介護医療院の介護職員等処遇改善加算とは?

介護医療院の介護職員等処遇改善加算は、(Ⅰ)イ6.2%、(Ⅰ)ロ6.6%、(Ⅱ)イ5.8%、(Ⅱ)ロ6.2%、(Ⅲ)4.7%、(Ⅳ)4.0%です。
並べてみると水準がはっきりします。訪問介護28.7%、グループホーム22.8%、老健9.7%、訪問入浴13.3%。介護医療院の6.6%は、全サービスのなかで最も低い部類です。
理由は職員構成にあります。介護医療院は医師・看護職員・薬剤師・リハビリ職が配置され、報酬に占める介護職員の人件費割合が相対的に小さい施設だからです。率が低いことは、基本報酬そのものが医療的な体制を反映して高く設定されていることの裏返しでもあります。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスのフ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の7(第44号を準用)の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 介護医療院の処遇改善加算の率(6.2%〜4.0%)
- 全サービス中で最も低い水準である理由
- 率を乗じる対象が「イからケまでにより算定した単位数」であること
- 「イ」と「ロ」の差がケアプランデータ連携システム又は連携推進法人への所属であること
- サービス提供体制強化加算に関する読み替え規定
- 複数区分の同時算定はできないこと
ちびウルフ訪問介護の28.7%と比べると、4分の1以下ですね。
リハウルフ率だけを比べると低く見えます。ただし介護医療院の基本報酬は1日1,000単位を超える区分もあります。訪問介護の身体介護30分以上1時間未満が387単位であることを考えると、率を掛ける母数が違います。率の低さがそのまま加算額の低さを意味するわけではありません。
介護医療院の介護職員等処遇改善加算とは?
介護医療院の介護職員等処遇改善加算は、職員の賃金改善に取り組んでいる施設に、報酬を率で上乗せする加算です。加算額は賃金改善に充てることが前提になっています。
算定には、賃金改善の計画づくり、職員への周知、都道府県への届出、実績報告という一連の手続きが必要です。単に体制を届け出れば付く加算ではありません。
介護医療院は多職種が働く施設ですが、この加算が対象とするのは介護職員等の処遇改善です。医師や看護職員の人件費が大きい施設であるほど、率としては低く設定されるという構造になっています。
介護職員等処遇改善加算の単位数(加算率)
| 区分 | 率 |
|---|---|
| (Ⅰ)イ | 6.2%(1000分の62) |
| (Ⅰ)ロ | 6.6%(1000分の66) |
| (Ⅱ)イ | 5.8%(1000分の58) |
| (Ⅱ)ロ | 6.2%(1000分の62) |
| (Ⅲ) | 4.7%(1000分の47) |
| (Ⅳ) | 4.0%(1000分の40) |
他サービスとの比較
| サービス | 最大の率 |
|---|---|
| 訪問介護 | 28.7% |
| グループホーム | 22.8% |
| 訪問入浴介護 | 13.3% |
| 老健 | 9.7% |
| 介護医療院 | 6.6% |
注のただし書きにより、複数区分の同時算定はできません。
介護職員等処遇改善加算の算定要件
率を乗じる対象は「イからケまで」
- イ〜ヘ 各種の介護医療院サービス費(基本報酬)
- ト 初期加算/チ 退所時栄養情報連携加算/リ 再入所時栄養連携加算/ヌ 退所時指導等加算
- ル 協力医療機関連携加算/ヲ 栄養マネジメント強化加算/ワ 経口移行加算/カ 経口維持加算
- ヨ 口腔衛生管理加算/タ 療養食加算/レ 在宅復帰支援機能加算/ソ 特別診療費/ツ 緊急時施設診療費
- ネ〜ケ 認知症関連加算、排せつ支援加算、自立支援促進加算、科学的介護推進体制加算、安全対策体制加算、感染対策向上加算、新興感染症等施設療養費、生産性向上推進体制加算、サービス提供体制強化加算
つまり処遇改善加算(フ)自身を除く、ほぼすべての報酬が計算基礎になります。他の加算を積むほど、処遇改善加算の額も増える構造です。
「イ」と「ロ」の差は1項目だけ
(一) ケアプランデータ連携システム(公益社団法人国民健康保険中央会が運用及び管理を行う、居宅サービス計画の情報の共有等のための情報処理システム)を利用していること。
(二) 社会福祉法第128条第1号イに規定する社会福祉連携推進法人に所属していること。
(Ⅰ)ロは(Ⅰ)イの基準すべてに適合したうえで、上記のいずれかに適合することが要件です。この1項目だけで6.2%→6.6%と0.4ポイント上がります。
介護医療院は施設サービスであり、ケアプランデータ連携システムの利用対象になるかは運用面の確認が必要です。社会福祉連携推進法人に所属している場合は、ロの区分を検討する価値があります。
(Ⅲ)(Ⅳ)は求められる基準が絞られる
| 区分 | 基準の範囲(第44号の準用) |
|---|---|
| (Ⅰ)イ | (1)から(10)までのすべて |
| (Ⅰ)ロ | (Ⅰ)イの基準+データ連携システム又は連携推進法人 |
| (Ⅱ)イ | (1)から(9)まで |
| (Ⅱ)ロ | (Ⅱ)イの基準+データ連携システム又は連携推進法人 |
| (Ⅲ) | (1)(一)及び(2)から(8)まで |
| (Ⅳ) | (1)(一)、(2)から(6)まで、(7)(一)〜(四)及び(8) |
介護職員等処遇改善加算の注意点
告示95号第100号の7は、訪問介護の基準(第44号)を準用したうえで、次の読み替えを定めています。
同号イ(10)中「特定施設入居者生活介護費における入居継続支援加算(Ⅰ)若しくは(Ⅱ)又はサービス提供体制強化加算(Ⅰ)若しくは(Ⅱ)のいずれか」とあるのは、「介護医療院サービスにおけるサービス提供体制強化加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)のいずれか」と読み替える。
上位区分(Ⅰ)を狙うなら、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)の算定が関係します。2つを並べて検討してください。
率が低くても加算額が小さいとは限らない
介護医療院の基本報酬は、Ⅰ型で1日1,000単位を超える区分もあります。率を掛ける母数が大きいため、率の低さがそのまま加算額の低さを意味しません。
自施設の1か月の総単位数に率を掛けて、実額で把握することをおすすめします。
賃金改善の手続き
- 賃金改善に関する計画を策定する
- 介護職員等処遇改善計画書を作成し、全ての職員に周知する
- 都道府県知事に届け出る
- 加算の算定額に相当する賃金改善を実施する
- 実績を報告する
詳細は厚生労働省が示す事務処理手順を確認してください。
介護職員等処遇改善加算のQ&A
率は何に対して掛けるのですか?
「イからケまでにより算定した単位数」です。基本報酬に加え、処遇改善加算を除くほぼすべての加算が計算基礎になります。
「イ」と「ロ」は何が違うのですか?
ロは、ケアプランデータ連携システムの利用、又は社会福祉連携推進法人への所属のいずれかに適合することが加わります。
複数の区分を同時に算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合、その他の区分は算定できません。
なぜ他サービスより率が低いのですか?
率はサービスごとの人件費構成を反映して設定されています。介護医療院は医師・看護職員等の配置があり、報酬に占める介護職員の人件費割合が相対的に小さいためと理解できます。
率が低いと加算額も小さいのですか?
必ずしもそうではありません。介護医療院は基本報酬が高いため、率を掛ける母数が大きくなります。実額で確認してください。
サービス提供体制強化加算と関係がありますか?
あります。基準の読み替えにより、介護医療院サービスのサービス提供体制強化加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)が上位区分の判断に関係します。
届出先はどこですか?
都道府県知事(指定都市・中核市はその市長)です。
特別診療費や緊急時施設診療費も計算基礎に入りますか?
条文は「イからケまでにより算定した単位数」としており、ソ(特別診療費)・ツ(緊急時施設診療費)はこの範囲に含まれます。詳細な計算方法は都道府県に確認してください。
- 介護医療院の処遇改善加算は(Ⅰ)イ6.2%〜(Ⅳ)4.0%
- 最大6.6%は全サービス中で最も低い部類
- 医師・看護職員等が配置され、介護職員の人件費割合が相対的に小さいことが理由
- 率を乗じる対象は「イからケまで」で算定した単位数
- 他の加算を算定するほど処遇改善加算の額も増える
- 「イ」と「ロ」の差は、ケアプランデータ連携システムの利用又は社会福祉連携推進法人への所属
- 読み替えにより、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)が上位区分の判断に関係する
- 複数区分の同時算定はできない
- 基本報酬が高いため、率の低さが加算額の低さを意味するとは限らない
- 届出先は都道府県知事
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスのフ(介護職員等処遇改善加算)、ケ(サービス提供体制強化加算)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の7(介護医療院サービスにおける介護職員等処遇改善加算の基準)、第44号(訪問介護費における同加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第128条第1号イ(社会福祉連携推進法人)
※本記事の率・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文、厚生労働省が示す事務処理手順および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。計算基礎の範囲、ケアプランデータ連携システムの利用可否については別途確認が必要です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




