特養の自立支援促進加算とは?280単位の算定要件を解説【老健300単位との違い】

特養の自立支援促進加算は280単位/月です。入所者全員に算定できるため、定員100人なら月28,000単位。施設系のLIFE関連加算のなかでは最大級の単位数です。
この加算でまず注意してほしいのが単位数です。老健は300単位、特養と介護医療院は280単位。同じ名前・同じ要件なのに、施設種別で20単位違います。ネット上の解説記事でも、この2つが取り違えられているのを見かけます。老健の資料をそのまま特養に流用すると過誤請求になります。
そしてもう1つ。この加算は「リハビリを頑張った施設」を評価するものではありません。通知は明確に書いています——「リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではないことから、個別のリハビリテーションや機能訓練を実施することのみでは、加算の対象とはならない」。理学療法士として言えば、この一文がこの加算の性格をすべて表しています。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の「ム 自立支援促進加算」、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第71号の4、老企第40号第二の5(43)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 特養は280単位、老健は300単位で違うこと
- 要件は4つ(医師の医学的評価・支援計画・3月ごとの見直し・医師の計画参加)
- 医師の関与が2か所で求められる、施設系では珍しい加算であること
- 入所者全員が対象で、要件を満たせば全員に算定できること
- リハビリ・機能訓練の実施は評価の対象ではないこと
- 支援計画に盛り込むべき7項目(食事・排せつ・入浴・離床など)
- 多床室でポータブルトイレ前提の計画を作ってはならないこと
- 特別浴槽ではなく一般浴槽での入浴が原則とされていること
自立支援促進加算の単位数は280単位。老健の300単位と混同しない
告示21号の「ム 自立支援促進加算」は、次のとおりです。
ム 自立支援促進加算 280単位
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして(中略)届出を行った指定介護老人福祉施設において、継続的に入所者ごとの自立支援を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。
施設種別ごとに並べると、こうなります。
| 施設 | 単位数(1月につき) |
|---|---|
| 特養(介護福祉施設サービス) | 280単位 |
| 老健(介護保健施設サービス) | 300単位 |
| 介護医療院 | 280単位 |
要件は大臣基準告示95号 第71号の4に一本化されており、地域密着型特養・特養・老健・介護医療院で完全に共通です。にもかかわらず、単位数だけ老健が20単位高く設定されています。
要件が同じなので、解説記事や研修資料は施設種別を明示せずに書かれがちです。「自立支援促進加算300単位」と書かれた資料を見たら、それは老健の数字だと疑ってください。特養で300単位を算定すれば過誤請求になります。
定員100人の特養で1年間算定した場合、280×100×12=336,000単位。1単位10円換算で約336万円(地域区分単価は考慮せず)です。
算定要件は4つ。すべて「医師」が起点になる
大臣基準告示95号 第71号の4は、次の4つすべてに適合することを求めています。
| 要件 | |
|---|---|
| イ | 医師が入所者ごとに、施設入所時に自立支援に係る医学的評価を行い、その後少なくとも3月に1回医学的評価の見直しを行うとともに、その結果等の情報を厚生労働省に提出し、自立支援の促進に当たって当該情報等を活用していること |
| ロ | イの医学的評価の結果、自立支援の促進が必要とされた入所者ごとに、医師、看護職員、介護職員、介護支援専門員その他の職種が共同して支援計画を策定し、支援計画に従ったケアを実施していること |
| ハ | イの医学的評価に基づき、少なくとも3月に1回、支援計画を見直していること |
| ニ | 医師が自立支援に係る支援計画の策定等に参加していること |
イで「医師が医学的評価を行う」、ニで「医師が支援計画の策定等に参加する」。医師が2回登場する加算は、施設系ではかなり珍しい設計です。
とくにニは、イとは独立した要件として置かれています。「医学的評価だけ医師にやってもらって、計画づくりは他職種で」という運用では要件を満たしません。
特養の配置医師は非常勤(嘱託医)であることが多く、月に数回の勤務です。この加算を取りにいくなら、配置医師の勤務日程と、評価・計画策定・3月ごとの見直しのサイクルを噛み合わせる設計が最初の関門になります。
評価も計画も「別紙様式7」を使う
老企第40号は、様式まで指定しています。
- 医学的評価は、医師が必要に応じて関連職種と連携し、別紙様式7を用いて実施する
- 評価では、その時点の自立支援に係る評価に加えて「特別な支援を実施することによる入所者の状態の改善可能性等」まで記載する
- 支援計画は、関係職種が共同し、同じ別紙様式7を用いて作成する
- 支援計画の作成にあたっては、医学的評価および支援実績等に基づき、個々の入所者の特性に配慮しながら個別に作成し、画一的な支援計画とならないよう留意する
- 支援計画に基づいたケアを実施する際には、入所者またはその家族に説明し、同意を得る
入所者全員が対象。要件を満たせば全員に算定できる
老企第40号③は、こう定めています。
本加算は、原則として入所者全員を対象として入所者ごとに大臣基準第71号の4に掲げる要件を満たした場合に、当該施設の入所者全員に対して算定できるものであること。
ここが単位数のインパクトを生む部分です。「自立支援の促進が必要」と評価された人だけに算定するのではなく、入所者全員に算定します。
ただし前提として、全員に対して医師の医学的評価を行い、LIFEに提出する必要があります。支援計画の策定が必要になるのは「医学的評価の結果、自立支援の促進が必要とされた入所者」ですが、評価自体は全員です。
ちびウルフリハビリの回数を増やして、機能訓練の記録をきちんと残せば取れる加算ですよね?
リハウルフそこが最大の誤解です。通知が正面から否定しています。「本加算は、画一的・集団的な介護又は個別的ではあっても画一的な支援計画による取組を評価するものではないこと、また、リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではないことから、個別のリハビリテーションや機能訓練を実施することのみでは、加算の対象とはならない」。機能訓練を何回やっても、それだけでは1単位も算定できません。評価されているのは「暮らし方」を変えたかどうかです。食事をどこで誰と食べるか、トイレで排せつできるか、一般浴槽に入れるか。リハ職としては耳の痛い設計ですが、理屈は通っています。
支援計画に盛り込む7項目。ここに加算の本質がある
老企第40号⑥は、支援計画の各項目を「原則として以下のとおり実施すること」として7つ挙げています。この記述の具体性が、この加算の性格を決めています。
- 離床・座位保持・立ち上がりを計画的に支援する
寝たきりによる廃用性機能障害の防止や改善へ向けて。 - 食事は居室外で、車椅子ではなく普通の椅子を用いる
本人が長年親しんだ食器や箸を施設に持ち込み使用する等、自宅等におけるこれまでの暮らしを維持できるようにする。食事の時間や嗜好等への対応も、画一的ではなく個人の習慣や希望を尊重する。 - 排せつは、排せつリズムを考慮しつつプライバシーに配慮したトイレを使用する
とくに多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない。 - 入浴は、特別浴槽ではなく一般浴槽での入浴とする
回数やケアの方法についても、個人の習慣や希望を尊重する。 - 画一的・集団的な介護ではなく個別ケアを実践する
入所者本人や家族と相談し、可能な限り自宅での生活と同様の暮らしを続けられるようにする。 - リハビリ・機能訓練は本加算の評価対象ではない
ただし医学的評価に基づき必要な場合は、本人や家族の希望も確認して施設サービス計画の見直しを行う。 - 地域や社会とのつながりを維持する
入所者と地域住民等とが交流する機会を定期的に設ける等、社会参加につなげる。
通知全体を通して、多床室でのポータブルトイレ前提の支援計画だけが「策定してはならない」という強い否定形で書かれています。
これは実地指導で見られやすい項目です。多床室の入所者について、支援計画にポータブルトイレの使用が前提として書き込まれていれば、その時点で要件を満たしていないと判断される可能性があります。
「特別浴槽ではなく一般浴槽」も同様に踏み込んだ記述です。機械浴を標準にしている施設では、支援計画の内容そのものを見直す必要が出てきます。
3月に1回の見直しが2か所にかかる
この加算のサイクル管理は、3月に1回が基準です。ただし対象が2つあります。
| 対象 | 頻度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 医師による医学的評価の見直し | 少なくとも3月に1回 | 大臣基準 第71号の4 イ |
| 支援計画の見直し | 少なくとも3月に1回 | 大臣基準 第71号の4 ハ |
ハは「イの医学的評価に基づき」見直すとされているため、実務上は医学的評価 → 支援計画の見直しという順序になります。医師の評価が遅れると、計画の見直しも連動して遅れます。
なお通知⑧は、見直しのきっかけとして次を例示しています。
- 入所者の自立に係る状態の変化
- 支援の実施時における医学的観点からの留意事項に関する大きな変更
- 関連職種が共同して取り組むべき事項の見直しの必要性
3月を待たずに、これらが生じた時点で見直すことが求められています。
LIFEへの提出とフィードバックの活用が必須
自立支援促進加算はLIFE関連加算です。医学的評価の結果等の情報をLIFEを用いて厚生労働省に提出し、フィードバック情報を活用することが要件に含まれています。
通知は、PDCAサイクルの構築を求めています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| Plan | 自立支援の促進を要する要因の分析を踏まえた支援計画の作成 |
| Do | 支援計画に基づく自立支援の促進 |
| Check | 支援内容の評価 |
| Action | 評価結果を踏まえた支援計画の見直し |
科学的介護推進体制加算の項ではありますが、通知は「情報を厚生労働省に提出するだけでは、本加算の算定対象とはならない」とはっきり書いています。自立支援促進加算でも同様に、提出とフィードバック活用の両輪が求められます。
他の加算との併算定
自立支援促進加算には、他の加算との併算定を禁じる規定がありません。告示21号の「ム」の注には、他のLIFE関連加算のような「ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては……」という文言そのものがありません。
したがって、次のような加算とは重ねて算定できます。
| 加算 | 単位数 |
|---|---|
| 自立支援促進加算 | 280単位/月 |
| 科学的介護推進体制加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 40/50単位/月 |
| 個別機能訓練加算(Ⅱ)/(Ⅲ) | 20/20単位/月 |
| 褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 3/13単位/月 |
| 排せつ支援加算(Ⅰ)〜(Ⅲ) | 10/15/20単位/月 |
LIFE関連加算はいずれもLIFEへの提出が要件なので、提出の体制を1つ作れば横展開できます。自立支援促進加算の280単位が突出して高いことを考えると、LIFE対応を始めるならここから設計するのが合理的です。
介護予防(要支援)には存在しない
特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版の自立支援促進加算は存在しません。
また、この加算は施設系4種(地域密着型特養・特養・老健・介護医療院)にのみ設定されています。通所介護や訪問介護など居宅サービスには存在しません。
自立支援促進加算は280単位ですか、300単位ですか?
特養と介護医療院は280単位、老健は300単位です。要件は大臣基準告示95号第71号の4に一本化されていて4施設共通ですが、単位数だけ老健が20単位高く設定されています。
「自立支援の促進が必要」とされた入所者だけに算定するのですか?
いいえ。原則として入所者全員を対象に要件を満たした場合、入所者全員に対して算定できます。ただし全員に対して医師の医学的評価を行い、LIFEに提出する必要があります。支援計画の策定が必要になるのは、評価の結果「自立支援の促進が必要」とされた方です。
リハビリの回数を増やせば算定できますか?
できません。通知は「リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではないことから、個別のリハビリテーションや機能訓練を実施することのみでは、加算の対象とはならない」と明記しています。評価されるのは、離床・食事・排せつ・入浴といった生活場面の支援内容です。
医師はどこまで関わる必要がありますか?
2か所です。①入所時および3月に1回の医学的評価を医師が行うこと、②支援計画の策定等に医師が参加すること。②はイとは独立した要件(ニ)として置かれているため、評価だけ医師が行い計画は他職種で作る、という運用では要件を満たしません。
多床室の入所者にポータブルトイレを使ってはいけないのですか?
通知が禁じているのは「ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない」という点です。個々の状態に応じた例外までを一律に否定するものではありませんが、支援計画にポータブルトイレ使用を前提として書き込むことは認められません。多床室の入所者については、プライバシーに配慮したトイレの使用を前提に計画を組む必要があります。
機械浴(特別浴槽)を使っている入所者がいます。算定できませんか?
通知は「入浴は、特別浴槽ではなく、一般浴槽での入浴とし」としています。支援計画の内容として一般浴槽での入浴を目指すことが求められます。医学的に一般浴槽が困難な方まで一律に排除する趣旨とは考えにくいものの、機械浴を標準としたままの計画では、加算の趣旨に沿わないと判断されるおそれがあります。指定権者への確認をおすすめします。
評価と計画は3月に1回でよいのですか?
「少なくとも3月に1回」が下限です。加えて通知は、入所者の状態の変化、医学的観点からの留意事項の大きな変更、共同して取り組むべき事項の見直しの必要性が生じた場合は、3月を待たずに見直すことを求めています。
使用する様式は決まっていますか?
医学的評価も支援計画も「別紙様式7」を用いることとされています。評価と計画で同じ様式を使います。
科学的介護推進体制加算と併算定できますか?
できます。自立支援促進加算の注には他加算との併算定禁止規定がありません。褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算、個別機能訓練加算(Ⅱ)(Ⅲ)などとも重ねて算定できます。
介護予防(要支援)の自立支援促進加算はありますか?
ありません。また、この加算は地域密着型特養・特養・老健・介護医療院の施設系4種のみに設定されており、居宅サービスには存在しません。
- 特養の自立支援促進加算は280単位/月。老健は300単位で20単位違う
- 要件は大臣基準告示95号第71号の4に一本化され、施設系4種で共通
- 要件は4つ(医師の医学的評価・多職種共同の支援計画・3月ごとの見直し・医師の計画参加)
- 医師の関与が2か所で明記されており、施設系では珍しい設計
- 配置医師が非常勤の特養では、勤務日程とサイクルの噛み合わせが最初の関門
- 医学的評価も支援計画も「別紙様式7」を使う
- 評価には「特別な支援による状態の改善可能性」まで記載する
- 入所者全員が対象で、要件を満たせば全員に算定できる
- リハビリ・機能訓練の実施は評価対象ではなく、それだけでは算定できない
- 評価されるのは離床・食事・排せつ・入浴といった「暮らし方」の支援
- 食事は居室外・普通の椅子・使い慣れた食器という具体的な記述がある
- 多床室でポータブルトイレ前提の支援計画を策定してはならない
- 入浴は特別浴槽ではなく一般浴槽が原則とされている
- 地域住民等との交流機会を定期的に設けることも項目に含まれる
- 医学的評価・支援計画とも少なくとも3月に1回の見直しが必要
- 状態変化等があれば3月を待たずに見直す
- LIFEへの提出とフィードバック活用の両輪が求められる
- 他加算との併算定禁止規定はなく、他のLIFE関連加算と重ねて算定できる
- 介護予防(要支援)版は存在せず、居宅サービスにも存在しない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」ム(自立支援促進加算)、ウ(科学的介護推進体制加算)、ナ(褥瘡マネジメント加算)、ラ(排せつ支援加算)、「介護保健施設サービス」ウ(自立支援促進加算)、「介護医療院サービス」ヰ(自立支援促進加算)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第71号の4(自立支援促進加算の基準)、第71号の5(科学的介護推進体制加算の基準)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(43)自立支援促進加算について、同(44)科学的介護推進体制加算について
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。支援計画の記載内容がどこまで求められるか(一般浴槽での入浴が困難な入所者の取扱い等)については、都道府県・指定都市によって判断が異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。試算に用いた金額は1単位10円で換算した概算であり、地域区分単価は考慮していません。配置医師との調整方法など運用上の記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




