ロコモとは、骨・関節・筋肉といった運動器の障害によって、移動する機能が低下した状態のことです。正式には「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」といい、日本整形外科学会が2007年に提唱しました。

フレイルやサルコペニアと混同されますが、ロコモには数値で段階を判定できる公式のテストがあります。「40cmの台から片脚で立ち上がれるか」「大股2歩の歩幅」で、自宅でも確認できます。この記事では、判定基準と対策を整理しました。

この記事でわかること

  • ロコモの定義と、フレイル・サルコペニアとの違い
  • ロコモ度テスト3種類のやり方
  • ロコモ度1・2・3の判定基準(数値)
  • どの段階で何をすべきか
  • ロコモの原因になる病気
  • 自宅でできる運動
  • 厚労省が推奨する運動量
  • 相談先と受診の目安

ロコモとは|フレイル・サルコペニアとの違い

似た言葉が並ぶため、まず整理します。

用語指すもの提唱
ロコモ運動器(骨・関節・筋肉・神経)の障害で移動機能が低下した状態日本整形外科学会
サルコペニア加齢による筋肉量・筋力の低下主に老年医学の領域
フレイル心身の予備能力が低下し要介護に近づいた状態(身体・精神・社会を含む)日本老年医学会

関係としてはサルコペニア ⊂ ロコモ ⊂ フレイルというイメージが実務的には分かりやすいです(厳密には重なり方が異なります)。

ロコモの特徴は、筋肉だけでなく骨や関節の問題も含むことです。変形性膝関節症、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症といった疾患が原因になります。

フレイルはフレイルとは?チェック方法と予防の3本柱、サルコペニアはサルコペニアとは?診断基準と改善する運動をご覧ください。

厚労省もロコモに言及している

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、筋トレの実施割合が低い高齢者や女性について「ロコモティブシンドロームやフレイル、骨粗鬆症を特に発症しやすいことが知られています」とし、筋力及び身体機能、骨密度の維持改善が期待できる筋トレを積極的に推奨する必要があるとしています。

ロコモ度テストは3種類

日本整形外科学会が定める判定方法は、立ち上がりテスト・2ステップテスト・ロコモ25の3つです。

① 立ち上がりテスト

下肢の筋力を調べます。高さの違う台に座り、反動をつけずに立ち上がれるかを確認します。

  • 台に浅く腰かけ、両腕を胸の前で組む
  • 片脚または両脚で、反動をつけずに立ち上がる
  • 立った姿勢を3秒保てれば成功
  • 40cm → 30cm → 20cm → 10cm と台を低くしていく

② 2ステップテスト

歩幅から、下肢の筋力・柔軟性・バランスを含めた総合的な歩行能力を測ります。

  • スタート線に両足のつま先を合わせて立つ
  • できる限り大股で2歩歩き、両足を揃える(バランスを崩さない範囲で)
  • 2歩分の歩幅を測る
  • 2ステップ値=2歩幅(cm) ÷ 身長(cm)
  • 2回行って、良いほうの記録を採用

③ ロコモ25

体の状態や生活状況について25問に答える質問票です。点数が高いほど移動機能の低下が進んでいることを示します。

ロコモ度の判定基準

3つのテストの結果のうち、最も進行している段階が判定結果になります。

立ち上がりテスト2ステップ値ロコモ25
ロコモ度1どちらか一方の脚で40cmの台から立ち上がれないが、両脚で20cmの台から立ち上がれる1.1以上1.3未満7点以上16点未満
ロコモ度2両脚で20cmの台から立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる0.9以上1.1未満16点以上24点未満
ロコモ度3両脚で30cmの台から立ち上がれない0.9未満24点以上
段階状態すべきこと
ロコモ度1移動機能の低下が始まっている状態運動習慣をつける
ロコモ度2移動機能の低下が進行している状態。自立した生活ができなくなるリスクが高まる運動に加え、整形外科などでの相談
ロコモ度3移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態医師の診療を受ける

※ロコモ度テストの基準値は、日本整形外科学会が公表している内容にもとづく整理です(確度:中〜高=学会の公式サイトで確認。厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません)。

テストは必ず安全な場所で

立ち上がりテストは、失敗すると尻もちをつきます。後ろに十分なスペースがあり、周囲に物がない場所で、誰かが見守る状態で行ってください。

2ステップテストも、大股で歩くためバランスを崩しやすい動作です。無理に大きく踏み出さないでください。膝や腰に強い痛みがある方、ふらつきが強い方は行わず、整形外科でご相談ください。

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40cmの台って、どれくらいですか?

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一般的な椅子の座面の高さがだいたい40cm前後です。「片脚で椅子から立てるか」と考えると分かりやすい。両脚なら立てるが片脚では無理、という方はロコモ度1に該当する可能性があります。

介護予防の現場で使われる体力測定

ロコモ度テストは日本整形外科学会の基準ですが、市町村の介護予防事業では別の体力測定が使われています。どちらも移動機能を見る点では共通しており、併せて知っておくと理解が深まります。

厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」は、事前アセスメントについて次のように記載しています。

マニュアルの記載(原文より)

「身体機能を把握するために体力測定を実施する場合は、5m歩行時間(通常・最大)・Timed Up & Go Test・開眼片足立ち時間・5回立ち上がりテスト・握力等を測定することが望ましい

「体力測定結果は、年齢別体力基準値表を参考に5段階で評価する。参加者はどの要素がより低下しているのかを把握し、個別プログラムに生かす」

同マニュアルの「別添資料2-4 年齢別体力基準値表」には、地域在住高齢者のデータにもとづく年代別の平均値が示されています。主なものを挙げます。

測定項目65〜69歳70〜74歳75〜79歳80歳以上
快適歩行速度(m/秒)1.38±0.231.33±0.231.24±0.231.13±0.25
Timed up & go(秒)6.34±1.156.94±1.287.44±1.518.69±2.21
5回立ち上がり(秒)7.77±1.908.28±2.038.52±2.129.67±2.51
片脚立位時間(秒)40.8±20.732.5±21.625.5±19.916.2±17.9
握力・男性(kg)38.7±5.935.3±6.034.3±6.129.7±5.3
握力・女性(kg)23.8±4.022.6±3.921.5±3.719.6±3.5

ロコモ度テストが「該当するかどうか」を判定するのに対し、この基準値表は「同年代の中でどのあたりか」を5段階で位置づけるものです。目的が違うため、両方に意味があります。

数値は「変化を見る」ために使う

片脚立位時間の標準偏差を見てください。80歳以上で±17.9秒。同じ年代でも個人差が極端に大きいことが分かります。

平均と比べて一喜一憂するより、3か月後・半年後の自分と比べるほうが、はるかに有用な使い方です。運動を続けて数値が保てていれば、それ自体が成果です。

これらの測定は、通所リハビリ、市町村の介護予防事業(運動器の機能向上プログラム)などで受けられます。要介護認定がなくても参加できる場合が多いので、地域包括支援センターにお問い合わせください。

ロコモの原因になる病気

ロコモは「加齢」だけで起こるわけではありません。背景に治療できる病気があることが多いのが特徴です。

疾患特徴
変形性膝関節症立ち上がり・階段で膝が痛む。要支援の原因第1位である関節疾患の代表
骨粗鬆症・脆弱性骨折圧迫骨折、大腿骨頸部骨折。転倒で一気に進む
腰部脊柱管狭窄症歩くと脚がしびれて休む(間欠跛行)。前かがみで楽になる
変形性股関節症股関節の痛み、可動域制限
サルコペニア筋肉量・筋力の低下

厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」では、要支援者が介護を必要とするようになった原因の第1位は「関節疾患」で19.3%、第3位が「骨折・転倒」で16.1%です。運動器の問題が、要介護の入口として最も大きいことが分かります。

各疾患については、変形性膝関節症のリハビリ脊柱管狭窄症のリハビリ圧迫骨折でやってはいけないことで解説しています。

「痛いから動かない」が最も進行させる

ロコモの厄介なところは、痛み → 動かない → 筋力低下 → さらに負担が増えて痛むという循環が起こることです。

痛みがあるなら、我慢して動くのでも、諦めて動かないのでもなく、痛みの治療と並行して動くのが正解です。整形外科での治療と、理学療法士による運動指導は両立します。

自宅でできる運動

日本整形外科学会は「ロコトレ」として片脚立ちとスクワットを推奨していますが、ここでは安全性を優先した形で紹介します。

① 片脚立ち(バランス)

必ず机や椅子の背に手を添えて、左右1分ずつ×1日3回を目安に。5秒からで構いません。転倒の危険があるため、手を離して行わないでください。

② 椅子からの立ち座り(下肢筋力)

深くしゃがむスクワットより安全で、動作そのものの練習にもなります。10回×2〜3セット。座る直前に3秒かけてゆっくり下ろすと負荷が上がります。

③ かかと上げ

椅子の背につかまって、15回×2セット。ふくらはぎは歩行の推進力と立位バランスを担います。

④ ふくらはぎのストレッチ

壁に手をつき、片脚を後ろに引いてかかとを床につけたまま20〜30秒。左右2回。足首が硬いとつまずきやすくなります。

厚労省が推奨する運動量

「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の高齢者向け推奨事項は次のとおりです。

  • 3メッツ以上の身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上に相当)
  • 筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上
  • 筋力トレーニングを週2〜3日
  • 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する

あわせて「上記の強度、推奨値に満たなくとも、少しでも身体活動を行うことを推奨する」「身体活動の少ない人ほど、少しの身体活動で大きな健康増進効果が期待できます」ともしています。

具体的な種目は高齢者の筋トレメニュー9選、ストレッチは高齢者のストレッチ|優先する部位と安全なやり方をご覧ください。

栄養も同時に

厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」は、「運動と栄養摂取を組み合わせたプログラムは、サルコペニアやフレイル高齢者の筋肉量や筋力、身体パフォーマンスを改善させる効果が示されている」としています。65歳以上の目標BMIの範囲は21.5〜24.9kg/m²です。骨のためにはカルシウムとビタミンD、筋肉のためにはたんぱく質が必要です。

相談先と受診の目安

状況相談先
ロコモ度3に該当する整形外科(医師の診療が推奨されています)
痛みがある整形外科
要介護認定がない地域包括支援センター(無料・認定不要)
要支援1・2地域包括支援センター
要介護1以上担当のケアマネジャー

市町村の介護予防事業には、運動器の機能向上プログラムがあります。要介護認定がなくても参加できる場合が多いので、地域包括支援センターにお問い合わせください。

よくある質問

ロコモとフレイルの違いは何ですか?

ロコモは骨・関節・筋肉など運動器の障害による移動機能の低下を指します。フレイルは身体・精神心理・社会を含む、より広い概念です。サルコペニアは筋肉に限定した概念で、ロコモの一因になります。

ロコモ度テストは自宅でできますか?

立ち上がりテストと2ステップテストは自宅でも可能です。ただし転倒の危険があるため、後ろに十分なスペースがあり周囲に物がない場所で、誰かが見守る状態で行ってください。痛みやふらつきが強い方は行わないでください。

40cmの台とはどれくらいですか?

一般的な椅子の座面の高さがおおむね40cm前後です。「片脚で椅子から立てるか」と考えると分かりやすいです。両脚なら立てるが片脚では無理、という場合はロコモ度1に該当する可能性があります。

2ステップ値はどう計算しますか?

できる限り大股で2歩歩いた距離(cm)を身長(cm)で割ります。1.3以上が正常、1.1以上1.3未満でロコモ度1、0.9以上1.1未満でロコモ度2、0.9未満でロコモ度3です。

ロコモ度3と判定されたらどうすればいいですか?

医師の診療を受けてください。日本整形外科学会も、ロコモ度3は移動機能の低下が進行し社会参加に支障をきたしている状態として、医師の診療を推奨しています。

痛みがあっても運動すべきですか?

我慢して動くのでも、諦めて動かないのでもなく、痛みの治療と並行して動くのが正解です。痛み→動かない→筋力低下→さらに痛む、という循環が最も進行させます。整形外科での治療と運動指導は両立します。

スクワットはやったほうがいいですか?

深くしゃがむスクワットは、膝に問題がある方には負担が大きい場合があります。椅子からの立ち座りのほうが安全で、動作そのものの練習にもなります。

片脚立ちは手を離してやるべきですか?

自宅では必ず手を添えて行ってください。手を離すと転倒の危険があります。秒数より、毎日続けることを優先してください。

どのくらい運動すればいいですか?

厚労省のガイドは高齢者に筋力トレーニングを週2〜3日、多要素な運動を週3日以上を推奨しています。ただし推奨値に満たなくても「少しでも身体活動を行うことを推奨する」ともされています。

どこに相談すればいいですか?

痛みがある場合やロコモ度3の場合は整形外科です。要介護認定がなければ地域包括支援センター(無料)で、市町村の運動器機能向上プログラムを案内してもらえます。

まとめ

  • ロコモは運動器の障害で移動機能が低下した状態
  • 筋肉だけでなく骨や関節の問題も含む点がサルコペニアと違う
  • 判定は立ち上がりテスト・2ステップテスト・ロコモ25の3つ
  • 3つのうち最も進行している段階が判定結果になる
  • ロコモ度1:片脚で40cmから立てないが、両脚で20cmから立てる
  • ロコモ度2:両脚で20cmから立てないが、30cmから立てる
  • ロコモ度3:両脚で30cmから立てない
  • 2ステップ値は1.1未満でロコモ度2、0.9未満でロコモ度3
  • ロコモ度3は医師の診療が推奨されている
  • テストは転倒の危険があるため、見守りのもと安全な場所で
  • 要支援の原因第1位は関節疾患(19.3%)
  • 痛み→動かない→筋力低下→さらに痛む、の循環が最も進行させる
  • 運動は片脚立ち・立ち座り・かかと上げ・ふくらはぎのストレッチ
  • 厚労省は筋トレ週2〜3日、多要素な運動を週3日以上推奨
  • 介護予防の現場では5m歩行・TUG・片脚立位・5回立ち上がり・握力を測る
  • 厚労省の年齢別体力基準値表で、同年代の中での位置が5段階で分かる
  • 個人差が大きいため、平均との比較より自分の変化を見る
  • 運動と栄養を組み合わせると筋肉量・筋力・身体機能が改善する

参考にした情報

※ロコモ度テストの内容および判定基準は、日本整形外科学会が公表している内容にもとづいて整理したものです。同学会の基準であり、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません(確度:中〜高)。運動に関する推奨は厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」、栄養に関する記述は「介護予防マニュアル【第4版】」、統計は「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」によります。ロコモ度テストは転倒の危険を伴います。必ず安全な場所で、見守りのもと実施してください。膝・腰に強い痛みがある方、ふらつきが強い方は行わず、整形外科にご相談ください。本記事は診断を目的とするものではありません。痛みや機能低下の原因の特定と治療方針の決定は医師が行います。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味