特養には「在宅」に関わる加算が2つあります。在宅復帰支援機能加算10単位/日在宅・入所相互利用加算40単位/日

前者は施設全体の在宅復帰実績を評価する体制加算、後者は1つの居室を複数の入所者で計画的に使い回す「ベッド・シェアリング」を評価する加算です。性格がまったく違います。

そして条文レベルでつながっています。在宅復帰支援機能加算の「20%超」を計算するとき、在宅・入所相互利用加算を算定している者は退所者の数から除きます。相互利用は「退所」として数えない、という整理です。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第70号・第71号、同第94号、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 2つの加算の単位数と性格の違い
  • 在宅復帰支援機能加算の「前6月間20%超」という実績要件
  • 入所期間1月以下の退所者は分子に入らないこと
  • 退所後30日以内の確認と記録が必要なこと
  • 老健・介護医療院は30%超で、特養より高いこと
  • 在宅・入所相互利用加算はベッド・シェアリングの加算であること
  • 入所期間は3月が限度であること
  • 在宅期間・入所期間について文書による同意が必要なこと
  • 支援チームとカンファレンスの要件
  • 2つの加算が条文でつながっていること

2つの加算を並べて整理する

項目在宅復帰支援機能加算在宅・入所相互利用加算
単位数10単位/日40単位/日
性格施設の実績を評価個々の利用形態を評価
算定対象入所者全員対象となる入所者のみ
届出規定なし必要
キーワード前6月間・20%超ベッド・シェアリング・3月限度

在宅復帰支援機能加算10単位——実績が問われる

タ 在宅復帰支援機能加算 10単位

注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合する指定介護老人福祉施設であって、次に掲げる基準のいずれにも適合している場合にあっては、1日につき所定単位数を加算する。
イ 入所者の家族との連絡調整を行っていること。
ロ 入所者が利用を希望する指定居宅介護支援事業者に対して、入所者に係る居宅サービスに必要な情報の提供、退所後の居宅サービスの利用に関する調整を行っていること。

告示の注は「家族との連絡調整」と「ケアマネへの情報提供・調整」の2つですが、その前段の「別に厚生労働大臣が定める基準に適合する」に実績要件が入っています。

要件イ——前6月間の在宅復帰率20%超

イ 算定日が属する月の前六月間において当該施設から退所した者(在宅・入所相互利用加算を算定しているものを除く。以下「退所者」という。)の総数のうち、当該期間内に退所し、在宅において介護を受けることとなったもの(当該施設における入所期間が一月間を超えていた退所者に限る。)の占める割合が百分の二十を超えていること。

要素内容
判定期間算定日が属する月の前6月間
分母期間内の退所者の総数(在宅・入所相互利用加算の算定者を除く)
分子退所して在宅で介護を受けることとなった者入所期間が1月間を超えていた者に限る)
基準20%を超えていること
分子には「入所期間1月超」という条件がある

入所して1か月以内に在宅へ戻った方は、分子に数えられません。ただし分母(退所者の総数)には入ります。

短期間で在宅に戻るケースが多い施設ほど、割合が下がる構造です。「在宅復帰が多い施設ほど有利」とは限らないという点に注意してください。

なお、退所者の総数からは在宅・入所相互利用加算を算定している者が除かれます。相互利用は在宅と入所を計画的に往復する仕組みなので、通常の「退所」とは別に扱われます。

要件ロ——退所後30日以内の確認と記録

ロ 退所者の退所後三十日以内に、当該施設の従業者が当該退所者の居宅を訪問すること又は指定居宅介護支援事業者から情報提供を受けることにより、当該退所者の在宅における生活が一月以上継続する見込みであることを確認し、記録していること。

  • タイミングは退所後30日以内
  • 方法は①施設従業者が居宅を訪問、または②居宅介護支援事業者から情報提供を受ける
  • 確認する内容は在宅生活が1月以上継続する見込み
  • 記録すること
ちびウルフちびウルフ

退所した人の家まで行かないといけないんですか?

リハウルフリハウルフ

訪問「又は」ケアマネからの情報提供、と書いてある。どちらか一方でいい。

実務的には、退所先の居宅介護支援事業所に「30日以内に生活の様子を教えてください」と依頼するほうが現実的だと思う。ケアマネはどのみち初回のモニタリングに入る。

ケアマネの側から見ても、退所した施設から連絡が来るのはありがたい。施設での様子を聞ける機会にもなるからね。依頼するときに、施設側の情報も持っていくと関係が続きやすいよ。

告示の注の2要件も忘れずに

実績要件に目が行きがちですが、告示の注にある2つも要件です。

「入所者の家族との連絡調整」とは、入所者が在宅へ退所するに当たり、当該入所者及びその家族に対して次に掲げる支援を行うこと。

退所後の居宅サービスその他の保健医療サービス又は福祉サービスについて相談援助を行うこと。また必要に応じ、当該入所者の同意を得て退所後の居住地を管轄する市町村及び地域包括支援センター又は老人介護支援センターに対して当該入所者の介護状況を示す文書を添えて当該入所者に係る居宅サービスに必要な情報を提供すること。

相談援助の内容も具体的に示されています。

相談援助の内容
食事、入浴、健康管理等在宅における生活に関する相談援助
退所する者の運動機能及び日常生活動作能力の維持・向上を目的とした各種訓練等に関する相談助言
家屋の改善に関する相談援助
退所する者の介助方法に関する相談援助

通知③は「算定を行った場合は、その算定根拠等の関係書類を整備しておくこと」としています。実績の計算根拠と、上記の相談援助の記録の両方が必要です。

老健・介護医療院は30%超

施設在宅復帰の割合
特養(地域密着型含む)20%超
老健・介護医療院30%超

告示第91号が「第70号の規定を準用する。この場合において、同号イ中『百分の二十』とあるのは、『百分の三十』とする」としています。在宅復帰を主目的とする老健のほうが、高い水準を求められるという設計です。

在宅・入所相互利用加算40単位——ベッド・シェアリング

レ 在宅・入所相互利用加算 40単位

注 別に厚生労働大臣が定める者に対して、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する指定介護福祉施設サービスを行い、かつ、(中略)届出を行った場合においては、1日につき所定単位数を加算する。

対象者の定義がそのまま仕組みの説明になっている

在宅生活を継続する観点から、複数の者であらかじめ在宅期間及び入所期間(入所期間が三月を超えるときは、三月を限度とする。)を定めて、当該施設の居室を計画的に利用している者

1つの居室を複数人で計画的に使う

通知は、この加算を「在宅・入所相互利用(ベッド・シェアリング)加算」と呼んでいます。

Aさんが3か月入所している間、Bさんは在宅。Bさんが入所したらAさんは在宅へ——というように、1つの居室を複数の入所者があらかじめ定めた期間で交代しながら使う仕組みです。

目的は「可能な限り対象者が在宅生活を継続できるようにすること」。入所しっぱなしにせず、在宅と施設を計画的に往復させる設計です。

入所期間は3月が限度

在宅・入所相互利用を開始するに当たり、在宅期間と入所期間(入所期間については三月を限度とする)について、文書による同意を得ることが必要である。

  • あらかじめ在宅期間と入所期間を定める
  • 入所期間は3月が限度
  • 文書による同意が必要(口頭では足りない)

支援チームとカンファレンス

ロ 在宅期間と入所期間を通じて一貫した方針の下に介護を進める観点から、施設の介護支援専門員、施設の介護職員等、在宅の介護支援専門員、在宅期間に対象者が利用する居宅サービス事業者等による支援チームをつくること。

ハ 当該支援チームは、必要に応じ随時(利用者が施設に入所する前及び施設から退所して在宅に戻る前においては必須とし、おおむね一月に一回)カンファレンスを開くこと。

ニ カンファレンスにおいては、それまでの在宅期間又は入所期間における対象者の心身の状況を報告し、目標及び方針に照らした介護の評価を行うとともに、次期の在宅期間又は入所期間における介護の目標及び方針をまとめ、記録すること。

タイミングカンファレンス
入所する前必須
退所して在宅に戻る前必須
その他おおむね1月に1回

大臣基準(告示第95号第71号)も、在宅のケアマネと施設のケアマネが十分に情報交換し、双方が合意のうえで目標・方針を定め、本人・家族に説明して同意を得ることを求めています。

2人のケアマネが並走する

この加算の運営上の難所は、在宅の介護支援専門員と施設の介護支援専門員が同時に関わり続けることです。通知も「施設の介護支援専門員及び在宅の介護支援専門員の機能及び役割分担については、支援チームの中で協議して適切な形態を定めること」としています。

どちらが計画の主体になるのか、月1回のカンファレンスを誰が招集するのか——開始前に役割分担を文書で決めておかないと、運用が止まります。

2つの加算の関係

論点取扱い
在宅復帰支援機能加算の分母(退所者の総数)在宅・入所相互利用加算を算定している者は除く
同一施設で両方算定できるかそれぞれ要件を満たせば可(対象が異なる)

在宅・入所相互利用の対象者は、あらかじめ定めた期間で在宅と入所を往復します。これを「退所した」と数えると在宅復帰率が実態と合わなくなるため、分母から外す整理になっています。

算定にあたっての実務ステップ

  • 【在宅復帰】前6月間の退所者を集計する(在宅・入所相互利用加算の算定者を除く)
  • 【在宅復帰】そのうち在宅で介護を受けることとなった者を、入所期間1月超に限って数える
  • 【在宅復帰】割合が20%を超えているかを確認する
  • 【在宅復帰】退所者ごとに、退所後30日以内の訪問またはケアマネからの情報提供で在宅生活の継続見込みを確認し、記録する
  • 【在宅復帰】家族への相談援助(生活・訓練・家屋改善・介助方法)と、ケアマネへの情報提供・調整の記録を残す
  • 【相互利用】対象者ごとに在宅期間と入所期間を定める(入所期間は3月まで)
  • 【相互利用】文書による同意を得る
  • 【相互利用】施設・在宅のケアマネ、施設職員、居宅サービス事業者で支援チームをつくる
  • 【相互利用】入所前・退所前は必ずカンファレンスを開き、以降もおおむね月1回開催する
  • 【相互利用】カンファレンスで評価と次期の目標・方針をまとめ、記録する
  • 【相互利用】都道府県知事へ届け出る

在宅復帰支援機能加算は毎月、前6月間の実績を計算し直す必要があります。退所者が少ない月に割合が跳ねることもあるため、月次で管理してください。

よくある質問

2つの加算の単位数は?

在宅復帰支援機能加算は10単位/日、在宅・入所相互利用加算は40単位/日です。

在宅復帰支援機能加算の実績要件は?

算定日が属する月の前6月間の退所者の総数のうち、在宅で介護を受けることとなった者の割合が20%を超えていることです。

入所してすぐ在宅に戻った人も分子に入りますか?

入りません。分子は「当該施設における入所期間が1月間を超えていた退所者」に限られます。

在宅・入所相互利用の対象者は退所者に含めますか?

含めません。告示は「在宅・入所相互利用加算を算定しているものを除く」としています。

退所後の確認は必ず訪問が必要ですか?

必要ありません。施設の従業者が居宅を訪問するか、指定居宅介護支援事業者から情報提供を受けるかのいずれかで確認します。

何を確認するのですか?

退所者の在宅における生活が1月以上継続する見込みであることです。確認したうえで記録が必要です。

老健も20%超ですか?

違います。老健と介護医療院は30%超です。

在宅・入所相互利用加算とはどんな仕組みですか?

ベッド・シェアリングとも呼ばれ、複数の者があらかじめ在宅期間と入所期間を定めて、施設の居室を計画的に利用する仕組みです。

入所期間に上限はありますか?

3月が限度です。

同意は口頭でよいですか?

いいえ。在宅期間と入所期間について文書による同意を得ることが必要とされています。

カンファレンスはいつ開きますか?

施設に入所する前と、退所して在宅に戻る前は必須です。そのほか、おおむね1月に1回開催します。

施設と在宅のケアマネの役割はどう決めますか?

通知は「支援チームの中で協議して適切な形態を定めること」としています。開始前に役割分担を決めておくことをおすすめします。

まとめ
  • 特養の在宅関連加算は在宅復帰支援機能加算10単位と在宅・入所相互利用加算40単位
  • 前者は施設の実績を評価し、入所者全員に算定できる
  • 後者は個々の利用形態を評価し、対象者にのみ算定する
  • 在宅復帰支援機能加算は前6月間の在宅復帰の割合が20%超であること
  • 分子は入所期間が1月間を超えていた退所者に限られる
  • 分母からは在宅・入所相互利用加算の算定者を除く
  • 退所後30日以内に在宅生活が1月以上継続する見込みを確認する
  • 確認は施設従業者の居宅訪問またはケアマネからの情報提供のいずれかでよい
  • 確認結果の記録が必要
  • 家族との連絡調整とケアマネへの情報提供・調整も要件
  • 相談援助は生活・訓練・家屋改善・介助方法の4分野
  • 算定根拠等の関係書類を整備する
  • 老健・介護医療院は30%超で、特養より高い水準
  • 在宅・入所相互利用加算はベッド・シェアリングの仕組み
  • 複数の者があらかじめ在宅期間と入所期間を定めて居室を計画的に利用する
  • 入所期間は3月が限度
  • 在宅期間と入所期間について文書による同意が必要
  • 施設・在宅のケアマネ等による支援チームをつくる
  • 入所前と退所前のカンファレンスは必須、以降おおむね月1回
  • カンファレンスで評価と次期の目標・方針をまとめ記録する
  • 2人のケアマネの役割分担を開始前に決めておく
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。「在宅において介護を受けることとなった者」の範囲、割合の集計方法、退所後の確認方法や記録の様式、在宅・入所相互利用における期間設定や届出の方法については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。ケアマネジャー間の役割分担や運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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