介護医療院の特別診療費とは?

介護医療院の特別診療費は、他の介護報酬とはまったく違う算定方法をとる費用です。単位数に地域区分の単価を掛けるのではなく、「別に厚生労働大臣が定める単位数に10円を乗じて得た額」を算定します。
この「10円を乗じる」という書き方には、実務上の意味があります。地域区分による1単位あたりの単価の上乗せが効きません。1級地でも、その他の地域でも、特別診療費の額は同じになります。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスのソの条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 特別診療費が「単位数×10円」で算定されること
- 地域区分の影響を受けないこと
- 対象が「日常的に必要な医療行為として別に厚生労働大臣が定めるもの」であること
- 届出が必要であること
- 緊急時施設診療費との違い
- 特別介護医療院サービス費では算定できないこと
ちびウルフなぜ介護医療院だけ、こんな算定方法なんですか?
リハウルフ介護医療院が療養病床から転換してできた施設だからです。医療保険の診療報酬に近い仕組みを、介護保険の枠組みの中に残す必要がありました。指導管理やリハビリテーションといった医療行為を、包括報酬とは別に評価するための仕組みが特別診療費です。
介護医療院の特別診療費とは?
介護医療院の特別診療費は、入所者に対して行う「日常的に必要な医療行為」を、基本報酬とは別に評価する費用です。
介護医療院の基本報酬は、日常的な医学管理や看護を含んだ包括報酬になっています。しかし実際には、指導管理やリハビリテーションなど、入所者ごとに必要性も頻度も異なる医療行為があります。それらを一律の包括報酬に押し込めると、必要な人に必要な医療が提供されにくくなります。
特別診療費は、その部分を出来高的に評価する仕組みです。療養病床時代の「特定診療費」を引き継いだ性格を持っています。
特別診療費の単位数
(略)都道府県知事に対し届出を行った介護医療院において、入所者に対して、指導管理、リハビリテーション等のうち日常的に必要な医療行為として別に厚生労働大臣が定めるものを行った場合に、別に厚生労働大臣が定める単位数に10円を乗じて得た額を算定する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 行為ごとに別の告示で定められている |
| 金額の計算 | 単位数 × 10円 |
| 地域区分 | 影響しない(一律10円) |
| 届出 | 必要(都道府県知事) |
通常の介護報酬は、単位数に地域区分ごとの1単位あたりの単価(10円〜11.40円など)を掛けて金額を出します。人件費水準の地域差を反映させるためです。
しかし特別診療費は条文が「10円を乗じて得た額」と固定しています。つまり、
- 1級地の施設でも、その他の地域の施設でも、同じ行為なら同じ額
- 地域区分の上乗せは効かない
医療保険の診療報酬が全国一律(1点10円)であることに合わせた設計と読めます。請求システム上の扱いも通常の単位数とは分けて処理されるため、集計時に混同しないよう注意してください。
特別診療費の算定要件
- 都道府県知事に対して届出を行っていること
- 入所者に対して行う行為であること
- その行為が「指導管理、リハビリテーション等のうち日常的に必要な医療行為として別に厚生労働大臣が定めるもの」に該当すること
対象となる行為は別告示で定められている
条文は具体的な行為名を列挙せず、「別に厚生労働大臣が定めるもの」としています。対象となる項目とその単位数は、別の告示で定められています。
算定にあたっては、その告示で自施設が行っている行為が対象に含まれるかを確認してください。本記事では、条文で確認できない項目の具体名は挙げていません。
届出が前提
「届出を行った介護医療院において」とあるため、届出なしに算定することはできません。項目ごとに届出が必要かどうかを含め、都道府県に確認してください。
特別診療費の注意点
介護医療院サービスの注16は、特別介護医療院サービス費(ハ)またはユニット型特別介護医療院サービス費(ヘ)を算定している場合に算定しない加算を列挙しており、その中に「ソ」=特別診療費が含まれています。
人員基準を満たさず特別介護医療院サービス費を算定している施設は、基本報酬が下がるだけでなく、特別診療費も算定できなくなります。
緊急時施設診療費との違い
| 費用 | 対象となる場面 | 算定方法 |
|---|---|---|
| 特別診療費 | 日常的に必要な医療行為(指導管理、リハビリテーション等) | 定める単位数×10円 |
| 緊急時施設診療費 | 病状が著しく変化した場合の緊急の医療行為 | 緊急時治療管理518単位/日、特定治療は点数×10円 |
日常的な医療は特別診療費、緊急時の医療は緊急時施設診療費という切り分けです。どちらも介護医療院に固有の仕組みで、特養や老健にはありません。
処遇改善加算の計算基礎に含まれる
介護職員等処遇改善加算は「イからケまでにより算定した単位数」に率を乗じます。ソ(特別診療費)はこの範囲に含まれます。
ただし特別診療費は「単位数×10円」で額が決まる特殊な費用のため、処遇改善加算の計算基礎にどう反映されるかは請求実務上の論点になります。都道府県および請求ソフトの仕様を確認してください。
特別診療費のQ&A
なぜ「10円を乗じる」のですか?
条文がそう定めているためです。結果として地域区分による単価の違いが影響せず、全国一律の額になります。
地域区分の上乗せは効きますか?
効きません。1級地でもその他の地域でも同じ額です。
どんな行為が対象ですか?
「指導管理、リハビリテーション等のうち日常的に必要な医療行為として別に厚生労働大臣が定めるもの」です。具体的な項目と単位数は別の告示で定められています。
届出は必要ですか?
必要です。条文は「届出を行った介護医療院において」と定めています。
特別介護医療院サービス費でも算定できますか?
できません。注16により、算定できない項目に「ソ」(特別診療費)が含まれています。
緊急時施設診療費とどう違いますか?
特別診療費は日常的に必要な医療行為、緊急時施設診療費は病状が著しく変化した場合の緊急の医療行為が対象です。
特養や老健にもありますか?
ありません。介護医療院(および療養病床系)に固有の仕組みです。
処遇改善加算の計算に含まれますか?
条文上「イからケまで」の範囲に含まれます。ただし計算方法は請求実務上の論点になるため、都道府県および請求ソフトの仕様を確認してください。
- 特別診療費は「別に厚生労働大臣が定める単位数×10円」で算定する
- 地域区分による単価の上乗せは効かず、全国一律の額になる
- 対象は「指導管理、リハビリテーション等のうち日常的に必要な医療行為として別に厚生労働大臣が定めるもの」
- 具体的な項目と単位数は別の告示で定められている
- 算定には都道府県知事への届出が必要
- 特別介護医療院サービス費を算定している場合は算定できない
- 緊急時施設診療費は「緊急時」の医療行為が対象で、別の仕組み
- 特養・老健にはない、介護医療院に固有の費用
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスのソ(特別診療費)、ツ(緊急時施設診療費)、フ(介護職員等処遇改善加算)、注16(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
※本記事は、厚生労働省の告示(指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準)の条文にもとづいて整理したものです。特別診療費の対象となる具体的な項目および単位数は別の告示で定められており、本記事では確認できていないため項目名を挙げていません。算定にあたっては、必ず当該告示の原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。届出の要否・方法、処遇改善加算の計算基礎への反映方法についても指定権者および請求ソフトの仕様を確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。制度の成り立ちに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の理解にもとづく整理です。




