老健の業務継続計画未策定減算とは?

老健の業務継続計画未策定減算は、所定単位数の100分の3、つまり3%の減算です。令和7年3月31日で経過措置が終わりました。感染症の予防・まん延防止のための指針と非常災害の具体的計画があれば減算しない、という猶予は、もうありません。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)と老企第40号の原文を確認して、減算率・要件・経過措置の終了・減算が始まるタイミングを整理しました。
この記事でわかること
- 老健の業務継続計画未策定減算は3%という減算率
- 令和7年3月31日で経過措置が終わったこと
- 感染症と非常災害の2つのBCPが必要だということ
- 策定するだけでなく、周知・研修・訓練・見直しが求められること
- 減算が始まるタイミングが他の減算と少し違うこと
- 月の初日に事実が生じた場合の扱い
- 他の減算との重さの比較
- 実地指導で見られるポイント
老健の業務継続計画未策定減算とは?
業務継続計画未策定減算は、業務継続計画(BCP)を策定していない場合などに、基本報酬を3%減額する仕組みです。BCPは感染症や災害が起きても介護サービスを継続できるようにするための計画で、令和3年度改定で策定が義務化されました。
義務化から3年間の経過措置があり、その間は策定していなくても減算されませんでした。その猶予が令和7年3月31日で終わり、現在は策定していなければ減算されます。
ちびウルフ感染症の指針と災害の計画は作ってあります。それで大丈夫ですか。
リハウルフ令和7年3月31日までなら、それで減算を免れていました。今は違います。BCPそのものが要るので、指針と計画があるから大丈夫、という整理はもう通用しません。
業務継続計画未策定減算の減算率
告示第21号の介護保健施設サービスの注6に定められています。
6 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、業務継続計画未策定減算として、所定単位数の100分の3に相当する単位数を所定単位数から減算する。
| 減算 | 減算率 | 対象 |
|---|---|---|
| 業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の3% | 入所者全員 |
他の減算との比較
| 減算 | 減算率・額 |
|---|---|
| 身体拘束廃止未実施減算 | 10% |
| 業務継続計画未策定減算 | 3% |
| 夜勤職員基準減算 | 3% |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% |
要介護3・多床室で1日900単位と仮定すると27単位の減。100床が1か月満床なら約81,000単位です。高齢者虐待防止措置未実施減算の3倍の重さにあたります。
業務継続計画未策定減算の要件
老企第40号 5の(7)は、根拠を次のように示しています。
業務継続計画未策定減算については、指定介護老人福祉施設基準第24条の2第1項(中略)に規定する基準を満たさない事実が生じた場合に、その翌月(基準を満たさない事実が生じた日が月の初日である場合は当該月)から基準に満たない状況が解消されるに至った月まで、当該事業所の入所者全員について、所定単位数から減算することとする。
老健では、介護老人保健施設基準の対応する規定が根拠になります。求められるのは2種類のBCPです。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 感染症に係る業務継続計画 | 感染症が発生し、まん延した場合でもサービス提供を継続するための計画 |
| 災害に係る業務継続計画 | 非常災害の発生時にサービス提供を継続するための計画 |
策定するだけでは足りない
基準が求めているのは策定だけではありません。次の一連の取り組みがセットです。
- 感染症・災害それぞれの業務継続計画を策定すること
- 計画に従い必要な措置を講じること
- 職員に対して周知すること
- 必要な研修を実施すること
- 必要な訓練(シミュレーション)を実施すること
- 定期的に計画を見直し、必要に応じて変更すること
「計画はあるが訓練をしていない」も減算の対象
BCPを策定した時点で安心してしまい、その後の研修と訓練が止まっている施設は少なくありません。基準は策定・周知・研修・訓練・見直しまでを求めています。ファイルの中に計画があるだけでは、基準を満たしているとは言えません。
経過措置は令和7年3月31日で終了した
老企第40号 5の(7)には、次のなお書きがあります。
なお、経過措置として、令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針及び非常災害に関する具体的計画を策定している場合には、当該減算は適用しないが、義務となっていることを踏まえ、速やかに作成すること。
| 時期 | 取扱い |
|---|---|
| 令和7年3月31日まで | 感染症の指針と非常災害の具体的計画があれば減算しない |
| 令和7年4月1日以降 | 業務継続計画そのものが必要。経過措置なし |
指針・具体的計画とBCPは別物
感染症の予防およびまん延の防止のための指針、非常災害に関する具体的計画は、いずれも従来から運営基準で求められてきたものです。BCPはこれらとは別に、サービスを継続するための計画として策定します。指針の中に数行の記載を足しただけでは、BCPを策定したことにはなりません。
ちびウルフBCPには何を書けばよいのでしょうか。
リハウルフ職員が半分出勤できなくなったときに、どの業務を止めてどれを続けるか。それが核です。厚生労働省がひな形を出していますが、埋めただけの計画は訓練で使えません。優先する業務を実際に決める作業が本体です。
業務継続計画未策定減算のタイミング
この減算は、開始のタイミングが他の減算と少し違います。
| 事実が生じた日 | 減算の開始 |
|---|---|
| 月の途中 | 翌月から |
| 月の初日 | その月から |
身体拘束廃止未実施減算や高齢者虐待防止措置未実施減算では「事実が生じた月の翌月から」とだけ書かれていますが、業務継続計画未策定減算には「基準を満たさない事実が生じた日が月の初日である場合は当該月」という括弧書きが入っています。
また、改善計画の提出や3か月後の報告といった手続きは書かれていません。「基準に満たない状況が解消されるに至った月まで」減算が続きます。
| 比較の観点 | 業務継続計画未策定減算 | 身体拘束廃止未実施減算 |
|---|---|---|
| 減算率 | 3% | 10% |
| 開始 | 翌月から(初日なら当月から) | 翌月から |
| 改善計画の提出 | 通知に記載なし | 速やかに提出 |
| 3か月後の報告 | 通知に記載なし | 必要 |
| 終了 | 状況が解消された月まで | 改善が認められた月まで |
業務継続計画未策定減算の注意点
訓練の記録を残す
実地指導で確認されやすいのは、計画そのものよりも訓練と研修の記録です。いつ、誰が参加して、どういう想定で行ったのか。参加者名簿と実施記録を年度単位で整理しておいてください。
感染症と災害の両方が必要
感染症のBCPだけ作って災害のBCPがない、という状態は基準を満たしません。逆も同じです。2つとも必要です。
定期的な見直しを記録に残す
基準は「定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行う」ことを求めています。見直した結果として変更がなかった場合でも、見直しを行った事実を記録に残してください。変更履歴が空欄のままだと、見直しの有無を示せません。
リハビリ職も訓練に組み込む
BCPの訓練は、介護職員だけで行うものではありません。職員が半減した状況では、リハビリ職が食事介助や移乗の応援に入ることになります。誰がどの業務を代替するのかを決めておかないと、計画が動きません。訓練の参加者に全職種を含めておくことが、実効性の面でも記録の面でも有利です。
業務継続計画未策定減算のQ&A
経過措置はまだありますか?
ありません。令和7年3月31日で終了しました。現在は業務継続計画を策定していなければ減算の対象です。
感染症の指針があれば足りますか?
足りません。感染症の予防およびまん延の防止のための指針と、業務継続計画は別のものです。
感染症と災害のどちらか一方でよいですか?
両方必要です。片方だけでは基準を満たしません。
計画を作れば減算されませんか?
策定に加えて、周知・研修・訓練・定期的な見直しが求められます。策定だけでは基準を満たしているとは言えません。
減算はいつから始まりますか?
基準を満たさない事実が生じた月の翌月からです。ただし事実が生じた日が月の初日である場合は、その月から減算されます。
改善計画の提出は必要ですか?
老企第40号の業務継続計画未策定減算の記載には、改善計画の提出や3か月後の報告に関する定めがありません。取扱いは指定権者に確認してください。
減算はいつまで続きますか?
基準に満たない状況が解消されるに至った月までです。
訓練は年に何回必要ですか?
老企第40号に回数の明示はありません。運営基準および指定権者の解釈を確認してください。
減算の対象は誰ですか?
入所者全員です。
まとめ
- 老健の業務継続計画未策定減算は所定単位数の3%
- 令和7年3月31日で経過措置が終了した
- 感染症の指針と非常災害の具体的計画では代替できない
- 感染症に係るBCPと災害に係るBCPの両方が必要
- 策定に加えて、周知・研修・訓練・定期的な見直しが求められる
- 計画があっても訓練をしていなければ基準を満たさない
- 減算が始まるのは事実が生じた月の翌月から
- 事実が生じた日が月の初日である場合は、その月から減算される
- この「初日なら当月から」という定めは他の減算にはない
- 改善計画の提出や3か月後の報告に関する定めは通知にない
- 減算は基準に満たない状況が解消された月まで続く
- 減算の対象は入所者全員
- 身体拘束廃止未実施減算(10%)に次ぐ重さで、虐待防止の減算(1%)の3倍
- 訓練にはリハビリ職を含む全職種を組み込むほうが実効性が高い
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護保健施設サービス 注6
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)5の(7)、8の(10)
※本記事の減算率・要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。
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