特養の科学的介護推進体制加算は、(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)50単位(いずれも1月につき)です。入所者全員に算定できます。

この加算でまず知っておきたいのは、(Ⅰ)と(Ⅱ)の差が「診断名・服薬情報を提出するかどうか」だけだということです。LIFE通知(老老発0315第4号)を読むと、(Ⅱ)は(Ⅰ)の提出情報に「総論」の診断名・服薬情報を加えるだけ。それで10単位、定員100人なら月1,000単位の差がつきます。

そしてもう1つ。この加算には「提出が1か月遅れると、入所者全員がその月から算定できなくなる」という重い規定があります。4月分の情報を5月10日までに提出できなければ、4月サービス提供分から算定できません。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の「ウ 科学的介護推進体制加算」、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第71号の5、老企第40号第二の5(44)、科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和6年3月15日老老発0315第4号)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • (Ⅰ)40単位・(Ⅱ)50単位の違いは診断名・服薬情報の提出だけであること
  • 施設サービスで使う様式は「別紙様式2」であること
  • 提出のタイミング4パターン(算定開始月・利用開始月・3月ごと・利用終了月)
  • 提出期限は「翌月10日まで」であること
  • 提出が遅れると入所者全員が遡って算定できなくなること
  • 月末入所の場合に翌々月10日まで延ばせる例外と、その代償
  • 提出するだけでは算定できず、フィードバックの活用が要件であること
  • 他のLIFE関連加算との併算定と、提出頻度の違い

単位数は(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)50単位

告示21号の「ウ 科学的介護推進体制加算」は、次のとおりです。

区分単位数(1月につき)
科学的介護推進体制加算(Ⅰ)40単位
科学的介護推進体制加算(Ⅱ)50単位

注には「次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」とあります。(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できません。どちらか一方です。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は「診断名・服薬情報」だけ

大臣基準告示95号 第71号の5を読むと、要件の構造は次のようになっています。

区分提出する情報活用
(Ⅰ)入所者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他の心身の状況等に係る基本的な情報必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービスの提供に当たって情報を活用
(Ⅱ)(Ⅰ)の情報に加えて、入所者ごとの疾病の状況等の情報同上

「疾病の状況等の情報」が具体的に何を指すのかは、告示だけではわかりません。LIFE通知が答えています。

通所サービス、居住サービス及び多機能サービスにおいて科学的介護推進体制加算を算定する場合又は施設サービスにおいて科学的介護推進体制加算(Ⅰ)を算定する場合は、事業所又は施設の全ての利用者等について、別紙様式1(科学的介護推進に関する評価(通所・居住サービス))又は別紙様式2(科学的介護推進に関する評価(施設サービス))にある「基本情報」、「総論」、「口腔・栄養」及び「認知症(別紙様式3も含む。)」の任意項目を除く情報を、やむを得ない場合を除き提出すること。
施設サービスにおいて科学的介護推進体制加算(Ⅱ)を算定する場合は、上記に加えて「総論」の診断名・服薬情報ついても提出すること。

10単位の差は「診断名と服薬情報」

(Ⅱ)で追加提出するのは、別紙様式2の「総論」に含まれる診断名・服薬情報だけです。新たな評価もアセスメントも必要ありません。

特養であれば、診断名も服薬内容も日常的に把握している情報です。すでに施設内にあるデータを様式に転記して提出するだけで、月10単位が上乗せされます。

定員100人なら月1,000単位、年12,000単位(1単位10円換算で約12万円・地域区分単価は考慮せず)。(Ⅰ)を算定している施設が(Ⅱ)に切り替えない理由は、あまり見当たりません。

なお、「認知症」や「その他」の任意項目についても、必要に応じて提出することが望ましいとされています。これは要件ではありませんが、フィードバックの精度に関わる部分です。

提出のタイミングは4パターン。期限は「翌月10日」

LIFE通知は、提出すべき月を4つ定めています。

対象提出すべき月提出する情報の時点
算定を開始しようとする月に入所している方(既入所者)算定を開始しようとする月算定開始時における情報
算定開始月の翌月以降に入所した方(新規入所者)入所した日の属する月利用開始時における情報
全員ア・イの月のほか、少なくとも3月ごと前回提出時以降の評価時点の情報
退所する方退所する日の属する月利用終了時における情報

いずれもその月の翌月10日までに提出します。4月分なら5月10日、5月分なら6月10日です。

提出が遅れると、入所者全員が遡って算定できなくなる

この加算でもっとも重い規定です。LIFE通知の原文を引用します。

情報を提出すべき月について情報の提出を行えない事実が生じた場合、直ちに訪問通所サービス通知第1の5の届出を提出しなければならず、事実が生じた月のサービス提供分から情報の提出が行われた月の前月までの間について、利用者等全員について本加算を算定できないこと(例えば、4月の情報を5月 10 日までに提出を行えない場合は、直ちに届出の提出が必要であり、4月サービス提供分から算定ができないこととなる。)。

整理すると、こうなります。

  • 提出できない事実が生じたら、直ちに取下げの届出を出す
  • 算定できないのは「事実が生じた月」から「提出が行われた月の前月」まで
  • 対象は入所者全員。提出漏れがあった1人だけではない
1人の提出漏れが全員に波及する

ここが厳しい設計です。1人分の情報提出が漏れただけで、その月から入所者全員の加算が算定できなくなります。

定員100人・(Ⅱ)50単位の施設なら、1か月あたり5,000単位。1単位10円換算で約5万円が消えます。復旧するのは「提出が行われた月」からなので、気づくのが遅れるほど傷が広がります。

3月ごとの提出は入所者ごとにタイミングがずれるため、「今月は誰の提出月か」を管理する台帳が実務上ほぼ必須です。介護記録ソフトのアラート機能で管理している施設が多いと思いますが、退所者(エ)の提出は退所処理と一緒に流れやすいので要注意です。

月末入所の例外と、その代償

新規入所者(イ)については、例外が用意されています。

ただし、イの場合であって、月末よりサービスを利用開始した利用者等に係る情報を収集する時間が十分確保できない等のやむを得ない場合については、利用開始月の翌々月の 10 日までに提出することとしても差し支えない。その場合、当該利用者等に限り、利用開始月のサービス提供分は算定できない

期限を1か月延ばせますが、代償があります。その方に限り、入所月分の加算は算定できません。

重要なのは「当該利用者等に限り」という限定です。この例外を使えば、他の入所者への波及は起きません。月末入所で情報収集が間に合わないときは、無理に提出するより例外を使うほうが被害が小さいということです。

ちびウルフちびウルフ

3月31日に入所した方の情報を4月10日までに出すのは、正直きついです。

リハウルフリハウルフ

そのための例外です。「月末よりサービスを利用開始した利用者等に係る情報を収集する時間が十分確保できない等のやむを得ない場合」に該当するので、5月10日まで延ばせます。その代わり、その方の3月分は算定できません。

ここで判断を間違えると差が大きい。不完全な情報を無理に出して後で誤りが発覚するより、例外を使って1人分の1か月を諦めるほうが、施設全体で見れば圧倒的に軽い。「1人分の1か月」と「全員分の複数月」を天秤にかけるという発想を持っておくことです。

提出するだけでは算定できない

老企第40号③は、はっきり書いています。

したがって、情報を厚生労働省に提出するだけでは、本加算の算定対象とはならない。

大臣基準も、提出((1))と活用((2))を別々の号として立てています。求められているPDCAは次の4段階です。

  • Plan:入所者の心身の状況等に係る基本的な情報に基づき、適切なサービスを提供するための施設サービス計画を作成する
  • Do:施設サービス計画に基づいて、入所者の自立支援や重度化防止に資する介護を実施する
  • Check:LIFEへの提出情報およびフィードバック情報等も活用し、多職種が共同して、施設の特性やサービス提供の在り方について検証を行う
  • Action:検証結果に基づき、入所者の施設サービス計画を適切に見直し、施設全体としてサービスの質の更なる向上に努める

Check段階の書きぶりに注目してください。「入所者ごとの見直し」ではなく「施設の特性やサービス提供の在り方について検証」とされています。個別ケアの見直し(Action)とは別に、施設全体の傾向を多職種で検証する場が想定されています。

実地指導でPDCAの実施状況を問われたときに示せるのは、この検証を行った会議の記録です。フィードバック票を受け取っただけでは説明になりません。

他のLIFE関連加算との関係

科学的介護推進体制加算は、他のLIFE関連加算と併算定できます。特養で算定しうる主なLIFE関連加算を並べます。

加算単位数(1月につき)LIFE提出頻度
科学的介護推進体制加算(Ⅰ)/(Ⅱ)40/50単位算定開始月・入所月・少なくとも3月ごと・退所月
自立支援促進加算280単位入所時・少なくとも3月に1回
排せつ支援加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)10/15/20単位入所時・少なくとも3月に1回
褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)/(Ⅱ)3/13単位入所時・少なくとも3月に1回
個別機能訓練加算(Ⅱ)/(Ⅲ)20/20単位計画作成月・変更月・少なくとも3月に1回
ADL維持等加算(Ⅰ)/(Ⅱ)30/60単位評価対象利用開始月・6月目の月
提出のトリガーが加算ごとに違う

「どれも3月に1回」と思われがちですが、微妙に違います。科学的介護推進体制加算は「退所月」の提出が明示されている点が特徴的です。他の加算にはこの規定がありません。

また、個別機能訓練加算(Ⅱ)(Ⅲ)は「計画の変更を行った日の属する月」もトリガーになります。3月周期とは別に、計画変更のたびに提出が発生します。

LIFE関連加算を複数取るなら、加算ごとの提出トリガーを一覧化して管理する必要があります。1つの提出台帳で全部を管理しようとすると、必ずどこかが漏れます。

令和6年度改定での経過措置(すでに終了)

参考までに触れておきます。令和6年度改定ではLIFEシステムの更改があり、経過措置が設けられていました。

  • 令和6年度改定に対応した介護記録ソフトの導入に時間を要する等の事情がある場合、令和6年4月〜7月サービス提供分の情報は、令和6年10月10日までに提出することを可能とする
  • やむを得ない事情がなく、令和6年10月10日までに提出していない場合は、算定した加算について遡り過誤請求を行うこと

これは令和6年度限りの措置で、現在は通常の「翌月10日まで」が適用されます。過去の請求を点検する際の参照点として押さえておいてください。

介護予防(要支援)には存在しない

特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版の科学的介護推進体制加算は存在しません。

なお、この加算は通所介護・通所リハ・特定施設・グループホームなど幅広いサービスに設定されていますが、(Ⅰ)(Ⅱ)の2区分に分かれているのは施設サービスだけです。通所・居住・多機能サービスでは区分がなく、提出情報も別紙様式1で共通です。他サービスの資料を流用する際は注意してください。

よくある質問
(Ⅰ)と(Ⅱ)は何が違うのですか?

提出する情報の範囲だけです。(Ⅱ)は(Ⅰ)の提出情報に加えて、別紙様式2「総論」の診断名・服薬情報を提出します。それ以外の要件は同じで、単位数は10単位(40単位と50単位)の差です。

(Ⅰ)と(Ⅱ)を同時に算定できますか?

できません。告示の注に「次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」とあり、どちらか一方のみです。

施設サービスで使う様式は何ですか?

別紙様式2(科学的介護推進に関する評価(施設サービス))です。通所・居住サービスは別紙様式1で、様式が異なります。認知症については別紙様式3も含まれます。

情報はいつ提出すればよいですか?

①算定を開始しようとする月(既入所者)、②入所した日の属する月(新規入所者)、③①②のほか少なくとも3月ごと、④退所する日の属する月——の4パターンで、いずれもその月の翌月10日までです。

1人分の提出が漏れました。その人だけ算定できなくなるのですか?

いいえ。通知は「利用者等全員について本加算を算定できないこと」としています。提出できない事実が生じた月のサービス提供分から、提出が行われた月の前月までの間、入所者全員が算定できません。

月末に入所した方の情報が翌月10日までに間に合いません。

やむを得ない場合は、利用開始月の翌々月10日まで延ばせます。ただしその方に限り、利用開始月のサービス提供分は算定できません。他の入所者には波及しないため、無理に提出するよりこの例外を使うほうが被害が小さくなります。

LIFEに提出していれば算定できますか?

できません。老企第40号は「情報を厚生労働省に提出するだけでは、本加算の算定対象とはならない」と明記しています。フィードバック情報を活用し、多職種で施設の特性やサービス提供の在り方を検証するPDCAが必要です。

PDCAの実施はどう示せばよいですか?

通知はCheck段階について「多職種が共同して、施設の特性やサービス提供の在り方について検証を行う」としています。この検証を行った会議の記録が、実施を示す資料になります。フィードバック票を受領しただけでは不十分です。

他のLIFE関連加算と併算定できますか?

できます。自立支援促進加算、排せつ支援加算、褥瘡マネジメント加算、個別機能訓練加算(Ⅱ)(Ⅲ)などと重ねて算定できます。ただし加算ごとに提出のトリガーが異なるため、まとめて管理しようとすると漏れが生じます。

通所介護の資料をそのまま使ってよいですか?

使えません。通所・居住・多機能サービスの科学的介護推進体制加算には(Ⅰ)(Ⅱ)の区分がなく、様式も別紙様式1です。(Ⅰ)(Ⅱ)に分かれているのは施設サービスだけです。

まとめ
  • 科学的介護推進体制加算は(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)50単位/月。同時算定は不可
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)の差は「総論」の診断名・服薬情報を提出するかどうかだけ
  • 追加の評価やアセスメントは不要で、既にある情報の提出で10単位が上乗せされる
  • 施設サービスの様式は別紙様式2(認知症は別紙様式3も含む)
  • 提出は「基本情報」「総論」「口腔・栄養」「認知症」の任意項目を除く情報
  • 提出タイミングは算定開始月・入所月・少なくとも3月ごと・退所月の4パターン
  • 提出期限はいずれもその月の翌月10日まで
  • 提出できない事実が生じたら直ちに取下げの届出が必要
  • 算定できないのは事実が生じた月から提出が行われた月の前月まで
  • 対象は入所者全員。1人の漏れが施設全体に波及する
  • 月末入所の場合は翌々月10日まで延ばせるが、その方の入所月分は算定できない
  • この例外は「当該利用者等に限り」なので、他の入所者には波及しない
  • 提出するだけでは算定できず、フィードバックの活用とPDCAが要件
  • Check段階は個別の見直しではなく「施設の特性やサービス提供の在り方の検証」
  • 他のLIFE関連加算と併算定できるが、提出トリガーは加算ごとに異なる
  • 科学的介護推進体制加算だけが「退所月」の提出を明示している
  • 令和6年4〜7月分の経過措置(10月10日まで)はすでに終了している
  • 介護予防(要支援)版は存在しない
  • (Ⅰ)(Ⅱ)の区分があるのは施設サービスだけで、通所・居住・多機能にはない
参考にした情報
  • 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」ウ(科学的介護推進体制加算)
  • 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第71号の5(科学的介護推進体制加算の基準)
  • 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(44)科学的介護推進体制加算について
  • 科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和6年3月15日老老発0315第4号)第2の1
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、留意事項通知および課長通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。「やむを得ない場合」の範囲やPDCAの記録の水準については、都道府県・指定都市によって判断が異なる場合があります。別紙様式の具体的な入力項目は「ケアの質の向上に向けたLIFE利活用の手引き」等で更新されることがあるため、提出前に最新版をご確認ください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。試算に用いた金額は1単位10円で換算した概算であり、地域区分単価は考慮していません。提出管理の方法に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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