介護ベッドを借りると、必ず出てくるのが「付属品」という言葉です。「マットレスは別料金です」「手すりも付けますか」と言われ、何がどこまで介護保険の対象なのか分からないまま契約している方が少なくありません。

この記事では、理学療法士・介護支援専門員として福祉用具の選定に関わってきた立場から、特殊寝台付属品として認められているものを厚生労働省の告示と解釈通知にもとづいて整理します。要介護1以下でも借りられる例外の条件まで、根拠つきで書きます。

この記事でわかること
  • 特殊寝台付属品として認められている6種類
  • それぞれに課されている要件
  • 「一体的に使用されるもの」の意味
  • 付属品だけを借りられるのか
  • 要支援・要介護1でも借りられる例外の条件
  • 費用と、選ぶときの実務的な注意点

まず「特殊寝台」の定義から

付属品を理解するには、本体の定義が先です。厚生省告示第93号(平成11年3月31日)は、特殊寝台を次のように定めています。

告示第3項:特殊寝台サイドレールが取り付けてあるもの又は取り付けることが可能なものであって、次に掲げる機能のいずれかを有するもの
一 背部又は脚部の傾斜角度が調整できる機能
二 床板の高さが無段階に調整できる機能

いわゆる介護ベッドです。背上げか、高さ調節(無段階)のどちらかがあればよいという点は、意外に知られていません。

特殊寝台付属品とは

同じ告示の第4項です。

告示第4項:特殊寝台付属品マットレス、サイドレール等であって、特殊寝台と一体的に使用されるものに限る。

「等」の中身は、解釈通知(平成12年1月31日老企第34号「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」)が具体的に示しています。利用することにより、当該特殊寝台の利用効果の増進に資するものに限られる、として6つが挙げられています。

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ここが重要です。「ベッドで使うもの」なら何でも付属品になるわけではありません。「利用効果の増進に資する」ことが条件で、しかも6種類それぞれに細かい要件が付いています。

特殊寝台付属品として認められている6種類

① サイドレール特殊寝台の側面に取り付けることにより、利用者の落下防止に資するものであるとともに、取付けが簡易なものであって、安全の確保に配慮されたものに限る
② マットレス特殊寝台の背部又は脚部の傾斜角度の調整を妨げないよう、折れ曲がり可能な柔軟性を有するものに限る
③ ベッド用手すり特殊寝台の側面に取り付けが可能なものであって、起き上がり、立ち上がり、移乗等を行うことを容易にするものに限る
④ テーブル特殊寝台の上で使用することができるものであって、門型の脚を持つもの特殊寝台の側面から差し入れることができるもの、またはサイドレールに乗せて使用することができるものに限る
⑤ スライディングボード・スライディングマット滑らせて移乗・位置交換するための補助として用いられるものであって、滑りやすい素材または滑りやすい構造であるものに限る
⑥ 介助用ベルト本人または介護を行う者の身体に巻き付けて使用するものであって、起き上がり、立ち上がり、移乗等を容易に介助することができるもの。ただし「入浴用介助ベルト」は除かれる
入浴用介助ベルトは別扱い⑥のただし書きに注意してください。入浴用介助ベルトは、貸与ではなく購入(特定福祉用具販売)の対象です。同じ「ベルト」でも、制度上の扱いがまったく違います。

よくある4つの誤解

  • 普通の敷布団は対象外|②の要件どおり、背上げ・脚上げの角度調整を妨げない柔軟性が必要です
  • 床ずれ防止用のエアマットは「付属品」ではない|これは「床ずれ防止用具」という別の品目(告示第5項)です。目的も要件も違います
  • 据置型の手すりは「付属品」ではない|ベッドに取り付けるものが③、床に置くものは「手すり」という別品目です
  • シーツや防水シーツは対象外|消耗品や寝具類は含まれません
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マットレスって、どれも同じだと思ってた

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違います。床ずれのリスクが高い人には「床ずれ防止用具」、そうでない人には「特殊寝台付属品のマットレス」という整理です。目的が違えば品目が変わる。ここを間違えると、必要なものが届きません。

「一体的に使用されるもの」の意味

付属品だけを単独で借りられるのか——現場でいちばん多い質問です。解釈通知は明確に答えています。

解釈通知の定義「一体的に使用されるもの」とは、特殊寝台の貸与の際に併せて貸与される付属品、または既に利用者が特殊寝台を使用している場合に貸与される付属品をいう。

つまり、特殊寝台を使っていることが前提です。ただし、後半に注目してください。「既に利用者が特殊寝台を使用している場合」も含まれます。自費で購入した介護ベッドを使っている場合など、本体をレンタルしていなくても付属品の貸与が検討できる余地があります。

ただし個別の可否は保険者(市区町村)の判断によりますので、必ずケアマネジャーと福祉用具専門相談員に確認してください。

要支援・要介護1は原則対象外

特殊寝台と特殊寝台付属品は、軽度者(要支援1・2、要介護1)は原則として保険給付の対象外です。ここで諦めてしまう方が非常に多い。

しかし厚生労働省の資料は、「ただし、厚生労働大臣が定める告示に該当する対象者については、要介護認定における基本調査結果等に基づく判断があった場合や、または、市町村が医師の所見・ケアマネジメントの判断等を書面等で確認の上、要否を判断した場合には、例外的に給付が可能」としています。

例外が認められる要件

対象者(いずれかに該当)(一)日常的に起きあがりが困難な者
(二)日常的に寝返りが困難な者
該当する基本調査の結果(一)=基本調査1-4「3.できない」
(二)=基本調査1-3「3.できない」

1-3が「寝返り」、1-4が「起き上がり」の項目です。認定調査でここが「できない」と記録されていれば、要介護1でも道が開けます。

基本調査で「できる」になっていた場合

それでも方法があります。厚生労働省は、次の3つのいずれかに該当する旨が医師の医学的な所見に基づき判断され、サービス担当者会議等を通じたケアマネジメントにより福祉用具貸与が特に必要である旨が判断されている場合、市町村が書面等で確認して要否を判断する、としています。

1状態が変動しやすい:疾病その他の原因により、状態が変動しやすく、日によって又は時間帯によって対象者に該当する(例:パーキンソン病の治療薬によるON・OFF現象)
2急速に悪化する見込み:疾病その他の原因により、状態が急速に悪化し、短期間のうちに対象者に該当することが確実に見込まれる(例:がん末期の急速な状態悪化)
3重大な危険や重篤化の回避:疾病その他の原因により、身体への重大な危険性又は症状の重篤化の回避等、医学的判断から対象者に該当すると判断できる(例:ぜんそく発作等による呼吸不全、心疾患による心不全、嚥下障害による誤嚥性肺炎の回避)
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「原則ダメ」で終わりじゃないんだ。ちゃんと道があるんだね

リハウルフリハウルフ

ただし、必要なのは医師の医学的な所見サービス担当者会議を通じた判断、そして市町村の確認です。手間はかかります。だからこそ、家族が「そういう仕組みがある」と知っているかどうかで結果が変わる。遠慮せずケアマネジャーに切り出してください。

費用の考え方

  • 付属品は、本体とは別に月額のレンタル料がかかります。マットレス、サイドレール2本、ベッド用手すりを付ければ、その分が加算されます
  • 自己負担は月額料金 × 負担割合(1割・2割・3割)
  • 他の介護サービスと同じ支給限度額の枠を使います。付属品を増やした結果、デイの回数を減らすことになる場合があります
  • 金額は商品によって異なります。契約前に見積書を書面でもらってください
セットで提案されたときの確認「ベッド一式」という提案を受けたら、内訳を出してもらってください。本体・マットレス・サイドレール・手すりが、それぞれ何円なのか。必要のない付属品が含まれていないか。限度額を圧迫するのは、たいてい積み上がった付属品のほうです。

選ぶときの実務的なポイント

サイドレール本数を先に決めない。2本必要か、1本でよいかは、起き上がりの方向と介助の入り方で変わります
ベッド用手すりサイドレールとは目的が違います。落下防止=サイドレール、起き上がり・立ち上がり=手すり。混同して「柵だけ」にすると、立ち上がれません
マットレス硬さで動きやすさが大きく変わります。柔らかすぎると寝返りも起き上がりもできなくなります。必ず試してから決める
テーブルベッド上で食事や作業をするなら検討。ただし離床の機会を減らしていないかは考えてください
スライディングボード介護者の腰を守る用具でもあります。使い方の指導を必ず受けてください
介助用ベルト入浴用は別制度(購入)です。用途を明確に伝えて選定してもらう
リハウルフリハウルフ

私が現場で一番気にするのはマットレスです。床ずれを気にして柔らかいものを入れた結果、自分で起き上がれなくなって寝たきりが進む——これが本当に多い。床ずれのリスクと、動きやすさ。両方をリハビリ職と一緒に見てほしいところです。

よくある質問
ベッドは自費で買いました。付属品だけレンタルできますか?
解釈通知は「一体的に使用されるもの」に、既に利用者が特殊寝台を使用している場合に貸与される付属品を含めています。ただし個別の可否は保険者(市区町村)の判断によるため、ケアマネジャーと福祉用具専門相談員に確認してください。
エアマットは特殊寝台付属品ですか?
いいえ。送風装置や空気圧調整装置を備えた空気マットは、告示第5項の「床ずれ防止用具」という別の品目です。目的は体圧の分散で、圧迫部位への圧力を減ずることとされています。
要介護1ですが、起き上がりがつらいです。ベッドは無理ですか?
原則対象外ですが、例外的に給付が可能な仕組みがあります。特殊寝台・特殊寝台付属品の対象者は「日常的に起きあがりが困難な者」または「日常的に寝返りが困難な者」で、基本調査1-4または1-3が「3.できない」であることが判断材料になります。該当しない場合も、医師の所見にもとづく3つの類型があります。ケアマネジャーにご相談ください。
付属品の数に制限はありますか?
品目としての上限は示されていませんが、支給限度額の範囲内で使う必要があります。また「利用効果の増進に資するもの」であることが要件のため、必要性の説明ができるものに限られます。実際の運用は保険者によって異なります。
介助用ベルトは入浴のときにも使えますか?
解釈通知では、特殊寝台付属品の介助用ベルトから「入浴用介助ベルト」は除かれています。入浴用は購入(特定福祉用具販売)の対象です。用途に応じて、正しい制度で手配してもらってください。
まとめ
  • 特殊寝台は、サイドレールが取り付け可能で、背部・脚部の角度調整か床板の無段階の高さ調整のいずれかを持つもの。
  • 特殊寝台付属品は「マットレス、サイドレール等であって、特殊寝台と一体的に使用されるもの」。
  • 解釈通知が示す6種類は、サイドレール、マットレス、ベッド用手すり、テーブル、スライディングボード・スライディングマット、介助用ベルト。
  • いずれも「利用効果の増進に資するもの」に限られ、種類ごとに細かい要件がある。
  • 入浴用介助ベルトは除かれ、購入(特定福祉用具販売)の対象になる。
  • エアマットは付属品ではなく「床ずれ防止用具」という別品目。
  • 「一体的に使用されるもの」には、既に特殊寝台を使用している場合に貸与される付属品も含まれる。
  • 要支援1・2と要介護1は原則対象外だが、例外的に給付が可能な仕組みがある。
  • 例外の対象者は「日常的に起きあがりが困難な者」「日常的に寝返りが困難な者」。基本調査1-4・1-3の「3.できない」が判断材料。
  • 該当しない場合も、状態の変動・急速な悪化・重篤化の回避という3類型で、医師の所見にもとづく判断がある。
  • 付属品は本体と別に月額料金がかかり、支給限度額を共有する。内訳の見積書を必ずもらう。
  • 柔らかすぎるマットレスは、寝返りと起き上がりを妨げる。動きやすさも一緒に評価する。
参考にした情報

※本記事の制度に関する記述は、厚生労働省の告示・解釈通知および公表資料にもとづきます。選定に関する実務的な内容は筆者(理学療法士・介護支援専門員)の経験にもとづくものです。個別の給付の可否、例外給付の判断、必要書類、レンタル料金は、保険者(市区町村)および事業所によって異なります。判断は、必ず市区町村・地域包括支援センター・担当ケアマネジャー・福祉用具専門相談員にご確認ください。内容は2026年8月時点の情報です。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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