづいて整理しています(2026年10月確認)。補装具費の基準額や自己負担の上限額、市区町村の高齢者向け助成の内容は、自治体によって異なります。手続きの順番や声かけに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。





