介護保険料を滞納するとどうなる?1年・1年半・2年の給付制限

介護保険料を滞納すると、介護サービスを使うときに罰則のような「給付制限」がかかります。1年で償還払い、1年6か月で給付の一時差止め、2年を過ぎて時効になった分は自己負担が3割(3割負担の人は4割)に上がるという3段階です。
特に3段階目は、あとから滞納分を払いたくても払えません。この記事では、介護保険法第66条〜第69条、施行規則、施行令の原文を確認して、制限の中身と期間、避ける方法を整理しました。
この記事でわかること
- 介護保険料を滞納したときの3段階の給付制限
- 2年の時効と、自己負担が上がる期間の決まり方
- 減額期間中は高額介護サービス費・負担限度額認定も使えないこと
- 40〜64歳(第2号被保険者)の場合の扱い
- 制限がかからない「特別の事情」と、滞納しやすい人
介護保険料を滞納するとどうなる?
介護保険料の滞納には、督促や延滞金といった一般的な扱いに加えて、介護保険ならではの「給付制限」があります。要介護認定を受けてサービスを使う段階になって初めて影響が出るのが特徴です。
65歳以上(第1号被保険者)の場合、制限は滞納の期間に応じて次の3段階で強くなります。
| 滞納の期間 | 給付制限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1年以上 | 償還払いへの変更(いったん全額を払い、後から9割などが戻る) | 法第66条・施行規則第99条 |
| 1年6か月以上 | 保険給付の一時差止め。差し止めた給付から滞納保険料を差し引くこともある | 法第67条・施行規則第103条 |
| 2年以上(時効で消滅) | 一定期間、自己負担が3割(3割負担の人は4割)に上がり、高額介護サービス費などが支給されない | 法第69条・第200条 |
1段階目と2段階目は、滞納分を納めれば解除されます。3段階目だけは、納めて解消することができません。ここがいちばん重い部分です。
1年を過ぎたら|償還払いへの変更
保険料の納期限から1年が過ぎても納めていないと、被保険者証に「支払方法変更の記載」がされます。
介護保険法 第66条第1項(原文の要点)
保険料を滞納している第1号被保険者である要介護被保険者等が、納期限から厚生労働省令で定める期間(一年間:施行規則第99条)が経過するまでに納付しない場合、特別の事情があると認める場合を除き、「当該要介護被保険者等に対し被保険者証の提出を求め、当該被保険者証に(中略)支払方法変更の記載をするものとする。」
通常、介護サービスの利用者は1〜3割だけを事業所に払い、残りは市町村から事業所に直接支払われます(法定代理受領)。支払方法変更の記載がされると、このしくみが使えなくなり、サービス費の10割をいったん事業所に払うことになります。後から市町村に申請すれば、保険給付の分が戻ります。
デイサービスとヘルパーで月20万円分のサービスを使っている方なら、毎月20万円を立て替える計算です。結果としてサービスを減らさざるを得なくなる、というのがこの制限の実質的な影響です。
1年6か月を過ぎたら|給付の一時差止め
滞納が1年6か月を過ぎると、償還払いで戻ってくるはずの保険給付が止められます。
介護保険法 第67条(原文の要点)
納期限から厚生労働省令で定める期間(一年六月間:施行規則第103条)が経過するまでに保険料を納付しない場合、「保険給付の全部又は一部の支払を一時差し止めるものとする。」
なお滞納している保険料を納付しない場合は、あらかじめ通知して「当該一時差止に係る保険給付の額から当該要介護被保険者等が滞納している保険料額を控除することができる。」
つまり、立て替えた10割のうち戻るはずの9割が戻らず、その中から滞納分が差し引かれることもあります。施行規則第105条で、差し止める額は滞納額に比べて「著しく高額なものとならないようにする」とされていますが、家計への影響は大きくなります。
ちびウルフ元気なうちは介護サービスを使わないし、保険料は後回しでもいいかな…
リハウルフそこが落とし穴です。給付制限は「サービスを使うとき」に効いてきます。ケアマネとして困るのは、脳梗塞で急に要介護になった方の滞納が退院直前にわかるケースです。昔の未納は取り戻せないので、早めに相談してほしいところです。
2年を過ぎたら|時効と自己負担の引き上げ
介護保険料を徴収する権利は、2年で時効により消滅します(法第200条)。時効になった保険料は、本人が払いたいと申し出ても、もう納めることができません。
その代わりに、要介護認定を受けたときに、時効で消えた期間に応じて「給付額減額等の記載」がされます。
介護保険法 第69条(原文の要点)
認定をした場合に、第1号被保険者である要介護被保険者等に「保険料徴収権消滅期間」があるときは、被保険者証に、介護給付等の額の減額を行う旨並びに高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費及び特定入所者介護サービス費の支給を行わない旨並びにこれらの措置がとられる期間の記載をするものとする。
減額期間中の給付は、「百分の九十」とあるのを「百分の七十」と、2割負担の人は「百分の八十」を「百分の七十」と、3割負担の人は「百分の七十」を「百分の六十」とする。
| 本来の負担割合 | 減額期間中の負担割合 |
|---|---|
| 1割 | 3割 |
| 2割 | 3割 |
| 3割 | 4割 |
さらに重いのが、高額介護サービス費と、施設の食費・居住費を下げる特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)が支給されないことです。低所得の方ほど影響が大きく、特養の入所費用が一気に上がることもあります。
なお、ケアプランを作る居宅介護支援(居宅介護サービス計画費)は減額の対象から除かれています。ケアマネジャーの利用に自己負担がかかるようにはなりません。
減額期間の長さの決まり方
減額期間は、認定を受けた日の10年前の年度から認定の年度までのうち、時効で消えた期間をもとに計算します(施行令第33条・第34条)。
給付額減額期間の算定(施行令第34条の要点)
保険料徴収権消滅期間 ×(保険料徴収権消滅期間 ÷(保険料徴収権消滅期間+保険料納付済期間))× 1/2 × 12 = 減額期間の月数
たとえば、10年間のうち時効で消えた期間が2年、納めた期間が8年なら、2×(2÷10)×1/2×12=2.4か月分です。10年間まったく納めていなければ、10×1×1/2×12=60か月、つまり5年間になります。未納の期間が長いほど、減額期間は急に長くなるしくみです。
※端数の扱いは省令で定められています。実際の期間は市町村からの通知で確認してください。
40〜64歳(第2号被保険者)の場合
40〜64歳の方の介護保険料は、健康保険・国民健康保険の保険料と一緒に納めています。そのため、介護保険料だけを滞納するという形にはなりません。
第2号被保険者が要介護認定を受けてサービスを使う場合、医療保険の保険料(国民健康保険税を含む)に未納があると、保険給付の一時差止めの対象になります(法第68条)。国民健康保険の滞納がある方は、介護保険にも影響が出ると考えてください。
給付制限がかからない「特別の事情」
滞納していても、災害など特別の事情があると市町村が認めれば、給付制限はかかりません。施行規則と施行令で、次のような事情が定められています。
- 震災・風水害・火災などで、住宅や家財に著しい損害を受けた
- 世帯の生計を主に支える人が死亡した、重い障害を負った、長期入院した
- 事業の休廃止、事業の著しい損失、失業などで収入が著しく減った
- 干ばつ・冷害などによる農作物の不作や不漁で収入が著しく減った
- 生活保護を受けるようになった
こうした事情で納められないときは、滞納したまま放置せず、市町村の介護保険料の窓口に相談してください。多くの市町村には、条例による保険料の減免や徴収猶予の制度があります。減免は「払えなくなった時点」で相談するのが前提で、時効になった後からでは使えません。
滞納しやすい人と、防ぐ方法
65歳以上の方の保険料は、年金が年額18万円以上あれば原則として年金から天引き(特別徴収)されます。天引きの方が滞納することは通常ありません。
滞納が起きやすいのは、納付書や口座振替で自分で納める「普通徴収」の方です。
- 65歳になったばかりで、年金からの天引きが始まる前の方
- 年金が年額18万円未満の方
- 年度の途中で引っ越した、保険料額が変わったなどで、一時的に普通徴収になった方
- 口座振替の口座が残高不足になっていた方
特に65歳になった直後は、天引きが始まるまでの数か月から1年ほど、納付書で納める期間があります。「年金から引かれているはず」と思い込んで納付書を放置するのが、典型的な滞納のパターンです。口座振替にしておくのが確実です。
ちびウルフ親が滞納していたかどうか、家族はどうやって確かめればいいの?
リハウルフまず被保険者証を見てください。給付制限がかかっていれば、給付制限の欄に記載があります。認定を申請する前なら、市町村の窓口で本人の同意のうえ納付状況を確認できます。時効の2年を過ぎる前に納めておけば、3段階目は避けられます。
65歳以上の保険料の決まり方は75歳以上の介護保険料はいくら?、負担割合のしくみは介護保険の自己負担割合は1割・2割・3割のどれ?で解説しています。
よくある質問
介護保険料を1年滞納するとどうなりますか?
被保険者証に支払方法変更の記載がされ、サービス費の10割をいったん事業所に払い、後から市町村に申請して保険給付分を受け取る償還払いになります。
1年6か月滞納するとどうなりますか?
償還払いで戻るはずの保険給付の全部または一部が一時差し止められます。差し止めた給付から滞納保険料が差し引かれることもあります。
2年以上前の保険料を今から払えますか?
払えません。保険料を徴収する権利は2年で時効により消滅するため、時効になった分は納めることができません。
時効になった期間があると、自己負担は何割になりますか?
減額期間中は、1割・2割負担の方は3割、3割負担の方は4割になります。あわせて高額介護サービス費と負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)も支給されません。
減額期間はどれくらいですか?
認定を受けた日の10年前の年度から認定の年度までのうち、時効で消えた期間と納めた期間の比率で計算されます。10年間まったく納めていなければ60か月(5年)です。
滞納分を納めれば制限は解除されますか?
償還払いと一時差止めは、滞納分を完納すれば解除されます。時効による減額は、納めて解消することができず、減額期間が過ぎるまで続きます。
ケアマネジャーの利用も自己負担がかかりますか?
かかりません。居宅介護支援(居宅介護サービス計画費)は減額の対象から除かれています。
40〜64歳でも給付制限はありますか?
あります。健康保険や国民健康保険の保険料に未納があると、介護保険の給付が一時差し止められることがあります。
払えないときはどうすればいいですか?
滞納する前に市町村の介護保険料の窓口に相談してください。災害や失業などの事情があれば、給付制限がかからないほか、条例による減免や徴収猶予を受けられる場合があります。
まとめ
- 介護保険料の滞納には、1年・1年6か月・2年の3段階の給付制限がある
- 1年で償還払い、1年6か月で給付の一時差止め。完納すれば解除される
- 2年で時効になった分は払えず、認定後に自己負担が3割(3割負担の人は4割)に上がる
- 減額期間中は高額介護サービス費と負担限度額認定も使えない
- 65歳直後や年金18万円未満の普通徴収の方は滞納しやすい。口座振替と早めの相談で防ぐ
参考にした情報
※本記事の給付制限の段階・期間・負担割合・減額期間の計算方法は、介護保険法、介護保険法施行令および施行規則の条文にもとづいて整理したものです。減額期間の計算例は条文の算式で概算したもので、端数の扱いを含む実際の期間は市町村の通知によって確認してください。保険料の減免・徴収猶予の要件、特別の事情の認定、特別徴収(年金天引き)が始まる時期は市町村によって異なります。制度に関する記述は2026年11月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。実際の取扱いについては、お住まいの市町村の介護保険担当窓口にご確認ください。滞納が起きやすいケースに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。






