心不全のリハビリは、運動だけを指すものではありません。運動療法と自己管理(体重・塩分・服薬)の両輪で成り立ちます。むしろ、再入院を防ぐという点では毎日の体重測定のほうが効く場面すらあります。

制度上もこの考え方が表れています。心大血管疾患リハビリテーション料は、疾患別リハビリの中で唯一集団療法でも算定でき、看護師による実施も認められています。個別の運動指導だけでなく、疾患教育を含めて行うことが前提になっているためです。この記事では告示の原文を確認したうえで、運動の強さと自己管理の具体策を整理しました。

この記事でわかること

  • 心不全でリハビリを行う目的
  • 心大血管疾患リハビリテーション料の特徴(集団療法・看護師)
  • 運動の強さの目安(きつすぎても楽すぎてもいけない)
  • 毎日の体重測定が最重要である理由
  • 増悪を示すサインの具体的な数値
  • 塩分・水分の考え方
  • 運動を中止すべき基準
  • 退院後に使えるサービス

心不全のリハビリは運動と自己管理の両輪

心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な血液を送り出せなくなった状態です。病名というより状態を表す言葉で、背景にはさまざまな心臓病があります。

特徴は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ全体として悪化していくという経過をたどることです。そして、悪化(増悪)のたびに入院し、そのたびに体力が落ちます。

心不全リハビリの2つの柱

  • 運動療法:体力を保ち、同じ動作を楽にこなせるようにする
  • 自己管理(疾患管理):体重・塩分・服薬・症状の確認で、増悪を早く見つける

どちらか一方では足りません。運動だけしていても、塩分過多で増悪すれば入院となり、積み上げた体力は失われます。

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心臓が悪いのに、運動して大丈夫なんですか?

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安定している時期であれば、適切な強度の運動は勧められます。かつては安静が基本でしたが、今は違います。ただし「安定している時期に、決められた強度で」が条件です。増悪している時期の運動は危険なので、判断は必ず医師に仰いでください。

心大血管疾患リハビリテーション料の特徴

診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)の原文で確認しました。

区分点数(1単位=20分)
心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)205点
心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ)125点

この区分には、他の疾患別リハビリにない特徴が2つあります。

  • 集団療法でも算定できる:告示は「個別療法又は集団療法であるリハビリテーションを行った場合」としています。脳血管疾患等・運動器・呼吸器・廃用症候群はいずれも「個別療法」に限られます
  • 看護師による実施が算定対象に含まれる:理学療法士・作業療法士・医師に加えて、看護師による場合も205点/125点が設定されています

これは、心臓リハビリが「運動指導+疾患教育」として設計されていることの表れです。塩分・水分・服薬・体重管理の指導は看護師の専門領域であり、それが制度に組み込まれています。

算定限度は、告示の注1により「治療開始日から150日を限度として」とされています。150日を超えた場合は注6により1月13単位に限り算定できます。ただし「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」等の除外規定もあります。

疾患別リハビリの日数を比べると見えること

心大血管疾患リハビリテーション料の算定限度は150日ですが、ほかの区分と比べると、この数字の意味が分かります。診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)から整理しました。

区分点数(Ⅰ)算定限度起算日
脳血管疾患等245点180日発症・手術・急性増悪又は最初に診断された日
心大血管疾患205点150日治療開始日
運動器185点150日発症・手術・急性増悪又は最初に診断された日
廃用症候群180点120日廃用症候群の診断又は急性増悪
呼吸器175点90日治療開始日

注目すべきは起算日が「治療開始日」である点です。ほかの多くの区分が「発症日」を基準にするのに対し、心大血管疾患リハは治療を始めた日から数えます。

つまり、入院してリハビリが始まった日が起点になります。150日という期間をどう使うかは、退院後の外来リハビリまで含めて考える必要があります。

150日の先をどうするか

150日を超えた場合、告示の注6により1月13単位に限り算定できます。これは週1回20分程度の水準です。ただし「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」等の除外規定もあります。

一方、介護保険の訪問リハビリ・通所リハビリには日数制限がありません。要介護・要支援の認定があれば、150日の先の受け皿になります。

「150日で終わり」ではなく、その先をどうつなぐかを早めに相談しておくことが現実的です。医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーにご相談ください。

運動の強さの目安

心不全の運動療法では、強度が最も重要です。強すぎれば危険、弱すぎれば効果が出ません。

点数自覚的運動強度(ボルグスケール)評価
6〜8非常に楽である弱すぎる
9〜10かなり楽であるやや弱い
11〜13楽である〜ややきつい目安の範囲
14〜15きつい強すぎる
16以上かなりきつい以上危険

目安は11〜13(楽である〜ややきつい)とされます(確度:中=心臓リハビリテーション領域で一般に用いられている指標であり、厚生労働省が示した数値ではありません)。実感としては「会話をしながら続けられる」程度です。歌えるほど楽なら足りず、会話が途切れるなら強すぎます。

厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」も、筋力トレーニング・有酸素運動ともに負荷量の目安を「ややきついと感じる程度」としています。

個別の運動処方が必要な疾患です

心不全では、心肺運動負荷試験(CPX)などの検査結果をもとに、医師が運動の強度・時間・頻度を決めることがあります。他の人と同じメニューをやればよい、という疾患ではありません。この記事の内容は一般的な整理であり、個別の指示に置き換わるものではありません。

具体的な内容

  • ウォーキング:会話ができる速さで。時間は指示に従う
  • 椅子からの立ち座り:10回×2セット。息を止めない
  • かかと上げ:15回×2セット
  • ストレッチ:運動前後に
  • 座ったままの運動:体力が落ちている時期はここから

重い負荷で息を止めていきむ運動(高強度の筋トレ)は避けます。心臓への負担が急激に上がるためです。厚労省の介護予防マニュアルも「バルサルバ効果を避けるため実施中は呼吸を止めないよう気をつける」としています。

基本的な種目のやり方は高齢者の筋トレメニュー9選をご覧ください(強度は必ず主治医の指示に合わせてください)。

毎日の体重測定が最重要

心不全の増悪は、症状が出る前に体重の増加として現れます。体内に水分が溜まり始めるからです。

体重測定のルール

  • 毎日、同じ条件で測る:朝起きてトイレを済ませた後、同じ服装で
  • 記録する:数字を残さないと変化に気づけません
  • 急な増加に注意する:1日で1〜2kg、または3日で2kg以上増えた場合は要注意とされます

※具体的に何kgで連絡すべきかは、主治医から個別に指示が出ている場合があります。その指示が優先です。

脂肪が1日で2kg増えることはありません。短期間の体重増加は、ほぼすべて水分です。ここで気づいて受診できれば、外来での調整で済むことがあります。気づかずに進めば、入院になります。

そのほかの増悪サイン

  • 足のむくみ:すねを指で押してへこみが残る。靴下の跡が深く残る
  • 息切れの悪化:以前は平気だった距離で息が切れる
  • 夜、横になると苦しい:起き上がると楽になる(起座呼吸)
  • 夜間に咳が出る
  • 食欲がない、お腹が張る:内臓のうっ血によることがあります
  • 疲れやすさが急に増した

すぐ受診・救急要請すべきサイン

  • 安静にしていても息が苦しい
  • 横になれないほど苦しい
  • ピンク色の泡状の痰が出る
  • 胸の痛み、締めつけ感
  • 意識がもうろうとする
  • 冷や汗を伴う強い動悸

塩分と水分の考え方

塩分を摂ると体内に水分が溜まり、心臓の負担が増えます。減塩は心不全管理の柱の一つです。

  • 汁物を1日1杯までにする:味噌汁・スープ・麺類の汁
  • 麺類の汁は残す:これだけで数グラム変わります
  • 加工食品に注意:漬物、練り物、ハム、干物、佃煮
  • 「かける」より「つける」:醤油・ソースは小皿に
  • だし・酸味・香辛料で補う:味が薄いと感じにくくなります

目標とする塩分量は、重症度によって異なります。主治医・管理栄養士の指示に従ってください。

水分についても、制限が指示される場合とされない場合があります。自己判断で極端に水分を減らすのは危険です。特に高齢者では脱水を起こしやすく、別の問題を招きます。必ず指示を確認してください。

低栄養にも注意

減塩を意識するあまり食事量そのものが減り、体重と筋肉が落ちていくケースがあります。厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」は、地域で生活する高齢者について「低栄養またはそのリスクがある者が約4割いるという報告がある」とし、65歳以上の目標BMIの範囲を21.5〜24.9kg/m²としています。減塩と低栄養は同時に起こり得ます。体重が落ち続ける場合は主治医・管理栄養士にご相談ください。

運動を控えるべき状態

厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」は、安静時に次に該当する場合は運動を実施しないとしています。心不全の方は、これに加えて主治医から個別の中止基準が示されている場合があります。

運動を控えるべきチェック項目(原文より)

  • 収縮期血圧 180mmHg以上、または 80mmHg未満
  • 拡張期血圧 110mmHg以上
  • 体温 37.5℃以上
  • 脈拍が 120拍/分以上
  • いつもと異なる脈の不整がある場合
  • 関節痛など慢性的な症状の悪化

運動中は、開始時と比較して収縮期血圧が40mmHg以上または拡張期血圧が20mmHg以上上昇した場合、脈拍が140回/分を越えた場合は中止です。強い呼吸困難感、頻呼吸(1分間に25回以上)、めまい、狭心痛、頭痛、強い疲労感が出た場合も中止とされています。

心不全では不整脈の確認が特に重要です。マニュアルも「毎回プログラム実施前に脈拍数だけでなく、不整脈についても観察する。いつもより多く不整脈が発生する場合には運動を控える」としています。

また、体重が急増している日は運動を控え、まず受診を検討してください。水分が溜まっている状態で運動するのは、心臓にとって最も負担の大きい組み合わせです。

退院後に使えるサービス

サービス内容
外来心臓リハビリ医療機関で運動と疾患教育。治療開始日から150日が限度
訪問看護体重・血圧・むくみの確認、服薬管理、生活指導
訪問リハビリ自宅での運動指導、動作の工夫。日数制限なし
通所リハビリ通える場合。医師の指示のもと実施
配食サービス減塩食の確保。市町村の事業や民間サービス

心不全では、訪問看護の役割が特に大きい疾患です。毎日の体重を一緒に確認し、むくみを診て、薬の飲み方を整える。増悪の兆候を早く捉える仕組みとして機能します。

要介護認定がない場合でも、医療保険での訪問看護が利用できる場合があります。まずは主治医・医療ソーシャルワーカー・ケアマネジャーにご相談ください。

よくある質問

心不全でも運動していいのですか?

安定している時期であれば、適切な強度の運動が勧められます。ただし増悪している時期の運動は危険です。強度・時間・頻度は医師が個別に決めるため、必ず指示を確認してください。

運動の強さの目安はどれくらいですか?

会話をしながら続けられる程度(ボルグスケールで11〜13)が目安とされます。歌えるほど楽なら足りず、会話が途切れるなら強すぎます。厚労省の介護予防マニュアルも「ややきついと感じる程度」を目安としています。

体重は毎日測るべきですか?

測ってください。心不全の増悪は、症状が出る前に体重増加として現れます。朝起きてトイレを済ませた後、同じ服装で測り、記録してください。1日で1〜2kg、3日で2kg以上の増加は要注意とされます。

急に体重が増えたらどうすればいいですか?

運動を控え、主治医に連絡してください。短期間の体重増加はほぼ水分です。早く気づけば外来での調整で済むことがあります。連絡の目安について個別の指示がある場合はそれに従ってください。

水分は制限したほうがいいですか?

制限が指示される場合とされない場合があります。自己判断で極端に減らすのは危険です。特に高齢者は脱水を起こしやすく、別の問題を招きます。必ず主治医の指示を確認してください。

塩分はどれくらいまでですか?

重症度によって異なるため、主治医・管理栄養士の指示に従ってください。実践面では、汁物を1日1杯までにする、麺類の汁を残す、加工食品を控えるといった工夫が効果的です。

夜、横になると苦しくなります。

起座呼吸といい、心不全の増悪を示す代表的なサインです。早めに受診してください。安静にしていても苦しい、ピンク色の泡状の痰が出る場合は救急要請を検討してください。

心臓リハビリは何日受けられますか?

心大血管疾患リハビリテーション料は治療開始日から150日が限度です。150日超は原則1月13単位までですが、医学的に改善が期待できる場合の除外規定があります。介護保険のリハビリには日数制限がありません。

集団でのリハビリでも効果がありますか?

心大血管疾患リハビリテーション料は、疾患別リハビリの中で唯一、集団療法でも算定できる区分です。運動指導と疾患教育をあわせて行うことが前提の設計になっています。

訪問看護は使えますか?

使えます。心不全では体重・むくみ・服薬の確認を継続する意味が大きく、訪問看護の役割が特に重要です。要介護認定がない場合でも医療保険で利用できる場合があります。主治医にご相談ください。

まとめ

  • 心不全のリハビリは運動療法と自己管理の両輪で成り立つ
  • 心大血管疾患リハ料は(Ⅰ)205点・(Ⅱ)125点、治療開始日から150日
  • 起算日が「発症日」ではなく「治療開始日」である点が他区分と異なる
  • 150日超は1月13単位。介護保険のリハビリには日数制限がない
  • 疾患別リハビリの中で唯一、集団療法でも算定できる
  • 看護師による実施も算定対象に含まれる=疾患教育が前提の設計
  • 運動強度の目安は会話しながら続けられる程度(ボルグ11〜13)
  • 息を止めていきむ高強度の運動は避ける
  • 増悪は症状より先に体重増加として現れる
  • 体重は毎朝、排尿後、同じ服装で測って記録する
  • 1日1〜2kg、3日で2kg以上の増加は要注意
  • 短期間の体重増加はほぼ水分。脂肪ではない
  • むくみ、夜間の息苦しさ(起座呼吸)、夜間の咳も増悪サイン
  • 減塩は必要だが、食事量が落ちて低栄養になることにも注意
  • 水分制限の自己判断は危険。指示を確認する
  • 不整脈がいつもより多い日は運動を控える
  • 体重が急増している日は運動せず、まず受診を検討する

参考にした情報

※本記事の点数・算定要件は、診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)にもとづいて整理したものです。運動の中止基準は厚生労働省「介護予防マニュアル【第4版】」によります。運動強度の指標(ボルグスケール)および体重増加の目安は、心臓リハビリテーション領域で一般に用いられている整理および筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづくものであり、厚生労働省の告示・通知として定められたものではありません(確度:中)。心不全では、運動の強度・時間・頻度、塩分量、水分量、受診の目安のいずれも個別に定められることが多く、主治医からの個別の指示が本記事の内容に優先します。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味