介護医療院と老健の看取りの違い|なぜ介護医療院に加算がないのか

介護医療院と老健の看取り対応で、いちばん大きな違いはここです。介護医療院には、看取りやターミナルケアに対する加算が存在しません。
老健にはターミナルケア加算があり、死亡日には1日1,900単位が加算されます。特養にも看取り介護加算があります。しかし告示第21号の介護医療院サービスの部分を通して見ても、看取りやターミナルケアという名称の加算は1つも置かれていません。
これは「介護医療院は看取りをしない」という意味ではありません。むしろ逆で、看取りを含む医療が基本サービス費に織り込まれているという設計です。介護保険法第8条第29項は、介護医療院を「主として長期にわたり療養が必要である者」に対して「療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療」を行う施設と定義しています。
この記事では、介護保険法、告示第21号、各施設の人員基準を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 介護医療院に看取り・ターミナルケアの加算がないこと
- それが「看取りをしない」という意味ではない理由
- 介護保険法が定める3施設の目的の違い(条文の原文)
- 老健のターミナルケア加算の単位数(日数区分別)
- 特養の看取り介護加算との比較
- 介護医療院の医師配置が手厚いこと
- 老健の医師配置との差
- 「加算がある=手厚い」ではない理由
- 施設を選ぶときに確認すべきこと
- 退所日以降は加算が算定できないという共通ルール
3つの施設の目的は法律で書き分けられている
看取りの違いを理解する出発点は、介護保険法第8条の定義です。
| 施設 | 法律上の対象者 | 提供する内容 |
|---|---|---|
| 介護老人福祉施設 (特養) | 特別養護老人ホームに入所する要介護者 | 入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話 |
| 介護老人保健施設 (老健) | 主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者 | 看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話 |
| 介護医療院 | 主として長期にわたり療養が必要である者 | 療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話 |
- 特養は生活の場。提供内容に「医療」という語がない
- 老健は在宅復帰の場。「居宅における生活を営むことができるようにするための支援」が目的
- 介護医療院は長期療養の場。「療養上の管理」が先頭に置かれている
老健と介護医療院の条文を並べると、違いは明確です。介護医療院にだけ「療養上の管理」という文言が入っています。
そして老健には「居宅における生活を営むことができるようにするための支援」という目的が明示されている。老健は帰るための施設、介護医療院は療養を続ける施設という書き分けです。
看取りの位置づけが違うのは、この目的の差から来ています。
老健にはターミナルケア加算がある
告示第21号 介護保健施設サービス 注18です。単位数は施設の類型によって2通りあります。
| 期間 | イ(1)(4)・ロ(1)(4) | イ(2)(3)・ロ(2)(3) |
|---|---|---|
| 死亡日以前31日以上45日以下 | 1日72単位 | 1日80単位 |
| 死亡日以前4日以上30日以下 | 1日160単位 | 1日160単位 |
| 死亡日の前日および前々日 | 1日910単位 | 1日850単位 |
| 死亡日 | 1日1,900単位 | 1日1,700単位 |
いずれも死亡月に所定単位数に加算されます。そして重要な但し書きがあります。
ただし、退所した日の翌日から死亡日までの間は、算定しない。
退所後に自宅や病院で亡くなった場合、退所日の翌日以降は加算されません。算定できるのは在所していた期間だけ、という整理です。
特養の看取り介護加算との比較
| 期間 | 老健 ターミナルケア加算 | 特養 看取り介護加算(Ⅰ) | 特養 看取り介護加算(Ⅱ) |
|---|---|---|---|
| 31日以上45日以下 | 72単位 | 72単位 | 72単位 |
| 4日以上30日以下 | 160単位 | 144単位 | 144単位 |
| 前日・前々日 | 910単位 | 680単位 | 780単位 |
| 死亡日 | 1,900単位 | 1,280単位 | 1,580単位 |
| 介護医療院 | 加算そのものが存在しない | ||
特養の看取り介護加算(Ⅱ)は、「当該入所者が当該指定介護老人福祉施設内で死亡した場合に限り」算定できる区分です。施設内で看取ることを評価する設計になっています。
単位数を並べると老健>特養>介護医療院(加算なし)という順に見えますが、これを「手厚さの順」と読むのは誤りです。理由を次に説明します。
「加算がない」=「包括されている」
加算は、基本報酬に含まれていないことを別建てで評価する仕組みです。逆に言えば、基本報酬に最初から織り込まれているものには、加算が付きません。
| 施設 | 医師の配置基準 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数(省令39号 第2条第1項第1号) |
| 介護老人保健施設 | 常勤換算方法で、入所者の数を100で除して得た数以上 |
| 介護医療院 | Ⅰ型療養床では入所者48人につき1以上(施設全体で最低3人)等、類型により異なる |
介護医療院は医療提供施設として位置づけられており、医師・看護職員の配置が3施設のなかで最も手厚く設計されています。日常的な医学管理と看取りが基本サービス費に包括されているため、あらためて加算を置く必要がない、という構造です。
ちびウルフ加算がないほうが手厚いって、直感と逆ですね。
リハウルフ介護報酬を読むときの基本です。加算は「やったら評価する」もの、基本報酬は「やって当たり前」のもの。
通所介護の送迎と同じ構造です。デイでは送迎が基本報酬に包括されていて、やらないと減算される。ショートステイでは加算になっている。加算があるかどうかは、そのサービスの必須度を裏返しに示しているんです。
だから介護医療院に看取りの加算がないのは、「看取りまで含めて長期療養を担うのが介護医療院だ」という制度の宣言だと読むべきです。
実務での違いはどこに出るか
| 観点 | 老健 | 介護医療院 |
|---|---|---|
| 基本的な役割 | 在宅復帰・在宅療養支援 | 長期療養 |
| 看取りの位置づけ | 加算で評価(ターミナルケア加算) | 基本サービス費に包括 |
| 在所期間の考え方 | 原則として短期(在宅復帰率が評価される) | 長期の療養を前提 |
| リハビリ職 | PT・OT・STを入所者100人につき1以上 | 類型により配置 |
| 入所者の想定 | 心身の機能の維持回復を図る者 | 長期にわたり療養が必要である者 |
老健は在宅復帰率が報酬に直結する施設です。在宅復帰・在宅療養支援機能加算や施設類型(超強化型・在宅強化型など)の要件に、在宅復帰の実績が組み込まれています。
したがって、「最期まで老健で」という選択は、施設の設計思想とはやや異なります。もちろんターミナルケア加算がある以上、老健で看取ること自体は制度上想定されています。ただし主たる役割ではありません。
家族から「どちらが看取りに向いていますか」と聞かれたとき、加算の有無で答えるのは危険です。
実際に見るべきはその施設が現に看取りを行っているかです。加算があっても届出をしていない老健はありますし、介護医療院でも実績には差があります。
介護サービス情報公表システムや重要事項説明書で、看取りの実施体制と直近の実績を確認してください。制度の建て付けと、個々の施設の実力は別の話です。
共通するルール
加算の建て付けは違っても、共通する考え方があります。
- 退所日の翌日以降は算定しない(老健のターミナルケア加算、特養の看取り介護加算いずれも)
- 死亡月にまとめて加算する(日数区分ごとの単位数を、死亡月の請求に計上する)
- 死亡日に近いほど単位数が大きい(手間の増加を反映)
- 届出が必要(老健のターミナルケア加算、特養の看取り介護加算とも)
また、入院や外泊があった場合の扱いも定められています。老企第40号は、看取り介護加算について「利用者が入退院をし、又は外泊した場合であって、当該入院又は外泊期間が死亡日以前45日の範囲内であれば、当該入院又は外泊期間を除いた期間について、看取り介護加算の算定が可能である」としています。
施設を選ぶときに確認すること
- 本人・家族が「最期まで施設で過ごしたい」のか「必要なら病院へ移りたい」のかを確認する
- 施設が看取りの方針(指針)を定めているか、書面で確認する
- 直近1年間の看取りの実績件数を確認する
- 夜間の医師・看護職員の体制(オンコールか、常駐か)を確認する
- 急変時に協力医療機関へ搬送する基準を確認する
- 老健の場合は、ターミナルケア加算の届出をしているか確認する
- 費用について、加算が付いた場合の自己負担の増加額を確認する
3つ目が実質的にいちばん効きます。方針は書面にあっても、実績がなければ現場は動きません。「昨年は何件でしたか」と数字で聞くのが確実です。
7つ目も忘れずに。老健のターミナルケア加算は死亡日に1,900単位、その前2日で910単位ずつ加算されます。1割負担でも数千円単位の差になるため、事前に伝えておかないと請求時に驚かれます。
ちびウルフ途中で「やっぱり病院へ」となったら、加算はどうなるんですか?
リハウルフ退所した日の翌日から死亡日までは算定されません。告示に明記されています。
ここは家族に誤解されやすいところで、「加算があるから最期まで施設で」という圧力に見えてしまうことがある。実際には、施設側にそう説明する義務はありません。
私が同席するときは、「方針はいつでも変えられます。変えた時点から算定も変わるだけです」と先に伝えるようにしています。お金の話を先に片づけておくと、本人の望みの話に集中できます。
よくある質問
介護医療院に看取りの加算はありますか?
ありません。告示第21号の介護医療院サービスには、看取り介護加算もターミナルケア加算も置かれていません。看取りを含む医療が基本サービス費に包括されているためです。
加算がないということは看取りをしないのですか?
違います。介護保険法は介護医療院を「主として長期にわたり療養が必要である者」に対し「療養上の管理」「その他必要な医療」を行う施設と定義しています。看取りは基本の役割に含まれています。
老健のターミナルケア加算はいくらですか?
死亡日は1日1,900単位(区分により1,700単位)、死亡日の前日・前々日は1日910単位(同850単位)、4日以上30日以下は1日160単位、31日以上45日以下は1日72単位(同80単位)です。
特養の看取り介護加算とどう違いますか?
単位数が異なります。特養の看取り介護加算(Ⅰ)は死亡日1,280単位、(Ⅱ)は1,580単位です。(Ⅱ)は施設内で死亡した場合に限って算定できます。
退所後に亡くなった場合も加算されますか?
されません。告示は「退所した日の翌日から死亡日までの間は、算定しない」と定めています。
入院した期間はどうなりますか?
老企第40号は、入院・外泊期間が死亡日以前45日の範囲内であれば、その期間を除いた期間について算定が可能としています。
老健と介護医療院、どちらが看取りに向いていますか?
制度上は介護医療院が長期療養を担う施設です。老健は在宅復帰・在宅療養支援が主たる役割で、在宅復帰率が報酬に影響します。ただし個々の施設の体制と実績を確認することが重要です。
医師の配置はどちらが手厚いですか?
介護医療院です。医療提供施設として位置づけられており、類型により入所者48人につき1以上といった配置基準が定められています。老健は常勤換算で入所者100人につき1以上です。
施設選びで何を確認すればよいですか?
看取りの方針を定めた書面、直近1年間の看取りの実績件数、夜間の医師・看護職員の体制、急変時の搬送基準、老健であればターミナルケア加算の届出の有無です。
加算が付くと自己負担はどれくらい増えますか?
老健で死亡日1,900単位、前日・前々日に910単位ずつ加算されるため、1割負担でも数千円単位の増加になります。事前に説明を受けておいてください。
途中で方針を変えられますか?
変えられます。病院へ移ることを選んだ場合、退所した日の翌日以降は加算が算定されなくなるだけです。加算の有無が本人の希望を縛るものではありません。
加算の届出はどこに行いますか?
都道府県知事(指定都市・中核市はその市長)に対し、電子情報処理組織を使用する方法により、老健局長が定める様式で届け出ます。
- 介護医療院には看取り・ターミナルケアの加算が存在しない
- それは看取りをしないという意味ではなく、基本サービス費に包括されているため
- 介護保険法は介護医療院を「主として長期にわたり療養が必要である者」の施設と定義
- 提供内容の先頭に「療養上の管理」が置かれている
- 老健は「居宅における生活を営むことができるようにするための支援」が目的
- 特養の定義には「医療」という語がなく、生活の場と位置づけられている
- 老健にはターミナルケア加算があり、死亡日は1日1,900単位(区分により1,700単位)
- 死亡日の前日・前々日は910単位(同850単位)
- 4日以上30日以下は160単位、31日以上45日以下は72単位(同80単位)
- 特養の看取り介護加算(Ⅰ)は死亡日1,280単位、(Ⅱ)は1,580単位
- 特養の(Ⅱ)は施設内で死亡した場合に限られる
- いずれも退所した日の翌日から死亡日までは算定しない
- いずれも死亡月にまとめて加算する
- 入院・外泊期間が死亡日以前45日の範囲内なら、その期間を除いて算定できる
- 加算の有無は「必須度」の裏返しであり、手厚さの順位ではない
- 介護医療院は医療提供施設で、医師・看護職員の配置が最も手厚い
- 老健は在宅復帰率が報酬に直結する設計
- 「最期まで老健で」は施設の設計思想とはやや異なる
- 施設選びでは加算の有無ではなく、実際の看取りの実績を確認する
- 直近1年間の看取り件数を数字で聞くのが確実
- 加算が付いた場合の自己負担の増加を事前に説明しておく
- 方針はいつでも変更でき、変更時点から算定も変わるだけである
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第27項(介護老人福祉施設)、第28項(介護老人保健施設)、第29項(介護医療院)(e-Gov法令検索)
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護保健施設サービス 注18(ターミナルケア加算)、介護福祉施設サービス ヨ(看取り介護加算)、介護医療院サービス 各加算(全国老人保健施設協会 法令・Q&A検索システム)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日 老企第40号)看取り介護加算・ターミナルケア加算に関する部分(全国老人保健施設協会 法令・Q&A検索システム)
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第2条(従業者の員数)(e-Gov法令検索)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条(従業者の員数)(e-Gov法令検索)
※本記事の単位数・算定要件は、介護保険法、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者・保険者の解釈をご確認ください。介護医療院の医師・看護職員の配置基準は療養床の類型(Ⅰ型・Ⅱ型)により異なり、本記事では概要のみを示しています。詳細は介護医療院の人員基準に関する省令および通知をご確認ください。加算の算定区分(イ(1)〜(4)、ロ(1)〜(4))は施設の類型により異なります。単位数は1単位10円の地域を前提とした表記で、実際の金額は地域区分により異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。施設選びの確認事項や家族への説明の進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。


