特養の療養食加算は1回6単位、1日3回まで。1日最大18単位、月に約540単位です。

単価は小さいものの、対象者に毎食算定できるため積み上がります。問題は「どの食事が療養食に当たるか」の判断で、ここに数値基準がびっしり置かれています。

たとえば貧血食は血中ヘモグロビン濃度10g/dl以下かつ鉄欠乏由来、脂質異常症食はLDLコレステロール140mg/dl以上など。そして高血圧症に対する減塩食は、療養食加算の対象になりません。心臓疾患等の減塩食は対象になるのに、です。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 1回6単位・1日3回までという算定の枠
  • 算定に必要な3つの基準と届出
  • 対象となる療養食9種類
  • 医師の食事箋と献立表が前提であること
  • 経口・経管を問わないこと
  • 心臓疾患等の減塩食は対象だが高血圧症の減塩食は対象外であること
  • 貧血食・脂質異常症食・高度肥満症の数値基準
  • 十二指腸潰瘍・低残さ食の取扱い
  • 経口移行加算・経口維持加算と併算定できること
  • 退所時栄養情報連携加算とは対象範囲が違うこと

療養食加算とは?単位数は6単位

項目内容
単位数6単位
算定の単位1日につき3回を限度
1日最大18単位
届出必要

ヲ 療養食加算 6単位

注 次に掲げるいずれの基準にも適合するものとして、(中略)届出を行った指定介護老人福祉施設が、別に厚生労働大臣が定める療養食を提供したときは、1日につき3回を限度として、所定単位数を加算する。
イ 食事の提供が管理栄養士又は栄養士によって管理されていること。
ロ 入所者の年齢、心身の状況によって適切な栄養量及び内容の食事の提供が行われていること。
ハ 食事の提供が、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する指定介護老人福祉施設において行われていること。

対象者に毎食つく

6単位×3回×30日=540単位。1単位10円換算で月約5,400円です。療養食の対象者が10人いれば、月5万円規模になります。

管理栄養士または栄養士による食事管理は、栄養マネジメント強化加算などを算定している施設なら既に整っているはずです。あとは「どの入所者が対象になるか」を正しく拾えるかどうかで算定額が決まります。

対象となる療養食は9種類

加算の対象となる療養食は、疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事箋に基づいて提供される利用者の年齢、病状等に対応した栄養量及び内容を有する治療食(糖尿病食、腎臓病食、肝臓病食、胃潰瘍食(流動食は除く。)、貧血食、膵臓病食、脂質異常症食、痛風食及び特別な場合の検査食をいうものであること。

療養食補足
①糖尿病食
②腎臓病食心臓疾患等の減塩食(6.0g未満)を含む
③肝臓病食肝庇護食・肝炎食・肝硬変食・閉鎖性黄疸食等
④胃潰瘍食流動食は除く。十二指腸潰瘍も含む
⑤貧血食ヘモグロビン10g/dl以下かつ鉄欠乏由来
⑥膵臓病食
⑦脂質異常症食数値基準あり(後述)
⑧痛風食
⑨特別な場合の検査食潜血食、大腸検査前の低残さ調理済食品

前提は「医師の食事箋」と「献立表」

療養食の加算については、利用者の病状等に応じて、主治の医師より利用者に対し疾患治療の直接手段として発行された食事箋に基づき、利用者等告示に示された療養食が提供された場合に算定すること。なお、当該加算を行う場合は、療養食の献立表が作成されている必要があること。

  • 医師の食事箋があること(施設の判断だけでは算定できない)
  • 療養食の献立表が作成されていること
  • 提供が疾病治療の直接手段であること

なお摂取の方法は問われません。通知③は「経口又は経管の別を問わない」としています。経管栄養の入所者でも、要件を満たせば算定できます。

最大の落とし穴——高血圧症の減塩食は対象外

心臓疾患等に対して減塩食療法を行う場合は、腎臓病食に準じて取り扱うことができるものであるが、高血圧症に対して減塩食療法を行う場合は、加算の対象とはならないこと。

また、腎臓病食に準じて取り扱うことができる心臓疾患等の減塩食については、総量6.0g未満の減塩食をいうこと。

減塩食の理由療養食加算
心臓疾患等(食塩総量6.0g未満)対象(腎臓病食に準じる)
腎臓病対象
高血圧症対象外
ちびウルフちびウルフ

同じ減塩食なのに、理由で変わるんですか?

リハウルフリハウルフ

変わるんだ。療養食加算は「疾病治療の直接手段」としての食事を評価しているから、どの疾患に対する治療なのかが決め手になる。

特養では高血圧の入所者はとても多い。「減塩食だから療養食」と機械的に拾うと、高血圧だけの方まで含めてしまう。これは返還の対象になりうる。

逆に、心不全などの心臓疾患で6.0g未満の減塩食を出しているなら対象になる。食事箋に「何の疾患に対する減塩か」が書かれているかを確認してほしい。医師とのやりとりで解決する話だよ。

ちなみに、この記事の別のところで触れる退所時栄養情報連携加算では、高血圧の減塩食も特別食に含まれる。加算ごとに範囲が違うのが厄介なところ。

数値で決まる3つの療養食

貧血食——ヘモグロビン10g/dl以下かつ鉄欠乏

療養食として提供される貧血食の対象となる入所者等は、血中ヘモグロビン濃度が10g/dl以下であり、その原因が鉄分の欠乏に由来する者であること。

数値と原因の2つを満たす必要があります。ヘモグロビンが10g/dl以下でも、鉄欠乏以外が原因なら対象になりません。

脂質異常症食——LDL140以上、またはHDL40未満・TG150以上

療養食として提供される脂質異常症食の対象となる入所者等は、空腹時定常状態におけるLDL―コレステロール値が140mg/dl以上である者又はHDL―コレステロール値が40mg/dl未満若しくは血清中性脂肪値が150mg/dl以上である者であること。

指標基準
LDLコレステロール140mg/dl以上
HDLコレステロール40mg/dl未満
血清中性脂肪150mg/dl以上

いずれかを満たせば対象です。測定は「空腹時定常状態」とされている点に注意してください。

高度肥満症——肥満度+70%以上またはBMI35以上

高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35以上)に対して食事療法を行う場合は、脂質異常症食に準じて取り扱うことができること。

退所時栄養情報連携加算とは基準が違う

退所時栄養情報連携加算の対象となる特別食では、高度肥満症の基準が「肥満度がプラス40%以上又はBMIが30以上」とされています。

療養食加算は+70%以上またはBMI35以上。同じ「高度肥満症」でも、加算によって線引きが違います。他の加算の資料を流用すると誤ります。

胃潰瘍食の広い運用

十二指腸潰瘍の場合も胃潰瘍食として取り扱って差し支えないこと。手術前後に与える高カロリー食は加算の対象としないが、侵襲の大きな消化管手術の術後において胃潰瘍食に準ずる食事を提供する場合は、療養食の加算が認められること。また、クローン病、潰瘍性大腸炎等により腸管の機能が低下している入所者等に対する低残さ食については、療養食として取り扱って差し支えないこと。

食事療養食加算
胃潰瘍食対象(ただし流動食は除く)
十二指腸潰瘍に対する食事対象(胃潰瘍食として扱う)
手術前後の高カロリー食対象外
侵襲の大きな消化管手術後の胃潰瘍食に準ずる食事対象
クローン病・潰瘍性大腸炎等の低残さ食対象

肝臓病食の範囲は広い

肝臓病食とは、肝庇護食、肝炎食、肝硬変食、閉鎖性黄疸食(胆石症及び胆嚢炎による閉鎖性黄疸の場合を含む。)等をいうこと。

  • 肝庇護食
  • 肝炎食
  • 肝硬変食
  • 閉鎖性黄疸食(胆石症・胆嚢炎による閉鎖性黄疸を含む

末尾が「等」となっており、列挙は例示です。胆石症や胆嚢炎が理由の閉鎖性黄疸食まで含まれる点は見落とされやすいところです。

対象者を拾い出す手順

療養食加算は、医師が食事箋を出しているかどうかが起点です。施設側で「この人は糖尿病だから療養食」と判断して算定することはできません。

実務としては、次の順で確認するのが確実です。

  • ①入所者の主病名を一覧化する(9種類の療養食に関係する疾患があるか)
  • ②該当しそうな入所者について、医師に食事箋の要否を相談する
  • ③食事箋が発行されたら、疾患名と食種を記録する
  • ④管理栄養士が療養食の献立表を作成する

とくに入院からの再入所時や、主治医が変わったときは食事箋が切れていることがあります。定期的な確認をおすすめします。

特別な場合の検査食

特別な場合の検査食とは、潜血食をいう他、大腸X線検査・大腸内視鏡検査のために特に残さの少ない調理済食品を使用した場合は、「特別な場合の検査食」として取り扱って差し支えないこと。

大腸内視鏡の前日に検査食を提供した場合も対象になります。単発の提供でも算定できるため、見落とされがちな区分です。

経口移行加算・経口維持加算と併算定できる

なお、経口による食事の摂取を進めるための栄養管理及び支援が行われている場合にあっては、経口移行加算又は経口維持加算を併せて算定することが可能である。

加算療養食加算との併算定
経口移行加算(28単位/日)
経口維持加算(Ⅰ)400単位・(Ⅱ)100単位
栄養マネジメント強化加算(11単位/日)

療養食は経管でも算定できるため、経管栄養の方に経口移行加算と療養食加算を同時に算定する場面も成り立ちます。

算定にあたっての実務ステップ

  • 管理栄養士または栄養士による食事管理の体制を確認し、届け出る
  • 入所者ごとに、医師の食事箋が発行されているかを確認する
  • 食事箋に「どの疾患に対する食事療法か」が記載されているかを確認する
  • 減塩食の場合、心臓疾患等か高血圧症かを区別する(高血圧症のみなら対象外)
  • 貧血食は血中ヘモグロビン濃度と鉄欠乏の有無を確認する
  • 脂質異常症食はLDL・HDL・中性脂肪の値を確認する
  • 高度肥満症は肥満度+70%以上またはBMI35以上かを確認する
  • 療養食の献立表を作成し、保管する
  • 1日3回を上限として、提供した食数分を算定する
  • 検査食を提供した日も算定対象になることを請求担当と共有する

3つ目と4つ目が要です。食事箋に疾患名が書かれていないと、対象かどうかを説明できません。様式に疾患名の欄がなければ、医師に相談して追加してもらってください。

よくある質問

単位数と回数は?

1回6単位で、1日につき3回を限度として算定します。1日最大18単位です。

対象となる療養食は何ですか?

糖尿病食、腎臓病食、肝臓病食、胃潰瘍食(流動食は除く)、貧血食、膵臓病食、脂質異常症食、痛風食、特別な場合の検査食の9種類です。

医師の指示は必要ですか?

必要です。主治の医師が疾患治療の直接手段として発行した食事箋に基づいて提供される必要があります。あわせて療養食の献立表の作成も求められます。

経管栄養でも算定できますか?

できます。通知は「経口又は経管の別を問わない」としています。

高血圧の減塩食は対象になりますか?

なりません。心臓疾患等に対する減塩食は腎臓病食に準じて取り扱えますが、高血圧症に対する減塩食療法は加算の対象外とされています。

心臓疾患の減塩食の基準は?

食塩総量6.0グラム未満の減塩食をいうとされています。

貧血食の基準は?

血中ヘモグロビン濃度が10g/dl以下であり、その原因が鉄分の欠乏に由来する者が対象です。

脂質異常症食の基準は?

空腹時定常状態におけるLDLコレステロール値140mg/dl以上、またはHDLコレステロール値40mg/dl未満もしくは血清中性脂肪値150mg/dl以上です。

高度肥満症の基準は?

肥満度が+70%以上またはBMIが35以上です。脂質異常症食に準じて取り扱えます。

十二指腸潰瘍でも算定できますか?

できます。胃潰瘍食として取り扱って差し支えないとされています。

手術前後の高カロリー食は対象ですか?

対象外です。ただし侵襲の大きな消化管手術の術後に胃潰瘍食に準ずる食事を提供する場合は認められます。

経口維持加算と併算定できますか?

できます。経口移行加算・経口維持加算のいずれとも併せて算定することが可能とされています。

まとめ
  • 特養の療養食加算は1回6単位、1日3回を限度
  • 1日最大18単位、月約540単位
  • 届出が必要
  • 管理栄養士または栄養士による食事管理が要件
  • 対象は9種類の療養食
  • 医師が発行した食事箋に基づくことが前提
  • 療養食の献立表の作成が必要
  • 経口・経管の別は問わない
  • 心臓疾患等の減塩食(6.0g未満)は腎臓病食に準じて対象
  • 高血圧症に対する減塩食は対象外
  • 貧血食はヘモグロビン10g/dl以下かつ鉄欠乏由来
  • 脂質異常症食はLDL140以上、HDL40未満、中性脂肪150以上のいずれか
  • 高度肥満症は肥満度+70%以上またはBMI35以上
  • 退所時栄養情報連携加算の高度肥満症の基準(+40%・BMI30)とは違う
  • 十二指腸潰瘍も胃潰瘍食として扱える
  • 手術前後の高カロリー食は対象外
  • 侵襲の大きな消化管手術後の胃潰瘍食に準ずる食事は対象
  • クローン病・潰瘍性大腸炎等の低残さ食も対象
  • 大腸検査前の検査食も対象になる
  • 経口移行加算・経口維持加算と併算定できる
  • 食事箋に疾患名が記載されているかが実務の要
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。本文中の検査値等の数値は療養食加算の算定要件として通知に示されているものであり、疾患の診断基準や治療方針を示すものではありません。個々の入所者にどの食事療法が必要かは主治の医師が判断します。療養食に該当するかの判断、食事箋の様式、献立表の保管方法についても指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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