特養の常勤医師配置加算・精神科医師定期的療養指導加算とは?

特養の常勤医師配置加算は1日につき25単位、精神科医師定期的療養指導加算は1日につき5単位です。どちらも医師の関わりを評価する加算ですが、性格はまったく違います。常勤医師配置加算は「常勤の医師を雇っているか」、精神科医師定期的療養指導加算は「認知症の入所者が3分の1以上いて、精神科医が月2回以上診ているか」です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の原文を確認して、2つの加算の単位数・要件・入所者100人超の場合の計算・実務でつまずく点を整理しました。
この記事でわかること
- 特養の常勤医師配置加算は1日25単位という単位数
- 精神科医師定期的療養指導加算は1日5単位という単位数
- 特養の医師配置は「非常勤でよい」のが原則だということ
- 入所者100人超の場合に追加で必要な常勤換算の計算
- 精神科医師の療養指導は月2回以上という頻度
- 認知症の入所者が全入所者の3分の1以上という要件
- 2つの加算は併算定できること
- 配置医師緊急時対応加算との違い
特養の常勤医師配置加算とは?
常勤医師配置加算は、特養に専従の常勤医師を配置していることを評価する加算です。
前提として押さえておきたいのは、特養の医師配置は常勤でなくてよいという点です。特養の人員基準では、入所者に対して健康管理および療養上の指導を行うために必要な数の医師を置くこととされており、実際には近隣の医療機関の医師が配置医師(嘱託医)として週に数回訪れる形が一般的です。
老健が常勤医師の配置を義務づけられているのとは対照的で、特養で常勤医師を置くのは例外的な体制です。だからこそ加算として評価されています。
ちびウルフ配置医師が週3回来ています。これは常勤にあたりますか。
リハウルフあたりません。要件は「専ら当該指定介護老人福祉施設の職務に従事する常勤の医師」です。他院の外来をやりながら週3回来る形は、専従でも常勤でもありません。
常勤医師配置加算の単位数と要件
告示第21号の介護福祉施設サービスの注17に定められています。
17 専ら当該指定介護老人福祉施設の職務に従事する常勤の医師を1名以上配置しているもの(入所者の数が100を超える指定介護老人福祉施設にあっては、専ら当該指定介護老人福祉施設の職務に従事する常勤の医師を1名以上配置し、かつ、医師を常勤換算方法(中略)で入所者の数を100で除した数以上配置しているもの)として、(中略)届出を行った指定介護老人福祉施設については、1日につき25単位を所定単位数に加算する。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | 100床・年間の目安 |
|---|---|---|---|
| 常勤医師配置加算 | 25単位 | 1日 | 912,500単位 |
要件は入所者数で変わる
| 入所者の数 | 必要な配置 |
|---|---|
| 100人以下 | 専従常勤の医師1名以上 |
| 100人超 | 専従常勤の医師1名以上、かつ医師を常勤換算方法で「入所者の数÷100」以上 |
100人超は「1名+常勤換算」の2段構え
入所者150人の特養なら、専従常勤の医師1名に加えて、医師を常勤換算で1.5以上配置する必要があります。専従常勤1名だけでは足りません。常勤換算のほうには専従の要件が付いていないため、非常勤医師を組み合わせて数を満たす形が想定されます。
「専ら従事する」の意味
告示は「専ら当該指定介護老人福祉施設の職務に従事する常勤の医師」としています。他の医療機関の業務と兼務している医師は、この要件を満たしません。配置医師(嘱託医)とは別の話です。
精神科医師定期的療養指導加算とは?
精神科医師定期的療養指導加算は、認知症の入所者が多い特養で、精神科を担当する医師が定期的に療養指導を行っていることを評価する加算です。
認知症の行動・心理症状への対応は、施設の職員だけで抱えるには限界があります。薬の調整、鑑別診断、専門医療機関との連携。ここに定期的に精神科医が関わる体制を評価するのがこの加算です。
精神科医師定期的療養指導加算の単位数と要件
告示第21号の介護福祉施設サービスの注18に定められています。
18 認知症(法第5条の2第1項に規定する認知症をいう。以下同じ。)である入所者が全入所者の3分の1以上を占める指定介護老人福祉施設において、精神科を担当する医師による定期的な療養指導が月に2回以上行われており、かつ、(中略)届出を行った場合は、1日につき5単位を所定単位数に加算する。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 精神科医師定期的療養指導加算 | 5単位 | 1日 |
2つの要件
- 認知症である入所者が全入所者の3分の1以上を占めること
- 精神科を担当する医師による定期的な療養指導が月に2回以上行われていること
「認知症」に日常生活自立度の縛りがない
認知症専門ケア加算の対象が日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mに限られるのに対し、この加算の分子は「認知症である入所者」です。介護保険法第5条の2第1項の認知症の定義に該当すればよく、重症度による絞り込みがありません。3分の1という割合は、多くの特養で満たせる水準です。
「精神科を担当する医師」とは
告示は「精神科を担当する医師」としており、精神科の標榜医であることや専門医資格を求める記載はありません。定期的な療養指導を行える体制であることが要件です。
ちびウルフ月2回以上というのは、施設に来てもらう必要がありますか。
リハウルフ告示は「定期的な療養指導」としか書いていません。訪問診療の形が一般的だと思いますが、具体的な方法については指定権者に確認してください。指導の記録を残すことは前提です。
2つの加算の比較
| 比較の観点 | 常勤医師配置加算 | 精神科医師定期的療養指導加算 |
|---|---|---|
| 単位数 | 1日25単位 | 1日5単位 |
| 評価しているもの | 医師の雇用形態 | 認知症への専門的な関わり |
| 医師の要件 | 専従・常勤 | 精神科を担当する医師 |
| 頻度の要件 | なし(常勤であること) | 月2回以上の療養指導 |
| 入所者の要件 | なし | 認知症の入所者が3分の1以上 |
| 届出 | 必要 | 必要 |
両者の注に相互の併算定を排除する規定はありません。常勤医師を配置し、かつ精神科医が月2回以上療養指導を行っていれば、合わせて1日30単位になります。
配置医師緊急時対応加算との違い
特養には医師に関する加算がもう1つあります。配置医師緊急時対応加算(325・650・1,300単位)です。
| 加算 | 評価しているもの | 算定のタイミング |
|---|---|---|
| 常勤医師配置加算 | 常勤医師の配置という体制 | 体制があれば毎日 |
| 精神科医師定期的療養指導加算 | 精神科医の定期的な関わり | 体制があれば毎日 |
| 配置医師緊急時対応加算 | 配置医師が緊急で施設に赴き診療したこと | 実際に対応したとき |
前2つは体制加算、配置医師緊急時対応加算は出来高です。性格が違うため、併せて算定する場面はあり得ます。
2つの加算の注意点
常勤医師の確保は現実的か
正直に書くと、常勤医師配置加算を新たに取りにいく特養は多くありません。1日25単位は100床で年間912,500単位、金額にして900万円前後になりますが、常勤医師1名の人件費を賄えるかというと厳しい水準です。すでに医療法人が母体で常勤医師を置いている施設が算定する、という形が実態に近いと思われます。
認知症の割合は入退所で動く
精神科医師定期的療養指導加算の「3分の1以上」は入退所によって変動します。認知症の有無は主治医意見書等で確認できるため、入退所のたびに割合を再計算する運用を組んでおいてください。
療養指導の記録を残す
月2回以上という頻度は数えられる要件です。いつ、どの入所者に対して、どういう指導が行われたのか。診療録と施設側の記録の両方で示せる形にしておいてください。
どちらも届出が必要
2つとも「届出を行った」ことが要件に含まれています。要件を満たしていても、届出をしなければ算定できません。
常勤医師配置加算・精神科医師定期的療養指導加算のQ&A
配置医師(嘱託医)は常勤医師配置加算の対象になりますか?
なりません。要件は「専ら当該指定介護老人福祉施設の職務に従事する常勤の医師」です。他院と兼務している配置医師は該当しません。
入所者が100人を超えるとどうなりますか?
専従常勤の医師1名以上に加えて、医師を常勤換算方法で「入所者の数÷100」以上配置する必要があります。
常勤換算の医師も専従でなければいけませんか?
告示は常勤換算部分について「医師を常勤換算方法で」としており、専従の要件を付けていません。
精神科医師定期的療養指導加算の「認知症」に重症度の条件はありますか?
ありません。介護保険法第5条の2第1項に規定する認知症であればよく、日常生活自立度による絞り込みはありません。
療養指導は月2回でよいですか?
「月に2回以上」が要件です。2回が下限になります。
精神科の専門医資格が必要ですか?
告示は「精神科を担当する医師」とするのみで、専門医資格を求める記載はありません。
2つの加算は併算定できますか?
それぞれの注に相互の併算定を排除する規定はありません。両方の要件を満たせば合わせて1日30単位になります。
配置医師緊急時対応加算と一緒に算定できますか?
性格が異なる加算です。個別の組み合わせについては配置医師緊急時対応加算の注も併せて確認してください。
届出は必要ですか?
どちらも必要です。要件を満たしていても届出をしなければ算定できません。
まとめ
- 特養の常勤医師配置加算は1日につき25単位
- 精神科医師定期的療養指導加算は1日につき5単位
- 特養の医師配置は常勤でなくてよいのが原則で、常勤配置は例外的な体制
- 常勤医師配置加算の要件は「専ら当該施設の職務に従事する常勤の医師1名以上」
- 他院と兼務している配置医師(嘱託医)は該当しない
- 入所者100人超の場合は、専従常勤1名に加えて常勤換算で「入所者数÷100」以上が必要
- 常勤換算部分には専従の要件が付いていない
- 精神科医師定期的療養指導加算の要件は「認知症の入所者が3分の1以上」と「月2回以上の療養指導」
- この加算の「認知症」に日常生活自立度による絞り込みはない
- 認知症専門ケア加算(ランクⅢ・Ⅳ・M)とは母集団が異なる
- 「精神科を担当する医師」に専門医資格の要件はない
- 2つの加算は相互の併算定を排除する規定がなく、合わせて1日30単位になり得る
- 配置医師緊急時対応加算は出来高で、この2つの体制加算とは性格が違う
- どちらも届出が必要
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護福祉施設サービス 注17・注18
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。この2つの加算については老企第40号に個別の留意事項が置かれていないため、告示の文言にもとづく整理となります。実際の届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。





