「令和6年度の介護報酬改定で、介護老人保健施設(老健)はどこが変わったの?」「項目が多すぎて、何から押さえればいいか分からない」——老健の管理者・相談員・リハビリ職・看護職にとって、改定内容の全体像をつかむのは大仕事です。

この記事では、令和6年度介護報酬改定(介護老人保健施設)の主な改定項目を、「リハビリ・自立支援」「医療連携・看取り」「安全・virtual=運営基準」「処遇改善・生産性向上」などテーマ別に整理し、特に現場の影響が大きい加算の単位数や要件のポイントを分かりやすくまとめました。

この記事でわかること
  • 令和6年度改定で老健が押さえるべき主要項目の全体像
  • 短期集中リハ・認知症短期集中リハなどリハビリ系加算の見直し(単位数つき)
  • 協力医療機関との連携体制やターミナルケア加算など医療・看取りの強化
  • BCP・虐待防止の減算、処遇改善加算の一本化など運営上の必須対応

令和6年度介護報酬改定(介護老人保健施設)の全体像

令和6年度改定では、老健に関して大小あわせて30以上の見直しが行われました。数が多いため、まずは「目的別に4つのグループ」に分けて把握すると整理しやすくなります。

テーマ主な改定項目(抜粋)
リハ・自立支援・口腔・栄養短期集中リハ実施加算/認知症短期集中リハ実施加算/リハ・口腔・栄養の一体的取組/自立支援促進加算/排せつ支援・褥瘡マネジメント加算
医療連携・看取り協力医療機関との連携体制/所定疾患施設療養費/ターミナルケア加算/在宅復帰・在宅療養支援機能の促進
安全・感染症・運営基準感染症対応力の向上/BCP未策定減算/高齢者虐待防止の推進/認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応
処遇改善・生産性向上処遇改善加算の一本化/テレワーク・介護ロボット・ICT活用/見守り機器による夜間人員配置基準の緩和
ちびウルフちびウルフ

項目が多くて、どこから手をつければいいか分からないよ…

リハウルフリハウルフ

まずは「減算で取りこぼさないもの(BCP・虐待防止)」と「収益に直結するリハ系加算」から押さえると効率的だよ。順番に見ていこう。

リハビリ系加算の見直し|短期集中リハが2区分に

短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ・Ⅱに区分化)

老健の短期集中リハビリテーション実施加算は、従来の単一区分(240単位/日)から2つの区分に再編されました。入所した日から起算して3月以内に集中的なリハビリを行った場合に算定します。

区分単位数主な要件
短期集中リハ実施加算(Ⅰ)258単位/日入所時・月1回以上のADL等評価を行い、その結果をLIFEへ提出し、フィードバックを活用して計画を見直す
短期集中リハ実施加算(Ⅱ)200単位/日従来同様の取組(LIFE提出は要件としない)
ポイント上位区分(Ⅰ)の鍵はLIFEへのデータ提出とフィードバックの活用です。質の高いリハビリをデータで「見える化」し、計画見直しにつなげる流れが評価される設計になっています。

認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰを新設)

認知症の入所者に対する短期集中リハの加算も見直され、生活環境を踏まえた質の高いリハを評価する上位区分(Ⅰ)が新設されました。いずれも週3日を限度に算定します。

区分単位数主な要件
認知症短期集中リハ実施加算(Ⅰ)
(新設)
240単位/日PT・OT・STの適切な配置、入所者数が職員数に対して適切、退所後に生活する居宅等を訪問し生活環境を踏まえた計画を作成
認知症短期集中リハ実施加算(Ⅱ)120単位/日(Ⅰ)の職員配置等の基準に適合
注意(Ⅰ)と(Ⅱ)を併せて算定することはできません。退所後の生活を見据えた「訪問」と「計画作成」が上位区分の要件である点に注意しましょう。

リハ・機能訓練・口腔・栄養の一体的取組の推進

リハビリテーション、口腔管理、栄養管理をバラバラではなく一体的に進める方向が強められ、これらに係る一体的計画書が見直されました。多職種が同じ計画のもとで連携することが求められます。

自立支援・アウトカム評価の充実

「やっただけ」ではなく「成果(アウトカム)」を評価する方向がいっそう強まりました。老健に関係する主な見直しは次のとおりです。

  • 自立支援促進加算の見直し(医学的評価・計画に基づく自立支援の取組を評価)
  • 排せつ支援加算の見直し(排尿・排便の状態改善などアウトカム評価を充実)
  • 褥瘡マネジメント加算等の見直し(褥瘡の発生予防・改善をより重視)
  • 科学的介護推進体制加算の見直し(LIFE活用の実効性を高める方向)
  • かかりつけ医連携薬剤調整加算の見直し(ポリファーマシー対策の連携を評価)

医療連携・看取りの強化

ちびウルフちびウルフ

「協力医療機関との連携」って、何を準備すればいいの?

リハウルフリハウルフ

急変時の対応や入院受入れについて、あらかじめ協力医療機関と取り決めて連携体制を整えることが求められるんだ。定期的な会議の実施もポイントだよ。

医療と介護の連携・看取りに関しては、主に次の項目が見直されました。

  • 協力医療機関との連携体制の構築:急変時等に対応できる体制づくりと、定期的な会議の実施
  • 入院時等の医療機関への情報提供、医療機関からの患者受入れの促進
  • 所定疾患施設療養費の見直し:施設内で対応できる医療の評価を見直し
  • ターミナルケア加算の見直し:看取り期のケアの充実を評価
  • 在宅復帰・在宅療養支援機能の促進:在宅復帰・在宅療養支援等指標等に基づく機能の評価

安全・感染症・運営基準|減算に要注意

運営基準に関わる項目は、対応していないと「減算」になるものが含まれるため、収益を取りこぼさないよう優先的に確認しましょう。

項目ポイント
業務継続計画(BCP)未策定減算感染症・災害時のBCP未策定で所定単位数を減算(施設系は1%)。経過措置後、本格的に適用
高齢者虐待防止措置未実施減算虐待防止の委員会開催・指針整備・研修・担当者配置等の措置が未実施の場合、所定単位数の1%を減算
感染症対応力の向上協力医療機関との連携や平時からの体制整備を評価・強化
認知症のBPSDへの対応平時からの予防・早期対応の推進
注意減算は「気づいたら遡って適用される」ケースもあります。BCPの策定・周知・訓練、虐待防止の委員会や研修の記録など、体制と実施の証跡(記録)を整えておくことが重要です。最新の適用時期や経過措置は所管自治体の通知で確認してください。

処遇改善・生産性向上

処遇改善加算の一本化

従来の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3本が、『介護職員等処遇改善加算』(Ⅰ〜Ⅳの4区分)に一本化されました(令和6年6月から、経過措置あり)。これにより、これまで多数あった申請パターンが整理され、事務負担の軽減が図られています。

生産性向上・人員配置の見直し

  • テレワークの取扱いの明確化
  • 利用者の安全確保・サービスの質の確保・職員の負担軽減を検討する委員会の設置の義務付け
  • 介護ロボット・ICT等のテクノロジー活用の促進
  • 見守り機器等を導入した場合の、夜間における人員配置基準の緩和
  • 外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し
  • ユニット間の勤務体制に係る取扱いの明確化

廃止された加算

役割を終えた・他の仕組みに統合された加算として、次の2つが廃止されました。

  • 認知症情報提供加算の廃止
  • 地域連携診療計画情報提供加算の廃止

令和6年度改定への対応ステップ

老健の管理者・各職種が、改定対応を進める際の大まかな流れを整理します。

  1. 減算項目(BCP・虐待防止)の体制と記録を点検し、未対応があれば最優先で整える
  2. 短期集中リハ・認知症短期集中リハなど、算定中・算定予定の加算の新要件を確認する
  3. LIFEへのデータ提出・フィードバック活用の運用を、多職種で整備する
  4. 協力医療機関との連携・会議体制、看取り・在宅復帰支援の体制を見直す
  5. 処遇改善加算の新区分への移行手続きと、就業規則・賃金規程の整合を確認する

よくある質問(FAQ)

短期集中リハ実施加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の一番の違いは?
(Ⅰ)258単位はADL等の評価結果をLIFEへ提出し、フィードバックを活用して計画を見直すことが要件です。(Ⅱ)200単位はLIFE提出を要件としません。データ活用に取り組めるかが分かれ目になります。
認知症短期集中リハ実施加算(Ⅰ)の新しい要件は何ですか?
PT・OT・STの適切な配置に加え、退所後に生活する居宅・施設等を訪問し、生活環境を踏まえたリハ計画を作成することが求められます。週3日を限度に240単位/日を算定します。
BCP未策定減算や虐待防止未実施減算は老健も対象ですか?
はい。施設サービスである老健も対象です。BCPの策定・訓練、虐待防止の委員会・指針・研修・担当者配置などの措置が未実施だと減算となります。最新の適用時期は自治体通知で確認してください。
処遇改善加算はいつから一本化されましたか?
令和6年6月から、3つの加算が「介護職員等処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅳ)」に一本化されました。一定の経過措置が設けられています。
まとめ
  • 令和6年度改定の老健は、「リハ・自立支援」「医療連携・看取り」「安全・運営基準」「処遇改善・生産性向上」の4テーマで整理すると把握しやすい。
  • 短期集中リハは(Ⅰ)258単位/(Ⅱ)200単位に、認知症短期集中リハは(Ⅰ)240単位(新設)/(Ⅱ)120単位に再編。上位区分はLIFE活用や生活環境を踏まえた計画が鍵。
  • 協力医療機関との連携・ターミナルケア・在宅復帰支援など、医療連携と看取りの体制強化が進んだ。
  • BCP未策定減算・虐待防止措置未実施減算(1%)は取りこぼし厳禁。体制と記録の整備を最優先で。
  • 処遇改善加算は令和6年6月から4区分に一本化。数値・適用時期は最新の公的資料で必ず確認を。

参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」「同 主な事項」「介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1ほか)」/各自治体の令和6年度介護報酬改定説明資料 ほか

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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