介護保険とは?利用できる介護サービスや対象者、申請から利用までの流れを解説

介護保険は、市町村が保険者となり、40歳以上の人が加入する社会保険です。要介護認定を受けると、サービス費用の原則1割(所得に応じて2割・3割)の負担で介護サービスを使えます。
この記事では、介護保険法の条文を確認して、制度の骨格と申請から利用までの流れを整理しました。認定が申請日にさかのぼること、30日を過ぎたときに何が起きるかなど、知っておくと動きが変わる部分まで含めます。各テーマの詳細は、それぞれの記事へリンクしています。
- 介護保険の保険者と被保険者(第1号・第2号)
- 40歳から加入し、65歳で区分が変わること
- 申請から利用までの流れ
- 認定は申請した日にさかのぼって効力が生じること
- 申請から30日以内に処分しなければならないこと
- 30日を過ぎて通知もない場合に取れる手段
- 利用できるサービスの大枠
- 自己負担と支給限度額のしくみ
- 支給限度額を市町村が上乗せできること
ちびウルフ申請してから認定が出るまで1か月くらいかかると聞きました。その間はサービスを使えないんですか?
リハウルフ使えます。介護保険法は「要介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる」と定めています。認定を待たずに暫定のケアプランでサービスを開始できるのは、この条文が根拠です。ただし想定より軽い認定が出ると自己負担が発生するので、そこは事前に説明を受けてください。
介護保険とは?
介護保険は、加齢に伴う病気などで介護が必要になった人を、社会全体で支えるための社会保険制度です。2000年(平成12年)に始まりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険者(運営主体) | 市町村および特別区 |
| 被保険者 | 40歳以上の人 |
| 財源 | 保険料と公費 |
| 給付を受けるための手続き | 要介護認定の申請 |
| 利用者負担 | 原則1割(所得に応じて2割・3割) |
被保険者は2種類ある
介護保険法第9条は、被保険者を次のとおり定めています。
「一 市町村の区域内に住所を有する六十五歳以上の者(以下「第一号被保険者」という。)
二 市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)」
| 区分 | 年齢 | サービスを使える条件 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 原因を問わず、要介護・要支援と認定されたとき |
| 第2号被保険者 | 40歳以上65歳未満の医療保険加入者 | 特定疾病が原因で要介護・要支援と認定されたとき |
第2号被保険者は、特定疾病(16種類)が原因である場合に限られます。交通事故による障害では、40代・50代の方は介護保険を使えません。
なお第9条第2号は「医療保険加入者」と限定しています。生活保護を受けていて医療保険に加入していない40〜64歳の方は、第2号被保険者になりません。
法第10条は、資格取得の時期を「当該市町村の区域内に住所を有する医療保険加入者が四十歳に達したとき」としています。
手続きは不要で、40歳の誕生日の前日に自動的に被保険者になります。医療保険料と一緒に介護保険料が引かれ始めるのはこのためです。
詳しくは 介護保険の対象者は?申請できる人の条件を厚労省基準で解説、特定疾病の一覧は 介護保険の特定疾病一覧16種類 をご覧ください。
申請から利用までの流れ
- 市町村の窓口に要介護認定を申請する(本人・家族のほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者による代行も可能)
- 市町村の認定調査員が心身の状況を訪問調査する
- 市町村が主治医意見書を主治医に依頼する
- 調査結果をコンピュータで判定する(一次判定)
- 介護認定審査会が一次判定と主治医意見書をもとに審査・判定する(二次判定)
- 市町村が要介護状態区分を決定し、被保険者証を返付する
- ケアマネジャー(要支援は地域包括支援センター)がケアプランを作成する
- サービス事業者と契約し、利用を開始する
認定は申請した日にさかのぼる
法第27条第8項は、次のとおり定めています。
「要介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる」
つまり認定結果が出る前でも、申請日以降のサービス利用は保険給付の対象になります。これが「暫定ケアプラン」でサービスを先に始められる根拠です。
ただし注意点があります。暫定プランは、出るであろう要介護度を見込んで組みます。実際の認定が想定より軽く出た場合、支給限度額を超えた分は全額自己負担になります。
担当したケースでも、要介護2を見込んで組んだプランに対して要介護1の認定が出て、超過分の説明に苦労したことがあります。急いで始める必要があるときほど、限度額の見込みを控えめに置いてください。(この運用に関する記述は筆者の実務経験にもとづく整理です)
申請から30日以内が原則
法第27条第11項は、処分の期限を定めています。
「第一項の申請に対する処分は、当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない。ただし、当該申請に係る被保険者の心身の状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、当該申請のあった日から三十日以内に、当該被保険者に対し、当該申請に対する処分をするためになお要する期間(処理見込期間)及びその理由を通知し、これを延期することができる」
ここで見落とされがちなのが、延期する場合であっても「30日以内に」理由と見込み期間を通知しなければならないという点です。黙って遅らせることは認められていません。
30日を過ぎて通知もないとき
法第27条第12項は、さらに踏み込んでいます。
「第一項の申請をした日から三十日以内に当該申請に対する処分がされないとき、若しくは前項ただし書の通知がないとき、又は処理見込期間が経過した日までに当該申請に対する処分がされないときは、当該申請に係る被保険者は、市町村が当該申請を却下したものとみなすことができる」
「却下したものとみなすことができる」とは、処分がないまま放置された状態でも、却下されたものとして扱い、不服申立て(介護保険審査会への審査請求)に進めるという意味です。
実際にはまず市町村に問い合わせるのが先ですが、条文上こうした手段が用意されていることは知っておく価値があります。
申請の具体的な手順や必要書類は 要介護認定の申請方法は?流れ・必要書類・かかる期間を解説、要介護度の区分は 要介護認定区分とは? にまとめています。
利用できる介護サービス
介護保険のサービスは、大きく次のように分かれます。
| 区分 | 主なサービス |
|---|---|
| 自宅で受ける | 訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問入浴介護 |
| 通って受ける | 通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア) |
| 泊まる | 短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ) |
| 組み合わせ | 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護 |
| 住まい | 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、特定施設入居者生活介護 |
| 環境を整える | 福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修 |
| 計画をつくる | 居宅介護支援(ケアプラン作成) |
要支援1・2の方は「介護予防」のつくサービスと、市町村が行う総合事業を利用します。ケアプランの作成先も、要介護は居宅介護支援事業者、要支援は地域包括支援センターと分かれます。
サービスごとの内容は 介護サービス一覧|種類・内容を家族向けにやさしく解説、施設の違いは 介護施設と老人ホームの違いは? をご覧ください。
自己負担と支給限度額
法第41条第4項は、居宅介護サービス費の額を、厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額の「百分の九十に相当する額」と定めています。つまり原則は保険給付9割・自己負担1割です。
一定以上の所得がある方は2割、さらに高い所得の方は3割を負担します。
| しくみ | 内容 | 詳細記事 |
|---|---|---|
| 自己負担割合 | 原則1割、所得に応じて2割・3割 | 介護保険の自己負担割合とは |
| 区分支給限度基準額 | 要介護度ごとに1か月の上限が決まっている | 介護保険の支給限度額とは? |
| 高額介護サービス費 | 1か月の自己負担が上限を超えたら払い戻される | 高額介護サービス費とは? |
| 負担限度額認定 | 施設の食費・居住費が軽減される | 介護保険負担限度額認定証とは? |
支給限度額は市町村が上乗せできる
区分支給限度基準額は国が定めますが、法第43条第3項に例外があります。
「市町村は、前項の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、第一項の居宅介護サービス費等区分支給限度基準額に代えて、その額を超える額を、当該市町村における居宅介護サービス費等区分支給限度基準額とすることができる」
つまり支給限度額は全国一律ではありません。条例で上乗せしている市町村では、国の基準より多く使えます。
ただし上乗せ分の財源は第1号被保険者の保険料でまかなわれるため、実施している自治体は限られます。「限度額はいくらか」を調べるときは、国の基準額だけでなく、お住まいの市町村の取扱いも確認してください。
介護保険でよくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 65歳にならないと使えない | 40〜64歳でも特定疾病が原因なら使える |
| 認定が出るまでサービスは使えない | 認定は申請日にさかのぼるため、暫定プランで開始できる |
| 支給限度額は全国同じ | 市町村が条例で上乗せできる |
| 限度額を超えたら使えない | 使えるが、超過分は全額自己負担になる |
| 申請は本人か家族しかできない | 地域包括支援センターや居宅介護支援事業者が代行できる |
| 要支援でもケアマネに頼む | 要支援のケアプランは地域包括支援センターが担当する |
ちびウルフまだ元気なので、申請はもう少し先でもいいですよね?
リハウルフ認定には時間がかかるので、必要になってからでは間に合わないことがあります。処分は30日以内が原則ですが、延期の通知が来ることは珍しくありません。退院の見込みが立った段階、生活に不安が出てきた段階で相談しておくと、必要になったときに動けます。まずは地域包括支援センターに聞いてみてください。
よくある質問
介護保険は何歳から加入しますか?
40歳からです。介護保険法第10条は、医療保険加入者が40歳に達したときに被保険者の資格を取得すると定めています。手続きは不要です。
40代でも介護保険のサービスを使えますか?
使えます。ただし第2号被保険者は、特定疾病が原因で要介護・要支援と認定された場合に限られます。
認定が出る前にサービスを使えますか?
使えます。要介護認定は申請のあった日にさかのぼって効力を生じます。ただし想定より軽い認定が出た場合、支給限度額を超えた分は全額自己負担になります。
認定はどのくらいで出ますか?
申請のあった日から30日以内が原則です。心身の状況の調査に日時を要する等の特別な理由がある場合は、30日以内に処理見込期間と理由を通知したうえで延期できます。
30日を過ぎても連絡がない場合はどうすればいいですか?
まず市町村に確認してください。法律上は、30日以内に処分がされず延期の通知もない場合、申請を却下したものとみなして不服申立てに進むことができます。
誰が申請できますか?
本人や家族のほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者などが代行できます。
自己負担は何割ですか?
原則1割です。法第41条は保険給付の額を費用の額の100分の90と定めています。一定以上の所得がある方は2割または3割を負担します。
支給限度額は全国共通ですか?
共通ではありません。市町村は条例で定めることにより、国の基準額を超える額を自らの支給限度基準額とすることができます。
限度額を超えたらサービスは使えませんか?
使えますが、超えた分は全額自己負担になります。
要支援でもケアマネジャーがつきますか?
要支援のケアプラン(介護予防サービス計画)は、原則として地域包括支援センターが作成します。要介護の場合は居宅介護支援事業者のケアマネジャーが担当します。
- 介護保険の保険者は市町村および特別区
- 第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者
- 資格取得は40歳に達したときで、手続きは不要
- 第2号被保険者は特定疾病が原因の場合に限りサービスを使える
- 医療保険に加入していない40〜64歳は第2号被保険者にならない
- 要介護認定は申請のあった日にさかのぼって効力を生ずる
- 暫定ケアプランで先にサービスを始められる根拠がこれ
- 想定より軽い認定が出ると、超過分は全額自己負担になる
- 申請に対する処分は30日以内が原則
- 延期する場合も30日以内に理由と処理見込期間の通知が必要
- 30日以内に処分も通知もなければ、却下したものとみなして不服申立てができる
- 自己負担は原則1割、所得に応じて2割・3割
- 区分支給限度基準額は市町村が条例で上乗せできる
- 限度額を超えても使えるが、超過分は全額自己負担
※本記事の制度の骨格は、介護保険法の条文にもとづいて整理したものです。自己負担割合の判定基準、支給限度基準額の具体的な単位数、高額介護サービス費の上限額などは、政令・省令・告示で定められており、改定によって変わります。最新の金額は各詳細記事および厚生労働省の公表資料でご確認ください。支給限度基準額の上乗せの有無、申請窓口の名称、代行申請の取扱いは市町村によって異なるため、お住まいの市町村にご確認ください。暫定ケアプランの運用や限度額の見込みの立て方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。
の人員基準を解説!厚生労働省の資料をもとに-640x360.png)




