特養の経口移行加算とは?28単位・180日以内の算定要件を解説

特養の経口移行加算は28単位/日です。1日単位なので、30日で月840単位。経口維持加算(Ⅰ)(Ⅱ)の合計500単位を上回ります。栄養関連の加算では最大級です。
対象は「現に経管により食事を摂取している方」。胃ろう・経鼻経管から口へ戻していく取組を評価する加算です。ただし180日という期限があり、一度180日算定して移行できなかった場合、期間を空けて再挑戦しても算定できません。事実上の一発勝負です。
もうひとつ、条文を突き合わせると気づく点があります。告示は算定期間の起算日を「計画が作成された日」としているのに対し、老企第40号は「入所者又はその家族の同意を得た日」としています。実務では両者が近接することが多いものの、条文上はずれています。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の「リ 経口移行加算」、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第66号、老企第40号第二の5(29)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 28単位/日で、月840単位相当になること
- 対象は経管栄養中で、医師の指示を受けた入所者であること
- 経口移行計画は栄養ケア計画と一体のものとして作成すること
- 栄養管理は管理栄養士等、支援は言語聴覚士または看護職員が担うこと
- 180日の起算日が告示と通知でずれていること
- 180日を超えても継続できる例外と、2週間ごとの医師の指示
- 180日算定後に移行できなかった場合、再挑戦しても算定できないこと
- 開始前に確認すべき全身状態の4項目
単位数は28単位/日。180日以内が原則
告示21号の「リ 経口移行加算」注1は、次のとおりです。
別に厚生労働大臣が定める基準に適合する指定介護老人福祉施設において、医師の指示に基づき、医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、介護支援専門員その他の職種の者が共同して、現に経管により食事を摂取している入所者ごとに経口による食事の摂取を進めるための経口移行計画を作成している場合であって、当該計画に従い、医師の指示を受けた管理栄養士又は栄養士による栄養管理及び言語聴覚士又は看護職員による支援が行われた場合は、当該計画が作成された日から起算して180日以内の期間に限り、1日につき所定単位数を加算する。ただし、イ及びロの注8を算定している場合は、算定しない。
月換算(30日)で並べると、この加算の大きさがわかります。
経口移行加算 28単位/日=月840単位相当
療養食加算 6単位×3回/日=月540単位相当
経口維持加算(Ⅰ)+(Ⅱ)=月500単位
栄養マネジメント強化加算 11単位/日=月330単位相当
口腔衛生管理加算(Ⅱ)=月110単位
ただし対象は経管栄養中の方に限られ、期間も原則180日。継続的な収益にはなりません。「経管の方が入所したときに、必ず検討する」という運用にできるかどうかが分かれ目です。
役割分担が条文で決まっている
この加算の特徴は、誰が何をするかが告示に明記されていることです。
| 役割 | 担当 |
|---|---|
| 指示 | 医師 |
| 経口移行計画の作成 | 医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、介護支援専門員その他の職種が共同 |
| 栄養管理 | 医師の指示を受けた管理栄養士または栄養士 |
| 支援 | 言語聴覚士または看護職員 |
栄養管理と支援が別々の職種に割り当てられています。支援を担えるのは言語聴覚士または看護職員だけで、介護職員や理学療法士・作業療法士では要件を満たしません。
言語聴覚士を配置している特養は多くありません。その場合、看護職員が支援の担い手になるという設計になります。看護計画のなかに経口移行の支援内容を位置づけ、実施記録を残すことが必要です。
なお、経口維持加算では「医師又は歯科医師の指示」でよいのに対し、経口移行加算の指示は「医師」のみです。歯科医師の指示では要件を満たしません。ここも取り違えやすい違いです。
経口移行計画は栄養ケア計画と一体で作る
老企第40号①イは、計画についてこう定めています。
医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、言語聴覚士、介護支援専門員その他の職種の者が共同して、経口による食事の摂取を進めるための栄養管理の方法等を示した経口移行計画を作成すること(栄養ケア計画と一体のものとして作成すること。)。また、当該計画については、(中略)入所者又はその家族に説明し、その同意を得ること。
2点、確認しておきたいことがあります。
- 栄養ケア計画と一体のものとして作成する——別立ての書類にしない。栄養マネジメント強化加算で作成している栄養ケア計画のなかに、経口移行の内容を組み込む形になります
- 施設サービス計画への記載で代替できる——「介護福祉施設サービスにおいては、経口移行計画に相当する内容を施設サービス計画の中に記載する場合は、その記載をもって経口移行計画の作成に代えることができる」(褥瘡・排せつのような下線・枠囲みの条件は付いていません)
また、告示の作成メンバーには言語聴覚士が明記されていませんが、通知では作成メンバーに言語聴覚士が加わっています。実際に支援を担う職種なので、計画づくりから参加するのが自然です。
180日の起算日が、告示と通知でずれている
ここは条文を突き合わせて気づいた点です。
| 出典 | 起算日の表現 |
|---|---|
| 告示21号 注1 | 当該計画が作成された日から起算して180日以内 |
| 老企第40号①ロ | 入所者又はその家族の同意を得た日から起算して180日以内 |
計画を作成してから説明・同意を得るまでに日数が空くと、どちらを起点にするかで期限が変わります。
通知のほうが具体的な運用を示していることと、同意日のほうが後になる(=期限が後ろ倒しになる)ことを考えると、両方の日付を記録したうえで、指定権者の解釈を確認するのが確実です。
実務上は、計画の作成と説明・同意を同日に行い、ずれを生じさせないのがもっとも簡単な対処です。
なお通知①ロは、算定期間についてこう整理しています。
- 算定期間は「経口からの食事の摂取が可能となり経管による食事の摂取を終了した日まで」
- ただしその期間は同意を得た日から起算して180日以内に限る
つまり経管を卒業した時点で算定は終わりです。180日フルに算定できるのは、移行が完了しないまま期間が続いた場合ということになります。
180日を超えて算定できる例外
告示の注2と通知①ハが、例外を定めています。
経口による食事の摂取を進めるための栄養管理及び支援が、入所者又はその家族の同意を得られた日から起算して、180日を超えて実施される場合でも、経口による食事の摂取が一部可能なものであって、医師の指示に基づき、継続して経口による食事の摂取を進めるための栄養管理及び支援が必要とされる場合にあっては、引き続き当該加算を算定できるものとすること。ただし、この場合において、医師の指示はおおむね2週間ごとに受けるものとすること。
継続の条件は3つです。
- 経口による食事の摂取が一部可能であること
まったく口から入らない状態では継続できません。 - 医師の指示に基づき、継続して必要とされること
施設の判断だけでは継続できません。 - 医師の指示をおおむね2週間ごとに受けること
180日以内は都度の指示で足りますが、180日を超えると2週間ごとの指示が必要になります。
ちびウルフ2週間ごとに指示をもらうのは、配置医師が非常勤だと難しくないですか?
リハウルフそこが現実的な壁になります。配置医師が月2回の勤務なら、ちょうど2週間に1回。勤務日に合わせて指示を受ける運用を組めば回りますが、月1回の勤務だと成立しません。
ただ、この2週間ごとの指示が求められるのは180日を超えた場合だけです。180日以内であれば、通常の医師の指示で足ります。180日で移行を完了させる、あるいは180日で見切りをつけるという設計のほうが、実務としては素直です。
180日算定後に移行できなかった場合、再挑戦は算定できない
通知③は、はっきり書いています。
経口移行加算を180日間にわたり算定した後、経口摂取に移行できなかった場合に、期間を空けて再度経口摂取に移行するための栄養管理及び支援を実施した場合は、当該加算は算定できないものとすること。
事実上の一発勝負です。「体調が落ち着いてからもう一度」は、加算の対象になりません。
裏を返せば、開始のタイミングを慎重に選ぶ必要があるということです。全身状態が不安定なうちに見切り発車すると、180日を消費したうえで移行できず、その後の機会も失います。
開始前に確認すべき4項目
通知②は、誤嚥性肺炎のリスクを踏まえた確認事項を挙げています。
経管栄養法から経口栄養法への移行は、場合によっては、誤嚥性肺炎の危険も生じうることから、次のイからハまでについて確認した上で実施すること。
| 確認事項 | |
|---|---|
| イ | 全身状態が安定していること(血圧、呼吸、体温が安定しており、現疾患の病態が安定していること) |
| ロ | 刺激しなくても覚醒を保っていられること |
| ハ | 嚥下反射が見られること(唾液嚥下や口腔、咽頭への刺激による喉頭挙上が認められること) |
| ニ | 咽頭内容物を吸引した後は唾液を嚥下しても「むせ」がないこと |
本文は「次のイからハまでについて確認」と書いていますが、実際に列挙されているのはイからニまでの4項目です。安全確認の趣旨からすれば、4項目すべてを確認しておくのが適切でしょう。
先ほどの「一発勝負」という性格と合わせて考えると、この4項目は加算の要件であると同時に、開始タイミングを見極めるための判断基準です。
とくにロの「刺激しなくても覚醒を保っていられる」は、離床や日中の過ごし方と直結します。理学療法士の立場から言えば、この条件を満たすところまで持っていくのがリハビリの役割です。覚醒が保てない状態で経口移行を始めても、誤嚥のリスクを上げるだけになります。
ニの確認も重要です。咽頭に貯留物がある状態で判断すると、実力を見誤ります。
歯科への情報提供
通知④は、次のとおりです。
入所者の口腔の状態によっては、歯科医療における対応を要する場合も想定されることから、必要に応じて、介護支援専門員を通じて主治の歯科医師への情報提供を実施するなどの適切な措置を講じること。
経管栄養が長期化していた方は、口腔内の環境が悪化していることが少なくありません。経口移行の前提として歯科的な対応が必要になるケースがあるため、この規定が置かれています。伝達経路として介護支援専門員が明示されている点も押さえておいてください。
大臣基準はシンプル
大臣基準告示95号 第66号は、経口移行加算について次の1点のみを定めています。
- 通所介護費等算定方法第10号、第12号、第13号および第15号に規定する基準のいずれにも該当しないこと
(=定員超過利用・人員基準欠如の状態でないこと)
体制要件はこれだけです。経口維持加算が5要件(摂食嚥下機能の医師による評価、誤嚥時の管理体制、食形態の配慮、多職種の体制など)を求めているのと対照的です。経口移行加算の要件は、告示本体と通知に集中しています。
他の加算との関係
| 加算・減算 | 関係 |
|---|---|
| 栄養管理の基準を満たさない場合の減算(注8) | 算定不可 |
| 経口維持加算 | 併算定不可(経口維持加算側の注に規定) |
| 栄養マネジメント強化加算 | 併算定可 |
| 療養食加算 | 併算定可(通知で明示) |
| 口腔衛生管理加算 | 併算定可 |
経口維持加算との関係は、対象者で切り分けられています。
| 加算 | 対象 | 目的 |
|---|---|---|
| 経口移行加算 | 現に経管により食事を摂取している方 | 経口へ戻す |
| 経口維持加算 | 現に経口により食事を摂取している方 | 経口を続ける |
経管から経口へ移行が完了すれば、そこからは経口維持加算の検討に移ります。移行完了時点で経口移行加算は終了し、摂食機能障害と誤嚥が認められれば経口維持加算(Ⅰ)400単位へ切り替わる——という流れを想定しておくと、収支の見通しも立てやすくなります。
なお療養食加算については、通知(32)が「経口による食事の摂取を進めるための栄養管理及び支援が行われている場合にあっては、経口移行加算又は経口維持加算を併せて算定することが可能である」と明記しています。
介護予防(要支援)には存在しない
特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版の経口移行加算は存在しません。
この加算は地域密着型特養・特養・老健・介護医療院の施設系4種に設定されており、単位数はいずれも28単位/日で共通です。
経口移行加算の単位数と期間を教えてください。
28単位/日で、原則として計画が作成された日(通知では同意を得た日)から起算して180日以内です。30日で月840単位相当になります。
180日の起算日は計画作成日ですか、同意日ですか?
告示は「当該計画が作成された日から起算して」、老企第40号は「入所者又はその家族の同意を得た日から起算して」としており、条文上ずれがあります。両方の日付を記録し、実務では計画作成と説明・同意を同日に行ってずれを生じさせないのが確実です。取扱いに疑義がある場合は指定権者にご確認ください。
「支援」は誰が行えばよいですか?
言語聴覚士または看護職員です。介護職員や理学療法士・作業療法士では要件を満たしません。栄養管理のほうは、医師の指示を受けた管理栄養士または栄養士が担います。
歯科医師の指示でも算定できますか?
できません。経口移行加算の指示は「医師」に限られます。経口維持加算は「医師又は歯科医師の指示」でよいので、この点が異なります。
経口移行計画は別に作成する必要がありますか?
栄養ケア計画と一体のものとして作成します。また、経口移行計画に相当する内容を施設サービス計画のなかに記載する場合は、その記載をもって作成に代えることができます。
180日を超えても算定できますか?
できる場合があります。経口による食事の摂取が一部可能で、医師の指示に基づき継続して栄養管理・支援が必要とされる場合です。ただしその場合、医師の指示をおおむね2週間ごとに受ける必要があります。
180日算定して移行できませんでした。後日また算定できますか?
できません。通知は「期間を空けて再度経口摂取に移行するための栄養管理及び支援を実施した場合は、当該加算は算定できない」としています。開始のタイミングを慎重に判断する必要があります。
経管を卒業したら、いつまで算定できますか?
経管による食事の摂取を終了した日までです。移行が完了した時点で算定は終わります。180日フルに算定できるのは、移行が完了しないまま期間が続いた場合です。
経口維持加算と両方算定できますか?
できません。経口維持加算の注に「経口移行加算を算定している場合は算定しない」とあります。経管から経口へ移行が完了したら、経口維持加算の検討に切り替えます。
開始前に確認すべきことはありますか?
通知は4項目を挙げています。①全身状態が安定していること(血圧・呼吸・体温、現疾患の病態)、②刺激しなくても覚醒を保っていられること、③嚥下反射が見られること、④咽頭内容物を吸引した後は唾液を嚥下してもむせがないこと。誤嚥性肺炎のリスクを踏まえた確認事項です。
- 経口移行加算は28単位/日。30日で月840単位相当と栄養関連では最大級
- 対象は現に経管により食事を摂取している入所者
- 指示は「医師」に限られる(経口維持加算は歯科医師の指示も可)
- 栄養管理は医師の指示を受けた管理栄養士または栄養士
- 支援は言語聴覚士または看護職員に限られる
- 経口移行計画は栄養ケア計画と一体のものとして作成する
- 施設サービス計画への記載で代替でき、下線・枠囲みの条件はない
- 計画については入所者または家族への説明と同意が必要
- 算定期間の起算日が告示(計画作成日)と通知(同意日)でずれている
- 実務では作成と同意を同日に行い、ずれを生じさせないのが安全
- 算定は経管による食事の摂取を終了した日まで
- 180日を超える場合は、経口摂取が一部可能で医師の指示があることが条件
- 180日超の継続には、おおむね2週間ごとの医師の指示が必要
- 180日算定して移行できなかった場合、期間を空けての再算定はできない
- 開始前に全身状態・覚醒・嚥下反射・吸引後のむせの4項目を確認する
- 通知本文は「イからハまで」とあるが、列挙は4項目ある
- 口腔の状態により、介護支援専門員を通じて主治の歯科医師へ情報提供する
- 大臣基準の要件は定員超過・人員欠如でないことのみ
- 経口維持加算とは併算定できない(対象者が経管か経口かで分かれる)
- 栄養マネジメント強化加算・療養食加算・口腔衛生管理加算とは併算定できる
- 介護予防(要支援)版は存在しない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」リ(経口移行加算)注1・注2、ヌ(経口維持加算)、チ(栄養マネジメント強化加算)、ヲ(療養食加算)、イ及びロの注8
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第66号(経口移行加算の基準)、第67号(経口維持加算の基準)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(29)経口移行加算について、同(30)経口維持加算について、同(32)療養食加算について
- 厚生労働省「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。180日の起算日について告示と老企第40号で表現が異なる点、および開始前の確認事項が本文では「イからハまで」とされながら4項目列挙されている点は、いずれも原文を確認したうえで記載していますが、取扱いに疑義がある場合は指定権者にご確認ください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の月換算額は1日あたり単位数に30日を乗じた概算です。開始タイミングの判断に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




