特養の認知症行動・心理症状緊急対応加算は1日200単位、入所日から7日が限度。最大1,400単位です。

要件のなかで最も見落とされやすいのが、算定できるタイミング。医師が判断した当日か、その翌日に利用を開始した場合に限られます。「来週から入所」では算定できません。

そしてもうひとつ、病院に入院中の人や、ショートステイを利用中の人が直接入所した場合は算定できません。この加算が評価しているのは「在宅で療養している人の、在宅生活を続けるための一時的な入所」だからです。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 200単位/日・7日限度という算定の枠
  • 「認知症の行動・心理症状」の定義
  • 医師の判断当日またはその翌日の利用開始に限られること
  • 算定できない5つの入所元
  • 入所前1月・過去1月の制限
  • 個室等の設備整備が求められること
  • 医師と施設それぞれに求められる記録
  • 入所後すぐに退所に向けた計画が必要なこと
  • ケアマネの関与が要件に含まれていること
  • ショートステイの同名加算との違い

単位数は200単位・7日限度

項目内容
単位数200単位
算定の単位1日につき
期間入所した日から起算して7日を限度
最大1,400単位
届出規定なし

ネ 認知症行動・心理症状緊急対応加算 200単位

注 医師が、認知症の行動・心理症状が認められるため、在宅での生活が困難であり、緊急に入所することが適当であると判断した者に対し、指定介護福祉施設サービスを行った場合は、入所した日から起算して7日を限度として、1日につき所定単位数を加算する。

体制加算ではなく「その都度」の加算

告示の注に届出の規定はありません。人員配置や研修修了者の要件もなし。該当する場面が生じたときに、その入所について算定する加算です。

7日で1,400単位=1単位10円換算で約1万4,000円。緊急受入れに伴う負担を、一時的に補う性格の加算です。

「認知症の行動・心理症状」とは

「認知症の行動・心理症状」とは、認知症による認知機能の障害に伴う、妄想・幻覚・興奮・暴言等の症状を指すものである。

いわゆるBPSDです。通知は加算の趣旨も明示しています。

本加算は、在宅で療養を行っている利用者に「認知症の行動・心理症状」が認められた際に、介護老人福祉施設に一時的に入所することにより、当該利用者の在宅での療養が継続されることを評価するものである。

キーワードは「在宅での療養の継続」

この加算は「特養に入所してもらうため」の加算ではありません。症状が落ち着いたら在宅に戻ることが前提です。

通知④も明確です。「入所後速やかに退所に向けた施設サービス計画を策定し、当該入所者の『認知症の行動・心理症状』が安定した際には速やかに在宅復帰が可能となるようにすること。」

入所した時点で、退所を見据えた計画を立てる。これが要件に含まれています。

最大の落とし穴——医師の判断の当日か翌日

本加算は、在宅で療養を行っている要介護被保険者に「認知症の行動・心理症状」が認められ、緊急に介護老人福祉施設への入所が必要であると医師が判断した場合であって、介護支援専門員、受け入れ施設の職員と連携し、利用者又は家族の同意の上、当該施設に入所した場合に算定することができる。本加算は医師が判断した当該日又はその次の日に利用を開始した場合に限り算定できるものとする。

  • 医師が緊急の入所が必要と判断すること
  • 介護支援専門員受け入れ施設の職員が連携すること
  • 利用者または家族の同意を得ること
  • 医師の判断の当日またはその翌日に利用を開始すること
ちびウルフちびウルフ

特養に空きがなくて、2日後になったら算定できないんですか?

リハウルフリハウルフ

条文どおりに読めば、算定できない。「医師が判断した当該日又はその次の日に利用を開始した場合に限り」と書いてあるからね。

これは厳しいけれど、加算の性格を考えると筋は通っている。「緊急」を評価する加算だから、緊急でなくなれば対象外ということ。

ケアマネ側の実務としては、医師が「緊急に入所が必要」と判断した日を記録し、その日か翌日に入れる施設を探すという動きになる。逆に、受け入れ側の特養から見れば、緊急受入れ用の枠を持っているかどうかで算定機会が決まる。

そして通知は「医療機関における対応が必要であると判断される場合には、速やかに適当な医療機関の紹介、情報提供を行う」とも書いている。無理に施設で抱えるな、ということでもある。

算定できない入所元

次に掲げる者が、直接、当該施設へ入所した場合には、当該加算は算定できないものであること。

a 病院又は診療所に入院中の者
b 介護保険施設又は地域密着型介護老人福祉施設に入院中又は入所中の者
c 短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、短期利用特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、短期利用認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護及び短期利用地域密着型特定施設入居者生活介護を利用中の者

入所前の場所算定
在宅(自宅)
病院・診療所に入院中不可
老健・介護医療院・地域密着型特養に入所中不可
ショートステイ利用中不可
有料老人ホーム等(特定施設)入居中不可
認知症グループホーム入居中不可
「在宅で療養している人」に限られる

加算の趣旨が「在宅での療養の継続」である以上、すでに他の施設やサービスで生活している人は対象になりません。

とくに注意したいのがショートステイ利用中からの入所です。ショート中にBPSDが悪化して、そのまま特養へ——という流れは現場でありえますが、この加算は算定できません。

入所前1月・過去1月の制限

当該加算は、当該入所者が入所前一月の間に、当該介護老人福祉施設に入所したことがない場合及び過去一月の間に当該加算(他サービスを含む)を算定したことがない場合に限り算定できることとする。

  • 入所前1月の間に、その施設に入所していないこと
  • 過去1月の間に、この加算を算定していないこと
  • 後者は他サービスを含む(ショートステイ等で算定していた場合も含む)

「他サービスを含む」がポイントです。先月ショートステイでこの加算を算定していた方は、今月特養で算定することはできません。ケアマネジャーに算定歴を確認してください。

個室等の設備整備が求められる

当該加算の算定にあたっては、個室等、認知症の行動・心理症状の増悪した者の療養に相応しい設備を整備すること。

BPSDが悪化している方を多床室に受け入れると、本人にも他の入所者にも負担がかかります。通知は「個室等」と明示しており、緊急受入れ用の居室を確保できるかが実務上の前提になります。

医師と施設、それぞれの記録

判断を行った医師は診療録等に症状、判断の内容等を記録しておくこと。また、施設も判断を行った医師名、日付及び利用開始に当たっての留意事項等を介護サービス計画書に記録しておくこと。

記録する主体記録先内容
判断した医師診療録等症状、判断の内容等
施設介護サービス計画書医師名、日付、利用開始に当たっての留意事項等
「日付」が算定根拠になる

施設が記録すべき項目に「日付」が明記されています。これは医師が判断した日のことで、当日または翌日に利用を開始したという要件を示す唯一の根拠です。

医師名と判断日を記録していなければ、7日間の算定を説明できません。緊急受入れの慌ただしい場面ですが、受入れ時のチェックシートに項目を作っておくのが確実です。

緊急受入れを算定につなげるための備え

この加算は「起きてから準備する」では間に合いません。医師の判断から翌日までに入所するには、事前の備えが要ります。

  • 緊急受入れ用の居室(個室等)を、どこにするか決めておく
  • 受入れ判断を誰が行うか(管理者・生活相談員等)を決めておく
  • 受入れ時のチェックシートを用意する(医師名・判断日・入所元・過去の算定歴)
  • 地域のケアマネジャーに、緊急受入れの相談先として周知しておく
ケアマネから見た動き方

担当利用者のBPSDが悪化したとき、ケアマネジャーがまずすべきは主治医に「緊急に入所が必要か」を判断してもらうことです。

そのうえで、判断が出た日のうちに受入れ先を探す。「明日までに入れるか」が加算の可否を分けるため、日ごろから緊急受入れに応じられる施設を把握しておくと動きが早くなります。

あわせて、過去1月に他サービスでこの加算を算定していないかを確認するのもケアマネの役割です。給付管理を通じて算定歴を把握できるのは、ケアマネだけです。

ショートステイの同名加算との違い

項目特養短期入所生活介護
単位数200単位/日
期間7日を限度
医師の判断当日またはその翌日の利用開始
算定の性格入所(生活の場の移行を伴う)短期利用(在宅前提)

単位数も期間も同じです。実務上の違いは「その後どうなるか」——ショートステイなら期間終了後に在宅へ戻る前提ですが、特養では入所が継続する可能性があります。

ただし前述のとおり、この加算の趣旨は在宅での療養の継続です。特養であっても、入所後速やかに退所に向けた計画を立てることが求められています。

算定にあたっての実務ステップ

  • 在宅で療養している方にBPSDが認められた場面で、医師の判断を仰ぐ
  • 医師が「緊急に入所することが適当」と判断した日付を確認・記録する
  • 医療機関での対応が必要な場合は、医療機関の紹介・情報提供を行う
  • ケアマネジャーと受け入れ施設の職員が連携し、本人または家族の同意を得る
  • 入所前1月にその施設への入所歴がないか確認する
  • 過去1月に他サービスを含めてこの加算を算定していないか、ケアマネに確認する
  • 入所元が在宅であること(入院中・他施設入所中・ショート利用中でないこと)を確認する
  • 個室等、療養にふさわしい居室を用意する
  • 医師の判断当日またはその翌日に入所する
  • 医師名・判断日・留意事項を介護サービス計画書に記録する
  • 入所後速やかに退所に向けた施設サービス計画を策定する
  • 入所した日から7日を限度に算定する

2つ目と9つ目がこの加算のすべてです。医師の判断日を押さえ、その日か翌日に入所する。ここが崩れると、他の要件をすべて満たしても算定できません。

よくある質問

単位数と期間は?

1日につき200単位、入所した日から起算して7日を限度に算定します。

「認知症の行動・心理症状」とは何ですか?

認知症による認知機能の障害に伴う、妄想・幻覚・興奮・暴言等の症状を指します。

いつまでに入所すればよいですか?

医師が判断した当該日またはその次の日に利用を開始した場合に限り算定できます。

3日後の入所では算定できませんか?

通知の文言上は算定できません。判断の当日または翌日の利用開始が要件です。

誰の判断が必要ですか?

医師です。あわせて介護支援専門員、受け入れ施設の職員と連携し、利用者または家族の同意を得る必要があります。

病院に入院中の人が直接入所した場合は?

算定できません。病院・診療所に入院中の者が直接入所した場合は対象外とされています。

ショートステイ利用中からの入所は?

算定できません。短期入所生活介護・短期入所療養介護を利用中の者が直接入所した場合は対象外です。

グループホーム入居中の人は?

算定できません。認知症対応型共同生活介護を利用中の者も対象外とされています。

先月ショートステイでこの加算を算定していた場合は?

算定できません。過去1月の間に当該加算(他サービスを含む)を算定したことがない場合に限られます。

居室に条件はありますか?

通知は「個室等、認知症の行動・心理症状の増悪した者の療養に相応しい設備を整備すること」としています。

どんな記録が必要ですか?

医師は診療録等に症状・判断の内容等を、施設は医師名・日付・利用開始に当たっての留意事項等を介護サービス計画書に記録します。

入所後に何をすればよいですか?

速やかに退所に向けた施設サービス計画を策定し、症状が安定した際には速やかに在宅復帰が可能となるようにすることが求められています。

まとめ
  • 特養の認知症行動・心理症状緊急対応加算は200単位/日
  • 入所した日から起算して7日が限度(最大1,400単位)
  • 体制の届出は不要で、該当する入所ごとに算定する
  • 対象は妄想・幻覚・興奮・暴言等のBPSD
  • 趣旨は「在宅での療養の継続」
  • 医師が緊急の入所が必要と判断することが起点
  • ケアマネジャーと施設職員の連携、本人・家族の同意が必要
  • 医師の判断の当日またはその翌日に利用を開始すること
  • 医療機関での対応が必要なら医療機関の紹介・情報提供を行う
  • 病院・診療所に入院中の者からの直接入所は算定できない
  • 老健・介護医療院等に入所中の者も算定できない
  • ショートステイ・特定施設・グループホーム利用中の者も算定できない
  • 入所前1月にその施設に入所していないこと
  • 過去1月に他サービスを含めこの加算を算定していないこと
  • 個室等、療養にふさわしい設備の整備が求められる
  • 医師は診療録等に症状・判断の内容を記録する
  • 施設は医師名・日付・留意事項を介護サービス計画書に記録する
  • 入所後速やかに退所に向けた施設サービス計画を策定する
  • 症状が安定したら速やかに在宅復帰できるようにする
  • ショートステイの同名加算と単位数・期間は同じ
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。「医師が判断した当該日又はその次の日」の解釈、入所元の判定、過去1月の算定歴の確認方法については、個別の状況により判断が分かれる可能性があります。判断に迷う場合は事前に指定権者へご確認ください。「個室等、療養に相応しい設備」の具体的な範囲についても指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。受入れ時の手順や記録に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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