ヤングケアラーの現状とは?子どもが抱える負担や悩み、受けられる支援を紹介

ヤングケアラーは、令和6年6月の法改正で「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として、国と自治体が支援に努めるべき対象に明記されました。それまで法律上の位置づけがなく、自治体によって取組にばらつきがあった状態から変わった点です。
この記事では、こども家庭庁「ヤングケアラー支援の現況(令和7年度)」と法改正資料の原文を確認して整理しました。よく引用される「中学2年生の5.7%」という数字について、調査自身が付けている注記まで含めて説明します。
- 法律上のヤングケアラーの定義と「過度に」の意味
- 小6・中2・高2・大3それぞれの割合
- その数字にこども家庭庁が付けている注記
- 世話をしている相手は「きょうだい」が最も多いこと
- 「やりたいけれどできていないこと」の最多回答が「特にない」であること
- 令和6年6月の法改正で変わったこと
- 支援対象がおおむね30歳未満(状況により40歳未満)であること
- 受けられる支援と相談先
- 介護の専門職が子どもを「介護力」と見なさないこと
ちびウルフヤングケアラーって、おじいちゃんおばあちゃんの介護をしている子のことですよね?
リハウルフ実際にいちばん多いのは、きょうだいの世話です。小学6年生では71.0%、中学2年生では61.8%が「きょうだい」と答えています。祖父母の介護というイメージと、調査で見える実態はかなり違います。
ヤングケアラーの現状とは?
ヤングケアラーとは、本来は大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを、日常的に行っている子どもや若者のことです。
法律上の位置づけは、令和6年6月に改正された子ども・若者育成支援推進法にあります。こども家庭庁の資料は次のように説明しています。
「子ども・若者育成支援推進法は、『家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者』として、ヤングケアラーを、国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象としています」
この改正は令和6年6月5日に成立し、令和6年6月12日に施行されています(子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律/令和6年法律第47号)。
「過度に」の意味
定義の要になるのが「過度に」という言葉です。こども家庭庁の資料は、注記で次のように説明しています。
「こどもにおいてはこどもとしての健やかな成長・発達に必要な時間(遊び・勉強等)を、若者においては自立に向けた移行期として必要な時間(勉強・就職準備等)を奪われたり、ケアに伴い身体的・精神的負荷がかかったりすることによって、負担が重い状態になっている場合」
「その範囲を狭めることのないように十分留意し、一人一人のこども・若者の客観的な状況と主観的な受け止め等を踏まえ、その最善の利益の観点から、個別に判断していくことが重要」
「範囲を狭めることのないように十分留意し」と、わざわざ書かれている点が重要です。「これくらいなら手伝いの範囲だ」と切り捨てないよう、国が釘を刺している形です。
実態調査が示す数字
全国規模の実態調査は、令和2年度に中学2年生・高校2年生、令和3年度に小学6年生・大学3年生を対象に行われました。
| 学年 | 世話をしている家族が「いる」 |
|---|---|
| 小学6年生 | 6.5% |
| 中学2年生 | 5.7% |
| 高校2年生(全日制) | 4.1% |
| 大学3年生 | 6.2% |
大学3年生については、「いない」と答えた中に「現在はいないが、過去にいた」人が4.0%含まれています。
こども家庭庁の資料には、次の注記があります。
「例えば、親が仕事で不在の間に幼いきょうだいの遊び相手をするといったケースが含まれ、数値を引き上げている可能性がある」
「中学生の約17人に1人がヤングケアラー」という表現をよく見かけますが、この数字は「世話をしている家族がいる」と答えた割合であって、支援が必要な状態にある子どもの割合ではありません。
逆に、この調査は学校を通じた無記名の調査です。実際に支援を必要としている子どもを個別に特定するものではありません。こども家庭庁は、市区町村に対して記名式など個人が把握できる方法による実態調査を、少なくとも年1回程度、定期的に行うことが重要としています。
世話をしている相手と、子どもが抱える負担
相手は「きょうだい」が最も多い
| 学年 | 最も多い相手 | 割合 |
|---|---|---|
| 小学6年生 | きょうだい | 71.0% |
| 中学2年生 | きょうだい | 61.8% |
| 高校2年生 | きょうだい | 44.3% |
| 大学3年生 | 母親 | 35.4% |
小学生では、きょうだいの状況は「幼い」が最も高く73.9%です。大学生では、母親の状況は「精神疾患」が最も高く28.7%となっています。
小中学生では幼いきょうだいの世話が中心ですが、大学生になると母親の精神疾患をケアする割合が上がります。
同じ「ヤングケアラー」でも、必要な支援はまったく違います。前者は保育・家事支援、後者は精神保健の支援と本人の進路・就労支援が要になります。
「特にない」が最も多いという事実
ここが、この調査でもっとも見落とされている数字です。「世話のためにやりたいけれどできていないこと」を聞いた結果は次のとおりです。
| 学年 | 最多回答 | 次点 |
|---|---|---|
| 小学6年生 | 特にない 63.9% | 自分の時間がとれない 15.1% |
| 中学2年生 | 特にない 58.0% | 自分の時間がとれない 20.1% |
| 高校2年生 | 特にない 52.1% | 自分の時間がとれない 16.6% |
| 大学3年生 | 特にない 51.9% | 自分の時間がとれない 20.1% |
世話をしている子どもの半数以上が「特にない」と答えています。これは「負担がないから支援も要らない」という意味ではありません。
こども家庭庁の資料は、ヤングケアラーが表面化しにくい理由として「家庭内のデリケートな問題に関わること、本人や家族に支援が必要である自覚がないケースもある」ことを挙げています。
ちびウルフ本人が困っていないなら、放っておいてもいいんじゃないですか?
リハウルフそこが難しいところです。生まれたときからその生活なら、比べる対象がないので「普通」だと思っています。法律の定義も、客観的な状況と主観的な受け止めの両方を踏まえて個別に判断する、という書き方になっています。本人の「大丈夫」だけで判断しない、という趣旨です。
令和6年の法改正で変わったこと
こども家庭庁の資料は、改正前の課題を次のように整理しています。
- ヤングケアラー支援に関する法制上の位置づけがなかった
- 自治体内で、誰が支援の実施主体としてどのような支援を行うかが明確でなかった
- 自治体ごとに取組の進捗状況や支援内容にばらつきがあった
- 都道府県と市町村の役割分担も明確でなかった
- 市町村での実態把握の実施率が低かった
改正で変わったのは、次の2点です。
| 改正内容 | 意味 |
|---|---|
| 国・地方公共団体等が支援に努めるべき対象にヤングケアラーを明記 | 支援の根拠が法律上に置かれた |
| 子ども・若者支援地域協議会と要保護児童対策地域協議会の調整機関同士が連携を図るよう努める | 子ども・若者支援と児童福祉の2つの枠組みが協働できるようになった |
支援の対象年齢は30歳未満が中心
「進学や就職の選択など、自立に向けた重要な移行期を含む若者期を切れ目なく支える観点から、おおむね30歳未満を中心(状況に応じて40歳未満)も対象とする」
「ヤング」という語感から18歳未満を想像しがちですが、支援の対象はもっと広く取られています。18歳以上の若者世代への外部サービスの導入については、市区町村が中心的な役割を担うとされています。
優先して支援する世帯
資料は、支援の必要性・緊急性が高い者を優先することが重要としたうえで、具体的に次の世帯を挙げています。
- 保護者の病気・障害によりこども・若者が長時間ケアを担う世帯
- 生活保護や児童扶養手当受給世帯で、こども・若者以外にケアの担い手がいない世帯
受けられる支援と相談先
こども家庭庁が示す支援は、大きく「ケアの代替」と「本人への支援」に分かれます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ケアの代替 | 介護保険サービス、障害福祉サービス、子育て世帯訪問支援事業、外国語対応通訳の派遣等 |
| 本人への支援 | レスパイトの機会の確保、ピアサポート等の相談支援、学習支援、就労支援 |
ケアの代替の筆頭に、介護保険サービスと障害福祉サービスが挙げられています。家族が使えるサービスを増やすことが、そのまま子どもの負担軽減になるという整理です。
ヤングケアラー・コーディネーター
自治体には、ヤングケアラーを適切な福祉サービスにつなぐ専門職としてヤングケアラー・コーディネーターを配置する事業があります。配置場所の例として、こども家庭センター、子ども・若者総合相談センター、教育部局との連携に適した場所などが挙げられています。
都道府県が18歳以上のヤングケアラーへの個別相談対応を行うコーディネーターを配置する場合の補助も設けられています。
- 市区町村のこども家庭センター
- 子ども・若者総合相談センター
- 学校のスクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラー
- 地域包括支援センター(高齢の家族のケアがある場合)
- ピアサポート団体・オンラインサロン
ピアサポートやオンラインサロンは、自治体が自ら運営する場合とNPO・民間団体の活動を支援する場合があります。同じ立場の人と話せる場は、相談窓口とは別の役割を持ちます。
周囲の大人と専門職が気をつけること
ここは介護の専門職として、いちばん重く受け止めている部分です。厚生労働省・文部科学省の連携プロジェクトチーム報告は、現状の課題として次を挙げています。
「福祉機関の専門職等から『介護力』と見なされ、サービスの利用調整が行われるケースあり」
そのうえで、今後取り組むべき施策として「家族介護において、子どもを『介護力』とすることなく、居宅サービス等の利用について配意するなど、ヤングケアラーがケアする場合のその家族に対するアセスメントの留意点等について地方自治体等へ周知」を挙げています。
ケアプランを立てるとき、同居家族がいれば「家族が対応できる」と整理してしまう場面があります。その同居家族が中学生や高校生であっても、形式的には「同居家族あり」になります。
担当したケースでも、日中独居の判定を巡って「高校生の孫が夕方には帰宅する」ことが検討材料に出たことがあります。帰宅するかどうかと、その子がケアを担ってよいかは別の問題です。(この事例に関する記述は筆者の実務経験にもとづく整理です)
支援するときの留意点
こども家庭庁の資料は、支援にあたって留意すべき事項を挙げています。
- 家庭内のデリケートな課題であり、こども・若者と保護者の心情に配慮する
- こども・若者の気持ちに寄り添い、保護者の状況も踏まえて肯定的・共感的に関わる
- 外部サービス導入時は、家族全体の支援を意識し、丁寧な説明と理解を得て進める
- 支援の必要性・緊急性が高い者を優先的に支援する
「保護者の状況も踏まえて肯定的・共感的に関わる」という書き方に注意してください。子どもにケアをさせている保護者を責める姿勢では、家庭が支援を拒みます。結果として子どもが孤立します。
よくある質問
ヤングケアラーに法律上の定義はありますか?
あります。子ども・若者育成支援推進法が「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として、国・地方公共団体等が支援に努めるべき対象としています。令和6年6月12日施行の改正で明記されました。
ヤングケアラーは何人くらいいますか?
世話をしている家族が「いる」と答えたのは小学6年生6.5%、中学2年生5.7%、高校2年生4.1%、大学3年生6.2%です。ただし調査自身が、幼いきょうだいの遊び相手をするケースが含まれ数値を引き上げている可能性があると注記しています。
世話をしている相手は誰が多いのですか?
小学6年生から高校2年生まではきょうだいが最も多く、小6で71.0%、中2で61.8%、高2で44.3%です。大学3年生では母親が35.4%で最も多くなります。
本人が「困っていない」と言う場合はどうすればいいですか?
調査では「やりたいけれどできていないこと」の最多回答が「特にない」でした。こども家庭庁も、本人や家族に支援が必要である自覚がないケースがあることを課題として挙げています。法律の定義も客観的な状況と主観的な受け止めの両方を踏まえて個別に判断するとしています。
支援の対象は18歳未満ですか?
違います。おおむね30歳未満を中心とし、状況に応じて40歳未満も対象とされています。進学や就職という移行期を切れ目なく支える趣旨です。
どこに相談すればいいですか?
市区町村のこども家庭センター、子ども・若者総合相談センター、学校のスクールソーシャルワーカーなどです。自治体によってはヤングケアラー・コーディネーターが配置されています。高齢の家族のケアがある場合は地域包括支援センターも窓口になります。
どんな支援が受けられますか?
ケアの代替として介護保険サービス、障害福祉サービス、子育て世帯訪問支援事業、通訳派遣など、本人への支援としてレスパイトの機会、ピアサポート、学習支援、就労支援が挙げられています。
同じ立場の人と話せる場はありますか?
あります。自治体やNPO・民間団体によるピアサポート、SNSやアプリを活用したオンラインサロンの設置運営が事業として支援されています。
ケアマネジャーは子どもを介護の担い手として数えてよいのですか?
国の報告書は、専門職が子どもを「介護力」と見なしてサービスの利用調整を行うケースがあることを課題として挙げ、子どもを「介護力」とすることなく居宅サービス等の利用に配意するよう周知するとしています。
自治体はどのようにヤングケアラーを把握するのですか?
市区町村は、学校等の関係機関を通じて、主に任意の記名式など個人が把握できる方法により調査を行うこととされています。少なくとも年1回程度の定期的な実施が重要とされています。
- 令和6年6月12日施行の改正で、子ども・若者育成支援推進法にヤングケアラーが明記された
- 定義は「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」
- 「過度に」は範囲を狭めないよう十分留意し、個別に判断するとされている
- 世話をしている家族が「いる」のは小6で6.5%、中2で5.7%、高2で4.1%、大3で6.2%
- 調査自身が、幼いきょうだいの遊び相手が含まれ数値を引き上げている可能性を注記している
- 世話の相手は小中高でいずれも「きょうだい」が最多
- 大学3年生では母親が最多で、母親の状況は精神疾患が28.7%
- 「やりたいけれどできていないこと」の最多回答は全学年で「特にない」
- 本人や家族に支援が必要である自覚がないケースがある
- 支援対象はおおむね30歳未満が中心、状況により40歳未満も対象
- ケアの代替として介護保険サービス・障害福祉サービスが筆頭に挙げられている
- ヤングケアラー・コーディネーターの配置事業がある
- 専門職が子どもを「介護力」と見なさないことが国の課題として明記されている
- 保護者を責めず、家族全体の支援として進めることが留意事項とされている
- ヤングケアラー支援の現況(令和7年度 こども家庭庁支援局虐待防止対策課)
- ヤングケアラー支援の強化に係る法改正の経緯・施行について(こども家庭庁)
- ヤングケアラーについて(こども家庭庁)
- 子ども・若者育成支援推進法(平成21年法律第71号)
※本記事の割合や定義は、こども家庭庁が公表した資料にもとづいて整理したものです。実態調査は令和2年度に中学2年生・高校2年生、令和3年度に小学6年生・大学3年生を対象に実施されたもので、調査時点の数値です。調査は学校等を通じて実施されたものであり、支援を必要とする子どもの人数を直接示すものではありません。相談窓口の名称・体制、ヤングケアラー・コーディネーターの配置状況は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村にご確認ください。利用できる介護保険サービス・障害福祉サービスの内容や支給決定は個別の判断によります。ケアプラン作成や同居家族の扱いに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の法改正や事業の見直しにより取扱いが変わる可能性があります。





