介護医療院の業務継続計画未策定減算とは?

介護医療院の業務継続計画未策定減算は、所定単位数の3%減です。訪問系の1%に対し、入所・入居系は3%と重く設定されています。
根拠は介護医療院基準第30条の2第1項。感染症と非常災害の両方について業務継続計画(BCP)を策定し、計画に従い必要な措置を講じていることが求められます。経過措置は令和7年3月31日で終了しています。
介護医療院は、医療的なケアが継続的に必要な人が生活している施設です。停電で医療機器が止まる、断水で吸引や洗浄ができない、職員が出勤できない。そのいずれもが命に直結します。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスの注6、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の2の3、介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第30条の2の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 業務継続計画未策定減算が3%であること(訪問系は1%)
- 経過措置が令和7年3月31日で終了していること
- 感染症と非常災害の「両方」の計画が必要であること
- 策定だけでなく周知・研修・訓練・見直しも義務であること
- 介護医療院のBCPで固有に検討すべき点
- 他の減算との重さの比較
ちびウルフ介護医療院は医療機関に近いので、災害対応もできているのでは?
リハウルフ設備はあります。ただし介護医療院は病院と違い、災害拠点病院のような電源や備蓄の要件は課されていません。人工呼吸器、酸素濃縮器、吸引器、経管栄養のポンプ。電気が止まったときに何を優先するかを、事前に決めておかないと当日には決められません。
介護医療院の業務継続計画未策定減算とは?
介護医療院の業務継続計画未策定減算は、感染症や災害が起きてもサービスを継続するための計画(BCP)を策定していない場合に、基本報酬が減額される仕組みです。
介護医療院の入所者は、そこで生活しています。災害が起きても「休業して自宅で待機してもらう」という選択肢がありません。しかも医療的なケアが継続的に必要な人が中心です。
感染症についても同様です。職員が感染して出勤停止になっても、吸引も経管栄養も止められません。誰が来られなくなるとどこが止まるのかを、平時に洗い出しておく必要があります。
業務継続計画未策定減算の減算率
別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、業務継続計画未策定減算として、所定単位数の100分の3に相当する単位数を所定単位数から減算する。
| サービス類型 | 減算率 |
|---|---|
| 介護医療院(入所系) | 3% |
| 特養・老健・グループホーム | 3% |
| 訪問介護・訪問入浴介護等(訪問系) | 1% |
| 基本報酬の水準 | 1日あたりの減算額 | 1人あたり月(30日) |
|---|---|---|
| 1,000単位 | 30単位 | 900単位 |
| 1,200単位 | 36単位 | 1,080単位 |
業務継続計画未策定減算の算定要件(基準)
告示95号第100号の2の3は、介護医療院基準第30条の2第1項(第54条において準用する場合を含む)に適合していることを求めています。
1 感染症や非常災害の発生時において、入所者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。
減算の基準が引いているのは第1項ですが、第2項・第3項は運営基準上の義務です。減算を免れることと、基準を満たすことは別だと考えてください。
業務継続計画未策定減算の注意点
告示の附則により、令和7年3月31日までは減算規定が適用されませんでした。ただし、感染症の予防及びまん延の防止のための指針と、非常災害に関する具体的計画を策定していない場合は経過措置の対象外とされていました。
この経過措置は終了しています。現在は、計画がなければそのまま3%減算です。
感染症と非常災害の「両方」が必要
条文は「感染症や非常災害の発生時において」と両方を挙げています。感染症のBCPだけ、あるいは自然災害のBCPだけでは足りません。2つを1つの計画にまとめても、別冊にしても構いませんが、いずれの事象もカバーされている必要があります。
介護医療院は、医療機器と医療的ケアに依存する入所者が多い施設です。他の介護施設のひな型では足りない部分があります。
- 電源:人工呼吸器、酸素濃縮器、吸引器、輸液ポンプ。非常電源で何時間もつか、優先順位はどうするか
- 水:吸引・清拭・経管栄養の準備に必要な清潔な水をどう確保するか
- 酸素:ボンベの備蓄量と、供給が途絶えた場合の対応
- 薬剤:継続が必要な薬(インスリン、抗てんかん薬等)の備蓄と入手経路
- 人:医師・看護職員が出勤できない場合、どこまでのケアを継続できるか
- 搬送:状態が悪化した入所者を、協力医療機関へどう運ぶか
「誰が来られないか」「何が止まるか」を先に想定すると、介護医療院のBCPは具体的になります。(この整理は筆者の実務経験にもとづくもので、制度上の定めではありません)
他の減算との比較
| 減算 | 減算額 |
|---|---|
| 身体拘束廃止未実施減算 | 所定単位数の10% |
| 業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の3% |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1% |
| 安全管理体制未実施減算 | 1日5単位 |
| 栄養管理の基準未達 | 1日14単位 |
率で計算する3つの減算のなかでは、中間の重さです。
業務継続計画未策定減算のQ&A
減算率は何%ですか?
所定単位数の3%です。訪問系サービスの1%とは異なります。
経過措置はまだありますか?
令和7年3月31日で終了しています。
感染症のBCPだけでもよいですか?
足りません。感染症と非常災害の両方について、継続的なサービス提供と早期の業務再開を図る計画が必要です。
計画を作れば減算されませんか?
減算の基準は第1項(策定と計画に従った措置)ですが、第2項の周知・研修・訓練、第3項の見直しも運営基準上の義務です。
研修と訓練の頻度は決まっていますか?
「定期的に実施」とのみ定められています。都道府県が目安を示している場合は確認してください。
法人共通の計画でもよいですか?
施設の実情(医療機器、非常電源、職員体制、地域の災害リスク)を反映している必要があります。共通部分と施設固有部分を分けて整理してください。
ユニット型も対象ですか?
対象です。第54条により準用されます。
見直しはいつ行えばよいですか?
「定期的に見直しを行い、必要に応じて変更を行う」とされています。訓練の実施後に振り返り、計画に反映する運用が実務的です。
- 業務継続計画未策定減算は所定単位数の3%減
- 訪問系サービスの1%より重い
- 経過措置は令和7年3月31日で終了している
- 感染症と非常災害の両方を対象とする計画が必要
- 根拠は介護医療院基準第30条の2第1項(ユニット型は第54条で準用)
- 策定だけでなく、周知・研修・訓練・見直しも運営基準上の義務
- 介護医療院では電源・水・酸素・薬剤・搬送が固有の論点になる
- 率で計算する3つの減算のなかでは中間の重さ
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスの注6、附則(業務継続計画未策定減算に係る経過措置)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第100号の2の3(業務継続計画未策定減算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第30条の2(業務継続計画の策定等)、第54条(準用)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)1.(5)④ 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入
※本記事の減算率・基準は、厚生労働省の告示・省令および改定資料にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。研修・訓練の頻度、法人共通計画の扱い、減算の適用期間については指定権者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の減算額の試算は単位数を単純に計算した概算です。BCPの作成に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




