「親の介護が大変なのに、思ったより低い介護度しか出なかった」「認定調査で、本人が見栄を張って『できる』と答えてしまった」——要介護認定の認定調査をめぐって、こうした後悔の声は少なくありません。介護度(要介護度)は、受けられるサービスの量や自己負担に直結するため、ご家族にとっては切実な問題です。

この記事では、認定調査で介護の実態を正しく伝え、適切な介護度の認定を受けるためのコツを、利用者・ご家族の目線でわかりやすく解説します。大切なのは「介護度を不正に上げる」ことではなく、本当の状態が調査員に正確に伝わるように準備すること。そのための具体的な方法をまとめました。

この記事でわかること
  • 要介護認定の仕組み(認定調査・一次判定・二次判定の流れ)
  • 介護度が実態より低く出てしまう「よくある原因」
  • 認定調査で実態を正しく伝えるための6つのコツ
  • 結果に納得できないときの「区分変更申請」という選択肢
  • やってはいけないNG行動(嘘の申告のリスク)

そもそも介護度(要介護度)はどう決まる?

要介護認定は、申請後に行われる認定調査主治医意見書をもとに、次の流れで決まります。仕組みを知ると、どこで実態を伝えるべきかが見えてきます。

  1. 市区町村に要介護認定を申請する
  2. 認定調査員が自宅などを訪問し、心身の状態を全国共通の74項目で調査する(基本調査)
  3. 主治医が「主治医意見書」を作成する
  4. 調査結果をもとにコンピュータが「一次判定」を行う(介護にかかる時間を機械的に算出)
  5. 介護認定審査会が、主治医意見書や調査員の特記事項を加味して「二次判定」を行い、介護度を確定する
ちびウルフちびウルフ

じゃあ、コンピュータが決めるなら家族にできることなんてないんじゃない?

リハウルフリハウルフ

そんなことはないよ。一次判定の「もと」になるのは認定調査の答えと特記事項なんだ。つまり、調査の場で実態を正しく伝えられるかどうかが、すべての出発点になる。家族の役割はとても大きいんだよ。

ポイント介護度は「介護にどれだけ手間(時間)がかかるか」で決まります。病気の重さそのものではなく、日常生活でどれだけ介助が必要かが判定の中心です。

介護度が「実態より低く」出てしまう、よくある原因

適切な介護度が出ない背景には、たいてい共通する原因があります。心当たりがないか確認しましょう。

よくある原因何が起きているか
本人が見栄を張る調査員の前では「できます」「大丈夫です」と答え、普段できないことまで「できる」ことになってしまう
家族が同席していない本人の申告だけで進み、実際の介護の手間が伝わらない
調子の良い日に当たる体調や認知症の症状には波があり、たまたま良い状態のときに評価されてしまう
困りごとを具体的に言えない「大変なんです」だけでは、どう大変なのかが調査員に伝わらない
夜間や認知症の症状を伝え忘れる昼間の短時間の調査では見えない、夜間対応や見守りの負担が抜け落ちる
注意とくに多いのが「本人が頑張ってしまう」ケースです。プライドや遠慮から、いつもは家族が手伝っていることを一人でやろうとし、実態より軽く見えてしまいます。

認定調査で介護の実態を正しく伝える6つのコツ

ここからが本題です。介護度を上げる=実態を正確に伝えるための、具体的な準備と当日の工夫を紹介します。

コツ1 必ず家族が立ち会う

認定調査には必ず家族が同席しましょう。本人だけだと、できないことを「できる」と答えてしまいがちです。家族が横で実情を補足できる体制をつくることが、最も基本で効果的な対策です。

コツ2 普段の困りごとをメモにまとめておく

調査当日は緊張して言い忘れが起きます。事前に「いつ・どんな場面で・どんな介助が必要か」をメモにして、調査員に渡せるようにしておきましょう。たとえば「自分で起き上がれず、毎回家族が背中を支えている」「夜中に2〜3回トイレに付き添う」など、場面と頻度を具体的に書きます。

メモの書き方の例「・入浴は一人では洗えず、全身を介助 ・服のボタンが留められず毎回手伝う ・週に2回は失禁があり下着交換が必要 ・『ごはんはまだか』と食後すぐに何度も聞く」のように、動作+頻度+介助の程度をセットで書くのがコツです。

コツ3 本人の前で言いにくいことは別の方法で伝える

失禁や物忘れ、夜間の行動などは、本人の前で話すと傷つけてしまうことがあります。その場合はメモを手渡す、別室で伝える、本人が席を外したときに補足するといった配慮をしましょう。調査員もこうした事情は理解しています。

コツ4 「できる/できない」は普段の状態で答える

調査では「日頃どうしているか」が基準です。「やればできるが、普段はやっていない」「見守りや声かけがないとできない」場合は、その実態を正直に伝えます。一人でできるか否かだけでなく、「介助・見守りが必要かどうか」を明確にしましょう。

コツ5 認知症の症状は具体的なエピソードで

認知症は介護度に大きく影響しますが、短時間の調査では見えにくいものです。「同じことを何度も聞く」「薬を飲んだか分からなくなる」「夜に外へ出ようとする」など、最近あった具体的な出来事を伝えましょう。

コツ6 主治医にも普段の様子を伝えておく

二次判定では主治医意見書も重視されます。受診時に、家庭での困りごとや介護の状況を主治医に伝えておくと、意見書に実態が反映されやすくなります。

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たくさん準備することがあるんだね。これ全部やらないとダメなの?

リハウルフリハウルフ

全部できれば理想だけど、最低でも「家族の同席」と「困りごとメモ」の2つは押さえてほしいね。この2つだけでも、実態の伝わり方が大きく変わるよ。

認定調査の74項目とは?事前に知っておくと安心

認定調査の基本調査は、全国共通の74項目で構成され、大きく次の分野に分かれます。どんな観点で見られるかを知っておくと、伝え忘れを防げます。

分野主な確認内容
身体機能・起居動作麻痺・拘縮、寝返り、起き上がり、立ち上がり、片足での立位、歩行、視力・聴力など
生活機能移乗・移動、食事摂取、排尿・排便、洗顔・整髪、上着の着脱、外出頻度など
認知機能意思の伝達、名前や生年月日を言える、短期記憶、場所の理解など
精神・行動障害作話、感情が不安定、昼夜逆転、同じ話の繰り返し、徘徊、介護への抵抗など
社会生活への適応薬の内服、金銭管理、買い物、簡単な調理、集団への不適応など
特別な医療過去14日間に受けた点滴・じょくそう処置・経管栄養などの医療行為
ポイント項目ごとに「介助されていない/見守り等/一部介助/全介助」などで評価されます。「見守りや声かけがあればできる」状態も立派な介助です。一人でできるかどうかだけでなく、どんな手助けが必要かを具体的に伝えましょう。
ちびウルフちびウルフ

74項目もあるの?全部に答えられるか不安だなぁ。

リハウルフリハウルフ

調査員が一つずつ質問してくれるから、全部を覚える必要はないよ。ただ、分野を知っておくと「あ、夜間のことも言わなきゃ」と気づける。だから困りごとメモは分野ごとに整理しておくと伝え漏れが減るんだ。

結果に納得できないとき——区分変更と再申請

認定結果が出た後でも、対処の道はあります。状態が実態に合っていないと感じたら、次の方法を検討しましょう。

方法こんなときに
区分変更申請認定後に状態が変化した、または現在の介護度が実態に合っていないと感じるとき。いつでも申請でき、改めて認定調査が行われる
不服申立て(審査請求)認定結果そのものに不服があるとき。都道府県の介護保険審査会へ申し立てる(手続きに時間がかかるため、実務上は区分変更申請が選ばれることが多い)
ポイント区分変更申請をすると、もう一度認定調査が行われます。このときも、この記事で紹介したコツ(家族同席・困りごとメモなど)がそのまま役立ちます。担当のケアマネジャーがいれば、まず相談してみましょう。

やってはいけないNG行動

適切な介護度を目指すことは正しい行動ですが、事実と異なる申告(嘘)は絶対にしてはいけません。理由は2つあります。

嘘の申告がいけない理由 ①実態より重い介護を受けると、本人が自分でできることまで手伝われ、身体機能の低下や認知症の悪化を招きます。
②認定調査と主治医意見書・特記事項に食い違いが出ると、かえって判定が不安定になります。あくまで「ありのままの実態を、もれなく具体的に伝える」のが正解です。

よくある質問(FAQ)

認定調査の前に、調査項目を知っておくことはできますか?
はい。認定調査は全国共通の74項目で行われます。自治体の窓口やインターネットで内容を確認できます。事前に目を通しておくと、当日落ち着いて、伝え漏れなく答えられます。
調査当日、本人の体調が良すぎて心配です。どうすれば?
「今日はたまたま調子が良いが、普段は違う」ことをはっきり伝えましょう。良い日・悪い日の差や、普段の状態を家族が補足することが大切です。
区分変更申請は何度でもできますか?
状態の変化に応じて申請できます。ただし、明確な変化がないのに繰り返すと、現状維持の結果になることもあります。担当ケアマネジャーに相談しながら、タイミングを見極めましょう。
家族が遠方で同席できません。代わりの方法は?
困りごとを書いたメモを事前に郵送・FAX・メール等で調査員やケアマネジャーに共有する、当日に電話で補足するなどの方法があります。担当の地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してください。
介護度が上がると負担も増えると聞きました。本当ですか?
サービスの種類によっては、1回あたりの利用料が上がることがあります。メリットとデメリットの両面を理解したうえで判断することが大切です。詳しくは関連記事をご覧ください。
まとめ
  • 介護度は「介護にどれだけ手間がかかるか」で決まる。認定調査と主治医意見書が出発点
  • 介護度が低く出る原因は、本人の見栄・家族の不在・調子の良い日・伝え方など。準備で防げる
  • コツは6つ。とくに「家族の同席」と「困りごとメモ」は必ず実践したい
  • 結果に納得できないときは、区分変更申請という選択肢がある
  • 嘘の申告はNG。目指すのは「ありのままの実態を、具体的に・もれなく伝える」こと
ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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