特養の認知症専門ケア加算は(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位、いずれも1日につき。小さな加算ですが、押さえるべき点が3つあります。

ひとつめは認知症チームケア推進加算を算定していると算定できないこと。令和6年度改定で新設されたチームケア推進加算(150単位・120単位)とは、はっきり排他関係にあります。

ふたつめは、施設系は(Ⅰ)の段階から「日常生活自立度Ⅲ以上が2分の1以上」を求められること。訪問系サービスの(Ⅰ)が「Ⅱ以上が2分の1以上」であるのに比べ、明確に厳しい設定です。

そして三つめ。施設系の(Ⅱ)には、訪問系にある「Ⅲ以上が20%以上」のような追加の割合要件がありません。(Ⅰ)の要件をすべて満たしたうえで、指導者の配置と研修計画を足せば(Ⅱ)になります。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第3号の5、同第94号、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • (Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位で1日につき算定すること
  • 認知症チームケア推進加算とは併算定できないこと
  • 対象者は日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mであること
  • (Ⅰ)(Ⅱ)で対象者の範囲が同じであること
  • (Ⅰ)の割合要件が「Ⅲ以上が2分の1以上」であること
  • 訪問系サービスとの要件の違い
  • 研修修了者の必要人数の計算
  • (Ⅱ)で追加される2つの要件
  • 会議はテレビ電話装置等を活用できること
  • 施設系の通知に割合の算定方法の定めがないこと

単位数は3単位と4単位

区分単位数算定の単位
認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位1日につき
認知症専門ケア加算(Ⅱ)4単位1日につき

ソ 認知症専門ケア加算

注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った指定介護老人福祉施設が、別に厚生労働大臣が定める者に対し専門的な認知症ケアを行った場合には、当該基準に掲げる区分に従い、1日につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定せず、認知症チームケア推進加算を算定している場合においては、次に掲げる加算は算定しない。

認知症チームケア推進加算との二者択一

令和6年度改定で新設された認知症チームケア推進加算(Ⅰ)150単位/月・(Ⅱ)120単位/月を算定している場合、認知症専門ケア加算は算定できません。

単純に月額で比べると、認知症専門ケア加算(Ⅱ)は4単位×30日=120単位。チームケア推進加算(Ⅱ)と同水準、(Ⅰ)なら150単位で上回ります。

ただしチームケア推進加算には別途の要件(BPSDの評価・記録、チームによる対応等)があります。どちらを取りにいくかは、体制として維持できるほうで判断してください。

対象者は日常生活自立度ランクⅢ以上

「厚生労働大臣が定める者」は、告示第94号を経由して次のように定められています。

日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者

老企第40号が、これを数値で定義しています。

「日常生活に支障を来すおそれのある症状若しくは行動が認められることから介護を必要とする認知症の者」とは、日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当する入所者を指すものとする。

(Ⅰ)(Ⅱ)で対象者は同じ

訪問介護など訪問系サービスでは、(Ⅰ)の対象がランクⅡ以上、(Ⅱ)の対象がランクⅢ以上と分かれています。

しかし施設系は、告示第94号がどちらも同じ号を引いており、(Ⅰ)(Ⅱ)とも対象者はランクⅢ・Ⅳ・Mです。加算の区分によって算定対象者が変わることはありません。

(Ⅰ)の3つの要件

イ 認知症専門ケア加算(Ⅰ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。

(1) 事業所又は施設における利用者又は入所者の総数のうち、日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者(対象者)の占める割合が二分の一以上であること。
(2) 認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を、(中略)対象者の数が二十人未満である場合にあっては一以上、対象者の数が二十人以上である場合にあっては一に対象者の数が十九を超えて十又はその端数を増すごとに一を加えて得た数以上配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施していること。
(3) 当該事業所又は施設の従業者に対する認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催していること。

訪問系との決定的な違い

項目施設系(特養等)訪問系(訪問介護等)
(Ⅰ)の割合要件自立度Ⅲ以上が2分の1以上自立度Ⅱ以上が2分の1以上
(Ⅱ)の追加の割合要件なし自立度Ⅲ以上が20%以上
(Ⅰ)の算定対象者ランクⅢ以上ランクⅡ以上
ちびウルフちびウルフ

施設のほうが要件が厳しいんですね。同じ加算名なのに。

リハウルフリハウルフ

条文上はそうなっている。ただ、実態と合わせて考えると理解しやすい。

特養の入所者は要介護3以上が原則で、認知症のある方の割合がもともと高い。「Ⅲ以上が半数」は、多くの特養で満たせる水準だと思う。

一方、訪問介護の利用者は要支援・要介護1の方も含めて幅が広い。だから「Ⅱ以上で半数」に緩めないと、そもそも成立しない——そういう調整だと読める。

実務で大事なのは自分の施設の入所者について、自立度Ⅲ以上が何人いるかを数えること。意外と把握していない施設が多い。まずそこからだよ。

研修修了者の必要人数

対象者(ランクⅢ以上)の数必要な研修修了者数
20人未満1人以上
20人以上29人以下2人以上
30人以上39人以下3人以上
40人以上49人以下4人以上
50人以上59人以下5人以上

条文の「一に対象者の数が十九を超えて十又はその端数を増すごとに一を加えて得た数」を展開すると上表になります。対象者19人までは1人、以降10人増えるごとに1人ずつ追加です。

100床の特養で対象者が60人いれば、研修修了者は6人以上必要になります。定員規模の大きい施設ほど、計画的な研修派遣が要ります。

「認知症介護に係る専門的な研修」とは

「認知症介護に係る専門的な研修」とは、(中略)「認知症介護実践リーダー研修」及び認知症看護に係る適切な研修を指すものとする。

認知症介護実践者研修では要件を満たしません。その上位にあたる実践リーダー研修が必要です。

(Ⅱ)で追加される2つの要件

ロ 認知症専門ケア加算(Ⅱ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。

(1) イの基準のいずれにも適合すること。
(2) 認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者を一名以上配置し、事業所又は施設全体の認知症ケアの指導等を実施していること。
(3) 当該事業所又は施設における介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、当該計画に従い、研修(外部における研修を含む。)を実施又は実施を予定していること。

要件(Ⅰ)(Ⅱ)
ランクⅢ以上が2分の1以上必要必要
実践リーダー研修等修了者の配置必要必要
会議の定期開催必要必要
指導者研修修了者1名以上+施設全体の指導必要
職員ごとの研修計画の作成と実施必要

「認知症介護の指導に係る専門的な研修」とは、(中略)「認知症介護指導者研修」及び認知症看護に係る適切な研修を指すものとする。

(Ⅰ)から(Ⅱ)への道筋は明快

施設系には、訪問系のような「(Ⅱ)だけの割合要件」がありません。(Ⅰ)を算定できている施設は、指導者研修修了者を1名確保し、職員ごとの研修計画を作れば(Ⅱ)になります。

差は1日1単位(3単位→4単位)。100床で30日なら月3,000単位=約3万円です。指導者研修に1名派遣する価値があるかは、この金額と、施設全体のケアの質への効果で判断することになります。

会議はテレビ電話装置等を活用できる

「認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議」は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。この際、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。

夜勤者を含めた全職員が集まるのは現実的でないため、オンラインの活用が明示的に認められています。

なお「定期的に」の頻度について、施設系の通知に明示はありません。他の加算の会議が「おおむね1月に1回以上」とされている例を参考に、月1回程度の開催と記録を目安に組むのが安全です。頻度の解釈は指定権者に確認してください。

割合の判定方法は通知に定めがない

訪問系にある規定が施設系にはない

訪問系サービスの通知には、「算定日が属する月の前3月間のうち、いずれかの月の利用者実人員数又は利用延人員数で算定する」という割合の判定方法が置かれています。

しかし施設系(介護福祉施設サービス)の通知には、この規定がありません。いつの時点の入所者で数えるのか、月ごとにどう判定するのかは、条文からは読み取れません。

割合の集計方法は必ず指定権者に確認してください。この記事でも断定は避けます。

他サービスの認知症関連加算との関係

加算単位数認知症専門ケア加算との関係
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)150単位/月併算定不可
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)120単位/月併算定不可
認知症行動・心理症状緊急対応加算200単位/日規定なし
(Ⅰ)と(Ⅱ)いずれか一方のみ

算定にあたっての実務ステップ

  • 入所者ごとの認知症高齢者の日常生活自立度を一覧化する
  • ランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する入所者の数を数える
  • 入所者総数に対する割合が2分の1以上かを確認する
  • 割合の集計方法(判定時点・期間)について指定権者に確認する
  • 対象者数に応じた認知症介護実践リーダー研修等修了者の必要数を確認する
  • 不足する場合は研修派遣の計画を立てる
  • 認知症ケアに関する留意事項の伝達・技術的指導に係る会議を定期的に開催し、記録する(テレビ電話可)
  • (Ⅱ)を狙う場合は、認知症介護指導者研修の修了者を1名以上確保する
  • (Ⅱ)の場合は、介護職員・看護職員ごとの認知症ケア研修計画を作成する
  • 認知症チームケア推進加算を算定していないことを確認する
  • 都道府県知事へ届け出て、対象者(ランクⅢ以上)にのみ算定する

10番目を忘れないでください。チームケア推進加算を算定しているなら、この加算は算定できません。

よくある質問

単位数はいくらですか?

認知症専門ケア加算(Ⅰ)は1日につき3単位、(Ⅱ)は1日につき4単位です。

認知症チームケア推進加算と併算定できますか?

できません。告示は「認知症チームケア推進加算を算定している場合においては、次に掲げる加算は算定しない」としています。

(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?

できません。いずれか一方のみです。

対象となる入所者は誰ですか?

日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当する入所者です。(Ⅰ)(Ⅱ)で対象者は変わりません。

訪問介護の認知症専門ケア加算と要件は同じですか?

違います。訪問系の(Ⅰ)は自立度Ⅱ以上が2分の1以上ですが、施設系はⅢ以上が2分の1以上です。また訪問系の(Ⅱ)にはⅢ以上が20%以上という追加要件がありますが、施設系にはありません。

研修修了者は何人必要ですか?

対象者が20人未満なら1人以上、20人以上の場合は1人に、対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上です。

認知症介護実践者研修でも要件を満たしますか?

満たしません。通知が示しているのは「認知症介護実践リーダー研修」および認知症看護に係る適切な研修です。

(Ⅱ)で追加される要件は?

認知症介護指導者研修等の修了者を1名以上配置して施設全体の認知症ケアの指導等を実施することと、介護職員・看護職員ごとの認知症ケア研修計画を作成し実施(または実施予定)することの2つです。

会議はオンラインでよいですか?

テレビ電話装置等を活用して行うことができるとされています。

会議の頻度は決まっていますか?

施設系の通知に明示はありません。頻度の解釈は指定権者にご確認ください。

割合はいつの時点で数えますか?

施設系の通知には割合の算定方法についての規定が置かれていません。集計方法は指定権者にご確認ください。

対象者以外の入所者にも算定できますか?

できません。「別に厚生労働大臣が定める者に対し専門的な認知症ケアを行った場合」に算定する加算です。

まとめ
  • 特養の認知症専門ケア加算は(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位、1日につき
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 認知症チームケア推進加算を算定していると算定できない
  • チームケア推進加算は(Ⅰ)150単位/月・(Ⅱ)120単位/月
  • 対象者は日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・M
  • (Ⅰ)(Ⅱ)で対象者の範囲は同じ
  • (Ⅰ)はランクⅢ以上が入所者総数の2分の1以上であること
  • 訪問系の(Ⅰ)はランクⅡ以上が2分の1以上で、施設系より緩い
  • 施設系の(Ⅱ)には追加の割合要件がない
  • 研修修了者は対象者20人未満で1人、以降10人増ごとに1人追加
  • 必要なのは認知症介護実践リーダー研修等の修了者
  • 実践者研修では要件を満たさない
  • (Ⅱ)は認知症介護指導者研修等の修了者を1名以上配置する
  • (Ⅱ)は職員ごとの認知症ケア研修計画の作成と実施も必要
  • (Ⅰ)から(Ⅱ)への上乗せは指導者1名と研修計画の2点
  • 会議はテレビ電話装置等を活用できる
  • 会議の頻度について施設系の通知に明示はない
  • 割合の算定方法についても施設系の通知に規定がない
  • 対象者(ランクⅢ以上)にのみ算定する
  • 届出が必要
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。施設系(介護福祉施設サービス)の通知には、割合の算定方法および会議の開催頻度についての明示的な規定が置かれていません。本文中でもこれらについて断定を避けています。集計方法・開催頻度は必ず指定権者にご確認ください。「認知症看護に係る適切な研修」に該当する研修の範囲、届出の様式・提出方法についても指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。体制づくりの進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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