特養の初期加算とは?30単位・30日間と算定できない3つのパターンを解説

特養の初期加算は1日につき30単位、入所日から30日間。シンプルに見えますが、算定できない・日数が削られるパターンが3つあります。
ひとつは外泊。30日間のうち外泊している日は算定できません。ふたつめは再入所。過去3月以内に同じ施設へ入所したことがあると算定できません。そして三つめが見落とされやすいショートステイからの移行——併設や空床利用のショートステイから日を空けずに入所した場合、ショートの利用日数を30日から差し引いた日数しか算定できません。
一方で救済もあります。30日を超える入院後の再入所なら、過去3月ルールにかかわらず算定できます。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 単位数は1日につき30単位、入所日から30日間であること
- 外泊している日は算定できないこと
- 過去3月以内に同じ施設に入所していると算定できないこと
- 認知症の自立度がⅢ・Ⅳ・Mなら過去1月に短縮されること
- ショートステイから移行した場合は日数が控除されること
- 30日を超える入院後の再入所は例外的に算定できること
- 届出が不要であること
- 老健の初期加算との違い
- 入退所が重なる時期の日数管理の考え方
- 算定できる日数を最大化するための実務ポイント
初期加算とは?単位数は30単位
初期加算とは、入所直後の一定期間、施設での生活に慣れるための支援を評価する加算です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 30単位 |
| 算定の単位 | 1日につき |
| 期間 | 入所した日から起算して30日以内 |
| 区分 | 1区分のみ |
| 届出 | 不要(体制届出の規定なし) |
ハ 初期加算 30単位
注 入所した日から起算して30日以内の期間については、初期加算として、1日につき所定単位数を加算する。30日を超える病院又は診療所への入院後に指定介護老人福祉施設に再び入所した場合も、同様とする。
老企第40号が趣旨を説明しています。
入所者については、指定介護老人福祉施設へ入所した当初には、施設での生活に慣れるために様々な支援を必要とすることから、入所日から30日間に限って、1日につき30単位を加算すること。
30単位×30日=900単位。1単位10円換算で約9,000円です。体制の届出も、人員配置も、記録様式の指定もありません。
だからこそ、算定できるはずの日数を落とさないことがこの加算の実務のすべてになります。
落とし穴①——外泊中は算定できない
「入所日から30日間」中に外泊を行った場合、当該外泊を行っている間は、初期加算を算定できないこと。
- 外泊している間は算定できない
- ただし30日間の起算日が後ろにずれるわけではない(入所日から数えて30日以内という枠は動かない)
入所後まもなく家族の希望で数日外泊した場合、その日数分は単純に算定できる日が減ります。30日の枠が延びるわけではないため、外泊が多いほど算定日数は目減りします。
落とし穴②——過去3月以内の入所歴
初期加算は、当該入所者が過去3月間(ただし、日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当する者の場合は過去1月間とする。)の間に、当該指定介護老人福祉施設に入所したことがない場合に限り算定できることとする。
| 入所者の状態 | 入所歴を見る期間 |
|---|---|
| 一般 | 過去3月間 |
| 認知症高齢者の日常生活自立度がランクⅢ・Ⅳ・M | 過去1月間 |
ちびウルフなぜ認知症が重い人だけ1月に短くなるんですか?
リハウルフこの加算が評価しているのは「施設での生活に慣れるための支援」だからだと理解している。
認知症が進んでいる方は、1か月離れただけで環境がまた新しいものになる。だからもう一度、慣れるための支援が必要になる。逆に、認知機能が保たれている方なら3か月くらいは記憶が残っている——そういう考え方の線引きだと読める。
実務で大事なのは、再入所の受け入れ時に自立度を確認すること。ランクⅢ以上なら、1か月空いていれば算定できる。3か月ルールだと思い込んで諦めているケースがあるはずだよ。
落とし穴③——ショートステイからの移行は日数が控除される
もっとも見落とされやすい規定です。
なお、当該指定介護老人福祉施設の併設又は空床利用の短期入所生活介護(単独型の場合であっても一定の場合を含む。)を利用していた者が日を空けることなく引き続き当該施設に入所した場合(短期入所から退所した翌日に当該施設に入所した場合を含む。)については、初期加算は入所直前の短期入所生活介護の利用日数を30日から控除して得た日数に限り算定するものとする。
| 直前のショート利用日数 | 算定できる初期加算の日数 | 単位数 |
|---|---|---|
| 0日(ショート利用なし) | 30日 | 900単位 |
| 7日 | 23日 | 690単位 |
| 14日 | 16日 | 480単位 |
| 30日以上 | 0日 | 算定できない |
控除の対象になるのは、ショートステイから日を空けずに引き続き入所した場合です。通知は「短期入所から退所した翌日に当該施設に入所した場合を含む」としています。
特養の入所待ちの間にショートステイでつなぐ、という運用は現場でよくあります。その日数がそのまま初期加算から差し引かれることを、請求担当と入所相談の担当の双方が知っておく必要があります。
対象は併設または空床利用のショートステイ(単独型でも一定の場合を含む)です。他法人のショートステイを利用していた場合は、この控除の対象になりません。
救済——30日を超える入院後の再入所
告示の注の後段と、通知④が例外を定めています。
30日を超える病院又は診療所への入院後に指定介護老人福祉施設に再び入所した場合も、同様とする。(告示)
30日を超える病院又は診療所への入院後に再入所した場合は、(過去3月ルール)にかかわらず、初期加算が算定されるものであること。(通知④)
- 入院期間が30日を超えること
- その入院後に再び入所すること
- この場合は過去3月(または1月)以内の入所歴があっても算定できる
ちょうど30日の入院では要件を満たしません。31日以上の入院が必要です。
長期入院から戻った入所者は、体力も生活リズムも入院前とは変わっています。あらためて施設生活に慣れるための支援が必要——という考え方で、再算定が認められています。
入院期間の記録は、この加算の算定根拠そのものになります。入院日と退院日を必ず残してください。
ケースで確認する算定日数
3つのパターンで、実際に何日算定できるかを整理します。
ケース1 在宅から直接入所、外泊3日
- 過去3月以内の入所歴:なし
- 直前のショートステイ利用:なし
- 30日間のうち外泊:3日
算定できるのは27日分=810単位。入所日から30日という枠は動かないため、外泊した3日分がそのまま減ります。
ケース2 併設ショートを10日利用してから入所
- 入所待ちの間、自施設の併設ショートステイを10日連続で利用
- ショート退所の翌日に入所
- 外泊なし
30日から10日を控除して20日分=600単位。ショートで「慣れる期間」をすでに過ごしているという考え方です。
なお、ショート退所から日が空いていれば控除の対象になりません。通知は「日を空けることなく引き続き当該施設に入所した場合(短期入所から退所した翌日に当該施設に入所した場合を含む。)」としています。日を空けるかどうかは本人の生活の都合で決まるべきもので、加算のために調整する性質のものではありません。
ケース3 入所2か月目に45日間入院し、退院後に再入所
- 入院期間:45日(30日を超える)
- 過去3月以内に当該施設への入所歴:あり
過去3月ルールに該当しますが、30日を超える入院後の再入所は例外とされています。したがって再入所日から30日間、あらためて算定できます=最大900単位。
30日を超えていないため例外にあたらず、過去3月以内の入所歴があることから算定できません。
入院日数が30日前後になるケースでは、1日の差で900単位が変わります。入院日と退院日を正確に記録しておくことが、そのまま請求の根拠になります。
老健の初期加算との違い
| 項目 | 特養 | 老健 |
|---|---|---|
| 区分 | 1区分 | (Ⅰ)(Ⅱ)の2区分 |
| 単位数 | 30単位/日 | (Ⅰ)60単位/(Ⅱ)30単位 |
| 期間 | 入所日から30日以内 | |
老健は令和6年度改定で初期加算が2区分に分かれ、上位区分が60単位になりました。特養は30単位の1区分のままです。他施設の解説をそのまま当てはめないよう注意してください。
他の加算との併算定
初期加算の注には、他の加算との排他規定が置かれていません。特養の他の加算といずれも併算定できます。
| 加算 | 併算定 |
|---|---|
| 日常生活継続支援加算 | 可 |
| 看護体制加算 | 可 |
| 夜勤職員配置加算 | 可 |
| 栄養マネジメント強化加算 | 可 |
| 科学的介護推進体制加算 | 可 |
入所直後は、栄養ケア計画の作成やアセスメントが集中する時期でもあります。初期加算と並行して、他の加算の算定要件を整えていくのが実務の流れになります。
算定日数を落とさないための実務ポイント
- 入所受付の段階で、過去3月以内(自立度Ⅲ以上なら過去1月以内)に自施設への入所歴がないかを確認する
- 入所歴がある場合は、認知症高齢者の日常生活自立度を確認する(ランクⅢ以上なら1月ルール)
- 直前に自施設の併設・空床利用ショートステイを利用していないかを確認する
- 利用していた場合は、その日数を30日から控除して算定日数を計算する
- 入院後の再入所であれば、入院期間が31日以上かを確認する
- 31日以上なら、過去3月以内の入所歴があっても算定できることを請求担当に伝える
- 入所日を起算日として、30日目がいつになるかをカレンダーに記録する
- 30日間のうち外泊があった日を除外して請求する
1つ目から4つ目は入所相談の段階で確認できる情報です。請求の直前に慌てて調べるより、入所受付のチェックリストに組み込んでおくほうが確実です。
よくある質問
単位数と期間は?
1日につき30単位を、入所した日から起算して30日以内の期間について算定します。
外泊した日も算定できますか?
できません。通知は「30日間中に外泊を行った場合、当該外泊を行っている間は、初期加算を算定できない」としています。
外泊した分だけ期間は延びますか?
延びません。入所日から30日以内という枠は変わらないため、外泊した日数分は算定できる日が減ります。
以前に同じ施設に入所していた場合は?
過去3月間に当該施設に入所したことがない場合に限り算定できます。認知症高齢者の日常生活自立度がランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する方は過去1月間で判断します。
ショートステイから入所した場合は?
当該施設の併設または空床利用の短期入所生活介護を日を空けることなく引き続き利用していた場合、入所直前のショートステイの利用日数を30日から控除した日数に限り算定します。
ショートを30日以上使っていたら算定できませんか?
控除の結果、算定できる日数が0日になります。
他法人のショートステイでも控除されますか?
通知が挙げているのは「当該指定介護老人福祉施設の併設又は空床利用の短期入所生活介護」です。詳細な取扱いは指定権者にご確認ください。
入院後に戻ってきた場合は算定できますか?
30日を超える病院・診療所への入院後に再入所した場合は、過去3月以内の入所歴にかかわらず算定できます。
ちょうど30日の入院でも算定できますか?
条文は「30日を超える」入院としているため、31日以上の入院が必要です。
届出は必要ですか?
告示の注に体制の届出を求める規定は置かれていません。
老健の初期加算と単位数は同じですか?
違います。老健は(Ⅰ)60単位・(Ⅱ)30単位の2区分ですが、特養は30単位の1区分です。
他の加算と併算定できますか?
できます。初期加算の注に他の加算との排他規定は置かれていません。
- 特養の初期加算は1日につき30単位
- 入所した日から起算して30日以内の期間について算定する
- 30日フルで算定すれば900単位
- 区分は1つで、体制の届出は不要
- 趣旨は「施設での生活に慣れるための支援」の評価
- 外泊している間は算定できない
- 外泊しても30日の枠は延びない
- 過去3月間に当該施設に入所したことがない場合に限り算定できる
- 認知症高齢者の日常生活自立度がランクⅢ・Ⅳ・Mなら過去1月間で判断する
- 再入所時は自立度の確認で算定可否が変わる
- 併設・空床利用のショートステイから日を空けず入所した場合は日数が控除される
- ショートを14日使っていれば算定は16日分
- ショートを30日以上使っていれば算定できない
- 30日を超える入院後の再入所は過去3月ルールにかかわらず算定できる
- 「30日を超える」=31日以上の入院
- 入院日と退院日の記録が算定根拠になる
- 老健は(Ⅰ)60単位・(Ⅱ)30単位の2区分で、特養とは構造が違う
- 他の加算との排他規定はない
- 入所受付のチェックリストに確認事項を組み込むのが確実
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号) 介護福祉施設サービス ハ 初期加算(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第40号) 介護福祉施設サービス(22)初期加算について
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。ショートステイの利用日数の控除については、対象となるショートステイの範囲(単独型の取扱いを含む)や日数の数え方に個別の判断を要する場合があります。判断に迷う場合は事前に指定権者へご確認ください。認知症高齢者の日常生活自立度の確認方法、外泊の範囲についても指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。入所受付での確認手順に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




