「最期までここで診てもらえますか」。施設を探す家族が、いちばん聞きたくて、いちばん聞きづらい質問です。パンフレットの「看取り対応可」という一言だけでは、中身はまったく分かりません。

この記事では、理学療法士・介護支援専門員として施設と在宅の両方に関わってきた立場から、看取り・ターミナルケアに対応できる施設の条件が制度上どう決まっているかを整理します。加算と省令を見れば、体制の有無はかなりの精度で判別できます。

この記事でわかること
  • 看取り介護加算とターミナルケア加算の違い
  • 加算の要件を見れば体制が分かる理由
  • 2024年度から義務づけられた協力医療機関の3要件
  • その義務化に3年の経過措置があること
  • 施設の種類ごとの看取り対応の実情
  • 国のガイドラインが求めている話し合いの進め方
  • 見学時に聞くべき具体的な質問
  • 「看取り対応」でも搬送になる場合があること

介護施設の看取り体制は「加算」を見れば判別できる

介護保険には、終末期のケアを評価する加算があります。名称は施設の種類で分かれます。

加算の名称対象となる施設・サービス評価される期間
看取り介護加算特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護付き有料老人ホーム等(特定施設入居者生活介護)死亡日以前45日前から死亡日まで、日数区分ごとに単価が上がる
ターミナルケア加算介護老人保健施設、訪問看護、看護小規模多機能型居宅介護 等老健は死亡日以前45日前から死亡日まで。訪問看護は死亡月に算定
看取り連携体制加算短期入所生活介護(2024年度新設)死亡日および死亡日以前30日以下について7日を限度

介護付き有料老人ホーム等の看取り介護加算は、死亡日以前4日以上30日以下が1日144単位、死亡日の前日および前々日が1日680単位、死亡日が1日1,280単位と、最期に近づくほど手厚く評価される構造になっています。介護老人保健施設のターミナルケア加算は2024年度改定で見直され、死亡日45日前〜31日前が1日72単位、30日前〜4日前が1日160単位、前々日・前日が1日910単位、死亡日が1,900単位となりました。

なぜ加算を見ると分かるのか加算は「やった分だけもらえるお小遣い」ではありません。算定するには、体制の要件を満たして自治体に届け出る必要があるからです。つまり加算を算定している施設は、少なくとも制度が求める体制を書面上は整えているということ。重要事項説明書の加算一覧を見れば、そこが確認できます。

加算の要件が、そのまま体制の中身になる

介護付き有料老人ホーム等の看取り介護加算では、施設側に次の要件が課されています。

  • 看取りに関する指針を定め、入居の際に本人・家族に説明して同意を得ていること
  • 医師その他の職種の者による協議の上、看取りの実績等を踏まえて指針の見直しを行っていること
  • 看取りに関する職員研修を実施していること
  • 夜間看護体制加算を算定していること(=常勤の看護師を1名以上配置し、24時間連絡できる体制を確保していること)

老健のターミナルケア加算の要件は次の3つです。

令和6年度介護報酬改定資料より(介護老人保健施設)1 医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること。
2 入所者又はその家族等の同意を得て、入所者のターミナルケアに係る計画が作成されていること。
3 医師、看護師、介護職員、支援相談員、管理栄養士等が共同して、入所者の状態又は家族の求め等に応じ随時、本人又はその家族への説明を行い、同意を得てターミナルケアが行われていること。

※1 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うこと。
※2 計画の作成にあたり、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に対する支援に努めること。
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ここは家族が使える武器です。「看取り介護加算は算定していますか」「直近1年で何件くらい看取られましたか」。この2つを聞くだけで、体制が本物かどうかはかなり見えます。制度としてあることと、実際に運用されていることは別だからです。

2024年度から義務化された「協力医療機関」の3要件

見分け方として、いま最も効くのがここです。2024年度の改定で、介護保険施設は次の要件を満たす協力医療機関を定めることが義務になりました。特別養護老人ホームの運営基準では第28条です。

指定介護老人福祉施設基準 第28条(協力医療機関等)一 入所者の病状が急変した場合等において医師又は看護職員が相談対応を行う体制を、常時確保していること。
二 当該指定介護老人福祉施設からの診療の求めがあった場合において診療を行う体制を、常時確保していること。
三 入所者の病状が急変した場合等において、(中略)入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。

2 指定介護老人福祉施設は、一年に一回以上、協力医療機関との間で、入所者の病状が急変した場合等の対応を確認するとともに、協力医療機関の名称等を、(中略)都道府県知事に届け出なければならない。

「常時確保」という言葉が2回出てきます。夜間や休日に相談できる相手がいるかどうかが、看取りができるかどうかの分かれ目だからです。深夜に呼吸が変わったとき、指示を出せる医師に連絡がつかなければ、救急車を呼ぶしかありません。

ただし3年の経過措置がありますこの義務づけには経過措置が設けられており、令和9年(2027年)3月31日までの間は「定めておくよう努めなければならない」という努力義務に読み替えられます。つまり今の時点では、3要件を満たす協力医療機関を確保できていない施設も制度上は存在しうるということです。見学時に「協力医療機関はどこですか。夜間の相談体制はどうなっていますか」と具体的に聞いてください。

あわせて、特別養護老人ホームには配置医師緊急時対応加算があります。この加算には、配置医師と施設の間で連絡方法や診療を依頼する状況について具体的な取決めがあること、複数名の配置医師を置くか、配置医師と協力医療機関の医師が連携して24時間対応できる体制を確保していることが求められています。ここも確認ポイントです。

施設の種類ごとの看取り対応の違い

施設の種類看取り対応の傾向確認すべきこと
特別養護老人ホーム終の住処としての位置づけがあり、対応する施設が多い看取り介護加算の算定、配置医師の関わり方、夜間の看護体制
介護老人保健施設在宅復帰が目的の施設だが、ターミナルケア加算があり対応は可能ターミナルケア加算の算定実績、入所継続の見通し
介護医療院医療機能を持つ施設で、看取りは想定された役割2024年度から、原則として入所者全員に国のガイドラインに沿った取組を行うことが求められている
介護付き有料老人ホーム施設差が大きい。夜間看護体制の有無で決まる看取り介護加算と夜間看護体制加算の算定、夜勤帯の看護職員の有無
住宅型有料老人ホーム・サ高住施設自体は介護を提供せず、外部の訪問看護・訪問診療で組む形連携先の訪問診療所と訪問看護ステーション、24時間対応かどうか
グループホーム医療連携体制加算を算定していれば対応可能な場合がある看護職員の確保方法、協力医療機関との距離
住宅型・サ高住の見方は少し違うこれらは施設が介護をまとめて提供する形ではないため、「そのホームが看取れるか」ではなく「そこに来る医師と訪問看護が看取れるか」が問われます。24時間対応の在宅療養支援診療所と、24時間対応体制の訪問看護ステーションが入っているかを確認してください。在宅で看取るのと構造は同じです。
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介護付きのホームなら、だいたい看取ってもらえるものなの?

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差が大きいところです。国の調査(令和元年度の老健事業)では、介護付きホームの7割以上が「ホームで亡くなりたいという希望があれば受け入れる」と答えている一方、半年間で看取り介護加算を算定した実績があるのは約3割でした。方針としては受け入れると答えても、実績はそこまで多くない。だから実績を聞くんです。

土台にあるのは国のガイドライン

看取り介護加算もターミナルケア加算も、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省、平成30年3月改訂)に沿った取組を求めています。中身はこうです。

人生の最終段階における医療・ケアの在り方(抜粋)
  • 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である。
  • 本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である。
  • 医療・ケアチームにより、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、本人・家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行うことが必要である。
  • 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない。

方針の決定手続としては、本人の意思が確認できる場合は本人の意思決定を基本とし、確認できない場合は家族等による推定意思の尊重、それも困難な場合は本人にとっての最善の方針を基本とすると定められています。いずれの場合も「話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとする」とされ、合意が得られないときは複数の専門家からなる話し合いの場を別途設置することが求められています。

ここから読み取ってほしいのは2点です。ひとつは、決めるのは本人であって施設ではないこと。もうひとつは、意思は変わってよいものとして設計されていることです。一度「延命処置はしない」と書いても、あとで変えられます。むしろ繰り返し話し合うことが前提になっています。

ターミナルケア対応可能な施設の見分け方

見学と面談で、次の順に聞いてください。曖昧な答えが返ってくる項目が、その施設の弱点です。

  1. 1看取り介護加算(またはターミナルケア加算)を算定していますか|重要事項説明書の加算一覧でも確認できます
  2. 2直近1年間の看取りの実績は何件ですか|制度上できることと、実際にやっていることを分けて聞きます
  3. 3夜間に看護職員はいますか。いない場合、誰に連絡しますか|夜勤か、オンコールか、外部連携か
  4. 4協力医療機関はどこで、夜間・休日はどう対応しますか|死亡診断を誰が行うのかまで確認します
  5. 5看取りに関する指針を見せてもらえますか|加算の要件なので、あるはずのものです
  6. 6どうなったら病院に搬送する判断になりますか|ここを聞くと、その施設の限界が具体的に分かります
  7. 7家族の付き添いや宿泊はできますか|最期の数日をどう過ごせるかに直結します
  8. 8看取り期の費用はどう変わりますか|加算分の自己負担、個室に移った場合の室料など

「看取り対応可」でも、そのまま最期まで、とは限らない

ここは正直に書きます。受け入れ体制がある施設でも、次の場面では病院搬送になることがあります。

  • 本人・家族の意向が搬送に変わったとき|これは当然の権利です。意思は変えられます
  • 施設内で対応できない医療が必要になったとき|苦痛の緩和のために処置や入院が必要になる場合があります
  • 急変の状況が看取りの経過として説明できないとき|転倒や誤嚥など、事故性が疑われる場面では搬送が原則です
  • 夜間に医師と連絡がつかないとき|だからこそ「常時確保」の体制を先に確認します

逆に、家族の側で決めておくと現場が動きやすくなることもあります。「苦しそうなときは病院へ、そうでなければここで」といった線引きを、あらかじめ言葉にしておくこと。これがあると、夜中に電話を受けた職員も家族も、迷う時間が短くなります。

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現場で何度も見てきたのは、方針が決まっていない家庭ほど、最期に混乱するという事実です。救急車を呼んだこと自体を後悔する家族もいる。だから私は、元気なうちに一度だけでも話しておくことを勧めます。完璧な結論を出す必要はありません。「この人ならどう言うか」を共有しておくだけで十分です。

よくある質問
「看取り対応可」と書いてある施設なら、最期まで診てもらえますか?
必ずしもそうとは限りません。看取り介護加算やターミナルケア加算を算定していれば、指針の策定、職員研修、24時間連絡できる体制といった要件は満たしています。ただし、施設内で対応できない医療が必要になった場合や、本人・家族の意向が変わった場合には病院搬送になります。加算の算定と、直近の看取り実績の両方を確認してください。
看取り介護加算を算定すると、自己負担は増えますか?
増えます。加算は介護報酬なので、利用者は所得に応じた割合(1〜3割)を負担します。介護付き有料老人ホーム等の看取り介護加算は死亡日が1日1,280単位、老健のターミナルケア加算は死亡日が1日1,900単位など、最期に近づくほど単価が上がる構造です。金額の目安は、地域区分による1単位の単価と負担割合によって変わるため、施設に試算してもらってください。
一度「延命処置は希望しない」と書いたら、変えられませんか?
変えられます。国のガイドラインは「本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援」が行われ、話し合いが繰り返されることが重要だとしています。方針は一度決めて終わりではなく、状態の変化に応じて見直す前提で設計されています。変更したいときは、遠慮なく施設と主治医に伝えてください。
家族の間で意見が割れたらどうなりますか?
ガイドラインは、家族等の中で意見がまとまらない場合や医療・ケアチームとの間で合意が得られない場合には、複数の専門家からなる話し合いの場を別途設置し、医療・ケアチーム以外の者を加えて検討と助言を行うことが必要だとしています。施設の相談員や担当ケアマネジャーに、この場の設置を求めてください。
老健は在宅復帰を目指す施設だと聞きました。看取りはしてもらえますか?
対応している施設はあります。介護老人保健施設にはターミナルケア加算があり、2024年度改定では死亡日の前日・前々日および死亡日の評価が引き上げられました。ただし老健は在宅復帰・在宅療養支援を役割とする施設であり、入所を継続できるかは施設の方針と状態によります。入所前に、看取りまで対応する方針かどうかを確認してください。
サービス付き高齢者向け住宅でも看取りはできますか?
できる場合があります。ただし仕組みが違います。サ高住や住宅型有料老人ホームは施設が介護をまとめて提供する形ではないため、外部の訪問診療と訪問看護を組み合わせて対応します。24時間対応の在宅療養支援診療所と、24時間対応体制をとる訪問看護ステーションが関わっているかどうかが判断の軸になります。
まとめ
  • 看取り体制は加算で判別できる。特養・介護付き有料は「看取り介護加算」、老健・訪問看護は「ターミナルケア加算」。
  • 短期入所生活介護には2024年度に「看取り連携体制加算」(64単位/日、死亡日以前30日以下について7日を限度)が新設された。
  • 介護付き有料等の看取り介護加算は、死亡日以前4〜30日で1日144単位、前日・前々日で680単位、死亡日で1,280単位。
  • 老健のターミナルケア加算は2024年度改定で、45〜31日前72単位、30〜4日前160単位、前々日・前日910単位、死亡日1,900単位に。
  • 看取り介護加算の要件は、看取り指針の策定と説明・同意、多職種協議による指針の見直し、職員研修、24時間連絡体制。
  • 加算を算定している=制度が求める体制を届け出ている、ということ。重要事項説明書で確認できる。
  • 2024年度から、介護保険施設は3要件を満たす協力医療機関を定めることが義務化された(特養は基準第28条)。
  • 3要件は、常時の相談対応体制、常時の診療体制、入院を原則受け入れる体制。年1回以上の確認と自治体への届出も必要。
  • ただし令和9年3月31日までは努力義務に読み替える経過措置がある。現時点では未整備の施設もありうる。
  • 介護医療院は2024年度から、原則入所者全員に国のガイドラインに沿った取組を行うことが求められている。
  • 住宅型有料・サ高住は「施設が看取る」のではなく、24時間対応の訪問診療・訪問看護が入るかで決まる。
  • 国のガイドラインは、本人による意思決定を基本とし、意思は変化しうるものとして繰り返し話し合うことを求めている。
  • 話し合った内容はその都度文書化する。合意できないときは複数の専門家による話し合いの場を設置する。
  • 見学では、加算の算定、直近1年の実績、夜間の看護と医師の連絡先、搬送の判断基準、付き添いの可否、費用を聞く。
  • 体制がある施設でも、対応できない医療が必要になれば搬送になる。線引きを家族側で言葉にしておくと現場が動きやすい。
参考にした情報

※制度に関する記述は上記の法令・改定資料・ガイドラインにもとづきます。条文は要旨として整理している箇所があり、正確な文言は原典をご確認ください。単位数は令和6年度改定時点のもので、その後の改定により変わる可能性があります。実際の自己負担額は、地域区分による1単位あたりの単価と所得に応じた負担割合によって異なるため、施設にご確認ください。看取りの体制・方針は施設ごとに大きく異なりますので、必ず重要事項説明書と看取りに関する指針をご確認ください。搬送の判断や見学時の確認事項に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。個別の相談は、担当ケアマネジャー、施設の相談員、主治医、市町村の介護保険担当課へ。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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