介護医療院の重度認知症疾患療養体制加算は、介護医療院と療養病床系にしかない加算です。特養にも老健にもグループホームにもありません。

特徴的なのが単位数の構造です。要介護1・2のほうが、要介護3〜5より単位数が高く設定されています。(Ⅰ)は要介護1・2で140単位、要介護3〜5で40単位。(Ⅱ)は200単位と100単位です。

要介護度が低いほど高い。介護報酬では珍しいこの逆転は、身体的な介護量ではなく、認知症による対応の困難さを評価していることの表れです。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスのム、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第68号の6(第21号の3を準用)の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 重度認知症疾患療養体制加算の単位数(要介護度で逆転する構造)
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)の要件の違い
  • 精神保健福祉士・リハビリ職の配置が要件であること
  • 精神科病院との連携(週4回以上の診察体制)が要件であること
  • 身体拘束廃止未実施減算を算定していないことが要件であること
  • (Ⅱ)で求められる生活機能回復訓練室(60㎡以上)
ちびウルフちびウルフ

なぜ要介護1・2のほうが単位が高いんですか?

リハウルフリハウルフ

身体が動く認知症の人ほど、対応が難しいからです。歩ける、力もある、でも状況が理解できない。徘徊も、他の入所者とのトラブルも、興奮も、動ける人のほうが起こります。要介護5で寝たきりの人より、要介護1で動き回る人のほうが、見守りに人手がかかる。その実態を反映した設計です。

介護医療院の重度認知症疾患療養体制加算とは?

介護医療院の重度認知症疾患療養体制加算は、重度の認知症の人を専門的に受け入れる体制を整えている施設を評価する加算です。加算というより、施設の類型に近い性格を持っています。

要件を見ると、その性格がわかります。入所者が全員認知症であること、精神保健福祉士やリハビリ職の配置、そして近隣の精神科病院との連携体制。一般的な介護医療院の運営とは別に、認知症治療病棟に近い機能を持つことが求められます。

とくに「精神科病院の医師による週4回以上の診察体制」は、単発の連携では満たせません。認知症の専門医療を継続的に受けられる環境を作ることが前提の加算です。

重度認知症疾患療養体制加算の単位数

区分要介護1・2要介護3・4・5
重度認知症疾患療養体制加算(Ⅰ)140単位/日40単位/日
重度認知症疾患療養体制加算(Ⅱ)200単位/日100単位/日

要介護1・2のほうが100単位高い構造です。(Ⅱ)で要介護1・2なら1日200単位、月6,000単位になります。

重度認知症疾患療養体制加算の算定要件

(Ⅰ)の5要件

  • 看護職員の数が、常勤換算方法で、入所者等の数が4又はその端数を増すごとに1以上であること
  • 専任の精神保健福祉士(又はこれに準ずる者)および理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がそれぞれ1名以上配置され、各職種が共同してサービスを提供していること
  • 入所者等が全て認知症の者であり、届出月の前3月において日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者の割合が2分の1以上であること
  • 近隣の精神科病院と連携し、必要に応じ入所者等を入院させる体制、および当該精神科病院の医師による週4回以上の診察体制が確保されていること
  • 届出月の前3月間において身体拘束廃止未実施減算を算定していないこと

(Ⅱ)の6要件

  • 看護職員の数が、常勤換算方法で、入所者等の数が4又はその端数を増すごとに1以上であること
  • 専ら従事する精神保健福祉士(又はこれに準ずる者)および作業療法士がそれぞれ1名以上配置されていること
  • 60平方メートル以上の床面積を有し、専用の器械・器具を備えた生活機能回復訓練室を有していること
  • 入所者等が全て認知症の者であり、届出月の前3月において日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから特に介護を必要とする認知症の者の割合が2分の1以上であること
  • 近隣の精神科病院と連携し、入院体制および週4回以上の診察体制が確保されていること
  • 届出月の前3月間において身体拘束廃止未実施減算を算定していないこと
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは3点
  • リハビリ職の職種:(Ⅰ)はPT・OT・STのいずれか、(Ⅱ)は作業療法士に限定
  • 設備:(Ⅱ)は60㎡以上の生活機能回復訓練室が必要
  • 対象者の状態:(Ⅰ)は「介護を必要とする」、(Ⅱ)は「特に介護を必要とする」認知症の者

(Ⅱ)は設備要件があるため、後から取りにいくのが難しい区分です。療養病床からの転換時に、どちらを目指すかを決めておく必要があります。

重度認知症疾患療養体制加算の注意点

身体拘束廃止未実施減算を算定していると届け出られない

(Ⅰ)(Ⅱ)とも、届出を行った日の属する月の前3月間において、身体拘束廃止未実施減算を算定していないことが要件です。

重度の認知症の人を受け入れる施設だからこそ、身体拘束の適正化が前提条件として置かれています。減算を受けた場合、3か月間はこの加算の届出ができないことになります。

「入所者等が全て認知症の者」という要件

一部の療養棟だけでなく、対象となる入所者等が全員認知症であることが求められます。認知症でない入所者を受け入れると要件を満たさなくなるため、入所判定の運用そのものに関わります。

精神科病院との連携は「週4回以上の診察」

連携先を決めるだけでは足りません。精神科病院に勤務する医師が、入所者等に対する診察を週4回以上行う体制が必要です。

近隣に連携できる精神科病院があるかどうかが、この加算を算定できるかを実質的に決めます。地域によっては、体制を作りたくても作れない場合があります。

短期入所療養介護との関係

準用元の施設基準(告示96号第21号の3)は、指定短期入所療養介護における重度認知症疾患療養体制加算の基準です。条文中の「入所者等」には、介護医療院における短期入所療養介護の利用者と入所者の両方が含まれます。

重度認知症疾患療養体制加算のQ&A

なぜ要介護1・2のほうが単位が高いのですか?

身体機能が保たれている認知症の人ほど、見守りや対応に人手がかかるという実態を反映した設計と理解できます。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?

リハビリ職の職種((Ⅱ)は作業療法士に限定)、60㎡以上の生活機能回復訓練室の有無、対象者の状態((Ⅱ)は「特に介護を必要とする」)の3点です。

入所者の一部が認知症でない場合は算定できますか?

要件は「入所者等が全て認知症の者」です。該当しない入所者がいる場合の取扱いは都道府県に確認してください。

精神科病院との連携はどの程度必要ですか?

必要に応じ入院させる体制と、当該精神科病院の医師による週4回以上の診察体制の確保が必要です。

身体拘束廃止未実施減算を受けた場合は?

届出を行った日の属する月の前3月間に同減算を算定していないことが要件です。減算を受けると届出に影響します。

看護職員は何人必要ですか?

常勤換算方法で、入所者等の数が4又はその端数を増すごとに1以上です。一部を介護職員とできる規定もあるため、原文を確認してください。

認知症専門ケア加算と併算定できますか?

条文に明示的な禁止規定はありませんが、要件が重なる部分もあるため都道府県に確認してください。

他の施設類型にもある加算ですか?

介護医療院と療養病床系のサービスに設けられている加算です。特養・老健・グループホームにはありません。

まとめ
  • 重度認知症疾患療養体制加算は(Ⅰ)要介護1・2で140単位、要介護3〜5で40単位
  • (Ⅱ)は要介護1・2で200単位、要介護3〜5で100単位
  • 要介護度が低いほど単位数が高いという珍しい構造
  • 看護職員は入所者等4又はその端数を増すごとに1以上(常勤換算)
  • 精神保健福祉士等とリハビリ職の配置が必要((Ⅱ)は作業療法士に限定)
  • (Ⅱ)は60㎡以上の生活機能回復訓練室が必要
  • 入所者等が全て認知症であり、対象者の割合が2分の1以上であること
  • 近隣の精神科病院と連携し、週4回以上の診察体制を確保すること
  • 届出月の前3月間に身体拘束廃止未実施減算を算定していないこと
  • 介護医療院と療養病床系にしかない加算
参考にした情報
  • 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスのム(重度認知症疾患療養体制加算)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
  • 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第68号の6(介護医療院における重度認知症疾患療養体制加算に係る施設基準)、第21号の3(準用元の基準)(厚生労働省法令等データベース)
  • 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第19条の5(精神科病院)

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。看護職員数の算定方法(介護職員への振替の範囲)、対象者の判定、認知症でない入所者がいる場合の取扱い、他の認知症関連加算との併算定については指定権者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。単位数の設計に関する解釈は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の説明ではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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