お泊まりデイ(デイサービスの宿泊サービス)は、介護保険の給付対象ではありません。全額自己負担の保険外サービスです。

厚生労働省の指針は、これを「介護保険制度外の自主事業」と明記しています。デイサービスの設備を営業時間外に使って、事業所が独自に提供しているものであって、介護報酬は一切発生しません。区分支給限度基準額も使いません。

ただし、無法地帯ではありません。平成27年4月から都道府県知事等への届出が義務となり、人員・設備・運営の指針が示されています。宿泊室は1人あたり7.43平方メートル以上、利用定員は事業所の利用定員の2分の1以下かつ9人以下、といった具体的な基準があります。

この記事では、指定居宅サービス等基準(省令37号)第95条第4項と、平成27年4月30日 老振発0430第1号等の指針を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • お泊まりデイが介護保険の給付対象外であること
  • 「介護保険制度外の自主事業」と国が位置付けていること
  • 費用が全額自己負担になること、限度額を使わないこと
  • 平成27年から届出が義務化されていること
  • 宿泊室の面積基準(1人7.43平方メートル以上)
  • 利用定員の上限(利用定員の2分の1以下かつ9人以下)
  • 夜勤職員の配置(常時1人以上)
  • おおむね4日以上の連続利用で宿泊サービス計画が必要になること
  • 長期化した場合に他のサービスへの変更が求められること
  • ショートステイとの違いと使い分け

お泊まりデイは介護保険の給付対象ではない

ここが最も重要な点です。国の指針は、宿泊サービスを「介護保険制度外の自主事業」として位置付けています。

項目デイサービス(通所介護)お泊まりデイ(宿泊サービス)
介護保険給付対象給付対象外
費用1〜3割負担全額自己負担
区分支給限度基準額使う使わない
料金介護報酬で決まる事業所が自由に設定
指定都道府県知事等の指定届出のみ
基準省令(法的拘束力あり)指針(技術的助言)
保険外だから「限度額を圧迫しない」

お泊まりデイの最大の実務上のメリットは、区分支給限度基準額をまったく使わない点です。

ショートステイは介護保険サービスなので限度額を消費します。すでにデイや訪問介護で限度額いっぱいの方は、ショートを入れる余地がありません。お泊まりデイなら、限度額とは無関係に泊まれます。

代わりに、費用は全額自己負担です。金額の設定も事業所ごとに自由なので、契約前に必ず確認してください。

届出は義務。平成27年4月から

根拠は省令37号 第95条第4項です。

前項ただし書の場合(指定通所介護事業者が第一項に掲げる設備を利用し、夜間及び深夜に指定通所介護以外のサービスを提供する場合に限る。)には、当該サービスの内容を当該サービスの提供の開始前に当該指定通所介護事業者に係る指定を行った都道府県知事(指定都市及び中核市にあっては、指定都市又は中核市の市長。)に届け出るものとする。

  • 届出先は都道府県知事(指定都市・中核市はその市長)
  • タイミングはサービスの提供の開始前
  • 届け出た内容は介護サービス情報公表制度で公表される

この届出制が導入される前は、実態が把握されていませんでした。利用者や家族が事前に情報を得られなかったことが、届出制と情報公表を導入した理由です。現在は、公表情報から宿泊サービスの有無を確認できます。

指針が定める基準

平成27年4月30日付の指針(老振発0430第1号ほか)が、人員・設備・運営の基準を示しています。省令ではなく指針(技術的助言)である点に注意が必要ですが、都道府県は多くの場合これを踏まえて指導しています。

宿泊室

項目基準
個室の面積1室あたり7.43平方メートル以上
個室の定員1人(利用者の希望等により2人も可)
個室以外の定員1室あたり4人以下
個室以外の合計面積7.43平方メートル×(宿泊サービスの利用定員−個室の定員数)以上
プライバシーパーテーション等により利用者のプライバシーが確保された構造であること

7.43平方メートルは、およそ4.5畳です。特別養護老人ホームの居室基準(10.65平方メートル以上)より狭く、静養室を転用する形が想定されています。

利用定員

宿泊サービスの利用定員は、当該指定通所介護事業所等の運営規程に定める利用定員の2分の1以下かつ9人以下とすること。

デイの利用定員宿泊サービスの上限
10人5人
18人9人
25人9人(2分の1は12.5人だが、9人が上限)
40人9人

大規模なデイでも、宿泊は最大9人です。これは小規模多機能型居宅介護の宿泊定員(登録定員に応じて9人以下)と揃えた水準と読めます。

人員

宿泊サービスの提供時間帯を通じて、介護職員又は看護職員を常時1人以上確保すること。(介護職員は、介護福祉士の資格を有する者又は実務者研修を修了した者であることが望ましい。)

「常時1人以上」です。宿直ではなく、起きて対応できる体制が求められています。9人まで泊まれるのに夜勤は1人でよい、という水準なので、体制としては薄い部類です。

ちびウルフちびウルフ

4.5畳で夜勤1人って、けっこう厳しくないですか?

リハウルフリハウルフ

厳しいです。だからこそ「見学して自分の目で確かめてください」と伝えるようにしています。

この基準は、保険外の自主事業に対して国が示した最低限の目安です。指針であって省令ではないので、法的な拘束力も弱い。基準を満たしていることと、良いサービスであることは別問題です。

逆に、指針を上回る体制で運営している事業所もたくさんあります。だから一律に「お泊まりデイは危ない」とも言えない。見るしかありません。

おおむね4日以上の連続利用で計画が必要

指針は、長期化への歯止めを置いています。

  • 宿泊サービスは、原則として緊急時または短期的な利用に限定される
  • おおむね4日以上連続して利用することが予定される利用者、または反復的・継続的な利用が予定される利用者については、宿泊サービス計画の作成が必要
  • 計画は利用者・家族に説明して同意を得て、交付する
  • 連続利用が長期にわたる場合は、他の介護保険サービスへの変更を検討するよう求められている

「4日以上」が一つの節目です。ここを超えるなら、事業所は計画を作り、ケアマネジャーは他のサービスへの移行を検討する。指針はそういう建て付けになっています。

長期滞在の常態化が問題視されてきた

お泊まりデイが社会問題として取り上げられたのは、特別養護老人ホームの待機者が長期間泊まり続けるという使われ方が広がったからです。

デイの機能訓練室に布団を敷いて雑魚寝、という報道もありました。指針が面積・定員・プライバシーを具体的に定めたのは、この経緯によります。

「短期・緊急」という位置付けは、指針の根幹です。常態化しているなら、ショートステイや施設入所を検討すべき局面だと考えてください。

ショートステイとの違い

項目お泊まりデイショートステイ(短期入所生活介護)
介護保険対象外(自主事業)対象
費用全額自己負担1〜3割負担+食費・滞在費
限度額使わない使う
予約比較的取りやすい混み合うことが多い
環境通い慣れたデイの建物別の施設
定員9人以下施設による
人員夜間は常時1人以上省令による配置基準
基準の性格指針(技術的助言)省令(法的拘束力)
連続利用短期・緊急が原則連続30日を超えると保険給付なし

使い分けの軸は3つです。

  • 限度額に余裕があるか:ないならお泊まりデイ、あるならショートステイ
  • 環境の変化に耐えられるか:認知症で環境変化に弱い方は、通い慣れたデイに泊まれるお泊まりデイが有利
  • 緊急かどうか:急な家族の入院などはお泊まりデイが即応しやすい

2つ目は実務上かなり効きます。日中通っているのと同じ場所、同じ職員というのは、認知症のある方にとって大きな安心材料です。ショートステイで混乱が強く出る方が、お泊まりデイなら落ち着いて過ごせることは実際にあります。

利用前に確認すべきこと

  • 都道府県等に届出をしている事業所か確認する(介護サービス情報公表システムで確認できる)
  • 宿泊室の広さ、個室か多床室か、プライバシーの確保の方法を見学して確認する
  • 夜間の職員体制(人数、資格、宿直か夜勤か)を確認する
  • 1泊あたりの料金と、食費・光熱費等の内訳を書面で確認する
  • 急変時の対応方法、協力医療機関の有無を確認する
  • 4日以上連続で利用する予定があるなら、宿泊サービス計画の作成を求める
  • 長期化しそうなら、ケアマネジャーと他サービスへの移行を検討する

1つ目は必ず確認してください。届出をしていない事業所は、そもそも基準を守る前提に立っていません。介護サービス情報公表システムで事業所名を検索すれば、宿泊サービスの実施状況を確認できます。

ちびウルフちびウルフ

ケアマネさんはお泊まりデイをケアプランに書けるんですか?

リハウルフリハウルフ

介護保険の給付対象ではないので、給付管理の対象にはなりません。ただし居宅サービス計画には、保険給付外のサービスとして位置付けることができます。第1表・第2表に、インフォーマルサービスや自費サービスと同じ扱いで書きます。

むしろ書くべきです。泊まっている事実を把握していないと、翌日のデイの状態が読めないし、家族の負担も見えない。給付管理と支援の全体像は別物なので、そこは分けて考えてください。

よくある質問

お泊まりデイは介護保険が使えますか?

使えません。厚生労働省の指針は宿泊サービスを「介護保険制度外の自主事業」と位置付けており、全額自己負担になります。

区分支給限度基準額は使いますか?

使いません。介護保険の給付対象外なので、限度額とは無関係です。限度額に余裕がない方にとっては、この点が最大の利点になります。

料金はいくらですか?

事業所が自由に設定するため、一律の金額はありません。1泊あたりの料金と食費・光熱費等の内訳を、契約前に書面で確認してください。

届出は必要ですか?

必要です。省令37号 第95条第4項により、サービスの提供の開始前に都道府県知事(指定都市・中核市はその市長)へ届け出るものとされています。

届出をしているか確認できますか?

できます。届け出た内容は介護サービス情報公表制度で公表されるため、システムで事業所名を検索すれば宿泊サービスの実施状況を確認できます。

宿泊室の広さの基準はありますか?

指針では、個室は1室あたり7.43平方メートル以上、個室以外は1室4人以下で、合計面積が7.43平方メートル×(利用定員−個室の定員数)以上とされています。

何人まで泊まれますか?

当該事業所の運営規程に定める利用定員の2分の1以下、かつ9人以下です。大規模なデイでも最大9人になります。

夜間の職員は何人ですか?

指針では、提供時間帯を通じて介護職員または看護職員を常時1人以上確保することとされています。介護福祉士または実務者研修修了者であることが望ましいとされています。

何日まで連続で泊まれますか?

日数の上限は定められていませんが、原則として緊急時または短期的な利用に限定されます。おおむね4日以上連続する場合は宿泊サービス計画の作成が必要で、長期にわたる場合は他の介護保険サービスへの変更を検討することとされています。

ショートステイとどちらがよいですか?

限度額に余裕がなければお泊まりデイ、あればショートステイが基本です。認知症で環境の変化に弱い方は、通い慣れた場所に泊まれるお泊まりデイが有利な場合があります。

ケアプランに書けますか?

給付管理の対象にはなりませんが、居宅サービス計画に保険給付外のサービスとして位置付けることができます。生活の全体像を把握するうえで、記載しておくことが望まれます。

指針を守っていない事業所はどうなりますか?

指針は技術的助言であり、省令のような法的拘束力はありません。ただし届出は義務であり、都道府県は指針を踏まえた指導を行っています。利用前に見学して自分の目で確認することが重要です。

まとめ
  • お泊まりデイは介護保険の給付対象ではない
  • 国の指針は「介護保険制度外の自主事業」と位置付けている
  • 費用は全額自己負担で、料金は事業所が自由に設定する
  • 区分支給限度基準額を使わない
  • 限度額に余裕がない方にとっては、この点が最大の利点
  • 平成27年4月から都道府県知事等への届出が義務
  • 根拠は省令37号 第95条第4項
  • 届出はサービスの提供の開始前に行う
  • 届け出た内容は介護サービス情報公表制度で公表される
  • 個室の宿泊室は1室あたり7.43平方メートル以上(およそ4.5畳)
  • 個室以外は1室4人以下で、プライバシーが確保された構造であること
  • 利用定員は事業所の利用定員の2分の1以下かつ9人以下
  • 大規模なデイでも宿泊は最大9人
  • 提供時間帯を通じて介護職員または看護職員を常時1人以上確保する
  • 介護福祉士または実務者研修修了者であることが望ましい
  • 原則として緊急時または短期的な利用に限定される
  • おおむね4日以上連続する場合は宿泊サービス計画が必要
  • 計画は利用者・家族に説明し、同意を得て交付する
  • 長期にわたる場合は他の介護保険サービスへの変更を検討する
  • 指針は省令ではなく技術的助言で、法的拘束力は弱い
  • 基準を満たしていることと良いサービスであることは別問題
  • 認知症で環境の変化に弱い方には、通い慣れた場所という利点がある
  • 給付管理の対象外だが、居宅サービス計画には保険給付外として位置付けられる
  • 利用前に届出の有無、宿泊室、夜間体制、料金、急変時対応を確認する
参考にした情報

※本記事の内容は、厚生労働省の省令および指針にもとづいて整理したものです。実際の利用にあたっては原文および都道府県・指定都市・中核市の運用をご確認ください。宿泊サービスに関する基準は「指針」(技術的助言)であり省令のような法的拘束力はなく、自治体によって独自の上乗せ基準や運用が設けられている場合があります。料金は事業所が自由に設定するため、金額の目安は本記事では示していません。必ず契約前に書面で確認してください。ショートステイの連続利用に関する記述は制度の概要を示したものです。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。使い分けの判断軸や見学時の確認事項に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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