介護医療院の経口維持加算とは?

介護医療院の経口維持加算は、(Ⅰ)400単位/月、(Ⅱ)100単位/月です。誤嚥が認められる入所者について、多職種で食事の様子を実際に観察し、口から食べ続けるための計画を作って支えることを評価します。
条文で目を引くのが「食事の観察及び会議等」という文言です。書類上のアセスメントではなく、実際に食べている場面を多職種で見ることが要件になっています。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスのカ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第67号の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 経口維持加算(Ⅰ)400単位・(Ⅱ)100単位という単位数
- 対象が「摂食機能障害があり誤嚥が認められる入所者」であること
- 「食事の観察及び会議等」という要件の意味
- (Ⅱ)は(Ⅰ)の算定が前提で、会議に外部の専門職が加わること
- 経口移行加算とは併算定できないこと
- 施設側に求められる誤嚥防止の体制
ちびウルフ(Ⅱ)の100単位は、何を追加すれば取れるんですか?
リハウルフ食事の観察と会議に、施設の配置医師以外の医師、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士のいずれかが加わることです。介護医療院には医師がいますが、あえて「第4条第1項第1号に規定する医師を除く」と書かれています。外部の専門的な視点を入れることを評価する加算だからです。
介護医療院の経口維持加算とは?
介護医療院の経口維持加算は、誤嚥が認められる入所者について、多職種で食事の場面を観察し、口から食べ続けられるようにする計画を立てて支えることを評価する加算です。
誤嚥性肺炎を起こすと、多くの場合まず絶食になります。そのまま経管栄養へ移り、二度と口から食べられなくなる。介護医療院ではよくある経過です。
この加算が向き合っているのは、その手前の段階です。誤嚥があるからやめるのではなく、姿勢、食形態、一口量、介助方法を調整して食べ続ける方法を探る。そのために多職種が同じ食事場面を見て話し合うことを、報酬として評価しています。
経口維持加算の単位数
| 区分 | 単位数 | 性格 |
|---|---|---|
| 経口維持加算(Ⅰ) | 400単位/月 | 本体。多職種による食事の観察・会議と計画に基づく栄養管理 |
| 経口維持加算(Ⅱ) | 100単位/月 | (Ⅰ)に上乗せ。会議に外部の専門職が加わった場合 |
両方を算定すれば月500単位です。経口移行加算(28単位/日=月約840単位)と比べると小さく見えますが、こちらは月単位の加算である点に注意してください。
経口維持加算の算定要件
(Ⅰ)400単位の要件
別に厚生労働大臣が定める基準に適合する介護医療院において、現に経口により食事を摂取する者であって、摂食機能障害を有し、誤嚥が認められる入所者に対して、医師又は歯科医師の指示に基づき、医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、介護支援専門員その他の職種の者が共同して、入所者の栄養管理をするための食事の観察及び会議等を行い、入所者ごとに、経口による継続的な食事の摂取を進めるための経口維持計画を作成している場合であって、当該計画に従い、医師又は歯科医師の指示を受けた管理栄養士又は栄養士が栄養管理を行った場合に、1月につき所定単位数を加算する。
- 対象者は現に経口摂取している人(経管栄養の人は経口移行加算の領域)
- 摂食機能障害があり、誤嚥が認められること
- 医師または歯科医師の指示に基づくこと
- 多職種が共同して食事の観察及び会議等を行うこと
- 入所者ごとに経口維持計画を作成すること
- 計画に従い、指示を受けた管理栄養士または栄養士が栄養管理を行うこと
(Ⅱ)100単位の要件
協力歯科医療機関を定めている介護医療院が、経口維持加算(Ⅰ)を算定している場合であって、入所者の経口による継続的な食事の摂取を支援するための食事の観察及び会議等に、医師(介護医療院基準第4条第1項第1号に規定する医師を除く。)、歯科医師、歯科衛生士又は言語聴覚士が加わった場合は、1月につき所定単位数を加算する。
「第4条第1項第1号に規定する医師を除く」=施設に配置されている医師は含まれません。外部の医師、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士のいずれかが会議に加わることが必要です。
施設側の基準(告示95号第67号)
- 定員超過利用・人員基準欠如等の減算に該当していないこと
- 入所者の摂食・嚥下機能が医師の判断により適切に評価されていること
- 誤嚥等が発生した場合の管理体制が整備されていること
- 食形態に係る配慮など誤嚥防止のための適切な配慮がされていること
- これらを多職種が共同して実施するための体制が整備されていること
経口維持加算の注意点
(Ⅰ)の注のただし書きは、次の場合に算定しないと定めています。
- イからヘまでの注7を算定している場合(栄養管理の基準未達・1日14単位減算)
- 経口移行加算を算定している場合
- 栄養マネジメント加算を算定していない場合
経管栄養から経口へ移行させる段階と、経口摂取を維持する段階は、同時には評価されないという整理です。
特別介護医療院サービス費では算定できない
注16により、特別介護医療院サービス費・ユニット型特別介護医療院サービス費を算定している場合は算定できません。
「食事の観察」をどう記録するか
この加算の核心は観察と会議です。いつ、誰が、どの食事場面を見て、何を確認し、計画をどう変えたか。この流れが記録に残っていることが算定の根拠になります。
姿勢の角度、一口量、食具、とろみの濃度、介助のスピード。観察の結果として何を変えたのかまで書けていれば、実地指導でも説明できます。(記録の考え方は筆者の実務経験にもとづく整理です)
経口維持加算のQ&A
(Ⅱ)だけを算定できますか?
できません。(Ⅱ)は経口維持加算(Ⅰ)を算定していることが前提です。
施設の配置医師が会議に加われば(Ⅱ)を算定できますか?
できません。条文は「介護医療院基準第4条第1項第1号に規定する医師を除く」としています。外部の医師、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士のいずれかが加わる必要があります。
経管栄養の入所者にも算定できますか?
できません。対象は「現に経口により食事を摂取する者」です。経管栄養の場合は経口移行加算の対象になります。
経口移行加算と両方算定できますか?
できません。(Ⅰ)の注に、経口移行加算を算定している場合は算定しないと定められています。
「食事の観察」は毎回必要ですか?
条文に頻度の数値はありません。観察と会議を行った記録を残し、運用の妥当性は指定権者に確認してください。
誤嚥が認められることは、どう判断しますか?
施設側の基準に「入所者の摂食又は嚥下機能が医師の判断により適切に評価されていること」とあります。医師の評価が前提です。
(Ⅱ)に協力歯科医療機関は必須ですか?
条文は「協力歯科医療機関を定めている介護医療院が」と定めています。
特別介護医療院サービス費でも算定できますか?
できません。注16により算定できない加算に含まれています。
- 経口維持加算は(Ⅰ)400単位/月、(Ⅱ)100単位/月
- 対象は現に経口摂取していて、摂食機能障害があり誤嚥が認められる入所者
- 医師または歯科医師の指示に基づき、多職種で食事の観察と会議等を行う
- 入所者ごとに経口維持計画を作成し、それに従って栄養管理を行う
- (Ⅱ)は(Ⅰ)の算定が前提で、協力歯科医療機関を定めていること
- (Ⅱ)の会議には、施設の配置医師以外の医師・歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士が加わる
- 施設側には誤嚥発生時の管理体制と食形態への配慮が求められる
- 経口移行加算、栄養管理基準未達の減算とは併算定できない
- 特別介護医療院サービス費では算定できない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスのカ(経口維持加算)、ワ(経口移行加算)、注7、注16(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第67号(経口維持加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第4条第1項第1号(医師の配置)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示・省令にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。食事の観察・会議の頻度、記録の残し方、栄養マネジメント加算に関する条文の読み方については指定権者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




