老健の経口移行加算とは?28単位・180日の算定要件を徹底解説【令和6年度版】
「経管栄養の入所者さんに、もう一度口から食べてもらいたい。その取り組みを経口移行加算として算定したいけれど、誰がどう関われば算定できるの?」——老健の運営者・管理者なら一度は確認したいテーマです。経口移行加算は、単なる収益加算ではなく「食べる楽しみ」を取り戻す多職種ケアそのものを評価する加算です。
この記事では、介護老人保健施設(老健)の経口移行加算(28単位/日・180日以内)について、算定要件・対象者・計画書・180日を超えたときの取扱いまで、厚生労働省の基準にもとづいて実務目線で詳しく解説します。算定もれを防ぎつつ、ケアの質を見える化したい施設はぜひ参考にしてください。
- 経口移行加算の単位数(28単位/日)と算定期間(計画作成日から180日以内)
- 「医師の指示」と「多職種の共同による経口移行計画」という2本柱の要件
- 管理栄養士・栄養士と言語聴覚士・看護職員が担う具体的な役割
- 180日を超えても引き続き算定できるケースの条件
- 経口維持加算との違いと、算定もれ・過誤を防ぐ運用のコツ
ちびウルフ経口移行加算って、経管栄養の人を口から食べられるようにする加算だよね?経口維持加算とどう違うの?
リハウルフいい質問だね。ざっくり言うと、経口移行=経管栄養から「口から食べる」へ移行する支援、経口維持=今の経口摂取を続けられるよう「維持」する支援だよ。スタート地点が経管栄養かどうかが大きな違いなんだ。
老健の経口移行加算とは?目的と単位数
経口移行加算は、現に経管により食事を摂取している入所者に対し、再び口から食べられるように多職種が共同して支援することを評価する加算です。介護老人保健施設のほか、介護老人福祉施設(特養)、介護医療院などの施設サービスが対象です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 28単位/日 |
| 算定期間 | 経口移行計画が作成された日から起算して180日以内 |
| 対象者 | 現に経管により食事を摂取している入所者 |
| 主な対象施設 | 老健・特養(介護老人福祉施設)・介護医療院 など |
経口移行加算の算定要件
算定の柱は「①医師の指示」と「②多職種共同による経口移行計画の作成・実施」です。具体的には次の流れになります。
- 医師の指示にもとづき、医師・歯科医師・管理栄養士・看護師・介護支援専門員その他の職種が共同して、経管摂取中の入所者ごとに「経口による食事の摂取を進めるための経口移行計画」を作成する
- その計画に従い、医師の指示を受けた管理栄養士または栄養士による栄養管理を行う
- あわせて、言語聴覚士または看護職員による支援(摂食・嚥下に関する訓練やケア)を行う
経口移行計画に盛り込みたい視点
経口移行計画は、嚥下機能の評価、食形態の段階的なステップアップ、誤嚥・窒息のリスク管理、栄養量の確保、本人・家族の意向などを多職種で共有する設計図です。入所者ごとに個別性を持たせ、定期的に評価・見直しを行うことで、ケアの質と算定の根拠の両方を担保できます。
180日を超えたときの取扱い
ちびウルフ180日を過ぎたら、もう算定できなくなっちゃうの?まだ移行の途中なのに…
リハウルフ大丈夫、例外があるよ。経口での食事摂取が一部可能な方で、医師の指示にもとづき継続して栄養管理・支援が必要と認められる場合は、180日を超えても引き続き算定できるんだ。
経口移行計画にもとづく管理栄養士・栄養士の栄養管理と、言語聴覚士・看護職員の支援が、計画作成日から180日を超えて行われた場合であっても、経口による食事の摂取が一部可能な者であって、医師の指示に基づき継続して経口摂取を進めるための栄養管理・支援が必要とされる方に対しては、引き続き当該加算を算定できます。「180日で機械的に打ち切り」ではなく、医学的な必要性で継続可否を判断する点を押さえましょう。
多職種それぞれの役割を整理する
経口移行加算は「チームで取り組む加算」です。誰がどこを担うのかを明確にしておくと、計画の実施と記録の整合がとりやすくなります。
| 職種 | 主な役割 |
|---|---|
| 医師 | 経口移行の指示、嚥下・全身状態の医学的評価、継続可否の判断 |
| 歯科医師 | 口腔・嚥下機能の評価、口腔環境の整備に関する助言 |
| 管理栄養士・栄養士 | 医師の指示にもとづく栄養管理、食形態・栄養量の調整 |
| 言語聴覚士(ST) | 摂食嚥下機能の評価・訓練、安全な食べ方の指導 |
| 看護職員 | 食事場面の観察・支援、誤嚥兆候のモニタリング、リスク管理 |
| 介護支援専門員(ケアマネ) | 計画の共有・調整、本人・家族の意向の反映 |
経口移行加算と経口維持加算の違い
混同されやすい2つの加算を整理します。スタート地点(経管栄養か、経口摂取か)が最大の違いです。
| 項目 | 経口移行加算 | 経口維持加算 |
|---|---|---|
| 対象者 | 現に経管栄養の入所者 | 経口摂取しているが摂食機能障害・誤嚥がある入所者 |
| 目的 | 経管栄養から経口摂取へ「移行」 | 現在の経口摂取を安全に「維持」 |
| ゴール | 口から食べられる状態に近づける | 誤嚥・窒息を防ぎながら食べ続ける |
ちびウルフ経管の人が少しずつ食べられるようになったら、途中から経口維持加算に切り替えるイメージなの?
リハウルフそうだね。「移行」が進んで経口摂取が定着してきたら、その後は「維持」のフェーズへ——という流れが実態に合うことが多いよ。入所者の摂取状況に応じて、どちらの加算が妥当かを多職種で見極めていくんだ。
運営者・管理者が押さえる実務ポイント
経口移行加算は1日28単位とインパクト自体は大きくありませんが、在宅復帰・在宅療養支援機能を掲げる老健にとって「食べられる状態で帰す」ことは中核ミッションです。算定を入り口に、多職種連携の質を高める仕掛けとして活用しましょう。
| 場面 | 運用のコツ |
|---|---|
| 対象者の抽出 | 経管栄養中の入所者を定期的にリスト化し、嚥下評価・移行可能性をカンファレンスで検討 |
| 計画作成 | 医師の指示を起点に、管理栄養士・ST・看護・ケアマネ等が共同で個別計画を作成 |
| 実施・記録 | 栄養管理と摂食嚥下支援の両輪を実施し、経過・食形態の変化を記録に残す |
| 評価・見直し | 180日の節目と医学的必要性を踏まえ、継続・終了・経口維持への移行を判断 |
算定もれ・過誤を防ぐ記録のポイント
経口移行加算は、要件を満たしていても記録が不十分だと実地指導で指摘・返還の対象になりやすい加算です。次の3点を「書面で残す」ことを徹底しましょう。
- 医師の指示——経口移行を進める旨の指示を、日付とともに記録に残す
- 多職種共同の経口移行計画——作成日・関与した職種・嚥下評価・食形態の段階・目標を明記する
- 実施記録——栄養管理(管理栄養士・栄養士)と摂食嚥下支援(ST・看護職員)の両方の実施内容・経過を記録する
在宅復帰・在宅療養支援を担う老健にとって、「口から食べられる状態で生活の場へ戻す」ことは大きな価値です。経口移行加算は、その取り組みを評価する制度であると同時に、施設の摂食嚥下ケアの質を内外に示す指標にもなります。
よくある質問(FAQ)
経口移行加算は誰の指示で始めるのですか?
実施は管理栄養士だけで行ってもよいですか?
180日を過ぎたら必ず算定できなくなりますか?
経口移行加算と経口維持加算は同時に算定できますか?
- 経口移行加算は28単位/日・計画作成日から180日以内。対象は経管栄養中の入所者
- 要件は「医師の指示」+「多職種共同の経口移行計画」+「栄養管理(管理栄養士・栄養士)と支援(ST・看護職員)の実施」
- 180日超でも、一部経口可能で医師の指示による継続の必要性があれば引き続き算定可
- 安全管理を最優先に、段階的な食形態アップと定期的な再評価で質と算定根拠を両立
- 経口移行(経管→経口)と経口維持(経口の維持)の違いを起点に判断する
