結論から書きます。同行援護従業者養成研修は、介護の資格も実務経験もない人がそのまま受講できる研修です。修了すれば、視覚障害のある方の外出に同行する「同行援護」の従業者として働けます。そして重要な変更が一つあります。令和7年4月1日から、一般課程のカリキュラムが20時間から28時間に拡充されました。応用課程は逆に12時間から6時間へ再編され、内容もサービス提供責任者向けに切り替わっています。

この記事では、障害者総合支援法、指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)、告示第538号の別表、告示第543号の同行援護アセスメント票、通知(障発第1206001号)の原文を確認して整理しました。ネット上には旧カリキュラム(20時間・12時間)のままの解説が多く残っているので、時間数は必ず告示の別表と照らして書いています。

この記事でわかること

  • 同行援護従業者養成研修が「無資格・未経験でも受講できる」根拠
  • 令和7年4月から一般課程が28時間に変わった内容と、旧カリキュラムとの違い
  • 一般課程15科目の内訳(何を何時間学ぶのか)
  • 盲ろう者向け通訳・介助員養成研修の修了者は19時間に短縮できること
  • 応用課程6時間がサービス提供責任者向けに再編された理由
  • 同行援護を使える人の基準(同行援護アセスメント票の4項目)
  • 修了後にできること・できないこと(介護保険の訪問介護との違い)
  • 受講前に確認しておきたい費用・期間・事業所指定の見方
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介護の資格を何も持っていなくても受けられるの?

リハウルフリハウルフ

受けられます。初任者研修のような前提資格は要りません。同行援護は「視覚情報の支援」が中心なので、身体介護の経験より、街を一緒に歩ける感覚のほうが効きます。ここが他の介護研修と違うところです。

同行援護従業者養成研修とは?

同行援護従業者養成研修とは、視覚障害により移動に著しい困難を有する方に同行し、移動に必要な情報の提供・移動の援護・排せつや食事等の介護その他外出時に必要な援助を行うための知識と技術を修得する研修です。根拠は「指定居宅介護の提供に当たる者としてこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定めるもの等」(平成18年厚生労働省告示第538号)第1条第6号にあります。

同条は、同行援護の従業者になれる人として介護福祉士、実務者研修修了者、居宅介護職員初任者研修修了者などを列挙したうえで、その一つとして同行援護従業者養成研修の課程を修了し、研修事業者から修了証明書の交付を受けた者を挙げています。つまりこの研修は、他の介護資格を持っていない人が同行援護の現場に入るための、独立した入口です。

研修は都道府県が指定した事業者が実施します。課程は一般課程応用課程の2つで、従業者として働くために必要なのは一般課程です。応用課程は一般課程を修了した人が対象で、サービス提供責任者になるための課程という位置づけになっています。

同行援護従業者養成研修のカリキュラム(一般課程28時間)

令和7年4月1日から適用されている一般課程のカリキュラムは、告示第538号 別表第六に定められています。全15科目・合計28時間です。

区分科目時間
講義外出保障1
視覚障害の理解と疾病①1
視覚障害の理解と疾病②0.5
視覚障害者(児)の心理1
視覚障害者(児)福祉の制度とサービス1.5
同行援護の制度1
同行援護従業者の実際と職業倫理2.5
講義・演習情報提供2
代筆・代読①1
代筆・代読②0.5
演習誘導の基本技術①4
誘導の基本技術②3
誘導の応用技術(場面別・街歩き)①4
誘導の応用技術(場面別・街歩き)②1
交通機関の利用4
合計28

時間配分を見るとわかるとおり、28時間のうち16時間が演習です。誘導の基本技術・応用技術・交通機関の利用で16時間を占めます。座学より体を動かす研修だと考えてください。厚生労働省の資料によれば、演習の中身は基本姿勢・歩く・止まる・曲がる・方向転換、狭いところやドアの通過、椅子への誘導・階段、歩道や踏切・グレーチング・混雑地での街歩き、病院・買い物・行政窓口・金融機関・冠婚葬祭などの場面別支援です。

盲ろう者向け通訳・介助員養成研修の修了者は19時間

「盲ろう者向け通訳・介助員養成研修事業」による研修の修了者は、別表第六の備考にもとづき6科目(視覚障害の理解と疾病②、視覚障害者(児)福祉の制度とサービス、同行援護従業者の実際と職業倫理、代筆・代読②、誘導の基本技術②、誘導の応用技術②)の受講が免除され、28時間 → 19時間になります。該当する方は申込時に必ず修了証明書を提示してください。

令和7年4月にカリキュラムが変わった

この改正は、令和5年10月16日のこども家庭庁・厚生労働省告示第2号によるもので、別表第六・別表第七に係る改正規定が令和7年4月1日から適用されています。社会保障審議会障害者部会(第136回・令和5年6月23日)の資料に、改正の趣旨と新旧の対比が示されています。

課程旧(令和7年3月31日まで)新(令和7年4月1日から)
一般課程9科目・20時間15科目・28時間
応用課程5科目・12時間6科目・6時間

目的は「同行援護従業者の質的向上を図るため、カリキュラム内容を充実する」ことと、「盲ろう者向け通訳・介助員養成研修事業による研修の修了者について、カリキュラムの受講の一部を免除する」ことの2点だと資料に明記されています。旧カリキュラムでは演習が「基本技能4時間・応用技能4時間」の計8時間でしたが、新カリキュラムでは演習が16時間に倍増しました。

「20時間」と書いてある情報は古い

養成講座の案内や解説記事には、いまも一般課程20時間・応用課程12時間と書かれたものが残っています。令和7年4月1日以降に始まる研修は新カリキュラムです。受講先を選ぶときは、その事業者の案内が28時間になっているかを必ず確認してください。時間数が旧のままの案内は、更新されていない可能性があります。

なお、視覚障害と聴覚障害が重複している方への意思疎通支援に従事していた人を同行援護従業者とみなす経過措置は、令和9年3月31日まで延長されています(令和6年3月31日時点で同行援護事業所の従業者であった者に限る)。

応用課程6時間とサービス提供責任者の要件

応用課程は告示第538号 別表第七に定められ、「サービス提供責任者の業務」「様々な利用者への対応」「個別支援計画と他機関との連携」「業務上のリスクマネジメント」「従業者研修の実施」「同行援護の実務上の留意点」の6科目・各1時間、合計6時間です。同表の注に「別表第六に定める内容以上の研修の課程を修了した者を対象として行われる」と書かれており、一般課程の修了が受講条件になります。

同行援護事業所のサービス提供責任者の資格要件は、通知(平成18年12月6日 障発第1206001号)に示されています。次のアまたはイを満たし、かつウを満たすことが必要です。

  • ア 居宅介護のサービス提供責任者の資格要件(介護福祉士、実務者研修修了者など)のいずれかに該当する
  • イ 平成23年9月30日時点で地域生活支援事業の移動支援事業に3年間従事していた(暫定的取扱い)
  • ウ 同行援護従業者養成研修応用課程を修了している

つまり応用課程だけを持っていてもサービス提供責任者にはなれず、介護福祉士などの資格要件とセットで求められます。逆にいえば、介護福祉士を持っていても応用課程を修了していないと同行援護のサービス提供責任者にはなれません。ここは事業所の指定申請でつまずきやすいところです。

同行援護はどんなサービスか|対象になる人の基準

同行援護は障害者総合支援法第5条4項に定義された障害福祉サービスです。条文は「視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の主務省令で定める便宜を供与すること」としています。

提供する支援は次の3つです。

  • 移動時およびそれに伴う外出先で必要な視覚的情報の支援(代筆・代読を含む)
  • 移動時およびそれに伴う外出先で必要な移動の援護
  • 排せつ・食事等の介護その他外出する際に必要となる援助

対象者の基準は「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める基準」(平成18年厚生労働省告示第543号)第8号にあり、別表第一(同行援護アセスメント票)の調査項目で判定します。基準は「移動障害」が1点以上であり、かつ「移動障害以外」(視力障害・視野障害・夜盲)のいずれかが1点以上であることです。

調査項目評価の中身
視力障害矯正視力による測定。1m離れた視力確認表の図が見えるか等で0〜2点
視野障害周辺視野角度の総和・両眼中心視野角度・両眼開放視認点数で0〜2点
夜盲網膜色素変性症等による夜盲等。暗所や夜間に慣れた場所以外を歩行できないなど
移動障害盲人安全つえ(又は盲導犬)を使った単独歩行が、慣れない場所でもできるか等

ポイントは身体障害者手帳の等級だけでは決まらないことです。手帳がなくても、網膜色素変性症などによる夜盲で移動に著しい困難がある場合は、医師意見書を添えて評価される仕組みになっています。夜間だけ移動障害が出る方については、「夜間や照明が不十分な場所等を想定して」移動障害を判定するとも書かれています。

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介護保険の訪問介護で外出の付き添いをするのとは違うの?

リハウルフリハウルフ

まったく別の制度です。同行援護は障害者総合支援法、訪問介護は介護保険法。同行援護は「代読・代筆」という視覚情報の支援が正面から業務に入っている点が決定的に違います。買い物先の値札を読む、書類の記入を代わりに行う。訪問介護の身体介護・生活援助の枠では説明できない仕事です。

修了後にできること・できないこと

可否
同行援護の従業者として働く◯(一般課程の修了で可)
同行援護のサービス提供責任者になる×(応用課程+介護福祉士等の要件が必要)
介護保険の訪問介護に従事する×(初任者研修等が別に必要)
障害福祉の居宅介護(身体介護)に従事する×(居宅介護職員初任者研修等が別に必要)
行動援護・重度訪問介護に従事する×(それぞれの養成研修が必要)

同行援護従業者養成研修は同行援護に特化した研修です。ここを勘違いして「介護の仕事全般ができるようになる」と思って受講すると、想定が外れます。介護職として幅を広げたいなら介護職員初任者研修、視覚障害者支援を専門にしたいなら同行援護、という選び分けになります。

ただし同行援護事業所は、居宅介護や重度訪問介護と同じ事業所で一体的に運営されていることが多いのが実情です(省令第5条2項が一体運営を前提に規模を通算する規定を置いています)。同行援護から入って、働きながら初任者研修を取る流れは現実的です。

受講前に確認しておきたいこと

  • 都道府県の指定を受けた研修事業者かどうかを、都道府県のホームページの指定事業者一覧で確認する
  • 案内のカリキュラムが28時間(新カリキュラム)になっているかを確認する
  • 演習が16時間あるため、実技に参加できる日程が確保できるかを確認する
  • 盲ろう者向け通訳・介助員養成研修の修了者は、免除の適用があるかを申込前に問い合わせる
  • 修了後の就職先(同行援護事業所)が地域にあるかを、障害福祉サービス等情報公表システムで調べる
  • 働きながら取るなら、就職先の事業所が受講費用を負担する制度を持っていないか確認する

費用は事業者によって差がありますが、公費助成の対象になる自治体もあります。受講費用の相場や助成の有無は都道府県・市町村で異なるため、ここでは金額を断定しません。申込先の事業者と、お住まいの自治体の障害福祉担当課の両方に確認してください。

よくある質問

同行援護従業者養成研修に受講資格はありますか?

一般課程に前提資格はありません。無資格・未経験でも受講できます。応用課程だけは、別表第七の注により一般課程(別表第六に定める内容以上の課程)を修了した人が対象です。

一般課程は何時間ですか?

令和7年4月1日から適用されている告示第538号 別表第六では、15科目・合計28時間です。それ以前は9科目・20時間でした。盲ろう者向け通訳・介助員養成研修の修了者は免除により19時間になります。

応用課程を先に受けることはできますか?

できません。応用課程は一般課程の修了者を対象として行うことが告示の別表第七に明記されています。

介護福祉士を持っていれば研修は不要ですか?

同行援護の従業者としては、介護福祉士であれば告示第538号第1条第1号に該当するため従事できます。ただしサービス提供責任者になるには、通知(障発第1206001号)により同行援護従業者養成研修応用課程の修了が別途必要です。

研修を修了すれば訪問介護でも働けますか?

働けません。介護保険の訪問介護に従事するには介護職員初任者研修などが別に必要です。同行援護従業者養成研修は同行援護に特化した研修です。

同行援護は誰が使えますか?

同行援護アセスメント票(告示第543号 別表第一)で、「移動障害」が1点以上あり、かつ視力障害・視野障害・夜盲のいずれかが1点以上ある方です。障害支援区分の認定は、身体介護を伴わない場合には必要ありません。

身体障害者手帳がなくても同行援護を使えますか?

アセスメント票の基準を満たせば対象になり得ます。特に網膜色素変性症等による夜盲は、必要に応じて医師意見書を添付して評価する取扱いが告示の備考に定められています。判断は市町村が行うため、窓口に相談してください。

代読・代筆はどこまでやっていいのですか?

研修の「代筆・代読」の科目で、業務における代読・代筆の範囲、基本的な方法、留意点、代筆できないものを学びます。プライバシー保護や代筆できない書類の扱いは、研修の中で必ず取り上げられる論点です。

研修はどこで受けられますか?

都道府県が指定した研修事業者が実施します。都道府県のホームページに指定事業者の一覧が掲載されているので、そこから探すのが確実です。無指定の講座を受けても従業者要件は満たしません。

盲ろう者向け通訳・介助員養成研修を修了しています。免除はどう申請しますか?

研修事業者に修了証明書を提示して申請します。免除されるのは、視覚障害の理解と疾病②、視覚障害者(児)福祉の制度とサービス、同行援護従業者の実際と職業倫理、代筆・代読②、誘導の基本技術②、誘導の応用技術②の6科目・計9時間分です。運用の詳細は都道府県が示すため、申込先に確認してください。

まとめ

  • 同行援護従業者養成研修は、無資格・未経験でも受講できる(前提資格なし)
  • 根拠は平成18年厚生労働省告示第538号 第1条第6号
  • 課程は一般課程と応用課程の2つ。従事に必要なのは一般課程
  • 令和7年4月1日から一般課程は15科目・28時間(旧9科目・20時間)
  • 応用課程は6科目・6時間に再編され、内容はサービス提供責任者向け
  • 28時間のうち16時間が演習。誘導技術と交通機関の利用が中心
  • 盲ろう者向け通訳・介助員養成研修の修了者は6科目免除で19時間
  • 改正の根拠は令和5年10月16日こども家庭庁・厚生労働省告示第2号
  • 視覚・聴覚重複障害の支援経験者のみなし措置は令和9年3月31日まで延長
  • 同行援護のサ責は「介護福祉士等の要件+応用課程修了」の両方が必要
  • 同行援護は障害者総合支援法第5条4項のサービスで、介護保険とは別制度
  • 支援内容は視覚的情報の支援(代筆・代読含む)・移動の援護・排せつ食事等の介護
  • 対象者は「移動障害1点以上」かつ「視力・視野・夜盲のいずれか1点以上」
  • 身体障害者手帳の等級だけで決まらず、夜盲も評価対象になる
  • 修了しても訪問介護・居宅介護・行動援護には従事できない

参考にした情報

※本記事のカリキュラム・時間数・要件に関する記述は、平成18年厚生労働省告示第538号および第543号、平成18年12月6日障発第1206001号通知、社会保障審議会障害者部会(第136回)資料の原文にもとづいて整理したものです。研修の実施方法・受講料・免除の運用は都道府県および研修事業者によって異なるため、受講前に必ず実施主体にご確認ください。対象者の該当判断は市町村が行います。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。現場の実情に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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