介護医療院の高齢者施設等感染対策向上加算とは?

介護医療院の高齢者施設等感染対策向上加算は、(Ⅰ)10単位/月、(Ⅱ)5単位/月です。令和6年度改定で新設されました。
単位数は小さいものの、要件は外部の医療機関との関係づくりそのものです。第二種協定指定医療機関との体制確保、協力医療機関等との発生時対応の取決め、院内感染対策の研修・訓練への年1回以上の参加。
介護医療院には医師が常勤し、医療的な対応力もあります。それでも新興感染症の発生時に施設だけで抱えるのは無理があるという前提で設計された加算です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスのク、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の5の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)10単位・(Ⅱ)5単位という単位数
- (Ⅰ)の3要件と(Ⅱ)の要件
- (Ⅱ)は「感染対策向上加算」の届出医療機関に限られること
- 実地指導は3年に1回以上でよいこと
- 新興感染症等施設療養費との違い
- 協力医療機関連携加算との関係
ちびウルフ介護医療院は医療機関に近い施設ですよね。それでも外部の連携が要るんですか?
リハウルフ要ります。介護医療院が担うのは日常的な医療であって、感染症の集中治療や隔離入院ではありません。コロナ禍では、入所者が感染しても入院先が見つからず、施設内で療養を続けた例が数多くありました。その反省から、平時に受け入れ先を決めておくことを報酬で促す仕組みです。
介護医療院の高齢者施設等感染対策向上加算とは?
介護医療院の高齢者施設等感染対策向上加算は、感染症が発生したときに実際に動ける医療機関との関係を、平時から作っていることを評価する加算です。
評価の対象は体制の書類ではありません。感染症が出たときに誰に連絡し、誰が診て、どこへ入院させるのか。それが決まっていて、実際に連携した実績があるか。(Ⅰ)の要件には「感染症の発生時等に、協力医療機関等と連携し適切に対応していること」まで含まれています。
加えて、院内感染対策の研修・訓練に外部から参加することが要件になっています。自施設の中だけで完結しない仕組みです。
高齢者施設等感染対策向上加算の単位数
| 区分 | 単位数 | 要件の性格 |
|---|---|---|
| 高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ) | 10単位/月 | 平時の体制確保と研修・訓練への参加 |
| 高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ) | 5単位/月 | 医療機関からの実地指導 |
(Ⅰ)と(Ⅱ)は要件が独立しているため、条文上、両方を算定することを妨げる規定はありません。あわせて15単位/月です。ただし取扱いは都道府県に確認してください。
高齢者施設等感染対策向上加算の算定要件
(Ⅰ)の3要件
(1) 第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を行う体制を確保していること。
(2) 介護医療院基準第34条第1項本文に規定する協力医療機関その他の医療機関との間で、感染症(新興感染症を除く。)の発生時等の対応を取り決めるとともに、感染症の発生時等に、協力医療機関等と連携し適切に対応していること。
(3) 感染対策向上加算又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関等が行う院内感染対策に関する研修又は訓練に1年に1回以上参加していること。
| 要件 | 相手 | やること |
|---|---|---|
| (1) | 第二種協定指定医療機関 | 新興感染症発生時等の対応体制の確保 |
| (2) | 協力医療機関その他の医療機関 | 発生時対応の取決めと、実際の連携・対応 |
| (3) | 感染対策向上加算等の届出医療機関 | 院内感染対策の研修・訓練に年1回以上参加 |
(Ⅱ)の要件
感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関から、3年に1回以上、施設内で感染者が発生した場合の対応に係る実地指導を受けていること。
見落としやすい違いがあります。
- (Ⅰ)の(3):感染対策向上加算「又は外来感染対策向上加算」の届出医療機関でよい
- (Ⅱ):感染対策向上加算の届出医療機関に限られる(外来感染対策向上加算は含まれない)
診療所と連携している場合、(Ⅰ)の研修参加は満たせても、(Ⅱ)の実地指導では要件を満たさないことがあります。
高齢者施設等感染対策向上加算の注意点
新興感染症等施設療養費との違い
| 報酬 | 単位 | 性格 |
|---|---|---|
| 高齢者施設等感染対策向上加算 | 10単位・5単位/月 | 平時の体制を評価する加算 |
| 新興感染症等施設療養費 | 240単位/日(月1回・連続5日限度) | 実際に発生したときの療養に対する費用 |
体制を作っておく加算と、発生時の費用は別建てです。平時の体制がないと、有事に医療機関を確保できず、療養費も算定できません。2つはセットで整えるものです。
協力医療機関連携加算との重なり
協力医療機関連携加算(50単位・5単位/月)は、協力医療機関と定期的に会議を開いて情報を共有することを評価する加算です。感染対策向上加算(Ⅰ)の(2)も協力医療機関等との関係を求めており、対象となる医療機関が重なります。
協力医療機関との関係づくりは、複数の加算に波及します。取決めの文書、会議の記録、連携した実績の記録を一体で整理しておくと効率的です。
運営基準上の義務との関係
介護医療院基準第34条は、協力医療機関を定めること、第二種協定指定医療機関との間で新興感染症発生時等の対応を取り決めるよう努めることなどを定めています。加算を算定しない施設でも、この義務は履行しなければなりません。
高齢者施設等感染対策向上加算のQ&A
(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?
条文上、両者の併算定を禁じる規定はありません。それぞれの要件を満たせば合計15単位/月となります。取扱いは都道府県に確認してください。
(Ⅱ)は外来感染対策向上加算の医療機関でもよいですか?
いけません。(Ⅱ)は「感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関」に限られます。(Ⅰ)の研修参加は外来感染対策向上加算の医療機関でも対象です。
実地指導は毎年必要ですか?
3年に1回以上です。
研修と訓練はどちらでもよいですか?
(Ⅰ)の(3)は「研修又は訓練に1年に1回以上参加していること」です。いずれかへの参加で要件を満たします。
第二種協定指定医療機関はどこで確認できますか?
都道府県が公表している一覧で確認できます。自施設の協力医療機関が該当するかをまず確認してください。
感染症が発生していない場合も算定できますか?
(Ⅰ)の(2)には「感染症の発生時等に、協力医療機関等と連携し適切に対応していること」が含まれます。運用上の解釈は都道府県に確認してください。
新興感染症等施設療養費と同時に算定できますか?
別建ての報酬で、条文上の併算定禁止規定はありません。
届出は必要ですか?
必要です。都道府県知事に対して届出を行います。
- 高齢者施設等感染対策向上加算は(Ⅰ)10単位/月、(Ⅱ)5単位/月
- 令和6年度改定で新設された
- (Ⅰ)は第二種協定指定医療機関との体制確保、協力医療機関等との取決めと実際の連携、研修・訓練への年1回以上の参加
- (Ⅱ)は感染対策向上加算の届出医療機関から3年に1回以上の実地指導を受けること
- (Ⅱ)では外来感染対策向上加算の医療機関は対象に含まれない
- 新興感染症等施設療養費(240単位/日)は別建ての報酬
- 協力医療機関連携加算とも対象となる医療機関が重なる
- 協力医療機関を定めること自体は運営基準上の義務
- 届出先は都道府県知事
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスのク(高齢者施設等感染対策向上加算)、ヤ(新興感染症等施設療養費)、ル(協力医療機関連携加算)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の5(介護医療院サービスにおける高齢者施設等感染対策向上加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第34条(協力医療機関等)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示・省令にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。(Ⅰ)と(Ⅱ)の同時算定、実地指導の方法、感染症が発生していない期間の取扱いについては指定権者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




