介護医療院の高齢者虐待防止措置未実施減算とは?

介護医療院の高齢者虐待防止措置未実施減算は、所定単位数の1%減です。令和6年度改定で全サービスに導入されました。
減算されるのは虐待が起きたときではありません。介護医療院基準第40条の2が求める措置——委員会の定期開催、指針の整備、研修の定期実施、担当者の配置——を講じていない場合です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスの注5、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の2の2、介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第40条の2の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算が1%であること
- 減算の対象が「虐待の発生」ではなく「措置の未実施」であること
- 求められる4つの措置
- 「担当者を置く」が見落とされやすいこと
- 安全管理体制未実施減算とは根拠条文が隣り合っていること
- 介護医療院で虐待防止が問われやすい場面
ちびウルフ1%なら影響は小さいのでは?
リハウルフ金額は身体拘束の10分の1です。ただし要件は委員会・指針・研修・担当者の4つだけで、満たすためのコストはほとんどかかりません。満たしていない状態で減算を受けているなら、単純に手続きの問題です。金額の大小より、体制がないこと自体が問題になります。
介護医療院の高齢者虐待防止措置未実施減算とは?
介護医療院の高齢者虐待防止措置未実施減算は、虐待の発生・再発を防ぐために必要な措置を講じていない場合に、基本報酬が減額される仕組みです。
身体拘束廃止未実施減算と同じく、虐待が起きたかどうかではなく、体制が整っているかどうかで判断されます。事故がなくても、委員会・指針・研修・担当者のいずれかが欠けていれば減算です。
介護医療院は、意思疎通が難しい入所者が多く、面会も限られる環境です。外から見えにくい場所であるほど、組織として気づく仕組みが要ります。この減算は、その仕組みの不在に対するものです。
高齢者虐待防止措置未実施減算の減算率
別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
| 基本報酬の水準 | 1日あたりの減算額 | 1人あたり月(30日) |
|---|---|---|
| 1,000単位 | 10単位 | 300単位 |
| 1,200単位 | 12単位 | 360単位 |
※端数処理は請求時の取扱いによります。
高齢者虐待防止措置未実施減算の算定要件(基準)
告示95号第100号の2の2は、介護医療院基準第40条の2(第54条において準用する場合を含む)に適合していることを求めています。
- 虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができる)を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること
- 虐待の防止のための指針を整備すること
- 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
- これらの措置を適切に実施するための担当者を置くこと
委員会・指針・研修は整えていても、担当者を明示していないために指摘を受ける施設があります。
氏名・職名と役割を運営規程や委員会規程に位置づけ、職員に周知しておいてください。「管理者が兼ねている」という説明だけでは、実施体制として弱いことがあります。
高齢者虐待防止措置未実施減算の注意点
安全管理体制未実施減算と条文が隣接している
| 減算 | 根拠条文 | 減算額 |
|---|---|---|
| 安全管理体制未実施減算 | 基準第40条第1項 | 1日5単位 |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 基準第40条の2 | 所定単位数の1% |
第40条(事故発生の防止)と第40条の2(虐待の防止)は隣り合った条文です。どちらも委員会・指針・研修・担当者という似た構成をとっています。
2つの委員会を別々に回すか、同じ会議のなかで議題を分けるかは運用の判断になります。議事録上で区別できる形にしておくのが安全です。取扱いは都道府県に確認してください。
「定期的に」の頻度は明示されていない
条文は委員会も研修も「定期的に」としており、回数の数値は示されていません。身体拘束の委員会に合わせる運用が実務では多く見られますが、頻度の考え方は都道府県に確認してください。
介護医療院で議題にすべき場面
- 意思疎通が難しい入所者への説明の省略が常態化していないか
- おむつ交換や吸引の際の声かけが省かれていないか
- 訴えの多い入所者への対応が、職員間で否定的に共有されていないか
- 身体拘束の判断が、検討を経ずに継続していないか
- 夜勤帯など人手が薄い時間帯の対応に無理がないか
介護医療院は医療的なケアが多く、業務が時間に追われやすい環境です。「効率」が優先されるほど、説明や同意の手続きが省かれやすくなります。(この整理は筆者の実務経験にもとづくもので、制度上の判断基準ではありません)
3つの率による減算の比較
| 減算 | 率 |
|---|---|
| 身体拘束廃止未実施減算 | 10% |
| 業務継続計画未策定減算 | 3% |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% |
高齢者虐待防止措置未実施減算のQ&A
虐待が発生しなければ減算されませんか?
発生の有無ではなく、委員会・指針・研修・担当者の4つの措置を講じているかどうかで判断されます。
減算率はどのくらいですか?
所定単位数の1%です。
委員会の頻度は決まっていますか?
「定期的に開催」とされ、回数の明示はありません。運用は都道府県に確認してください。
委員会はオンラインでもよいですか?
テレビ電話装置等を活用して行うことができるとされています。
担当者に資格は必要ですか?
条文に資格の定めはありません。措置を適切に実施するための担当者を置き、役割を明確にしてください。
身体拘束の委員会と一緒に開催してもよいですか?
条文は別々の措置として定めています。議題と議事録を分けて記録する運用が実務では見られます。可否は都道府県に確認してください。
ユニット型も対象ですか?
対象です。第54条により準用されます。
研修は年何回必要ですか?
「定期的に実施」とのみ定められています。年1回以上に加え、新規採用時に実施する運用が一般的です。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算は所定単位数の1%減
- 令和6年度改定で全サービスに導入された
- 減算の対象は虐待の発生ではなく、措置の未実施
- 根拠は介護医療院基準第40条の2(ユニット型は第54条で準用)
- 求められる措置は、委員会の定期開催、指針の整備、研修の定期実施、担当者の配置の4つ
- 委員会はテレビ電話装置等を活用でき、結果は全従業者に周知徹底する
- 「担当者を置く」は書面で示せるようにしておく
- 第40条(事故発生の防止)と第40条の2(虐待の防止)は隣接した条文で構成が似ている
- 身体拘束10%、BCP3%と比べると率は低い
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスの注3〜注6(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の2の2(高齢者虐待防止措置未実施減算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第40条の2(虐待の防止)、第54条(準用)
※本記事の減算率・基準は、厚生労働省の告示・省令にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。委員会の開催頻度、身体拘束の委員会との併催の可否、研修の回数、減算の適用期間については指定権者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の減算額の試算は単位数を単純に計算した概算です。現場の状況に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




