75歳以上の介護保険料はいくら?後期高齢者医療との違いも解説

75歳になっても、介護保険料の支払いは終わりません。75歳の誕生日で医療保険が後期高齢者医療制度に移るため、「介護保険料もどこかで終わるのでは」と考える方がいますが、そういう仕組みにはなっていません。介護保険料は65歳以上のすべての人に課され、生涯にわたって納め続けることになります。
この記事では、75歳以上の介護保険料について、介護保険法と介護保険法施行令の原文を確認して整理しました。金額の決まり方(令和6年度から標準13段階になっています)、年金からの天引きの基準額、後期高齢者医療保険料との関係、そして滞納したときに何が起きるかまでをまとめています。
- 75歳以上でも介護保険料を払い続ける法的な理由
- 保険料の金額が決まる仕組みと、令和6年度から13段階になった標準区分
- 年金から天引き(特別徴収)になる年金額の基準は年18万円であること
- 介護保険料と後期高齢者医療保険料は別物で、2つとも払うこと
- 年金天引きをやめて口座振替に変えられる場合があること
- 口座振替に変えると家族の税金が安くなる可能性があること
- 低所得の人の保険料が軽減される仕組みと、生活保護受給者の扱い
- 滞納すると高額介護サービス費と補足給付が受けられなくなること
75歳以上の介護保険料とは?払い続ける理由
介護保険の被保険者は、介護保険法第9条で次のように定められています。
- 一 市町村の区域内に住所を有する六十五歳以上の者(以下「第一号被保険者」という。)
- 二 市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)
ここに「何歳まで」という上限は書かれていません。65歳以上であれば、75歳でも90歳でも第1号被保険者であり続けます。そして介護保険法第129条第1項で、市町村は介護保険事業の費用に充てるため保険料を徴収しなければならないと定められ、同条第2項で、その保険料は第1号被保険者に対して課すとされています。
つまり、65歳になった時点から亡くなるまで、介護保険料には終わりがありません。ここが年金保険料(国民年金は原則60歳まで)と大きく違うところで、混同されやすい部分です。
40歳から64歳までとは、納め方がまったく違う
40歳から64歳までの第2号被保険者は、加入している医療保険(健康保険や国民健康保険)の保険料に上乗せされる形で介護保険料を払っています。市町村が直接徴収しているわけではありません。介護保険法第129条第4項は、この点をはっきり書いています。
- 市町村は、第一項の規定にかかわらず、第二号被保険者からは保険料を徴収しない。
65歳になると、この上乗せが終わり、代わりに市町村から直接、第1号被保険者としての介護保険料が課されるようになります。「65歳で保険料が上がった気がする」という声をよく聞きますが、負担者が医療保険から市町村に切り替わり、計算方法そのものが変わるためです。
ちびウルフ75歳になったら後期高齢者医療制度に入るんだよね?だったら介護保険料はそっちに含まれるんじゃないの?
リハウルフそこがいちばん誤解されるところです。後期高齢者医療制度は「医療」の保険で、介護保険とは別の制度です。75歳以降は、介護保険料と後期高齢者医療保険料を2つとも払うことになります。担当したご家庭でも、年金の振込通知を見て「2つ引かれている」と驚かれる方が毎年います。
75歳以上の介護保険料はいくら?金額の決まり方
介護保険料は全国一律ではありません。市町村ごとに「基準額」を決め、その人の所得段階に応じた割合を掛けて計算します。基準額は3年ごとの介護保険事業計画に合わせて設定されます(介護保険法第129条第3項)。同じ年金額でも、住んでいる市町村が違えば保険料は変わります。
令和6年度から標準13段階になった
所得段階の区分は、介護保険法施行令第38条第1項に定められています。ここが近年変わった点で、従来の標準9段階から、標準13段階に細分化されました。高所得層の段階を増やして、低所得層の負担を抑える方向の見直しです。
| 段階 | おもな対象 | 基準額に対する標準割合 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税、住民税非課税世帯で年金収入等が年80万円台前半以下 | 0.455 |
| 第2段階 | 住民税非課税世帯で年金収入等が年120万円以下 | 0.685 |
| 第3段階 | 住民税非課税世帯で第1・第2段階に当たらない人 | 0.69 |
| 第4段階 | 本人が住民税非課税(世帯に課税者あり)で年金収入等が年80万円台前半以下 | 0.90 |
| 第5段階 | 本人が住民税非課税(世帯に課税者あり)で第4段階に当たらない人 | 1.00(基準額) |
| 第6段階 | 本人が住民税課税で、前年の合計所得金額が基準所得金額未満 | 1.20 |
| 第7段階 | 同上(第6段階より所得が高い層) | 1.30 |
| 第8段階 | 同上 | 1.50 |
| 第9段階 | 同上 | 1.70 |
| 第10段階 | 同上 | 1.90 |
| 第11段階 | 同上 | 2.10 |
| 第12段階 | 同上 | 2.30 |
| 第13段階 | 上記のいずれにも当たらない人(最も所得が高い層) | 2.40 |
基準となるのは第5段階です。ここが割合1.00で、市町村が公表している「基準額」がそのまま保険料になります。第1段階の人は基準額の0.455倍、第13段階の人は2.40倍ですから、同じ市町村の中でも5倍以上の開きがあります。
75歳以上の介護保険料の納め方(年金天引きと口座振替)
納め方は2種類あり、どちらになるかは自分では選べないのが原則です。
- 特別徴収=年金からの天引き。介護保険法第135条により、これが原則です
- 普通徴収=納付書や口座振替で市町村に納める方法。特別徴収にならない場合がこちらです
年金が年18万円以上なら天引きになる
天引きの対象になる年金額の基準は、介護保険法施行令第41条にはっきり書かれています。
- 法第百三十四条第一項第一号及び第二項から第六項までに規定する政令で定める額は、十八万円とする。
つまり老齢基礎年金などの年金額が年18万円(月あたり1万5,000円)以上あれば、原則として年金から天引きされます。年18万円未満の場合は天引きができないため、納付書などで自分で納める普通徴収になります。
なお、年度の途中で65歳になった人や、他の市町村から転入した人は、年金保険者と市町村のやり取りに時間がかかるため、しばらくは普通徴収が続き、あとから天引きに切り替わります。これは滞納ではないので、届いた納付書はそのまま納めてください。
介護保険料と医療保険料の合計が年金の半分を超えるとき
ここは実務でよく問い合わせを受ける部分です。高齢者の医療の確保に関する法律施行令第23条は、後期高齢者医療保険料を特別徴収しない場合を定めていて、その第1号が次の内容です。
- 同一の月に徴収されると見込まれる後期高齢者医療保険料と介護保険料の合計額が、その月に支払われる年金額の2分の1に相当する額を超える被保険者
2つの保険料の合計が年金の半分を超えるときは、後期高齢者医療保険料のほうが天引きから外れ、普通徴収になります。年金が少なく保険料負担が重い人ほど、この扱いになりやすいということです。「介護保険料は引かれているのに、医療保険料は納付書で来る」という状態は、この規定によるものです。
口座振替に変更できる場合がある
同じ施行令第23条の第3号には、口座振替により保険料を納付する旨を申し出た被保険者について、市町村が認めれば普通徴収にできると書かれています。これは後期高齢者医療保険料の規定ですが、実務上は介護保険料についても、市町村によって口座振替への変更を受け付けている場合があります。
介護保険料と後期高齢者医療保険料の違い
75歳以降は2つの保険料を払うことになります。混同されやすいので、性格の違いを整理しておきます。
| 項目 | 介護保険料 | 後期高齢者医療保険料 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 介護保険法 | 高齢者の医療の確保に関する法律 |
| 何のための保険料か | 介護サービスの費用 | 医療(診療・入院・薬)の費用 |
| 対象年齢 | 65歳以上(第1号被保険者) | 75歳以上(65歳以上で一定の障害がある人を含む) |
| 決めるところ | 市町村 | 都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合 |
| 料率の考え方 | 基準額×所得段階の割合 | 均等割額+所得割額 |
| 同じ都道府県内での差 | 市町村ごとに違う | 原則として広域連合の全区域で均一 |
| 生活保護受給者 | 被保険者のまま(第1段階) | 適用除外(被保険者にならない) |
とくに最後の行は見落とされがちです。高齢者の医療の確保に関する法律第51条第1号は、生活保護を受けている世帯に属する者を後期高齢者医療の被保険者としないと定めています。一方、介護保険では生活保護受給者も第1号被保険者のままで、保険料は施行令第38条第1項第1号により第1段階(0.455)となります。医療は生活保護の医療扶助、介護保険料は生活扶助の介護保険料加算から支払われるという整理です。
介護保険料が軽くなる場合
低所得の人への公費による軽減
第1段階から第3段階に当たる住民税非課税世帯の人については、施行令上の割合(0.455/0.685/0.69)そのものが、公費を投入して低く設定されたものです。申請しなくても、市町村が住民税の課税状況と年金収入等から判定して適用します。
災害などによる減免
介護保険法は、市町村が条例で保険料の減免や徴収猶予を定められるようにしています。実際に多くの市町村が、次のような場合の減免制度を条例で設けています。
- 震災・風水害・火災などで住宅や家財に著しい損害を受けたとき
- 世帯の生計を主に維持している人が 死亡・長期入院・失業などで収入が著しく減ったとき
- 事業の廃止や休止により収入が著しく減ったとき
これらは申請しないと適用されません。自動的には減りません。該当しそうな事情があるときは、まず市町村の介護保険担当に相談してください。
介護保険料を滞納するとどうなる
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。介護保険料の滞納は、期間に応じて段階的に不利益が重くなります。
おおむね1年で「いったん全額払い」に変わる
介護保険法第66条は、保険料を滞納している要介護被保険者等について、被保険者証に「支払方法変更の記載」をすると定めています。この記載がされると、サービスを使ったときに、いったん費用の全額を事業所に支払い、あとで市町村に申請して払い戻しを受ける形(償還払い)に変わります。1割負担で済んでいたものが、窓口ではいったん10割になるということです。
さらに滞納が続くと払い戻しが止まる
介護保険法第67条は、滞納が続く場合に保険給付の全部または一部の支払を一時差し止めると定めています。加えて同条第3項では、差し止めた給付から滞納している保険料額を差し引くことができるとされています。つまり、払い戻されるはずのお金が保険料に充てられます。
2年たつと取り返しがつかなくなる
介護保険法第200条第1項により、保険料を徴収する権利は2年で時効消滅します。一見すると「2年逃げ切れば払わなくてよい」ように読めますが、実際は逆で、ここからが最も重い不利益です。第69条により、時効で消滅した期間がある人は、被保険者証に「給付額減額等の記載」がされ、一定期間、自己負担の割合が引き上げられます。
つまり、自己負担の上限を定める高額介護サービス費も、施設入所時の食費・居住費を軽くする補足給付も、この期間は使えません。負担割合が上がるだけでなく、負担を抑える仕組みが同時に止まるため、実際の支払いは何倍にもなります。特別養護老人ホームなどへの入所を考えている場合、影響は非常に大きくなります。
なお、災害その他の政令で定める特別の事情があると認められるときは、これらの措置はとられません(第66条第1項ただし書、第69条第1項ただし書)。払えない事情があるなら、放置せずに市町村へ相談することが、結果的にいちばん負担を軽くします。
ちびウルフ年金から天引きされてるなら、滞納しようがないよね?
リハウルフ天引きされている間はそのとおりです。問題は、天引きが止まるときです。転居した直後、年金の受給が変わったとき、口座振替に切り替えた直後などは普通徴収になります。この納付書が郵便物に紛れて滞納になっているケースを、現場で何度も見ています。ご家族が郵便物を確認できる状態にしておくことが、いちばんの予防になります。
よくある質問
75歳になったら介護保険料は安くなりますか?
年齢を理由に安くなる仕組みはありません。介護保険料は所得段階で決まるため、75歳を境に変わるのは、その年の所得が変わった場合だけです。
介護サービスを一度も使っていなくても払う必要がありますか?
あります。介護保険は、使った人だけが負担する仕組みではなく、社会全体で費用を分担する仕組みです。介護保険法第129条は、サービスの利用の有無にかかわらず第1号被保険者に保険料を課すと定めています。
夫婦2人とも75歳以上です。保険料は世帯で1つですか?
1人ずつかかります。介護保険料は世帯単位ではなく個人単位で課されます。ただし所得段階の判定では、住民税非課税かどうかを世帯で見る段階(第1〜第3段階)があるため、世帯の状況が金額に影響します。
年金が少ないのですが、天引きされますか?
年金額が年18万円未満であれば天引きにはなりません(介護保険法施行令第41条)。納付書や口座振替による普通徴収になります。
年金天引きをやめて口座振替にできますか?
市町村によって取扱いが異なります。後期高齢者医療保険料については、口座振替の申出により普通徴収にできる旨が高齢者の医療の確保に関する法律施行令第23条第3号に定められています。介護保険料の取扱いは市町村に確認してください。
子どもが親の介護保険料を払うと、子どもの税金は安くなりますか?
実際に支払った人が社会保険料控除を受けられるため、口座振替などで子が支払っていれば、子の控除の対象になり得ます。ただし年金天引きのままでは本人しか控除を受けられません。具体的な適用は税務署にご確認ください。
施設に入所したら介護保険料はどうなりますか?
引き続きかかります。ただし、住所地特例により、入所前の市町村が保険者となる場合があり、その市町村の保険料が適用されます。
亡くなった後の保険料はどうなりますか?
亡くなった月の前月分までで精算されます。天引きが止まるまで時間差があるため、納めすぎた分は還付され、不足があれば相続人に請求されます。
保険料が高くて払えません。どうすればよいですか?
まず市町村の介護保険担当に相談してください。災害や収入の著しい減少などの事情があれば、条例による減免や徴収猶予の対象になることがあります。滞納したまま2年が過ぎると、高額介護サービス費や補足給付が受けられなくなるため、放置がいちばん不利になります。
- 介護保険法第9条第1号により、65歳以上はすべて第1号被保険者で、年齢の上限はない
- したがって75歳以上でも介護保険料は続き、生涯にわたって納めることになる
- 40〜64歳の第2号被保険者からは市町村は保険料を徴収しない(第129条第4項)
- 保険料は市町村が決める基準額に、所得段階の割合を掛けて計算する
- 所得段階は介護保険法施行令第38条第1項で、令和6年度から標準13段階になった
- 第5段階が基準額(割合1.00)で、第1段階0.455から第13段階2.40まで5倍以上の幅がある
- 市町村は独自にさらに細かい段階を設定できるため、13段階とは限らない
- 年金が年18万円以上なら年金天引き(特別徴収)が原則(施行令第41条)
- 介護保険料と後期高齢者医療保険料の合計が年金の2分の1を超えると、医療保険料は普通徴収になる
- 口座振替に変えると、支払った家族が社会保険料控除を受けられる可能性がある
- 介護保険料と後期高齢者医療保険料は別制度で、75歳以降は2つとも払う
- 生活保護受給者は後期高齢者医療の適用除外だが、介護保険では第1段階の被保険者のまま
- 滞納すると、償還払い化(第66条)、支払の一時差止(第67条)と段階的に重くなる
- 2年で時効消滅すると給付額減額となり、高額介護サービス費と補足給付が受けられなくなる
- 介護保険法(平成9年法律第123号)e-Gov法令検索(第9条、第66条、第67条、第69条、第129条、第131条、第135条、第200条)
- 介護保険法施行令(平成10年政令第412号)e-Gov法令検索(第38条、第41条)
- 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)e-Gov法令検索(第50条、第51条、第104条、第107条)
- 高齢者の医療の確保に関する法律施行令(平成19年政令第318号)e-Gov法令検索(第22条、第23条)
※本記事の制度に関する記述は、介護保険法・介護保険法施行令・高齢者の医療の確保に関する法律およびその施行令にもとづいて整理したものです。実際の保険料額、所得段階の区分数、減免の要件、口座振替への変更の可否は市町村(後期高齢者医療は広域連合)によって異なります。ご自身の保険料については、お住まいの市町村の案内および納入通知書をご確認ください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。税の取扱いに関する記述は一般的な整理であり、個別の適用については税務署にご確認ください。




