デイサービスの送迎中に起きた事故は、介護保険サービスの提供中に起きた事故です。事業所の責任範囲の外ではありません。

根拠は報酬の構造にあります。指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)通所介護費の注24は、「利用者に対して、その居宅と指定通所介護事業所との間の送迎を行わない場合は、片道につき47単位を所定単位数から減算する。」と定めています。

行わなければ減算される=基本報酬に含まれている。つまり送迎は通所介護というサービスの一部です。したがって送迎中の事故は「指定通所介護の提供により事故が発生した場合」に該当し、市町村への連絡、記録、損害賠償の義務が生じます。

この記事では、告示第19号、省令37号、老企第25号、老企第36号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 送迎が通所介護の一部である法的根拠(47単位の減算規定)
  • 送迎中の事故に事業所の対応義務が生じること
  • 省令が定める3つの義務(連絡・記録・損害賠償)
  • 連絡先が市町村・家族・居宅介護支援事業者等であること
  • 記録の保存期間(2年間)
  • 通知が求める3つの留意点(事前の対応方法・保険加入・再発防止)
  • 交通事故と、乗降時の転倒事故で保険の建て付けが違うこと
  • どこからどこまでが「送迎」なのか
  • 家族が送迎した場合の扱い
  • 事故報告書に何を書くか

送迎は通所介護の一部。だから事業所の責任範囲

まず報酬上の位置づけを確認します。告示第19号 通所介護費 注24です。

利用者に対して、その居宅と指定通所介護事業所との間の送迎を行わない場合は、片道につき47単位を所定単位数から減算する。

老企第36号 第二の7(23)は、この減算の適用場面を説明しています。

利用者が自ら指定通所介護事業所に通う場合、利用者の家族等が指定通所介護事業所への送迎を行う場合など、当該指定通所介護事業所の従業者が利用者の居宅と指定通所介護事業所との間の送迎を実施していない場合は、片道につき減算の対象となる。

通所介護・通所リハショートステイ
送迎の位置づけ基本報酬に包括加算(片道184単位)
行わない場合片道47単位を減算加算を算定しないだけ
サービスの一部か一部である加算による評価
「サービスの一部」であることの意味

送迎が基本報酬に包括されているということは、送迎の時間も含めて通所介護というサービスが構成されているということです。

したがって、送迎中は「まだサービスが始まっていない」「もう終わった」という整理はできません。自宅の玄関を出た瞬間から、事業所の提供責任が及んでいます。

省令が定める3つの義務

省令37号 第37条(通所介護には第104条の3等を通じて準用)です。

指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。
3 指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。

義務内容対象
①連絡速やかに連絡し、必要な措置を講じる市町村/利用者の家族/居宅介護支援事業者等
②記録事故の状況と、事故に際して採った処置を記録する
③損害賠償賠償すべき事故については速やかに賠償する

注目すべきは連絡先に「市町村」が入っていることです。事業所内で処理して終わり、という選択肢は制度上ありません。事故報告は保険者への義務です。

記録は2年間保存

老企第25号 第三の一の3(30)は、保存期間を明記しています。

なお、居宅基準第39条第2項の規定に基づき、事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録は、2年間保存しなければならない。

自治体によっては条例で5年としている場合があります。保存期間は必ず指定権者に確認してください。

通知が求める3つの留意点

老企第25号 第三の一の3(30)の後段です。

  •  利用者に対する指定サービスの提供により事故が発生した場合の対応方法については、あらかじめ事業者が定めておくことが望ましい
  •  賠償すべき事態において速やかに賠償を行うため、損害賠償保険に加入しておくか、又は賠償資力を有することが望ましい
  •  事故が生じた際にはその原因を解明し、再発生を防ぐための対策を講じる

②が実務上いちばん重い。送迎中の事故は、賠償額が大きくなりやすい類型です。人身事故になれば数千万円規模もありえます。「望ましい」という表現ですが、実質的には必須と考えてください。

保険は1本では足りない

送迎に関する事故は、性質の異なる2種類が起こりえます。それぞれ対応する保険が違います。

事故の類型主に対応する保険
自動車事故走行中の追突、対向車との接触自賠責保険+任意の自動車保険
介護業務中の事故乗降時の転倒、車内での転落、シートベルト未装着による負傷介護事業者向けの賠償責任保険

乗降介助中の転倒は「自動車の運行によって」生じた事故に当たらない場合があり、自動車保険では拾えないことがあります。両方の備えが要るのはこのためです。加入内容は保険会社に確認してください。

どこからどこまでが「送迎」か

告示の文言は「その居宅と指定通所介護事業所との間の送迎」です。区間は居宅と事業所の間と定まっていますが、「居宅」の範囲がどこまでかは明文がありません。

場面一般的な扱い
居室から玄関までの移動介助送迎に含まれると解されることが多い
玄関から送迎車までの移動介助同上
車への乗降介助同上
走行中送迎そのもの
事業所での降車と玄関までの移動同上

実務上は「居宅の中で送迎に付随して行う動作」まで含めて考えるのが安全です。事故が起きたときに「玄関を出る前だったから対象外」という主張が通る保証はありません。

なお、送り出しや迎え入れの介助を訪問介護で別に算定している場合は、その時間帯は訪問介護の提供時間です。区分が変われば責任の所在も変わるため、時間帯の記録が重要になります。

ちびウルフちびウルフ

デイの車が事業所の駐車場に着いて、降りるときに転んだら?

リハウルフリハウルフ

間違いなくサービス提供中です。送迎の区間の終点は「事業所」ですから、駐車場での降車はまだ送迎の中です。

むしろ現場で迷いが出るのは「送迎から帰ってきて、次の利用者を迎えに行くまでの空車の時間」のような場面です。利用者が乗っていない時間は、対利用者の事故は起きません。職員側の労災の話になります。利用者が乗っているかどうかで、まず整理してください。

家族が送迎した場合はどうなるか

老企第36号は、家族等が送迎を行う場合を減算の対象として明示しています。事業所の従業者が送迎していないので、その片道は減算されます。

送迎の実施者報酬事故が起きた場合
事業所の従業者基本報酬に包括事業所の事故対応義務の対象
利用者の家族等片道47単位を減算事業所のサービス提供によるものではない
利用者が自ら通う同上同上

ただし、事業所の敷地内に入ってからの転倒は別です。送迎の実施者にかかわらず、事業所の管理する場所で起きた事故として、施設賠償の問題になりえます。ここは送迎の区分とは別の話です。

事故報告書に何を書くか

省令が求めているのは「事故の状況」と「事故に際して採った処置」の2つです。この2点が欠けている報告書は要件を満たしません。

  • 発生日時・場所を分単位・地点まで特定して記載する(車内か、乗降時か、走行中か)
  • 利用者の氏名、要介護度、事故時の状況(座席位置、シートベルトの装着状況、介助者の位置)を記載する
  • 事故の状況を、推測を交えず事実として記載する
  • 採った処置を時系列で記載する(救急要請、受診、家族への連絡、市町村への連絡)
  • 市町村・家族・居宅介護支援事業者等への連絡日時と、連絡した相手を記載する
  • 原因の分析と、再発防止のために講じた対策を記載する
  • 2年間(自治体によってはそれ以上)保存する

3つ目が重要です。「利用者が急に立ち上がったため」といった原因の推測を、事故の状況の欄に混ぜない。事実と分析は分けて書きます。混ざっていると、後で責任の所在を争うときに事業所側が不利になります。

ヒヤリハットとの区別

実害が生じていない事案(ヒヤリハット)には、省令上の報告義務はありません。ただし老企第25号は「事故が生じた際にはその原因を解明し、再発生を防ぐための対策を講じること」を求めています。

再発防止という観点では、ヒヤリハットこそ拾うべき情報です。報告義務の有無と、収集すべきかどうかは別問題として整理してください。

送迎に関する費用の扱い

最後に、費用の面も整理しておきます。老企第25号は、通所介護の利用料等の受領について、「利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域に居住する利用者に対して行う送迎に要する費用」を、保険給付の対象となる利用料のほかに受け取れる費用として挙げています。

  • 通常の事業の実施地域の送迎 → 基本報酬に包括。別途の費用は受け取れない
  • 通常の事業の実施地域の送迎(利用者の選定による) → 実費を受け取れる
  • いずれの場合も、保険給付の対象となるサービスと明確に区分すること

実施地域外の送迎で費用を受け取る場合も、事故に対する事業所の責任は変わりません。費用の建て付けと責任の所在は別です。

よくある質問

送迎中の事故は介護保険サービスの範囲内ですか?

範囲内です。送迎は基本報酬に包括されており、行わない場合は片道47単位が減算されます。サービスの一部である以上、送迎中の事故は「指定通所介護の提供により発生した事故」に該当します。

事故が起きたら誰に連絡しますか?

省令は「市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等」への連絡を求めています。市町村への報告は義務であり、事業所内で処理して終わりにはできません。

事故の記録は何年保存しますか?

老企第25号は2年間としています。ただし自治体の条例で5年とされている場合があるため、指定権者に確認してください。

損害賠償の義務はありますか?

あります。省令は「賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない」と定めています。

どんな保険に入っておくべきですか?

自動車事故に備える自賠責・任意の自動車保険と、介護業務中の事故に備える賠償責任保険の両方が必要です。乗降介助中の転倒は自動車保険では拾えないことがあります。加入内容は保険会社に確認してください。

どこからどこまでが送迎ですか?

告示の文言は「居宅と指定通所介護事業所との間の送迎」です。実務上は、居宅内で送迎に付随して行う移動介助から、事業所での降車・玄関までの移動までを含めて考えるのが安全です。

事業所の駐車場での転倒も対象ですか?

送迎の区間の終点は事業所なので、駐車場での降車はまだ送迎の中です。サービス提供中の事故として扱われます。

家族が送迎した場合はどうなりますか?

片道47単位が減算されます。事業所の従業者が送迎していないため、その移動中の事故は事業所のサービス提供によるものではありません。ただし事業所の敷地内での事故は別途の問題になりえます。

送迎の費用を別に受け取れますか?

通常の事業の実施地域内であれば基本報酬に包括されており、別途受け取れません。利用者の選定により実施地域外へ送迎する場合は、実費を受け取れます。

ヒヤリハットも市町村に報告しますか?

実害が生じていない事案に省令上の報告義務はありません。ただし通知は原因の解明と再発防止の対策を求めているため、事業所内での収集と分析は重要です。

事故報告書には何を書きますか?

省令が求めているのは「事故の状況」と「事故に際して採った処置」の2つです。原因の推測を状況の欄に混ぜず、事実と分析を分けて記載してください。

ショートステイの送迎も同じ扱いですか?

報酬の構造が違います。ショートステイの送迎は加算(片道184単位)であり、行わなくても減算はありません。ただし事故発生時の対応義務は同様に課されています。

まとめ
  • 送迎中の事故は、介護保険サービスの提供中に起きた事故である
  • 根拠は告示第19号 通所介護費 注24(送迎を行わない場合は片道47単位を減算)
  • 行わなければ減算される=基本報酬に包括されている=サービスの一部
  • ショートステイの送迎は加算(片道184単位)で、構造が逆
  • 省令37号 第37条が定める義務は、連絡・記録・損害賠償の3つ
  • 連絡先は市町村、利用者の家族、居宅介護支援事業者等
  • 市町村への報告は義務で、事業所内で完結させることはできない
  • 記録すべきは「事故の状況」と「事故に際して採った処置」
  • 記録は2年間保存(自治体の条例で5年の場合あり)
  • 通知は、対応方法の事前策定を望ましいとしている
  • 通知は、損害賠償保険への加入または賠償資力の保有を望ましいとしている
  • 通知は、原因の解明と再発防止の対策を求めている
  • 自動車事故と介護業務中の事故では、対応する保険が異なる
  • 乗降介助中の転倒は自動車保険で拾えないことがある
  • 送迎の区間は「居宅と事業所との間」
  • 実務上は居宅内の付随する移動介助まで含めて考えるのが安全
  • 事業所の駐車場での降車も送迎の中である
  • 送り出し・迎え入れを訪問介護で算定している時間帯は区分が異なる
  • 家族が送迎した場合は片道47単位が減算される
  • ただし事業所の敷地内での事故は施設賠償の問題になりえる
  • 事故報告書では、事実と原因の分析を分けて書く
  • ヒヤリハットに報告義務はないが、再発防止のために収集すべき
  • 実施地域外の送迎は実費を受け取れるが、事故の責任は変わらない
参考にした情報

※本記事の内容は、厚生労働省の告示、省令および通知にもとづいて整理したものです。実際の対応にあたっては原文および指定権者・保険者の運用をご確認ください。事故報告の様式・提出先・提出期限、記録の保存期間は市町村(保険者)および都道府県の条例・要綱によって定められており、地域によって異なります。必ず所在自治体にご確認ください。「送迎」の範囲、事業所の敷地内での事故の扱い、損害賠償責任の有無と範囲は、個別の事実関係により判断されるものであり、本記事は法的助言ではありません。具体的な事案については弁護士および加入している保険会社にご相談ください。保険の適用範囲は契約内容によって異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。事故報告書の書き方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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