特養の退所時等相談援助加算とは?5つの加算と退所先別の算定可否を解説

特養の退所時等相談援助加算は、退所前訪問相談援助460単位・退所後訪問相談援助460単位・退所時相談援助400単位・退所前連携500単位・退所時情報提供250単位の5つで構成されています。
居宅へ退所する方について条件がそろえば、1人あたり最大2,280単位(退所前訪問を2回算定した場合)。1単位10円換算で約2.3万円です。にもかかわらず、算定されていない施設が少なくありません。
算定漏れが起きる理由は、5つの加算で「対象となる退所先」「算定する日」「必要な相手」がそれぞれ違うことにあります。病院へ入院する場合は4つが算定できず、代わりに1つだけが算定できる。他の社会福祉施設へ移る場合は3つが算定できて2つが算定できない——この切り分けを表にして整理しました。
典拠は指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の「ヘ 退所時等相談援助加算」、老企第40号第二の5(25)です。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 5つの加算の単位数と、まとめて算定した場合の合計
- 退所先ごとに算定できる加算の組み合わせ
- 「社会福祉施設等」から病院・診療所・介護保険施設が除かれること
- 死亡退所では4つが算定できないこと
- 加算ごとに算定日が違うこと(退所日か訪問日か)
- 相談援助は入所者と家族の「いずれにも」行う必要があること
- 退所時相談援助加算の「2週間以内」の情報提供先
- 退所時情報提供加算で同一月の再入院が算定できないこと
5つの加算の単位数
告示21号の「ヘ 退所時等相談援助加算」は、次の5区分です。
| 加算 | 単位数 | 回数の限度 |
|---|---|---|
| (1) 退所前訪問相談援助加算 | 460単位 | 入所中1回(早期に必要と認められる場合は2回) |
| (2) 退所後訪問相談援助加算 | 460単位 | 退所後1回 |
| (3) 退所時相談援助加算 | 400単位 | 入所者1人につき1回 |
| (4) 退所前連携加算 | 500単位 | 入所者1人につき1回 |
| (5) 退所時情報提供加算 | 250単位 | 入所者1人につき1回 |
居宅へ退所し、退所前訪問を2回行った場合の最大は次のとおりです。
退所前訪問 460×2=920単位
退所後訪問 460単位
退所時相談援助 400単位
退所前連携 500単位
合計 2,280単位
1人あたり約2.3万円(1単位10円換算・地域区分単価は考慮せず)。退所時情報提供加算250単位は医療機関へ入院する場合の加算なので、この組み合わせには入りません。
退所先ごとに算定できる加算が違う
ここがこの加算群の要です。5つを退所先で切り分けると、次のようになります。
| 退所先 | 退所前訪問 460 | 退所後訪問 460 | 退所時相談援助 400 | 退所前連携 500 | 退所時情報提供 250 |
|---|---|---|---|---|---|
| 居宅 | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
| 他の社会福祉施設等 | ○ | ○ | ○ | × | × |
| 病院・診療所へ入院 | × | × | × | × | ○ |
| 他の介護保険施設 | × | × | × | × | × |
| 死亡退所 | × | × | × | × | × |
「社会福祉施設等」から病院・診療所・介護保険施設は除かれる
告示注1の括弧書きが、この用語を定義しています。
他の社会福祉施設等(病院、診療所及び介護保険施設を除く。以下同じ。)
つまり老健や介護医療院へ移る場合は「社会福祉施設等」に当たりません。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、障害者支援施設などが該当します。
算定できない3つの場合
老企第40号①ニは、退所前訪問相談援助加算と退所後訪問相談援助加算について、算定できない場合を挙げています。
- 退所して病院又は診療所へ入院する場合
- 退所して他の介護保険施設へ入院又は入所する場合
- 死亡退所の場合
そして通知②ロは「①のニからトまでは、退所時相談援助加算について準用する」、通知③ハは「①のニ及びホは、退所前連携加算について準用する」としています。
つまりこの3つの除外は、退所前訪問・退所後訪問・退所時相談援助・退所前連携の4つすべてに共通します。
看取りを行った方について、退所前訪問相談援助加算などを算定することはできません。死亡退所は明示的に除外されています。
看取り期に居宅へ戻り、在宅で亡くなった場合はどうか——という点は条文から一義的に読み取れません。退所時点では「居宅へ退所」であり死亡退所ではないため、退所前訪問相談援助加算などの要件は満たしうると読めますが、退所後訪問相談援助加算は退所後30日以内の訪問が要件なので、訪問前に亡くなれば算定できません。判断に迷う場合は指定権者にご確認ください。
加算ごとに「算定する日」が違う
老企第40号①ハ・③イが、算定日を明示しています。
| 加算 | 算定する日 |
|---|---|
| 退所前訪問相談援助加算 | 退所日(訪問日ではない) |
| 退所後訪問相談援助加算 | 訪問日 |
| 退所前連携加算 | 退所日 |
退所前訪問は「訪問した日」ではなく「退所日」に算定します。月をまたぐケースで請求月を誤りやすいところです。3月に訪問して4月に退所したなら、4月分の請求に計上します。
相談援助は「入所者及びその家族等のいずれにも」行う
老企第40号①ヘは、短いながら重要な要件です。
退所前訪問相談援助及び退所後訪問相談援助は、入所者及びその家族等のいずれにも行うこと。
「または」ではなく「いずれにも」です。本人だけ、あるいは家族だけへの相談援助では要件を満たしません。この要件は退所時相談援助加算にも準用されます(通知②ロ)。
また通知①ホは、実施主体についてこう定めています。
退所前訪問相談援助及び退所後訪問相談援助は、介護支援専門員、生活相談員、看護職員、機能訓練指導員又は医師が協力して行うこと。
告示は「いずれかの職種の者が」訪問すればよいとしていますが、通知は「協力して行う」としています。訪問するのは1人でも、援助内容は多職種で検討したうえで行うという趣旨と読めます。
ちびウルフ生活相談員が1人で訪問して、家族に説明してきた——では足りないということですか?
リハウルフ2つの要件を落としています。①本人にも相談援助を行うこと、②多職種で協力して行うこと。
とくに①は見落とされがちです。居宅を訪問するとき、本人は施設にいることが多い。だからといって家族だけへの説明で済ませると、要件を満たしません。訪問前後に本人へも相談援助を行い、その記録を残す必要があります。
②については、訪問前のカンファレンスで機能訓練指導員や看護職員から情報を集め、その記録を残すのが実務的な対応です。理学療法士の立場から言えば、家屋の状況を見て手すりや段差の助言をするのは本来リハ職の役割。訪問に同行できなくても、写真や採寸をもとに助言する形で関与できます。
記録すべきこと
通知①トは、次のとおりです。
- 相談援助を行った日
- 相談援助の内容の要点
退所前連携加算については、通知③ロが「連携を行った日及び連携の内容の要点に関する記録を行うこと」としています。
退所前訪問相談援助加算が2回になる場合
告示は「入所中1回(入所後早期に退所前訪問相談援助の必要があると認められる入所者にあっては、2回)」としています。通知①イは、2回の意味づけを明確にしています。
| 目的 | |
|---|---|
| 1回目 | 退所を念頭においた施設サービス計画の策定に当たって行う |
| 2回目 | 退所後、在宅又は社会福祉施設等における生活に向けた最終調整を目的として行う |
単に2回訪問すればよいのではなく、それぞれ目的が違うという整理です。記録にも目的の違いが表れている必要があります。
なお前提として、「入所期間が1月を超えると見込まれる入所者」であることが要件です。短期の入所では算定できません。
退所時相談援助加算は「2週間以内の情報提供」がセット
退所時相談援助加算400単位は、相談援助だけでは算定できません。告示注3は「かつ」でつないでいます。
- 退所時に、入所者およびその家族等に対して相談援助を行う
退所後の居宅サービス、地域密着型サービスその他の保健医療サービス又は福祉サービスについて。 - 同意を得て、退所の日から2週間以内に情報提供を行う
退所後の居宅地を管轄する市町村および老人介護支援センターに対して、介護状況を示す文書を添えて、居宅サービス等に必要な情報を提供する。
老人介護支援センター(在宅介護支援センター)は、地域によっては設置されていない、あるいは実質的に地域包括支援センターへ移行しています。
通知②ハがこれに対応しています。「老人福祉法第20条の7の2に規定する老人介護支援センターに替え、法第115条の46第1項に規定する地域包括支援センターに対して行った場合についても、算定できる」。
実務では地域包括支援センターへの情報提供で足ります。ただし市町村への提供は別途必要です。提供先は2か所である点に注意してください。
相談援助の内容は4項目
通知②イは、退所時相談援助の内容を例示しています。
| 相談援助の内容 | |
|---|---|
| a | 食事、入浴、健康管理等、在宅又は社会福祉施設等における生活に関する相談援助 |
| b | 退所する者の運動機能及び日常生活動作能力の維持及び向上を目的として行う各種訓練等に関する相談援助 |
| c | 家屋の改善に関する相談援助 |
| d | 退所する者の介助方法に関する相談援助 |
4項目のうち3つ(b・c・d)がリハビリテーション領域です。在宅復帰支援機能加算の相談援助内容としても同じ4項目が挙げられており、退所支援における機能訓練指導員の関与が想定されていることがわかります。
退所前連携加算は居宅退所限定
退所前連携加算500単位は、5つのなかで単位数が最大です。要件は次の2つを「かつ」で満たすことです。
- 退所に先立って、入所者が利用を希望する指定居宅介護支援事業者に対して、同意を得て、介護状況を示す文書を添えて居宅サービス等に必要な情報を提供する
- 当該指定居宅介護支援事業者と連携して、退所後の居宅サービス等の利用に関する調整を行う
告示注4には、他の加算にある「社会福祉施設等に入所する場合も同様に算定する」という第2段落がありません。この加算は居宅へ退所する場合に限られます。
在宅・入所相互利用加算との関係
通知③ニに、特有の規定があります。
在宅・入所相互利用加算の対象となる入所者について退所前連携加算を算定する場合には、最初に在宅期間に移るときにのみ算定できるものとする。
在宅・入所相互利用(ベッドシェアリング)は、在宅と入所を繰り返す仕組みです。そのたびに500単位を算定できるわけではなく、初回のみということです。
退所時情報提供加算は医療機関への入院が対象
5つのなかで唯一、医療機関へ入院する場合の加算です。
- 入所者が退所し、医療機関に入院する場合
- 当該医療機関に対して、同意を得て、心身の状況、生活歴等の情報を提供したうえで紹介を行う
- 入所者1人につき1回に限り
通知④イは、様式まで指定しています。
当該医療機関に対して、入所者を紹介するに当たっては、別紙様式13の文書に必要な事項を記載の上、当該医療機関に交付するとともに、交付した文書の写しを介護記録等に添付すること。
通知④ロは、次のとおりです。
「入所者が医療機関に入院後、当該医療機関を退院し、同一月に再度当該医療機関に入院する場合には、本加算は算定できない。」
短期間で入退院を繰り返すケースでは、月に1回しか算定できません。「1人につき1回」という限度と併せて、実務では管理が必要です。
関連する加算との整理
特養には、退所に関連する加算が他にもあります。混同しないよう並べます。
| 加算 | 単位数 | 場面 |
|---|---|---|
| 退所前訪問相談援助加算 | 460単位 | 退所前に居宅等を訪問 |
| 退所後訪問相談援助加算 | 460単位 | 退所後30日以内に居宅等を訪問 |
| 退所時相談援助加算 | 400単位 | 退所時の相談援助+2週間以内の市町村等への情報提供 |
| 退所前連携加算 | 500単位 | 居宅介護支援事業者への情報提供+調整 |
| 退所時情報提供加算 | 250単位 | 医療機関への情報提供+紹介 |
| 退所時栄養情報連携加算 | 70単位 | 管理栄養士による栄養情報の提供 (栄養マネジメント強化加算を算定していると算定不可) |
| 在宅復帰支援機能加算 | 10単位/日 | 在宅復帰率20%超などの体制評価 |
| 在宅・入所相互利用加算 | 40単位/日 | ベッドシェアリング |
退所時等相談援助加算の5つは、相互の併算定を禁じる規定がありません。要件を満たせば重ねて算定できます。
介護予防(要支援)には存在しない
特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版の退所時等相談援助加算は存在しません。
5つの加算はすべて重ねて算定できますか?
相互の併算定を禁じる規定はありません。ただし退所先によって算定できる加算が異なります。居宅へ退所し退所前訪問を2回行った場合、最大2,280単位になります。退所時情報提供加算は医療機関へ入院する場合の加算なので、この組み合わせには入りません。
老健へ移る場合も「社会福祉施設等」に当たりますか?
当たりません。告示は「社会福祉施設等(病院、診療所及び介護保険施設を除く)」と定義しています。老健や介護医療院は介護保険施設なので対象外です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などが該当します。
病院へ入院する場合、何が算定できますか?
退所時情報提供加算250単位のみです。退所前訪問・退所後訪問・退所時相談援助・退所前連携の4つは、病院・診療所への入院では算定できません。
死亡退所の場合はどうなりますか?
退所前訪問・退所後訪問・退所時相談援助・退所前連携の4つは算定できません。通知が明示的に除外しています。
退所前訪問相談援助加算はいつ算定しますか?
訪問日ではなく退所日です。退所後訪問相談援助加算は訪問日、退所前連携加算は退所日に算定します。月をまたぐ場合の請求月を誤らないよう注意してください。
家族だけに相談援助を行った場合は算定できますか?
できません。通知は「入所者及びその家族等のいずれにも行うこと」としています。本人にも相談援助を行い、記録を残す必要があります。
退所前訪問はどの職種が行えばよいですか?
告示は介護支援専門員、生活相談員、看護職員、機能訓練指導員または医師のいずれかとしています。ただし通知は「協力して行うこと」としているため、訪問者が1人でも多職種で検討したうえで行う必要があります。
退所時相談援助加算の情報提供先はどこですか?
退所後の居宅地を管轄する市町村と、老人介護支援センターの2か所です。老人介護支援センターに代えて地域包括支援センターへ提供した場合も算定できます。退所の日から2週間以内に、介護状況を示す文書を添えて提供します。
退所前連携加算は社会福祉施設へ移る場合も算定できますか?
できません。告示注4には、他の加算にある「社会福祉施設等に入所する場合も同様に算定する」という規定がありません。居宅へ退所し、居宅サービス等を利用する場合に限られます。
同じ月に入退院を繰り返した場合、退所時情報提供加算は何回算定できますか?
算定できるのは1回です。通知は「医療機関に入院後、当該医療機関を退院し、同一月に再度当該医療機関に入院する場合には、本加算は算定できない」としています。また、そもそも入所者1人につき1回が限度です。
- 退所時等相談援助加算は5つで構成される(460/460/400/500/250単位)
- 居宅へ退所し退所前訪問を2回行えば、最大2,280単位
- 退所先によって算定できる加算の組み合わせが変わる
- 「社会福祉施設等」から病院・診療所・介護保険施設は除かれる
- 老健・介護医療院へ移る場合は「社会福祉施設等」に当たらない
- 病院・診療所へ入院する場合は退所時情報提供加算のみ
- 他の介護保険施設へ移る場合と死亡退所では、4つとも算定できない
- 退所前訪問相談援助加算は訪問日ではなく退所日に算定する
- 退所後訪問相談援助加算は訪問日、退所前連携加算は退所日に算定する
- 相談援助は入所者と家族等の「いずれにも」行う必要がある
- 介護支援専門員・生活相談員・看護職員・機能訓練指導員・医師が協力して行う
- 相談援助を行った日と内容の要点を記録する
- 退所前訪問が2回になるのは、1回目が計画策定、2回目が最終調整の場合
- 退所前訪問・退所時相談援助・退所前連携には「入所期間1月超」の要件がある
- 退所時相談援助加算は、2週間以内に市町村と老人介護支援センターへの情報提供が必要
- 老人介護支援センターに代えて地域包括支援センターでもよい
- 相談援助の内容4項目のうち3つがリハビリテーション領域
- 退所前連携加算は居宅へ退所する場合に限られる
- 在宅・入所相互利用加算の対象者は、最初に在宅期間へ移るときのみ算定できる
- 退所時情報提供加算は別紙様式13を交付し、写しを介護記録等に添付する
- 同一月に同じ医療機関へ再入院した場合は算定できない
- 5つの加算相互の併算定を禁じる規定はない
- 介護予防(要支援)版は存在しない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」ヘ(退所時等相談援助加算)注1〜注5、ニ(退所時栄養情報連携加算)、タ(在宅復帰支援機能加算)、レ(在宅・入所相互利用加算)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(25)退所時等相談援助加算について、同(36)在宅復帰支援機能加算について、別紙様式13
- 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第20条の7の2
- 介護保険法 第115条の46第1項(地域包括支援センター)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。看取り期に居宅へ退所した後に在宅で死亡した場合の取扱いについては、条文から一義的に読み取れないため、本記事では条文上の読み方を示すにとどめています。判断に迷う場合は指定権者にご確認ください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の合計単位数は、すべての要件を満たした場合の上限を機械的に足し上げた例示です。多職種での関与の方法に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




