親の介護が急に始まったとき、最初の1週間で決めるべきことは多くありません。①安全の確保、②地域包括支援センターへの連絡、③要介護認定の申請の3つです。

そして知っておくと動きが変わるのが、要介護認定は申請した日にさかのぼって効力を生じるという決まりです。結果を待ってから動く必要はありません。この記事では、介護保険法の条文を確認しながら、最初の1か月でやることを順番に整理しました。

この記事でわかること

  • 最初にやるべき3つのこと
  • 認定結果を待たずにサービスを始められる理由(条文)
  • 申請は代行してもらえること
  • 30日以内に結果が出ないときの扱い
  • かかりつけ医がいないときの進め方
  • 最初にやってはいけないこと
  • お金の線引きの決め方
  • 最初の1か月のチェックリスト

親の介護が始まったら最初にすること

やることは3つです。順番にも意味があります。

  • 安全を確保する…転倒、火の元、薬の管理、外出後に戻れるか。命に関わるものから手を打つ
  • 地域包括支援センターに連絡する…住所を担当するセンターへ。要介護認定を受けていなくても、家族だけでも相談できる
  • 要介護認定を申請する…市区町村の窓口。センターに代行してもらえる

この3つを1週間以内に済ませられれば、初動としては十分です。サービスの種類や事業所を先に調べる必要はありません。それはケアマネジャーと一緒に決める部分です。

地域包括支援センターで何ができるかは地域包括支援センターとは?相談できることと使い方介護保険とは?対象者・使えるサービス・申請の流れとあわせて確認してください。

要介護認定は申請した日にさかのぼる

多くの家庭が「結果が出るまで何もできない」と考えて止まります。しかし介護保険法にはこう書かれています。

介護保険法第27条第8項

要介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる

つまり、申請した日以降に使ったサービスは、認定が下りた時点で保険給付の対象としてさかのぼって扱われます。結果を待つ必要はありません。

実務では、認定結果が出る前に「暫定ケアプラン」を作ってサービスを開始します。退院の日程が決まっているときなど、待っていられない場面は珍しくありません。

ただし注意点がある

想定より低い要介護度が出た場合、支給限度額を超えた分は全額自己負担になります。暫定でサービスを始めるときは、低めの要介護度を想定した組み方にするかを、必ずケアマネジャーと確認してください。

限度額の考え方は介護保険の支給限度額とは?最新の単位数一覧をご覧ください。

申請は代行してもらえる

申請は本人か家族が窓口へ行くもの、と思われがちですが、条文は代行を認めています。

介護保険法第27条第1項(後段)

「当該被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護老人福祉施設若しくは介護保険施設(中略)又は地域包括支援センターに、当該申請に関する手続を代わって行わせることができる

遠方に住んでいる、仕事を休めない、本人が窓口に行けない。こうした事情があるなら、地域包括支援センターに代行を頼めます。

申請に必要な書類や期間の詳細は要介護認定の申請方法は?流れ・必要書類・かかる期間にまとめています。

30日以内に結果が出ないとき

認定結果が出るまでの期間も、条文で決まっています。

介護保険法第27条第11項・第12項

「第1項の申請に対する処分は、当該申請のあった日から30日以内にしなければならない。ただし、(中略)特別な理由がある場合には(中略)なお要する期間及びその理由を通知し、これを延期することができる

「申請をした日から30日以内に当該申請に対する処分がされないとき、若しくは前項ただし書の通知がないとき(中略)は、当該申請に係る被保険者は、市町村が当該申請を却下したものとみなすことができる

原則30日です。遅れる場合は、市町村から理由と見込み期間の通知が来る決まりになっています。何も来ないまま30日を過ぎているなら、問い合わせる根拠があります。

ただし前述のとおり、認定の効力は申請日にさかのぼります。遅れていること自体で使えるサービスが減るわけではありません。

かかりつけ医がいないときはどうするか

認定には主治医意見書が必要です。長く受診していない親の場合、ここで止まることがあります。条文にはただし書きがあります。

介護保険法第27条第3項

「市町村は、第1項の申請があったときは、当該申請に係る被保険者の主治の医師に対し(中略)意見を求めるものとする。ただし、当該被保険者に係る主治の医師がないときその他当該意見を求めることが困難なときは、市町村は、当該被保険者に対して、その指定する医師又は当該職員で医師であるものの診断を受けるべきことを命ずることができる

主治医がいなければ、市町村が指定する医師の診断で進められます。「病院にかかっていないから申請できない」ということはありません。

とはいえ、日常的に診てもらえる医師がいるほうが、その後の生活は安定します。申請と並行して、かかりつけ医を決めておくことをすすめます。

ちびウルフちびウルフ

認定調査のとき、親が急にしっかりしちゃったらどうしよう。

リハウルフリハウルフ

よくあります。家族は必ず同席して、普段できないことをメモで渡してください。本人の前で言いにくければ、調査員に別室で伝えても構いません。

最初にやってはいけないこと

相談を受けていて、後から苦しくなるのはこの3つです。

やりがちなことなぜ避けるか
すぐに仕事を辞める介護は平均4年7か月続きます。収入が途切れると選択肢が減り、介護サービスも使いにくくなります。まず介護休業・介護休暇の制度を確認してください
親のお金と自分のお金を混ぜるきょうだい間の不信につながります。最初から親の口座から支出し、記録を残すのが結局いちばん揉めません
全部自分でやろうとするできてしまうと、サービスを入れる理由がなくなります。最初から「家族がやらないこと」を決めておくほうが続きます

特に1つめです。介護離職は、始まって数週間の混乱期に決めてしまいがちです。その時期の判断は、たいてい現実より重く見積もられています。ひと月経つと、使える制度と生活のリズムが見えてきます。

勤務先の制度で時間を作る

仕事を辞める前に確認するのが、育児・介護休業法の制度です。就業規則に書かれていなくても、法律で定められた権利です。

制度内容使いどころ
介護休業対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できる入院・退院や施設探しなど、体制を整える時期にまとめて使う
介護休暇1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで通院の付き添い、認定調査の立ち会い、手続きなど単発の用事

介護休業は「自分が介護をするための休み」と誤解されがちですが、本来は介護を続けられる体制をつくるための期間です。93日で自分が介護しきる、という使い方をすると離職に近づきます。

さらに、令和7年4月から、労働者が家族の介護に直面した旨を申し出たときに、両立支援制度等について個別に周知し、意向を確認することが事業主に義務づけられました。申し出れば説明を受けられる立場にあります。

まず勤務先の人事担当に「家族の介護が始まった」と伝えてください。それが制度を動かす起点になります。

お金の線引きを先に決める

費用の話は後回しにされますが、早い段階で決めておくほど揉めません。

  • 介護にかかる費用は、原則として親のお金から出す
  • 親の年金額、預貯金、加入している医療保険を把握する
  • 支出は通帳と領収書で記録を残す
  • きょうだいには、金額ではなく負担の分担を先に共有する
  • 自己負担割合(1〜3割)を介護保険負担割合証で確認する

在宅介護の費用は月平均5.3万円という調査があります。内訳とモデルケースは在宅介護の費用はいくら?平均と内訳を解説にまとめました。

あわせて、医療と介護の両方がかかるなら高額医療・高額介護合算療養費、課税されている子と同居しているなら世帯分離が関係します。

最初の1か月でやることリスト

順番に片づければ、1か月で生活の形が決まります。

  • 地域包括支援センターに連絡した
  • 要介護認定を申請した(代行も可)
  • かかりつけ医を決めた/受診した
  • 服用中の薬を一覧にした(お薬手帳を1冊にまとめた)
  • 認定調査に同席し、できないことを具体的に伝えた
  • 親の年金・預貯金・医療保険を把握した
  • 勤務先に介護休業(通算93日・3回まで)と介護休暇(年5日)を確認した
  • きょうだいに現状を共有し、分担を話した
  • 転倒しやすい場所を1か所でも直した(手すり・段差・照明)
  • 緊急時の連絡先を1枚にまとめて冷蔵庫に貼った

最後の1つは軽く見られがちですが、救急搬送のときに効きます。かかりつけ医、服薬内容、家族の連絡先、保険証の場所を1枚にしておいてください。

薬の一覧は特に重要です。ふらつきや物忘れが薬の影響で起きていることがあります。詳しくは高齢者の薬が多いとどうなる?ポリファーマシーの基準をご覧ください。

よくある質問

認定結果が出るまでサービスは使えませんか?

使えます。介護保険法第27条第8項により、要介護認定は申請のあった日にさかのぼって効力を生じます。暫定ケアプランでサービスを開始できます。

暫定でサービスを使うリスクはありますか?

想定より低い要介護度が出た場合、支給限度額を超えた分が全額自己負担になります。低めの要介護度を想定した組み方をケアマネジャーと相談してください。

申請は本人が行かないとだめですか?

代行できます。条文上、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業者などに手続を代わって行わせることができます。

認定結果はどのくらいで出ますか?

申請のあった日から30日以内が原則です。遅れる場合は、要する期間と理由が通知されます。通知がないまま30日を過ぎたときは、却下されたものとみなすことができるとされています。

かかりつけ医がいなくても申請できますか?

できます。主治医がいないときは、市町村が指定する医師の診断を受けるよう命じることができると条文に定められています。

認定調査に家族は同席したほうがいいですか?

同席をすすめます。調査時だけしっかりしてしまうことは珍しくありません。普段できないことをメモにして渡し、本人の前で言いにくければ別に伝えてください。

すぐ仕事を辞めるべきですか?

すすめません。介護期間は平均4年7か月という調査があります。まず勤務先の介護休業・介護休暇を確認し、制度とサービスで組み立ててください。

費用は誰が払うべきですか?

原則は親のお金から支出し、記録を残す形が揉めにくいです。最初にきょうだいと共有しておいてください。

何から情報を集めればいいですか?

サービスの種類より先に、親の年金・預貯金・医療保険・服薬内容・かかりつけ医を把握してください。サービスの選択はケアマネジャーと一緒に行います。

遠方に住んでいる場合はどうすればいいですか?

親の住所を担当する地域包括支援センターが窓口です。申請の代行も依頼できます。帰省の日程に合わせて認定調査を設定してもらえることもあります。

まとめ

  • 最初にやるのは安全確保・地域包括支援センターへの連絡・要介護認定の申請
  • サービスの種類を先に調べる必要はない
  • 要介護認定は申請のあった日にさかのぼって効力を生じる
  • 結果を待たずに暫定ケアプランでサービスを始められる
  • ただし想定より低い認定が出ると超過分が全額自己負担になる
  • 申請は地域包括支援センター等に代行してもらえる
  • 認定結果は原則30日以内、遅れる場合は理由と期間が通知される
  • 通知がないまま30日を過ぎたら却下とみなすことができる
  • 主治医がいないときは市町村が指定する医師の診断で進められる
  • 認定調査には家族が同席し、できないことを具体的に伝える
  • 混乱期に仕事を辞める判断をしない
  • 介護休業は通算93日・3回まで、介護休暇は年5日(2人以上で10日)
  • 令和7年4月から、申し出た労働者への個別周知・意向確認が事業主の義務
  • 介護費用は親のお金から支出し、記録を残す
  • きょうだいとは金額より先に分担を共有する
  • 薬の一覧とかかりつけ医を早い段階で整理する
  • 緊急時の情報を1枚にまとめておく

参考にした情報

※要介護認定の効力、申請の代行、処分の期間、主治医意見書の取扱いは、介護保険法第27条にもとづいて整理したものです。介護期間・費用の平均は生命保険文化センターの2024年度「生命保険に関する全国実態調査」によります。暫定ケアプランの取扱い、認定調査の日程調整、申請代行の受付方法は市区町村および事業所によって異なります。介護休業・介護休暇の日数および令和7年4月施行の個別周知・意向確認の義務は、育児・介護休業法にもとづく整理です。適用の可否は雇用形態や労使協定によって異なる場合があるため、勤務先にご確認ください。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。実際の手続きにあたっては、お住まいの市区町村および地域包括支援センターにご確認ください。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味