介護医療院の療養環境減算・室料相当額控除とは?

介護医療院には、療養環境そのものを理由に報酬が引かれる仕組みが2つあります。療養環境減算(Ⅰ)(Ⅱ)と、令和6年度改定で新設された室料相当額控除です。
| 項目 | 減算・控除額 | 基準 |
|---|---|---|
| 療養環境減算(Ⅰ) | 25単位/日 | 療養室に隣接する廊下の幅が1.8m未満(両側に療養室がある場合は2.7m未満) |
| 療養環境減算(Ⅱ) | 25単位/日 | 療養室の床面積の合計 ÷ 入所定員が8未満 |
| 室料相当額控除 | 26単位/日 | 療養室の床面積の合計 ÷ 入所定員が8以上(Ⅱ型多床室が対象) |
床面積8㎡を境に、下回れば療養環境減算(Ⅱ)で25単位、上回れば室料相当額控除で26単位。どちらに転んでも引かれる構造になっている点が、この2つの関係を分かりにくくしています。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスの注8・注9、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第68号の4・第68号の4の2の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 療養環境減算(Ⅰ)(Ⅱ)と室料相当額控除の額と基準
- 廊下の幅と床面積という2つの基準
- 室料相当額控除がⅡ型の多床室に限られること
- 床面積8㎡が減算と控除の分岐点になっていること
- 療養環境減算は施設の構造で決まるため、運用で回避できないこと
- 令和6年度改定で室料相当額控除が新設された背景
ちびウルフ広くしても引かれ、狭くても引かれるんですか?
リハウルフ目的が違うんです。療養環境減算は「療養環境が基準に満たない」ことへの減算。室料相当額控除は「室料を利用者負担に移す」ための控除です。後者は減算ではなく、報酬から室料相当分を外して、その分を利用者から徴収する仕組みへの移行を意味します。性格がまったく違います。
介護医療院の療養環境減算・室料相当額控除とは?
介護医療院の療養環境減算は、療養室の廊下幅や床面積が一定の水準に満たない施設について、基本報酬を引き下げる仕組みです。
介護医療院の多くは療養病床から転換した施設です。古い病棟をそのまま使っている場合、廊下が狭かったり、1人あたりの床面積が小さかったりします。療養環境減算は、そうした構造上の差を報酬に反映させています。
一方の室料相当額控除は令和6年度改定で新設されたもので、性格が異なります。一定の面積を確保しているⅡ型の多床室について、報酬から室料相当額を控除する仕組みです。特養や有料老人ホームと同様に、室料は利用者が負担するという考え方への整理が進められた結果です。
療養環境減算・室料相当額控除の減算率(単位数)
療養環境減算(注8)
別に厚生労働大臣が定める施設基準に該当する介護医療院について、療養環境減算として、当該施設基準に掲げる区分に従い、1日につき次に掲げる単位数を所定単位数から減算する。
イ 療養環境減算(Ⅰ) 25単位
ロ 療養環境減算(Ⅱ) 25単位
室料相当額控除(注9)
Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)のⅡ型介護医療院サービス費(ii)及びⅡ型特別介護医療院サービス費のⅡ型特別介護医療院サービス費(ii)について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に該当する介護医療院については、室料相当額控除として、1日につき26単位を所定単位数から控除する。
対象がⅡ型の特定の区分(多床室に対応する(ii))に限定されている点が重要です。Ⅰ型やユニット型には適用されません。
療養環境減算・室料相当額控除の算定要件(施設基準)
療養環境減算(Ⅰ)——廊下の幅
介護医療院の療養室に隣接する廊下の幅が、内法による測定で、1.8メートル未満であること。(両側に療養室がある廊下の場合にあっては、内法による測定で、2.7メートル未満であること。)
療養環境減算(Ⅱ)——床面積
介護医療院の療養室に係る床面積の合計を入所定員で除した数が8未満であること。
室料相当額控除——床面積8以上
介護医療院の療養室に係る床面積の合計を入所定員で除した数が8以上であること。
| 1人あたり床面積 | 適用されるもの | 額 |
|---|---|---|
| 8未満 | 療養環境減算(Ⅱ) | −25単位/日 |
| 8以上(Ⅱ型多床室) | 室料相当額控除 | −26単位/日 |
面積を広げれば減算がなくなる、という単純な構造ではありません。ただし室料相当額控除は、控除した分を室料として利用者から徴収する前提の仕組みです。施設の収入としては、控除前と同水準を確保できる設計になっています(実際の徴収額や取扱いは指定権者に確認してください)。
療養環境減算・室料相当額控除の注意点
療養環境減算の基準は、廊下の幅と床面積という建物の構造です。職員配置や記録の整備では変えられません。
改修するか、入所定員を減らして1人あたり床面積を上げるか。いずれも経営判断を伴います。療養病床から転換した施設では、この減算を抱えたまま運営しているケースがあります。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は別の基準
療養環境減算(Ⅰ)は廊下の幅、(Ⅱ)は床面積です。両方に該当する施設では、それぞれ25単位ずつ引かれることになります。取扱いは都道府県に確認してください。
室料相当額控除の対象はⅡ型の多床室
条文が対象をⅡ型介護医療院サービス費(ii)・Ⅱ型特別介護医療院サービス費(ii)と特定しています。Ⅰ型、ユニット型、従来型個室は対象外です。自施設のどの区分に該当するかを、基本報酬の算定区分と突き合わせて確認してください。
他の減算との関係
| 減算・控除 | 額 | 性格 |
|---|---|---|
| 療養環境減算(Ⅰ)(Ⅱ) | 各25単位/日 | 建物の構造 |
| 室料相当額控除 | 26単位/日 | 室料の利用者負担への移行 |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 所定単位数の10% | 体制の未整備 |
| 業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の3% | 体制の未整備 |
| 栄養管理の基準未達 | 14単位/日 | 体制の未整備 |
体制の未整備による減算は改善できますが、療養環境減算は改修しない限り続きます。性格の違いを踏まえて経営判断をする必要があります。
療養環境減算・室料相当額控除のQ&A
療養環境減算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?
(Ⅰ)は療養室に隣接する廊下の幅、(Ⅱ)は1人あたりの床面積が基準です。どちらも25単位/日です。
両方に該当したらどうなりますか?
それぞれ別の基準に基づく減算です。取扱いは都道府県に確認してください。
廊下の幅は何メートル必要ですか?
内法で1.8メートル以上(両側に療養室がある廊下は2.7メートル以上)であれば、療養環境減算(Ⅰ)の対象になりません。
室料相当額控除はすべての介護医療院が対象ですか?
違います。Ⅱ型介護医療院サービス費(ii)およびⅡ型特別介護医療院サービス費(ii)が対象で、床面積が8以上の場合です。
床面積が8以上あれば減算されないのですか?
療養環境減算(Ⅱ)の対象にはなりませんが、Ⅱ型の多床室であれば室料相当額控除(26単位)の対象になります。
室料相当額控除は減算ですか?
条文は「控除」という語を用いています。室料相当分を報酬から外し、利用者負担へ移行させる趣旨の仕組みです。
Ⅰ型やユニット型も室料相当額控除の対象ですか?
条文はⅡ型の特定の区分を対象としています。詳細は原文と都道府県の解釈を確認してください。
減算を回避する方法はありますか?
療養環境減算は建物の構造が基準のため、改修や定員の見直しを伴います。運用の工夫では回避できません。
- 療養環境減算は(Ⅰ)(Ⅱ)とも25単位/日
- (Ⅰ)の基準は療養室に隣接する廊下の幅が1.8m未満(両側に療養室がある場合は2.7m未満)
- (Ⅱ)の基準は1人あたり床面積が8未満
- 室料相当額控除は26単位/日で、令和6年度改定で新設
- 対象はⅡ型介護医療院サービス費(ii)等の多床室で、床面積8以上の場合
- 床面積8を境に、下回れば減算、上回れば控除という構造
- 室料相当額控除は室料を利用者負担へ移行させる趣旨
- 療養環境減算は建物の構造が基準のため、運用では回避できない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスの注8(療養環境減算)、注9(室料相当額控除)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第68号の4(療養環境減算に係る施設基準)、第68号の4の2(室料相当額控除に係る施設基準)、第19号の3(準用元の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)第5条第2項第1号(療養室)
※本記事の減算額・基準は、厚生労働省の告示・省令にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。療養環境減算(Ⅰ)(Ⅱ)の両方に該当する場合の取扱い、室料相当額控除の対象区分の判定、室料の徴収方法については指定権者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。制度の趣旨に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の理解にもとづく整理です。




