高齢者の息切れを「年のせい」で片づけると、心臓と肺の病気を見逃します。そしてもう一つ、見落とされやすいのが動かないことで体力が落ちた結果の息切れです。こちらは病気ではなく、運動で戻せます。

つまり息切れには、「すぐ受診すべきもの」「治療で改善するもの」「運動で戻せるもの」が混在しています。この記事では、その切り分け方と、受診の目安、自宅でできる対策を整理しました。

この記事でわかること

  • すぐ受診すべき危険な息切れ
  • 息切れの程度を数字で表す方法
  • 高齢者に多い6つの原因
  • 動かないことで息切れが悪化する仕組み
  • 心臓と肺、どちらが原因かの手がかり
  • 貧血・甲状腺など見落とされやすい原因
  • 自宅でできる呼吸法と運動
  • 受診時に伝えるべきこと

高齢者の息切れで最初に確認すること

まず、緊急性の判断からです。

すぐ受診・救急要請すべきサイン

  • 安静にしていても息が苦しい
  • 横になると苦しく、起き上がると楽になる(起座呼吸)
  • 胸の痛み・締めつけ感を伴う
  • ピンク色の泡状の痰が出る
  • 唇や爪の色が紫っぽい
  • 冷や汗、意識がもうろうとする
  • 急に始まった強い息切れ(数時間〜1日以内)
  • 片足のむくみ・痛みを伴う(肺塞栓の可能性)

これらは、心不全の増悪、心筋梗塞、肺塞栓、肺炎などの可能性があります。様子を見ないでください。

特に「横になると苦しい」は重要なサインです。心不全では、横になることで下半身の血液が心臓に戻り、肺に水が溜まりやすくなります。夜、枕を高くしないと眠れなくなったという変化は、本人が自覚していないこともあるため、家族が気づいてください。

息切れの程度を数字にする

「息切れがする」だけでは、悪化しているのか分かりません。どの動作で息が切れるかで段階を分けると、変化が追えます。

段階どんなときに息が切れるか
1激しい運動をしたときだけ
2平地を急いで歩く、ゆるい坂を上る
3平地を同年代の人と同じ速さで歩けない。自分のペースなら歩ける
4平地を100m、または数分歩くと休む
5息切れがひどく外出できない。着替えでも息が切れる

※この段階分けは、呼吸器領域で広く用いられている考え方にもとづく整理です(確度:中=厚生労働省が示した基準ではありません)。

受診のときは「息切れがします」より、「半年前は3だったが、今は4になった」と伝えるほうが、はるかに正確に状態が伝わります。

ちびウルフちびウルフ

年齢的に仕方ないと思っていました。

リハウルフリハウルフ

判断の基準は「変化したかどうか」です。ずっと同じ程度なら経過を見てもよいですが、数か月で明らかに悪くなったなら、年齢では説明がつきません。加齢は、そんなに急には進みません。

高齢者に多い6つの原因

① 心臓の病気(心不全・狭心症など)

心不全では、息切れに加えて足のむくみ、体重増加、夜間の咳、横になると苦しいといった症状が出ます。症状が出る前に体重が増えるのが特徴で、1日1〜2kg、3日で2kg以上の増加は要注意とされます。

詳しくは心不全のリハビリ|運動の強さと再入院を防ぐ管理、むくみについては高齢者の足のむくみ|原因と受診の目安をご覧ください。

② 肺の病気(COPD・間質性肺炎など)

COPDでは、息を吐き出しにくいのが特徴です。喫煙歴がある方に多く、咳や痰を伴います。

そして重要なのが、COPDの息切れは肺だけの問題ではないという点です。息切れがつらい→動かない→脚の筋力が落ちる→同じ動作により多くの酸素が必要になる→さらに息切れ、という悪循環(デコンディショニング)が起こります。

この部分は運動で戻せます。COPDのリハビリ|息切れを減らす運動と呼吸法で詳しく解説しています。

③ 貧血

見落とされやすい原因です。血液が酸素を運べないため、息切れ・動悸・だるさが出ます。高齢者では、消化管からの慢性的な出血が背景にあることがあります。

顔色が悪い、爪が白っぽい、黒い便が出た、といった変化があれば伝えてください。血液検査ですぐ分かります。

④ 動かないことによる体力低下(廃用)

入院、骨折、体調不良で数週間動かないと、心肺機能も筋力も明らかに落ちます。病気は治ったのに息切れだけ残るのは、このためです。

加齢による低下は年単位で進みますが、廃用は週単位で進みます。そして、こちらは戻せます。詳しくは廃用症候群とは?症状とリハビリの進め方をご覧ください。

⑤ 甲状腺の病気・腎臓の病気

甲状腺ホルモンの異常でも動悸・息切れが起こります。腎機能の低下による貧血や体液の貯留も原因になります。いずれも血液検査で確認できます。

⑥ 不安・パニック

息切れへの不安が呼吸を速く浅くし、さらに苦しくなるという悪循環があります。ただし「気のせい」と決めつけるのは危険です。身体的な原因を除外してから考えるべきものです。

心臓か肺か|手がかりになる違い

診断は医師が行いますが、受診時に伝えるべき情報を整理しておくと役立ちます。

特徴心臓寄り肺寄り
横になったとき苦しくなる(起座呼吸)姿勢の影響は比較的小さい
むくみ足のむくみを伴いやすい伴わないことが多い
体重短期間で増えるむしろ減ることがある
咳・痰夜間の乾いた咳痰を伴う咳が続く
喫煙歴関係する場合もある強く関係する
息の状態吸うのも吐くのも苦しい吐き出しにくい(COPD)

ただし、心臓と肺の両方に問題を抱えている方は珍しくありません。どちらか一方と決めつけず、両方の可能性を主治医に伝えてください。

自宅でできる対策

ここからは、重大な原因が否定された場合、または医師の指示のもとで行う対策です。

口すぼめ呼吸

息切れしたときに、その場でできる方法です。

  • 鼻から軽く息を吸う(1〜2秒)
  • 口をすぼめて、吸った時間の2倍以上かけてゆっくり吐く
  • 吐くことに意識を置く。「吸わなきゃ」と思わない

息切れしたときの姿勢

座って前かがみになり、両肘をテーブルや膝に乗せて体を支えます。腕を固定すると呼吸を助ける筋肉が使いやすくなり、呼吸が楽になります。

立ったままこらえないでください。まず座ることです。

動作と呼吸を合わせる

  • 力を入れる動作は、息を吐きながら:立ち上がる、物を持ち上げる
  • 階段は連続して上らない:吸って止まる→吐きながら1〜2段→また吸う
  • 腕を上げる動作は特に苦しい:洗髪、洗濯物干し。休みを入れる
  • 前かがみは横隔膜を圧迫する:靴下は座って、道具を使って

運動で体力を戻す

息切れがあるからといって動かないと、悪循環が進みます。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、高齢者に対して筋力トレーニングを週2〜3日、筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上推奨しています。

また、慢性疾患を有する人については「成人・高齢者の推奨事項を踏襲し、これまでの疾患ガイドラインで示されてきた1日30分とも矛盾しない形とした」と整理しています。

  • 椅子からの立ち座り:10回×2セット。立つときに息を吐く
  • かかと上げ:15回×2セット
  • 座ったままの膝伸ばし:左右10回×2セット
  • 歩行:休憩を挟みながら、合計時間を伸ばす

脚の筋肉が戻ると、同じ動作に必要な酸素が減り、結果として息切れが軽くなります。具体的なやり方は高齢者の筋トレメニュー9選をご覧ください。

運動を控えるべき状態

厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」は、安静時に次に該当する場合は運動を実施しないとしています。

  • 収縮期血圧 180mmHg以上、または 80mmHg未満
  • 拡張期血圧 110mmHg以上
  • 体温 37.5℃以上
  • 脈拍が 120拍/分以上
  • いつもと異なる脈の不整がある場合

運動中は、強い呼吸困難感、頻呼吸(1分間に25回以上)、めまい、狭心痛、頭痛、強い疲労感が出た場合は中止です。開始時と比較して収縮期血圧が40mmHg以上、拡張期血圧が20mmHg以上上昇した場合、脈拍が140回/分を越えた場合も中止とされています。

息切れで生活が縮む前に手を打つ

息切れの本当の問題は、苦しさそのものより行動範囲が狭くなることにあります。

  • 外出が減る → 脚の筋力が落ちる → さらに息切れがひどくなる
  • 人と会わなくなる → 意欲が落ちる
  • 買い物に行けない → 食事が簡素になり低栄養へ
  • 入浴がつらい → 清潔が保てなくなる

この連鎖は、息切れの原因が心臓でも肺でも廃用でも同じように起こります。息切れを理由に生活を縮めないことが、長い目で見て最も重要です。

「やめる」ではなく「やり方を変える」

外出をやめるのではなく、休める場所を決めておく。買い物をやめるのではなく、カートを押す・配達を併用する。入浴をやめるのではなく、シャワーチェアに座って洗う。

息切れがあっても続けられる形に変えるのが、専門職の仕事です。訪問リハビリでは、実際の自宅と生活動線で「どうすれば続けられるか」を一緒に考えられます。

入浴がつらい場合

入浴は、息切れがある方にとって負担の大きい動作です。

  • 浴槽に肩まで浸からない:胸が圧迫され、呼吸が苦しくなります
  • 湯温は熱すぎない:41度以下が目安とされることが多いです
  • シャワーチェアに座って洗う:立ったままの洗髪は特に息が切れます
  • 脱衣所を暖めておく:温度差は血圧を変動させます
  • 洗髪は休みを入れながら:腕を上げる動作は息切れを強めます

シャワーチェアは介護保険の購入対象です(年間10万円の枠内・自己負担原則1割)。詳しくはシャワーチェアの選び方|介護保険で買える入浴用具をご覧ください。

外出を続けるための工夫

  • 休憩できる場所を把握しておく:ベンチ、店の椅子
  • 時間に余裕をもつ:急ぐと息が切れます
  • 荷物を持たない:カートやリュックを使う
  • 坂道・階段を避ける経路を選ぶ
  • 歩行車を使う:前傾姿勢になり、いざというとき座れます

座面付きの歩行車は、「疲れたら座れる」という安心が外出を後押しします。介護保険の福祉用具貸与の対象です。詳しくは歩行器の選び方|種類と高さ・シルバーカーとの違いをご覧ください。

医療保険で受けられるリハビリ

息切れの原因が呼吸器や心臓の疾患だった場合、医療保険でリハビリを受けられることがあります。診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)から整理しました。

区分点数(Ⅰ)算定限度起算日
呼吸器リハビリテーション料175点90日治療開始日
心大血管疾患リハビリテーション料205点150日治療開始日
廃用症候群リハビリテーション料180点120日廃用症候群の診断又は急性増悪

ここで押さえるべきは、呼吸器リハビリテーション料の90日が、疾患別リハビリの中で最も短いという点です。しかも起算日は「発症日」ではなく「治療開始日」です。

入院後に残った息切れは廃用症候群の区分になることも

入院や体調不良で動けない期間が続いた後に残る息切れは、廃用症候群リハビリテーション料の対象になる場合があります。告示は対象を「急性疾患等に伴う安静による廃用症候群の患者であって、一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているもの」としています。

起算日は「廃用症候群の診断又は急性増悪」から。もとの病気の発症日ではありません。どの区分に該当するかは医師が判断します。

いずれの区分も、算定限度を超えた場合は原則として1月13単位まで。ただし「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」等の除外規定があります。

また、介護保険の訪問リハビリ・通所リハビリには日数制限がありません。要介護・要支援の認定があれば、医療保険の期間が終わった後の受け皿になります。

受診時に伝えること

  • いつから:急か、徐々にか。数か月前と比べてどうか
  • どの動作で息が切れるか:平地、坂、階段、着替え、安静時
  • 横になると苦しいか
  • 体重の変化:短期間の増加は特に重要
  • むくみの有無
  • 咳・痰:出る時間帯、痰の色
  • 喫煙歴:本数と年数
  • 服用中の薬:お薬手帳を持参

「動くと息が切れる」を軽く言わない

診察室では症状が出ていないため、本人が「まあ、年のせいですかね」と言ってしまうと、そこで終わってしまうことがあります。

できるだけ具体的に、変化を数字で伝えてください。「去年は駅まで歩けたが、今は途中で2回休む」。これだけで医師の判断材料になります。家族が付き添える場合は、気づいた変化を伝えてください。

よくある質問

息切れは年のせいではないのですか?

判断の基準は「変化したかどうか」です。ずっと同じ程度なら経過を見てもよいですが、数か月で明らかに悪くなった場合は年齢では説明がつきません。加齢による低下はそこまで急には進みません。

すぐ受診すべきなのはどんなときですか?

安静にしていても苦しい、横になると苦しい、胸の痛みを伴う、ピンク色の泡状の痰が出る、唇や爪が紫っぽい、急に始まった強い息切れ。これらは様子を見ずに受診してください。

横になると苦しいのはなぜですか?

心不全では、横になると下半身の血液が心臓に戻り、肺に水が溜まりやすくなるためです(起座呼吸)。「枕を高くしないと眠れなくなった」という変化は重要なサインです。

息切れがあるのに運動していいのですか?

安定している時期で、医師の許可があれば行います。動かないと脚の筋力が落ち、同じ動作により多くの酸素が必要になって息切れが悪化します。ただし強度の設定が重要なので、まず医療機関で評価を受けてください。

息切れしたときの対処は?

すぐ動作を止めて座り、前かがみになって両肘をテーブルや膝に乗せ、口すぼめ呼吸(吸った時間の2倍以上かけて吐く)を行います。立ったままこらえないでください。

階段がつらいのですが。

連続して上らないでください。吸って止まる→吐きながら1〜2段上る→また吸う、を繰り返します。2〜3段ごとに止まるほうが、結果的に楽に早く上れます。

貧血でも息切れしますか?

します。血液が酸素を運べないためです。高齢者では消化管からの慢性的な出血が背景にあることもあります。顔色が悪い、爪が白い、黒い便が出たといった変化があれば伝えてください。血液検査で分かります。

入院後から息切れするようになりました。

廃用による体力低下の可能性があります。数週間動かないだけで心肺機能も筋力も落ちます。病気が治っても息切れだけ残るのはこのためで、この部分は運動で戻せます。

心臓と肺、どちらが原因か分かりますか?

横になると苦しい・むくみ・短期間の体重増加があれば心臓寄り、痰を伴う咳や喫煙歴があり息を吐き出しにくければ肺寄りです。ただし両方を抱えている方も多く、判断は医師が行います。

受診時に何を伝えればいいですか?

いつから、どの動作で切れるか、横になると苦しいか、体重の変化、むくみ、咳と痰、喫煙歴、服用中の薬です。「去年は駅まで歩けたが今は2回休む」のように、変化を具体的に伝えてください。

まとめ

  • 息切れには受診が必要なものと、運動で戻せるものが混在している
  • 安静時の息苦しさ、起座呼吸、胸痛を伴う場合はすぐ受診
  • 「横になると苦しい」は心不全の重要なサイン
  • 判断の基準は年齢ではなく「変化したかどうか」
  • どの動作で息が切れるかを段階で表すと変化が追える
  • 心不全では症状より先に体重が増える
  • COPDでは息を吐き出しにくく、喫煙歴が関係する
  • 動かない→筋力低下→さらに息切れ、という悪循環がある
  • 貧血は見落とされやすい原因。血液検査で分かる
  • 入院後に残る息切れは廃用の可能性があり、戻せる
  • 息切れ時は座って前かがみ、肘を支えて口すぼめ呼吸
  • 力を入れる動作は息を吐きながら。階段は連続して上らない
  • 腕を上げる動作は特に苦しくなる
  • 脚の筋力が戻ると、同じ動作に必要な酸素が減る
  • 呼吸器リハビリテーション料は90日で、疾患別リハの中で最も短い
  • 入院後に残った息切れは廃用症候群リハビリテーション料の対象になることがある
  • 介護保険のリハビリには日数制限がない
  • 受診時は変化を具体的に伝える

参考にした情報

※本記事の運動に関する推奨および中止基準は、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」および「介護予防マニュアル【第4版】」にもとづいて整理したものです。息切れの段階分け、原因の分類、心臓・肺の鑑別の手がかりに関する記述は、医学・リハビリテーション領域で一般に用いられている整理および筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづくものであり、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません(確度:中)。本記事は診断を目的とするものではありません。息切れの原因の特定と治療方針の決定は医師が行います。安静時の息苦しさ、横になると苦しい、胸痛を伴う、急に始まった強い息切れは、自己判断せず速やかに受診してください。運動の可否と強度は、心臓・肺の状態によって大きく異なります。必ず主治医の指示に従ってください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味