シャワーチェアは、介護保険で「買える」福祉用具です。レンタルではありません。直接肌に触れるものなので、貸与ではなく購入(特定福祉用具販売)の対象と定められています。

そして重要なのは、浴室の手すりだけは扱いが違うという点です。浴槽の縁に挟む手すりは購入、壁に固定する手すりは住宅改修。同じ「手すり」でも制度が分かれます。この記事では告示の原文を確認したうえで、入浴用具の選び方と手続きを整理しました。

この記事でわかること

  • 介護保険で買える入浴補助用具7種類(告示原文)
  • レンタルではなく購入である理由
  • 購入費の上限(年間10万円)と自己負担
  • シャワーチェアの選び方(高さ・背もたれ・肘掛け)
  • 浴槽台・浴槽用手すりの使い方
  • 浴室の手すりが住宅改修になる場合
  • 浴槽をまたぐ動作を安全にする順序
  • 購入の手続き(買ってから申請では間に合わないこと)

シャワーチェアは介護保険で買える|入浴補助用具とは

介護保険で購入できる福祉用具は、告示で定められています。「厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目」(平成11年厚生省告示第94号)です。

その第4号「入浴補助用具」の定義を、原文のまま引用します。

告示の原文(4 入浴補助用具)

「座位の保持、浴槽への出入り等の入浴に際しての補助を目的とする用具であって次のいずれかに該当するものに限る。

一 入浴用椅子
二 浴槽用手すり
三 浴槽内椅子
四 入浴台(浴槽の縁にかけて利用する台であって、浴槽への出入りのためのもの
五 浴室内すのこ
六 浴槽内すのこ
七 入浴用介助ベルト」

用具使う場面
入浴用椅子(シャワーチェア)洗い場で座って体を洗う
浴槽用手すり浴槽の縁に挟んで固定。またぐときにつかまる
浴槽内椅子浴槽の中に置いて座る。立ち上がりやすくなる
入浴台(バスボード)浴槽の縁にかけ、いったん腰かけてから足を入れる
浴室内すのこ洗い場の段差解消
浴槽内すのこ浴槽の底に敷いて深さを調整する
入浴用介助ベルト介助者が体を支えるためのベルト

また第5号には簡易浴槽(「空気式又は折りたたみ式等で容易に移動できるものであって、取水又は排水のために工事を伴わないもの」)も定められています。

なぜレンタルではなく購入なのか

入浴補助用具、腰掛便座(ポータブルトイレ等)、移動用リフトのつり具部分などは、直接肌に触れる、あるいは他人が再利用することに抵抗がある性質のものとして、貸与ではなく販売の対象とされています。

この違いは費用の考え方にも関わります。レンタルは毎月の負担、購入は最初に1回の負担です。

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ホームセンターで買った風呂椅子ではだめですか?

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座るだけならそれでも構いません。ただし一般の風呂椅子は低すぎて、立ち上がれなくなることが多いです。介護保険の対象になるシャワーチェアは高さが調整でき、背もたれや肘掛けも選べます。そして指定の事業者から買わないと保険給付の対象になりません。

購入費の上限と自己負担

項目内容
支給限度基準額年間10万円(同一年度=4月1日から翌年3月31日)
自己負担原則1割(所得により2割・3割)
購入先都道府県等の指定を受けた特定福祉用具販売事業者
対象要支援1・2、要介護1〜5(要介護度による制限なし)

10万円の枠内であれば、複数の用具を組み合わせて購入できます。たとえばシャワーチェアと浴槽用手すりと入浴台を同じ年度に買う、といった使い方が可能です。

買ってから申請しても対象にならないことがある

ここが最も多い失敗です。特定福祉用具販売は、指定を受けた事業者から購入することが条件です。ネット通販や量販店で自分で買ってしまうと、同じ商品でも保険給付の対象にならない場合があります。

また、ケアマネジャーへの事前相談が必要です。購入前に必ず相談してください。「先に買って、後から領収書を出せばいい」ではありません。

支払い方法

  • 償還払い:いったん全額を支払い、後から保険給付分(9割等)が払い戻される
  • 受領委任払い:最初から自己負担分(1割等)だけを支払う

どちらの方式が使えるかは市町村によって異なります。受領委任払いが使えると、一時的な負担が大きく減ります。ケアマネジャーまたは市町村の窓口にご確認ください。

シャワーチェアの選び方

チェック項目選び方の目安
座面の高さ立ち上がりやすい高さ。足裏が床にしっかり着き、膝が90度かやや高い位置
高さ調整段階式で調整できるものを。浴室の床の傾斜も考慮
背もたれ座位が不安定なら必要。安定していれば無しでも可(洗いやすい)
肘掛け立ち上がりに使う場合は必須。跳ね上げ式だと移乗しやすい
座面の形くぼみがあると安定。お尻を洗う場合は前方に切り込みのあるタイプ
回転座面方向転換がしにくい方に。浴槽への移動が楽になる
重さ・安定性軽すぎると滑る。脚のゴムの状態も確認
浴室のサイズ置いたときに洗い場を占拠しないか。介助者のスペースは足りるか

最も重要なのは「座面の高さ」

一般的な風呂椅子は座面が低く、健康な方でも立ち上がるのに脚の力が要ります。座面が低いほど立ち上がりは難しくなります。

目安は、座ったときに足裏が床にしっかり着き、膝が股関節と同じかやや低い位置になる高さです。迷ったらやや高めを選んでください。低すぎて立てないより、高くて足台を置くほうが対処できます。

浴槽をまたぐ動作を安全にする

浴室内で最も危険なのが、浴槽をまたぐ瞬間です。片脚立ちになり、床は濡れて滑り、つかまる場所がない。転倒の条件が全部そろっています。

入浴台(バスボード)を使う手順

  • 浴槽の縁に入浴台をかけ、しっかり固定されているか確認する
  • 入浴台に腰かける(立ったままではまたがない)
  • 座ったまま、片脚ずつ浴槽の中へ入れる
  • 浴槽用手すりにつかまりながら、体を浴槽の中へ下ろす
  • 出るときは逆の順序。浴槽内椅子があると立ち上がりやすい

ポイントは「立ったままの片脚立ちを作らない」ことです。座った状態で脚を運べば、バランスを崩しても転倒にはつながりません。

浴槽が深い・底が滑る場合

  • 浴槽内すのこ:底に敷いて浴槽を浅くする。またぐ高さも下がる
  • 浴槽内椅子:浴槽の中で座る。立ち上がりが楽になる
  • 滑り止めマット:浴槽の底と洗い場に(介護保険の対象外の場合があります)
  • 浴室内すのこ:洗い場と脱衣所の段差を解消する

浴室の手すりは「購入」か「住宅改修」か

ここが混同されやすい部分です。同じ手すりでも、固定方法によって制度が変わります。

種類制度限度額
浴槽用手すり(浴槽の縁に挟んで固定)特定福祉用具販売(購入)年間10万円の枠内
据置型・突っ張り型の手すり福祉用具貸与(レンタル)区分支給限度基準額の枠内
壁に固定する手すり(工事あり)住宅改修支給限度基準額20万円(原則1人1回)

告示93号は、貸与の「手すり」を「取付けに際し工事を伴わないものに限る」と定めています。工事を伴うものは貸与ではなく住宅改修の扱いです。

住宅改修も事前の申請が必要

住宅改修は、工事の前に申請して承認を受けるのが原則です。工事してから申請しても対象にならないことがあります。

また、住宅改修の支給限度基準額20万円は原則として1人1回(要介護度が大きく上がった場合などの例外あり)。一度に全部やらず、本当に必要な場所を見極めてから使うほうが得策です。まずはレンタルの据置型手すりで試す、という順序が失敗しません。

ポータブルトイレも同じ「購入」の対象

入浴補助用具と同じ告示に、腰掛便座が第1号として定められています。年間10万円の枠は入浴用具と共通なので、あわせて計画すると無駄がありません。

告示の原文(1 腰掛便座)

「次のいずれかに該当するものに限る。

一 和式便器の上に置いて腰掛式に変換するもの
二 洋式便器の上に置いて高さを補うもの
三 電動式又はスプリング式で便座から立ち上がる際に補助できる機能を有しているもの
四 便座、バケツ等からなり、移動可能である便器(居室において利用可能であるものに限る。)」

ここで注目したいのが第二号です。「洋式便器の上に置いて高さを補うもの」=補高便座。既存の便座の上に乗せて座面を高くする、数千円〜のシンプルな用具です。

トイレから立ち上がれないという相談に対して、いきなりポータブルトイレを検討する方が多いのですが、座面を5〜10cm高くするだけで立てるようになるケースは珍しくありません。まず補高便座と手すりを試すのが順序です。

ポータブルトイレは最後の選択肢にする

ポータブルトイレ(第四号)は確かに便利です。しかし、

  • 居室に置くため、においと排泄物の処理の問題が生じる
  • トイレまで歩く機会が失われ、活動量が落ちる
  • 本人の尊厳に関わることがある

トイレまで行けるなら、手すり・補高便座・夜間照明で「行ける状態」を保つほうが、結果として在宅生活は長く続きます。夜間だけポータブルトイレ、日中はトイレ、という使い分けも有効です。

入浴と排泄の用具は同じ枠で考える

年間10万円の枠は、入浴補助用具と腰掛便座などを合算して使います。そのため、1年のうちで何を優先するかを決めておく必要があります。

優先度の考え方理由
転倒リスクが高い場面から浴室は最も転倒・重症化しやすい場所
毎日必ず使うものから頻度が高いほど効果も事故リスクも大きい
本人が最も困っている動作から実際に使われない用具に枠を使わない
介助者の負担が大きい場面から介助者が倒れると在宅生活が終わる

年度をまたげば枠は新しくなります。急がない用具は翌年度に回すという判断もできます。ケアマネジャー・福祉用具専門相談員と相談しながら計画してください。

入浴を安全にするその他の工夫

  • 脱衣所と浴室の温度差をなくす:冬場の急な血圧変動(ヒートショック)対策。入浴前に浴室を温める
  • 湯温は熱すぎない:41度以下が目安とされることが多いです
  • 長湯を避ける:のぼせと脱水に注意
  • 食後すぐ・飲酒後の入浴を避ける
  • 入浴前後に水分をとる
  • 一人で入るときは家族に声をかけてから
  • 浴室のドアは外開きか引き戸に:中で倒れたとき、内開きだと開けられません

自宅での入浴が難しくなったら

用具をそろえても安全に入れない場合は、サービスの利用を検討してください。

  • 通所介護(デイサービス)・通所リハビリ:設備と人手が整った環境で入浴できます
  • 訪問介護:自宅での入浴介助
  • 訪問入浴介護:専用の浴槽を自宅に持ち込む。寝たきりの方でも入浴可能

「家の風呂に入れないなら入浴をあきらめる」のではなく、場所を変えるという選択肢があります。ケアマネジャーにご相談ください。

よくある質問

シャワーチェアは介護保険でレンタルできますか?

レンタルではなく購入(特定福祉用具販売)の対象です。直接肌に触れる性質のものとして、貸与ではなく販売の種目に定められています。年間10万円の枠内で、自己負担は原則1割です。

ホームセンターで買っても保険の対象になりますか?

なりません。都道府県等の指定を受けた特定福祉用具販売事業者から購入することが条件です。また購入前にケアマネジャーへ相談する必要があります。

年間10万円は何を基準にした期間ですか?

同一年度(4月1日から翌年3月31日まで)です。枠内であれば複数の用具を組み合わせて購入できます。

要介護度による制限はありますか?

入浴補助用具には要介護度による制限はありません。要支援1・2、要介護1〜5のいずれでも対象です(車いすや介護ベッドのような原則要介護2以上という制限はありません)。

シャワーチェアの高さはどう選びますか?

座ったときに足裏が床にしっかり着き、膝が股関節と同じかやや低い位置になる高さが目安です。迷ったらやや高めを選んでください。低すぎると立ち上がれなくなります。

浴槽をまたぐのが怖いです。

入浴台(バスボード)を使ってください。立ったままではなく、腰かけた状態で片脚ずつ浴槽に入れます。立位での片脚立ちを作らないことが最大の安全策です。

浴室の手すりは購入ですか住宅改修ですか?

浴槽の縁に挟む「浴槽用手すり」は購入、壁に固定する手すりは住宅改修です。工事を伴わない据置型・突っ張り型はレンタルの対象になります。

住宅改修の20万円は何回使えますか?

原則として1人1回です(要介護度が大きく上がった場合などの例外があります)。一度に使い切らず、本当に必要な場所を見極めてから使うことをおすすめします。

支払いは全額立て替える必要がありますか?

市町村により異なります。いったん全額支払う「償還払い」と、最初から自己負担分だけを支払う「受領委任払い」があります。受領委任払いが使えるか、市町村の窓口またはケアマネジャーにご確認ください。

用具をそろえても入浴が難しい場合は?

通所介護・通所リハビリでの入浴、訪問介護による入浴介助、訪問入浴介護(専用浴槽を自宅に持ち込む)という選択肢があります。入浴をあきらめる前にケアマネジャーにご相談ください。

まとめ

  • シャワーチェアは介護保険の購入対象(レンタルではない)
  • 告示が定める入浴補助用具は7種類
  • 入浴用椅子・浴槽用手すり・浴槽内椅子・入浴台・浴室内すのこ・浴槽内すのこ・入浴用介助ベルト
  • 簡易浴槽も販売の種目に含まれる
  • 購入費の上限は同一年度で10万円。自己負担は原則1割
  • 要介護度による制限はなく、要支援1から対象
  • 指定事業者からの購入とケアマネジャーへの事前相談が必要
  • 自分で量販店やネットで買うと対象外になることがある
  • シャワーチェアで最も重要なのは座面の高さ。低すぎると立てない
  • 浴槽をまたぐときは立位で片脚立ちを作らない
  • 入浴台に腰かけ、座ったまま片脚ずつ入れる
  • 浴槽用手すりは購入、壁固定の手すりは住宅改修(20万円・原則1人1回)
  • 住宅改修も工事前の申請が原則
  • 据置型手すりのレンタルで試してから改修を検討すると失敗しない
  • 自宅で難しければ、通所や訪問入浴という選択肢がある

参考にした情報

※本記事の福祉用具の種目・定義は、厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第94号)および福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号)にもとづいて整理したものです。支給限度基準額・支払い方法(償還払い/受領委任払い)・住宅改修の対象範囲および例外の取扱いは、市町村(保険者)によって運用が異なります。購入・改修の前に必ずケアマネジャーおよび市町村の窓口にご確認ください。用具の選び方や入浴動作の手順に関する記述は、リハビリテーション領域で一般に用いられている整理および筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづくものであり、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません(確度:中)。適切な用具は本人の状態と浴室の構造により異なるため、担当の理学療法士・作業療法士・福祉用具専門相談員にご相談ください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味