老健に入所している方が外泊した場合、その期間中に居宅サービス(訪問リハビリ・訪問看護・訪問介護など)を介護保険で算定することはできません。

根拠は老企第40号です。外泊時の費用の取扱いについて「外泊の期間中は、当該入所者については、居宅介護サービス費は算定されないものであること」と明記されています。老健については、同通知の第五の(18)でこの規定が準用されます。

ただし、まったく道がないわけではありません。老健には「試行的退所」という別の枠組みがあり、こちらは1日800単位で、老健が居宅サービス事業者等と連携して在宅サービスを提供することを前提としています。「外泊」と「試行的退所」は別物です。

この記事では、告示第21号、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 外泊期間中に居宅介護サービス費が算定されない根拠(通知の原文)
  • 外泊時費用は1日362単位、1月6日が限度であること
  • 初日と最終日は算定できないため、連続7泊で6日分になること
  • 月をまたぐ場合は最大で連続13泊(12日分)まで算定できること
  • 「外泊」に親戚宅への宿泊や家族旅行が含まれること
  • 試行的退所(800単位)という別の枠組みがあること
  • 試行的退所では居宅サービス事業者等が関与できること
  • 外泊時費用と試行的退所の費用は併算定できないこと
  • 外泊中のベッドをショートステイに使えるが、その場合の制約
  • 特養との取扱いの違い

外泊期間中は居宅介護サービス費が算定されない

老企第40号 第五の(18)は「5の(20)(④のニを除く。)を準用する。この場合において『入院又は外泊』とあるのは、『外泊』と読み替えるものとする。」としています。準用元である第二の5(20)④の内容がこちらです。

ロ 「外泊」には、入所者の親戚の家における宿泊、子供又はその家族と旅行に行く場合の宿泊等も含むものであること。
ハ 外泊の期間中は、当該入所者については、居宅介護サービス費は算定されないものであること。

  • 外泊中も入所者としての身分は続いている
  • したがって「居宅において介護を受けるもの(居宅要介護被保険者)」には戻らない
  • 訪問リハビリ・訪問看護・訪問介護・通所介護などは算定できない
  • 「外泊」は自宅に限らず、親戚宅や旅行先での宿泊も含む
なぜ算定できないのか

外泊時費用(362単位)は、入所者のベッドを空けたまま確保し、施設として在籍管理を続けることに対する評価です。施設サービス費の代わりに算定する、という位置づけになっています。

つまり外泊中も施設サービスの枠内にいるということです。同時に居宅サービス費も支給すれば二重給付になるため、通知が明示的に排除しています。

外泊時費用は1日362単位。数え方に注意

告示第21号 介護保健施設サービス 注14です。

入所者に対して居宅における外泊を認めた場合は、1月に6日を限度として所定単位数に代えて1日につき362単位を算定する。ただし、外泊の初日及び最終日は、算定できない。

老企第40号 第二の5(20)①は、数え方を具体例で示しています。

入院又は外泊の期間は初日及び最終日は含まないので、連続して7泊の入院又は外泊を行う場合は、6日と計算されること。
(例)外泊期間:3月1日〜3月8日(8日間)
3月1日 外泊の開始………所定単位数を算定
3月8日 外泊の終了………所定単位数を算定

算定
外泊開始日(3月1日)所定単位数(施設サービス費)
3月2日〜3月7日(6日間)1日362単位(外泊時費用)
外泊終了日(3月8日)所定単位数(施設サービス費)

初日と最終日は施設サービス費のままです。「1月に6日を限度」というのは、362単位を算定できる日数の上限を指します。

月をまたぐ場合は最大連続13泊

イ 入院又は外泊時の費用の算定にあたって、一回の入院又は外泊で月をまたがる場合は、最大で連続13泊(12日分)まで入院又は外泊時の費用の算定が可能であること。

「1月に6日」を2か月分使えるため、月をまたげば12日分まで算定できます。ただし13泊を超えると、超えた期間は費用の算定ができません。通知の例では、その期間が「費用算定不可」と示されています。

試行的退所なら、居宅サービス事業者が関与できる

ここが本記事の核心です。老健には、外泊とは別に試行的退所という枠組みがあります。告示第21号 介護保健施設サービス 注15です。

電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った介護老人保健施設において、入所者であって、退所が見込まれる者をその居宅において試行的に退所させ、介護老人保健施設が居宅サービスを提供する場合は、1月に6日を限度として所定単位数に代えて1日につき800単位を算定する。ただし、試行的な退所に係る初日及び最終日は算定せず、注14に掲げる単位数を算定する場合は算定しない。

外泊(注14)試行的退所(注15)
単位数1日362単位1日800単位
限度1月6日1月6日
初日・最終日算定できない算定せず
届出不要必要
対象入所者一般退所が見込まれる者
居宅サービスの提供老健が提供する
併算定できない(どちらか一方)

「介護老人保健施設が居宅サービスを提供する」の中身

老企第40号 第五の(19)は「5の(21)を準用する」としています。その第二の5(21)⑤が、実務上いちばん重要な一文です。

外泊時在宅サービス利用の費用の算定期間中は、施設の従業者又は指定居宅サービス事業者等により、計画に基づく適切な居宅サービスを提供することとし、居宅サービスの提供を行わない場合はこの加算は対象とならないこと。

「施設の従業者又は指定居宅サービス事業者等により」。つまり、外部の居宅サービス事業者が関与できます。ただしその費用は800単位に包括されており、居宅介護サービス費として別に算定されるわけではありません。

  • 提供するのは施設の従業者または指定居宅サービス事業者等
  • 提供の根拠は計画(施設の介護支援専門員が作成する)
  • 居宅サービスを提供しなければ、この費用は算定できない
  • 費用の流れは施設からであり、居宅介護サービス費ではない
ちびウルフちびウルフ

じゃあ、外部の訪問リハビリ事業所が入ることはできるんですか?

リハウルフリハウルフ

試行的退所の枠組みなら、通知の文言上は入れます。「指定居宅サービス事業者等により」と明記されているので。

ただしお金の出どころが違う。訪問リハビリテーション費として国保連に請求するのではなく、老健が800単位を受け取り、そこから事業所に支払うという形になります。事業所間の契約と費用の取り決めが要ります。

担当したケースでも、退所前に自宅の環境を見ておきたくて、この枠組みで一度入ったことがあります。手続きは面倒ですが、退所後のミスマッチを潰せる価値は大きい。老健側から「試行的退所で入ってもらえますか」と声がかかったら、前向きに検討してよい話です。

試行的退所を行うときの検討事項

老企第40号 第五(試行的退所時指導加算に関する部分)は、実施にあたっての検討を求めています。

試行的退所を行うに当たっては、その病状及び身体の状況に照らし、退所して居宅において生活ができるかどうかについて医師、薬剤師(配置されている場合に限る。)、看護・介護職員、支援相談員、介護支援専門員等により、退所して、その居宅において療養を継続する可能性があるかどうか検討すること。

また、試行的退所中の入所者の状況の把握を行っている場合には、外泊時加算を併せて算定することが可能とされています(試行的退所時指導加算との関係)。加算の組み合わせは複雑なので、算定前に整理してください。

外泊中のベッドの扱い

老企第40号 第二の5(20)③です。

入所者の入院又は外泊の期間中で、かつ、入院又は外泊時の費用の算定期間中にあっては、当該入所者が使用していたベッドを他のサービスに利用することなく空けておくことが原則であるが、当該入所者の同意があれば、そのベッドを短期入所生活介護に活用することは可能であること。ただし、この場合に、入院又は外泊時の費用は算定できないこと。

ベッドの扱い外泊時費用
空けておく(原則)算定できる(362単位)
入所者の同意を得てショートステイに活用算定できない

老健の場合は短期入所療養介護に活用することになります。ベッドを回すか、外泊時費用を取るか。どちらか一方という構造です。

特養との取扱いの違い

参考までに、特別養護老人ホームとの比較です。

特別養護老人ホーム介護老人保健施設
外泊時費用1日246単位(入院も同じ)1日362単位
在宅サービス利用の枠組み外泊時在宅サービス利用の費用
1日560単位
試行的退所
1日800単位
届出必要
対象外泊を認めた入所者退所が見込まれる者
限度1月6日1月6日

老健のほうが単位数が高く、「退所が見込まれる者」という限定が付いています。老健が在宅復帰施設として位置づけられていることの反映です。

ケアマネジャーが確認すること

  • 外泊なのか試行的退所なのか、施設に確認する(費用の建て付けが全く違う)
  • 外泊であれば、その期間の居宅サービスは算定できないことを事業所に伝える
  • 試行的退所であれば、施設の介護支援専門員が作成する計画の内容を確認する
  • 関与する居宅サービス事業者と施設の間で、費用の取り決めがされているか確認する
  • 外泊・試行的退所の日数が1月6日を超えていないか確認する
  • 退所後の居宅サービスの再開時期を、退所日に合わせて調整する

1つ目が出発点です。「外泊」と「試行的退所」を同じ言葉で語ると、必ず食い違います。施設側も現場では区別せずに「外泊」と呼んでいることがあるので、算定上どちらなのかを明示的に確認してください。

いちばん多い事故

外泊中の自宅に、これまでどおり訪問リハビリや訪問看護が入ってしまうケースです。サービスは提供したのに算定できません。

老健の外泊は、家族の希望で急に決まることがあります。施設からケアマネジャーへ、ケアマネジャーから各事業所へ、という連絡経路を先に決めておくことが唯一の予防策です。

よくある質問

老健の外泊中に訪問リハビリは使えますか?

使えません。老企第40号は「外泊の期間中は、当該入所者については、居宅介護サービス費は算定されないものであること」と明記しており、老健にも準用されます。

訪問看護や訪問介護も同じですか?

同じです。居宅介護サービス費として算定される居宅サービスは、いずれも外泊期間中は算定できません。

外泊時費用はいくらですか?

老健は1日362単位です。1月に6日が限度で、外泊の初日および最終日は算定できません(それらの日は所定単位数を算定します)。

連続7泊すると何日分ですか?

6日分です。初日と最終日を含まないため、通知に「連続して7泊の入院又は外泊を行う場合は、6日と計算される」と示されています。

月をまたぐ場合はどうなりますか?

最大で連続13泊(12日分)まで算定できます。1月6日の限度を2か月分使える計算です。

「外泊」は自宅に帰る場合だけですか?

違います。通知は「入所者の親戚の家における宿泊、子供又はその家族と旅行に行く場合の宿泊等も含む」としています。

在宅サービスを使う方法はありますか?

試行的退所(1日800単位)の枠組みがあります。退所が見込まれる者を居宅において試行的に退所させ、老健が居宅サービスを提供する場合に算定できます。届出が必要です。

試行的退所では外部の事業所が入れますか?

通知は「施設の従業者又は指定居宅サービス事業者等により、計画に基づく適切な居宅サービスを提供する」としています。ただし費用は800単位に包括され、居宅介護サービス費として別に算定されるものではありません。

外泊時費用と試行的退所は併算定できますか?

できません。告示は「注14に掲げる単位数を算定する場合は算定しない」としています。どちらか一方です。

試行的退所で居宅サービスを提供しなかった場合は?

算定できません。通知は「居宅サービスの提供を行わない場合はこの加算は対象とならない」と明記しています。

外泊中のベッドは他の人に使えますか?

空けておくことが原則ですが、入所者の同意があれば短期入所に活用できます。ただしその場合、外泊時費用は算定できません。

特養の外泊とは何が違いますか?

特養の外泊時費用は1日246単位、在宅サービスを利用する場合は1日560単位です。老健は362単位と800単位で、試行的退所には「退所が見込まれる者」という限定と届出の要件があります。

まとめ
  • 老健の外泊期間中は、居宅介護サービス費が算定されない
  • 根拠は老企第40号 第二の5(20)④ハ(第五の(18)で準用)
  • 訪問リハビリ・訪問看護・訪問介護・通所介護のいずれも算定できない
  • 外泊中も入所者としての身分は続いているため
  • 「外泊」には親戚宅での宿泊や家族との旅行も含まれる
  • 外泊時費用は1日362単位、1月6日が限度
  • 初日と最終日は算定できず、その日は所定単位数を算定する
  • 連続7泊なら6日分として計算される
  • 月をまたぐ場合は最大で連続13泊(12日分)まで
  • 試行的退所(1日800単位)という別の枠組みがある
  • 対象は「退所が見込まれる者」に限られ、届出が必要
  • 試行的退所では老健が居宅サービスを提供する
  • 提供者は施設の従業者または指定居宅サービス事業者等
  • 費用は800単位に包括され、居宅介護サービス費とは別建て
  • 居宅サービスを提供しない場合は算定できない
  • 外泊時費用と試行的退所の費用は併算定できない
  • 外泊中のベッドは空けておくのが原則
  • 同意があれば短期入所に活用できるが、外泊時費用は算定できなくなる
  • 特養は外泊246単位、在宅サービス利用560単位で建て付けが違う
  • 老健のほうが単位数が高く、在宅復帰施設としての位置づけが反映されている
  • ケアマネジャーは「外泊」か「試行的退所」かを施設に明示的に確認する
  • 外泊中に居宅サービスが入ってしまう事故を防ぐため、連絡経路を先に決めておく
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者・保険者の解釈をご確認ください。試行的退所における居宅サービス事業者等との連携の具体的な方法、費用の取り決め、加算の組み合わせの可否は、保険者によって解釈・運用が異なる場合があります。届出の様式・手続きは都道府県により異なるため、指定権者にご確認ください。単位数は1単位10円の地域を前提とした表記で、実際の金額は地域区分により異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。連絡経路の整備や施設への確認事項に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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