老健の自立支援促進加算とは?支援計画7項目を解説

老健の自立支援促進加算は1月につき300単位。特養の280単位より20単位高く設定されています。
この加算でまず押さえるべきは、通知のこの一文です。「リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではないことから、個別のリハビリテーションや機能訓練を実施することのみでは、加算の対象とはならない」。
リハビリを頑張っても算定できません。評価されているのは「その人らしい暮らしを施設の中でどこまで再現できているか」——食事は居室の外で普通の椅子に座って、長年使ってきた箸で。入浴は特別浴槽ではなく一般浴槽で。多床室でポータブルトイレを前提にした計画は立ててはならない。通知はそこまで具体的に書いています。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第71号の4、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 単位数は1月300単位、特養より20単位高いこと
- 原則として入所者全員に算定できること
- リハビリや機能訓練の実施では算定できないこと
- 医師による医学的評価が3月に1回必要なこと
- 支援計画に盛り込むべき7つの項目
- 多床室でポータブルトイレを前提にしてはならないこと
- 入浴は一般浴槽が原則であること
- 地域や社会とのつながりを維持することも項目に入っていること
- 画一的な支援計画では算定できないこと
- LIFEへの提出と活用が要件であること
老健の自立支援促進加算の単位数は300単位——特養より高い
| 施設 | 単位数 |
|---|---|
| 老健 | 300単位/月 |
| 特養・地域密着型特養 | 280単位/月 |
| 介護医療院 | 300単位/月 |
ウ 自立支援促進加算 300単位
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った介護老人保健施設において、継続的に入所者ごとの自立支援を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。
通知は「原則として入所者全員を対象として入所者ごとに要件を満たした場合に、当該施設の入所者全員に対して算定できる」としています。
100床の老健なら月30,000単位。1単位10円換算で月約30万円、年間360万円規模です。老健の月額加算のなかでは最大級になります。
4つの算定要件
イ 医師が入所者ごとに、施設入所時に自立支援に係る医学的評価を行い、その後少なくとも3月に1回医学的評価の見直しを行うとともに、その医学的評価の結果等の情報を厚生労働省に提出し、(中略)必要な情報を活用していること。
ロ イの医学的評価の結果、自立支援の促進が必要であるとされた入所者ごとに、医師、看護職員、介護職員、介護支援専門員その他の職種の者が共同して、自立支援に係る支援計画を策定し、支援計画に従ったケアを実施していること。
ハ イの医学的評価に基づき、少なくとも3月に1回、入所者ごとに支援計画を見直していること。
ニ 医師が自立支援に係る支援計画の策定等に参加していること。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| イ 医学的評価 | 入所時+3月に1回以上の見直し/LIFEへ提出・活用 |
| ロ 支援計画 | 多職種共同で策定し、計画に従ったケアを実施 |
| ハ 見直し | 3月に1回以上 |
| ニ 医師の参加 | 支援計画の策定等に医師が参加 |
この加算は医師の関与が要件の柱です。医学的評価を行うのも医師(要件イ)、支援計画の策定等に参加するのも医師(要件ニ)。
老健は医師が常勤で配置されている施設ですが、「評価はしたが計画策定には参加していない」という状態では要件を満たしません。カンファレンスへの医師の参加記録を残してください。
リハビリを実施しても算定できない
なお、本加算は、画一的・集団的な介護又は個別的ではあっても画一的な支援計画による取組を評価するものではないこと、また、リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではないことから、個別のリハビリテーションや機能訓練を実施することのみでは、加算の対象とはならないこと。
ちびウルフ「自立支援」なのにリハビリじゃないんですか?
リハウルフこれはリハ職として、正直こたえる書き方だと思っている。「リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではない」とはっきり書かれている。
じゃあ何を評価しているのか。通知②を読むと「入所者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、特に必要な支援を実施していること」とある。
つまり訓練室で20分歩いたかどうかではなく、生活の場でどう暮らしているか。食事を居室の外で食べているか、トイレで排泄しているか、一般浴槽に入れているか——そこを見ている。
ただ、これはリハビリが無意味という意味ではない。トイレまで歩けるようにするのがリハの仕事で、実際にトイレで排泄する暮らしを作るのがこの加算。役割が違うだけで、目指す先は同じだと受け止めている。
支援計画に盛り込む7つの項目
通知⑥が、支援計画の各項目を具体的に示しています。これがこの加算の実質的な中身です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| a 離床・座位・立位 | 寝たきりによる廃用性機能障害の防止や改善へ向けて、離床、座位保持又は立ち上がりを計画的に支援する |
| b 食事 | 本人の希望に応じ、居室外で、車椅子ではなく普通の椅子を用いる、本人が長年親しんだ食器や箸を持ち込み使用する等。食事の時間や嗜好等への対応も画一的でなく個人の習慣や希望を尊重 |
| c 排せつ | 入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用。特に多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない |
| d 入浴 | 特別浴槽ではなく、一般浴槽での入浴とし、回数やケアの方法も個人の習慣や希望を尊重 |
| e 生活全般 | 画一的・集団的な介護ではなく個別ケアの実践。可能な限り自宅での生活と同様の暮らしを続けられるようにする |
| f リハビリ・機能訓練 | 本加算においては評価しないが、評価に基づき必要な場合は施設サービス計画の見直しを行う |
| g 社会参加 | 入所者と地域住民等とが交流する機会を定期的に設ける等、地域や社会とのつながりを維持する |
7項目のうち、cとdは特に強い表現です。
c:多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない
d:特別浴槽ではなく、一般浴槽での入浴とし
夜間の安全確保やケアの効率を理由にポータブルトイレを前提にした計画を立てていれば、この加算の趣旨に反します。まず自施設の支援計画を見直してください。
bの「長年親しんだ食器や箸」
通知が食器や箸の持ち込みまで例示しているのは、この加算の性格をよく表しています。施設の食器で、車椅子に座ったまま、居室で食べる——それが標準になっていないか、という問いかけです。
gの「地域住民等との交流」
社会参加の維持も支援計画の項目です。施設の中で完結させないという視点が入っています。
画一的な支援計画では算定できない
支援計画は、関係職種が共同し、別紙様式7を用いて作成すること。作成にあたっては、医学的評価及び支援実績等に基づき、個々の入所者の特性に配慮しながら個別に作成することとし、画一的な支援計画とならないよう留意すること。
- 様式は別紙様式7を用いる(医学的評価も同じ様式)
- 関係職種が共同して作成する
- 個別に作成し、画一的にならないようにする
- 入所者またはその家族に説明し同意を得る
通知は「個別的ではあっても画一的な支援計画による取組を評価するものではない」とまで書いています。
入所者ごとに作ってはいるが中身がほぼ同じ——という状態を名指しで否定しています。100人分の支援計画に、100通りの生活歴と希望が反映されているか。それがこの加算の問われ方です。
医学的評価と見直しのサイクル
| タイミング | 行うこと |
|---|---|
| 施設入所時 | 医師による自立支援に係る医学的評価 |
| 3月に1回以上 | 医学的評価の見直し |
| 3月に1回以上 | 支援計画の見直し |
| 随時 | LIFEへの提出とフィードバックの活用 |
自立支援に係る医学的評価は、医師が必要に応じて関連職種と連携し、別紙様式7を用いて、当該時点における自立支援に係る評価に加え、特別な支援を実施することによる入所者の状態の改善可能性等について、実施すること。
「改善可能性」まで評価するのが特徴です。現状の把握だけでなく、特別な支援を行えばどこまで良くなりうるかを医師が見立てます。
見直しは課題に応じて
支援計画の見直しは、支援計画に実施上に当たっての課題(入所者の自立に係る状態の変化、支援の実施時における医学的観点からの留意事項に関する大きな変更、関連職種が共同して取り組むべき事項の見直しの必要性等)に応じ、必要に応じた見直しを行うこと。
その際、PDCAの推進及びケアの向上を図る観点から、LIFEへの提出情報とフィードバック情報を活用すること。
特養との違い
| 項目 | 老健 | 特養 |
|---|---|---|
| 単位数 | 300単位/月 | 280単位/月 |
| 算定要件 | 共通(大臣基準第71号の4) | |
| 支援計画の7項目 | 共通 | |
厚生労働大臣が定める基準は、地域密着型特養・特養・老健・介護医療院を一括して定めています。要件は共通で、違うのは単位数だけです。
老健と介護医療院が300単位、特養が280単位。医師の関与を要件とする加算であるため、医師配置の手厚い施設が高く設定されていると読めます。
算定にあたっての実務ステップ
- 施設入所時に、医師が別紙様式7を用いて自立支援に係る医学的評価を行う
- 評価では現状に加え、特別な支援による改善可能性も見立てる
- 評価結果をLIFEへ提出する
- 自立支援の促進が必要とされた入所者について、医師・看護職員・介護職員・介護支援専門員等が共同で支援計画を策定する
- 医師が支援計画の策定等に参加する(参加の記録を残す)
- 支援計画には7項目(離床・食事・排せつ・入浴・生活全般・リハビリの扱い・社会参加)を盛り込む
- 多床室でポータブルトイレの使用を前提とした計画になっていないか確認する
- 入浴が特別浴槽前提になっていないか確認する
- 入所者ごとに個別の内容になっているか(画一的でないか)を点検する
- 入所者または家族に説明し、同意を得る
- 支援計画に従ったケアを実施する
- 3月に1回以上、医学的評価と支援計画を見直す
- LIFEのフィードバックを活用してPDCAを回す
7つ目と8つ目を先に確認してください。既存の支援計画がこの2点に反していれば、そこから直す必要があります。
よくある質問
単位数はいくらですか?
1月につき300単位です。特養は280単位で、老健と介護医療院は300単位です。
誰に算定できますか?
原則として入所者全員を対象とし、要件を満たした場合に入所者全員に対して算定できます。
リハビリを実施すれば算定できますか?
できません。通知は「リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではないことから、個別のリハビリテーションや機能訓練を実施することのみでは、加算の対象とはならない」としています。
医学的評価は誰が行いますか?
医師です。施設入所時に行い、その後少なくとも3月に1回見直します。
支援計画は誰が作りますか?
医師、看護職員、介護職員、介護支援専門員その他の職種の者が共同して策定します。医師が策定等に参加していることも要件です。
様式は決まっていますか?
医学的評価・支援計画とも別紙様式7を用いることとされています。
多床室でポータブルトイレを使ってはいけませんか?
通知は「特に多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない」としています。
入浴に決まりはありますか?
特別浴槽ではなく一般浴槽での入浴とし、回数やケアの方法についても個人の習慣や希望を尊重することとされています。
食事について具体的な例はありますか?
本人の希望に応じ、居室外で車椅子ではなく普通の椅子を用いる、本人が長年親しんだ食器や箸を施設に持ち込み使用する等が挙げられています。
社会参加も計画に入れますか?
入れます。入所者と地域住民等とが交流する機会を定期的に設ける等、地域や社会とのつながりを維持することが項目に含まれています。
入所者ごとに同じ内容の計画でもよいですか?
よくありません。通知は「個別的ではあっても画一的な支援計画による取組を評価するものではない」としています。
見直しの頻度は?
医学的評価・支援計画とも少なくとも3月に1回です。
- 老健の自立支援促進加算は1月につき300単位
- 特養は280単位で、老健・介護医療院は300単位
- 算定要件は4施設で共通、違うのは単位数だけ
- 原則として入所者全員に算定できる
- 100床なら年間360万円規模になる
- リハビリや機能訓練の実施を評価する加算ではない
- 個別のリハビリを実施するだけでは算定対象にならない
- 評価されるのは尊厳の保持と自立した日常生活のための特別な支援
- 医師が入所時と3月に1回以上、医学的評価を行う
- 評価では改善可能性も見立てる
- 多職種共同で支援計画を策定し、医師も策定等に参加する
- 支援計画は別紙様式7を用いる
- 支援計画の項目は離床・食事・排せつ・入浴・生活全般・リハの扱い・社会参加の7つ
- 多床室でポータブルトイレの使用を前提とした計画は策定してはならない
- 入浴は特別浴槽ではなく一般浴槽が原則
- 食事は居室外で普通の椅子、長年親しんだ食器や箸の使用も例示されている
- 地域住民等との交流の機会を定期的に設ける
- 画一的な支援計画では算定できない
- 本人または家族への説明と同意が必要
- LIFEへの提出とフィードバックの活用が求められる
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号) 介護保健施設サービス ウ 自立支援促進加算(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号) 第71号の4
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第40号) 介護福祉施設サービス(43)自立支援促進加算について、介護保健施設サービス(46)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。支援計画の各項目(ポータブルトイレ・一般浴槽等)に関する記述は通知の文言を引用したものです。個々の入所者の安全確保や医学的な必要性から異なる対応が必要となる場合の取扱いについては、指定権者にご確認ください。「画一的でない」支援計画の判断、医師の参加の記録方法についても指定権者によって取扱いが異なる場合があります。様式(別紙様式7)は別途通知によります。LIFEへの提出情報・提出頻度は「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」によります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。



