介護医療院の新興感染症等施設療養費は、1日につき240単位。1月に1回、連続する5日を限度に算定します。令和6年度改定で新設されました。

算定を検討する前に押さえておくべき前提があります。対象は「別に厚生労働大臣が定める感染症」であり、厚生労働省の令和6年度改定資料には「現時点において指定されている感染症はない」と注記されています。

つまりこれは平時には動かない報酬です。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが発生しただけでは算定できません。今後のパンデミック発生時に指定する前提で、あらかじめ用意された枠組みです。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスのヤおよび厚生労働省の令和6年度改定資料を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 新興感染症等施設療養費の単位数(240単位/日)と算定限度
  • 対象が「別に厚生労働大臣が定める感染症」であること
  • 改定資料に「指定されている感染症はない」と注記されていること
  • 2つの要件(医療機関の確保と適切な感染対策)
  • 「連続する5日」という限度の意味
  • 介護医療院で施設内療養を行うときの実務的な備え
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介護医療院なら、感染しても施設内で診られるのでは?

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ある程度は診られます。ただし介護医療院は感染症病床ではありません。大部屋が多く、動線を分けるのが難しい。職員数も病院ほどではない。だから条文も「相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保し」を要件にしています。施設内で抱えきる前提ではありません。

介護医療院の新興感染症等施設療養費とは?

介護医療院の新興感染症等施設療養費は、指定された感染症にかかった入所者を、入院させずに施設内で療養させた場合の費用です。

想定しているのは、パンデミック下で入院先が確保できない状況です。感染対策をしながら通常のケアを続ける負担は大きく、防護具の着脱、動線の分離、他の入所者への配慮、職員のシフト調整まで施設が抱えることになります。

コロナ禍で多くの施設が経験したその状況を、制度としてあらかじめ用意しておくという趣旨の報酬です。

新興感染症等施設療養費の単位数

項目内容
単位数1日につき240単位
限度1月に1回、連続する5日
最大1,200単位/月
対象別に厚生労働大臣が定める感染症に感染した入所者

「連続する5日」なので、飛び飛びの5日ではありません。また1月に1回のため、同じ月に複数回の療養期間があっても算定は1回分です。

新興感染症等施設療養費の算定要件

介護医療院が、入所者が別に厚生労働大臣が定める感染症に感染した場合相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保し、かつ、当該感染症に感染した入所者に対し、適切な感染対策を行った上で、介護医療院サービスを行った場合に、1月に1回、連続する5日を限度として算定する。

  • 医療機関の確保:対象感染症に感染した場合に、相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関を確保していること
  • 適切な感染対策:感染した入所者に対し、適切な感染対策を行ったうえでサービスを提供すること

対象となる感染症の指定状況

対象の感染症については、今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定する仕組みとする。
現時点において指定されている感染症はない。
(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)

この注記は令和6年度改定時点のものです。算定を検討する時点で、対象感染症が指定されているかどうかを、厚生労働省の告示および都道府県の案内で必ず確認してください。

新興感染症等施設療養費の注意点

指定がない状態で算定すれば過誤請求になる

新型コロナウイルス感染症やインフルエンザは、それだけでは対象になりません。「感染症が出たから240単位」という運用は成り立ちません。

平時の感染症対応は、高齢者施設等感染対策向上加算(10単位・5単位/月)の枠組みで整えることになります。

高齢者施設等感染対策向上加算と地続き

要件の1つ目「医療機関の確保」は、平時から取り組む感染対策向上加算(Ⅰ)の要件と重なります。

報酬タイミング内容
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)平時第二種協定指定医療機関との体制確保、協力医療機関等との取決め、研修・訓練への参加
新興感染症等施設療養費有事指定感染症に感染した入所者への施設内療養

平時の体制づくりをしていない施設は、有事に医療機関を確保できず、この療養費も算定できません。

介護医療院で施設内療養を行う際の備え

  • 相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関を確保し、連絡手順を文書化する
  • 感染者が出た場合のゾーニング、防護具、職員の動線を決めておく
  • 大部屋が多い構造で、個室隔離をどう確保するかを図面上で検討しておく
  • 療養の記録(発症日、対応内容、感染対策の実施状況)の様式を用意する
  • 対象感染症の指定状況を定期的に確認する

介護医療院はⅠ型・Ⅱ型ともに多床室が中心の施設です。感染者が出たときに療養棟をどう分けるかは、平時に決めておかないと当日には決められません。(備えに関する記述は筆者の実務経験にもとづく整理です)

新興感染症等施設療養費のQ&A

新型コロナウイルス感染症は対象ですか?

対象は「別に厚生労働大臣が定める感染症」です。令和6年度改定資料の時点では指定された感染症はないと注記されています。現在の指定状況は最新の告示と都道府県の案内で確認してください。

インフルエンザでも算定できますか?

指定されていない感染症では算定できません。

5日を超えて療養した場合は?

算定できるのは1月に1回、連続する5日が限度です。

「連続する5日」とは?

飛び飛びの5日ではなく、連続していることが条件です。

医療機関の確保はどう行いますか?

相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関を確保していることが要件です。協力医療機関や第二種協定指定医療機関との取決めを文書で残す運用が現実的です。

感染対策向上加算と同時に算定できますか?

別建ての報酬で、条文上の併算定禁止規定はありません。

届出は必要ですか?

この注には届出の文言がありません。請求方法や事前の確認事項は都道府県に確認してください。

「加算」ではないのですか?

名称は「療養費」です。基本報酬に上乗せする点は加算と同じですが、施設内で療養させたことに対する費用という位置づけです。

まとめ
  • 新興感染症等施設療養費は1日240単位、1月に1回・連続する5日が限度
  • 令和6年度改定で新設された
  • 対象は「別に厚生労働大臣が定める感染症」
  • 令和6年度改定資料には「現時点において指定されている感染症はない」と注記されている
  • 算定時点での指定状況の確認が必須
  • 要件は、相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関の確保と、適切な感染対策
  • 平時の高齢者施設等感染対策向上加算と地続きの関係にある
  • 多床室中心の構造で、ゾーニングを平時に検討しておく必要がある
参考にした情報
  • 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスのヤ(新興感染症等施設療養費)、ク(高齢者施設等感染対策向上加算)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)新興感染症等施設療養費の新設(対象感染症の指定に関する注記を含む)

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および改定資料にもとづいて整理したものです。対象感染症の指定状況は変わり得るため、算定にあたっては必ず最新の告示および都道府県の案内をご確認ください。実際の算定・請求にあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。備えに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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