介護医療院の安全管理体制未実施減算は、1日につき5単位です。他の減算が「所定単位数の◯%」で計算されるなかで、この減算だけ単位数で固定されています。

根拠は介護医療院基準第40条第1項。同じ条文が、安全対策体制加算(入所初日20単位)の基準にも使われています。満たさなければ毎日5単位引かれ、満たしたうえで上乗せの体制を作れば入所時に20単位が付く。減算と加算が地続きになっています。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスの注4、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の2、介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第40条の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 安全管理体制未実施減算が1日5単位であること
  • %ではなく単位数で固定されている理由
  • 根拠が介護医療院基準第40条第1項であること
  • 安全対策体制加算(20単位)と同じ条文が基準になっていること
  • 事故発生の防止のために求められる措置
  • 他の減算との比較
ちびウルフちびウルフ

1日5単位なら、他の減算より軽いですね。

リハウルフリハウルフ

1人あたりで見れば軽いです。ただし全入所者に毎日かかります。100床なら1日500単位、1か月で1万5千単位、1年で18万単位を超えます。しかも要件は担当者を置いて指針を作り、委員会を回すこと。金額の割に、満たせない理由が乏しい減算です。

介護医療院の安全管理体制未実施減算とは?

介護医療院の安全管理体制未実施減算は、事故の発生や再発を防ぐための体制を整えていない場合に、基本報酬が減額される仕組みです。

介護医療院では、転倒、誤嚥、チューブの自己抜去、投薬ミスなど、医療と介護の両方にまたがる事故が起こります。現場ごとに対応して終わりにするのではなく、施設として報告を集め、原因を分析し、改善につなげる仕組みを持つ。この減算は、その仕組みの不在に対するものです。

減算額が%ではなく1日5単位で固定されているのは、基本報酬の高低にかかわらず一律の水準を課す趣旨と読めます。

安全管理体制未実施減算の減算率(単位数)

別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、安全管理体制未実施減算として、1日につき5単位を所定単位数から減算する。

規模1日1月(30日)1年
50床250単位7,500単位約91,000単位
100床500単位15,000単位約182,000単位

※入所者数×5単位で計算した概算です。

安全管理体制未実施減算の算定要件(基準)

告示95号第100号の2は、介護医療院基準第40条第1項(第54条において準用する場合を含む)に適合していることを求めています。

  • 事故発生の防止のための指針の整備
  • 事故が発生した場合等の報告と、その分析を通じた改善策を従業者に周知徹底する体制の整備
  • 事故発生の防止のための委員会及び従業者に対する研修の定期的な実施
  • 上記の措置を適切に実施するための担当者を置くこと

第54条はユニット型介護医療院への準用規定です。ユニット型を持つ施設も同じ内容が適用されます。

「担当者を置くこと」が第4号に定められている

第40条第1項第4号は、これらの措置を適切に実施するための担当者を置くことを定めています。

この担当者は、安全対策体制加算(入所初日20単位)の要件にも登場します。加算では、その担当者が「安全対策に係る外部における研修」を受けていることが求められます。

安全管理体制未実施減算の注意点

同じ条文が加算の基準にもなっている
状態報酬への影響
第40条第1項を満たしていない1日5単位の減算
第40条第1項を満たしている減算なし(加算はまだ算定できない)
+担当者の外部研修+安全管理部門の設置入所初日に20単位の加算

まず減算を受けない状態を確保し、そこから加算を目指すという順序になります。減算を受けている施設は、加算の届出以前の段階にあることになります。

他の減算との比較

減算減算額計算方法
身体拘束廃止未実施減算所定単位数の10%
業務継続計画未策定減算所定単位数の3%
高齢者虐待防止措置未実施減算所定単位数の1%
安全管理体制未実施減算1日5単位単位数(固定)
栄養管理の基準未達1日14単位単位数(固定)

介護医療院の減算には、率で計算するものと単位数で固定されているものが混在しています。請求時の計算方法が異なるため、システム設定の確認が必要です。

事故報告の仕組みが機能しているか

指針や委員会があっても、現場から報告が上がってこなければ分析も改善もできません。

「報告すると責められる」空気があると、ヒヤリハットは表に出なくなります。報告の件数が極端に少ない施設は、体制の書類が揃っていても実質が伴っていない可能性があります。(この整理は筆者の実務経験にもとづくもので、制度上の判断基準ではありません)

安全管理体制未実施減算のQ&A

減算額は%ではないのですか?

1日につき5単位という固定額です。所定単位数の割合ではありません。

根拠となる基準は何ですか?

介護医療院基準第40条第1項(第54条において準用する場合を含む)です。

事故が起きていなければ減算されませんか?

事故の有無ではなく、事故発生の防止のための体制が整っているかどうかで判断されます。

担当者を置いていれば足りますか?

足りません。指針の整備、報告と分析による改善策の周知徹底、委員会と研修の定期的な実施も必要です。

安全対策体制加算とはどう違いますか?

同じ第40条第1項が基準ですが、加算はそれに加えて担当者の外部研修受講と安全管理部門の設置が必要です。

ユニット型も対象ですか?

対象です。第54条により準用されます。

委員会や研修の頻度は決まっていますか?

「定期的に」実施することが求められます。具体的な頻度は原文と都道府県の解釈を確認してください。

他の減算と同時に適用されますか?

それぞれ別の規定であるため、要件に該当すれば重なり得ます。計算方法は都道府県に確認してください。

まとめ
  • 安全管理体制未実施減算は1日につき5単位
  • 率ではなく単位数で固定されている
  • 100床規模なら1年で18万単位を超える影響になる
  • 根拠は介護医療院基準第40条第1項(ユニット型は第54条で準用)
  • 求められるのは、指針の整備、報告と分析による改善策の周知徹底、委員会と研修の定期実施、担当者の配置
  • 事故の有無ではなく体制の有無で判断される
  • 同じ条文が安全対策体制加算(入所初日20単位)の基準にもなっている
  • まず減算を受けない体制を確保し、そこから加算を目指す順序になる
参考にした情報
  • 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスの注4、オ(安全対策体制加算)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
  • 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の2(安全管理体制未実施減算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
  • 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第68号の7(安全対策体制加算に係る施設基準)(厚生労働省法令等データベース)
  • 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第40条(事故発生の防止及び発生時の対応)、第54条(準用)

※本記事の減算額・基準は、厚生労働省の告示・省令にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。委員会・研修の頻度、複数の減算が重なる場合の計算方法、減算の適用期間については指定権者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の減算額の試算は単位数を単純に計算した概算です。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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