短期入所生活介護(ショートステイ)の認知症行動・心理症状緊急対応加算は、1日につき200単位、利用を開始した日から起算して7日を限度として算定します。ショートステイの緊急受入れに関する加算のなかでは、いちばん単価が高い加算です。

算定の要件は多くありませんが、期限と対象者の縛りが厳しく設定されています。とくに次の2つは見落とされがちです。

①医師が判断した当日またはその翌日に利用を開始した場合に限られること。②病院・介護保険施設・他の居住系サービスから直接ショートステイを利用開始した場合は算定できないこと。

この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)短期入所生活介護費の注15・注16・注19、老企第40号 第二の2(17)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 認知症行動・心理症状緊急対応加算の単位数(200単位/日)と7日という限度
  • 「認知症の行動・心理症状」として通知が挙げている症状
  • 判断するのが医師であること、ケアマネジャー判断では算定できないこと
  • 医師の判断から利用開始までが「当日または翌日」に限られること
  • 算定できない5つの出発点(病院・施設・他の居住系サービス等)
  • 医師側と事業所側それぞれに求められる記録
  • 8日目以降も利用を続けてよいこと
  • 緊急短期入所受入加算・若年性認知症利用者受入加算との排他関係
  • 届出が条文上求められていないこと
  • 要支援(介護予防短期入所生活介護)でも200単位で算定できること

200単位・7日限度。届出の定めはない

告示19号の注15は、次のとおりです。

医師が、認知症の行動・心理症状が認められるため、在宅での生活が困難であり、緊急に指定短期入所生活介護を利用することが適当であると判断した者に対し、指定短期入所生活介護を行った場合は、利用を開始した日から起算して7日を限度として、1日につき200単位を所定単位数に加算する。

項目内容
単位数1日につき200単位
限度利用を開始した日から起算して7日
判断する人医師
判断の内容BPSDが認められ、在宅生活が困難で、緊急利用が適当であること
届出条文上の定めなし
算定対象当該利用者のみ

他の多くの加算にある「別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った事業所において」という文言が、この加算にはありません。施設基準も設けられておらず、条文上は体制の届出を前提としない加算と読めます。ただし運用は指定権者によって異なる可能性があるため、算定前に確認してください。

「認知症の行動・心理症状」とは何を指すか

老企第40号(17)①は、次のように定義しています。

「認知症の行動・心理症状」とは、認知症による認知機能の障害に伴う、妄想・幻覚・興奮・暴言等の症状を指すものである。

いわゆるBPSDです。「等」とあるとおり限定列挙ではありませんが、認知症があることだけでは足りず、認知機能の障害に伴う症状が現に認められていることが前提になります。

算定できるのは「医師の判断の当日または翌日」に開始した場合だけ

老企第40号(17)②は、算定の流れと期限を定めています。

本加算は、利用者に「認知症の行動・心理症状」が認められ、緊急に短期入所生活介護が必要であると医師が判断した場合であって、介護支援専門員、受け入れ事業所の職員と連携し、利用者又は家族の同意の上、指定短期入所生活介護の利用を開始した場合に算定することができる。本加算は医師が判断した当該日又はその次の日に利用を開始した場合に限り算定できるものとする。

  • 医師が判断する
    BPSDが認められ、在宅生活が困難で、緊急にショートステイを利用することが適当であると判断する。
  • 連携する
    介護支援専門員、受け入れ事業所の職員と連携する。
  • 同意を得る
    利用者または家族の同意を得る。
  • 当日または翌日に利用を開始する
    医師の判断日から2日以内に開始しなければ算定できない。
「空きが出るまで数日待った」は算定できない

医師が判断した日を1日目とすると、利用開始が3日目以降になった時点で算定できません。

ショートステイは満床のことが多く、調整に数日かかるのが普通です。だからこそ、医師の判断が出た時点で、その日か翌日に入れる事業所を探す動きが要ります。加算を取れるかどうかは、この初動の速さで決まります。

また通知②の後段は、ショートステイではなく医療機関における対応が必要と判断される場合には、速やかに適当な医療機関の紹介・情報提供を行い、適切な医療が受けられるように取り計らうことを求めています。「とりあえずショートで預かる」という選択が常に正しいわけではない、という趣旨です。

算定できない出発点がある。在宅からの受入れが前提

老企第40号(17)③は、次に掲げる者が直接ショートステイの利用を開始した場合には算定できないとしています。

出発点算定
病院または診療所に入院中の者×
介護保険施設・地域密着型介護老人福祉施設に入院中または入所中の者×
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)を利用中の者×
特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護を利用中の者×
短期入所生活介護・短期入所療養介護を利用中の者×
短期利用共同生活介護・(地域密着型)短期利用特定施設入居者生活介護を利用中の者×
居宅(自宅)で生活している者

条文が「在宅での生活が困難であり」と書いているとおり、この加算は在宅生活の破綻に対する緊急受入れを評価するものです。入院中・入所中の方が施設を移る場面は対象になりません。

とくに注意が必要なのは最後の2行です。すでに別のショートステイを利用している方が、そこから直接別のショートステイに移る場合も算定できません。ショート利用中にBPSDが悪化して他事業所へ移す、という流れは対象外です。

ちびウルフちびウルフ

入院先で落ち着かなくて、退院してすぐショートに、というケースは多い気がします。それもダメなんですね。

リハウルフリハウルフ

通知が「病院又は診療所に入院中の者」を明示的に除いているので、退院から直接の利用開始は算定できません。入院中の対応は医療保険で評価されている、という整理です。

逆に言えば、いったん在宅に戻ってから状態が悪化し、医師が緊急と判断した場合は対象になります。担当したケースでも、この加算が効くのは「家で見ていたが、夜間の興奮が続いて家族が限界」という典型的な在宅破綻の場面でした。加算のために在宅に戻す、という発想は本末転倒なので、あくまで結果として整理するものです。

記録は医師側と事業所側の2か所

老企第40号(17)④は、記録を両方に求めています。

誰がどこに何を
判断を行った医師診療録等症状、判断の内容等
事業所介護サービス計画書判断を行った医師名、日付、利用開始に当たっての留意事項等

事業所側の記録先が介護サービス計画書と指定されている点が特徴です。介護記録や連絡ノートに書いてあるだけでは、通知の求める形になっていません。

とくに「日付」は、当日または翌日という要件を満たしていることの唯一の証拠になります。医師名・判断日・利用開始日の3点が計画書上でつながっているか、算定前に確認してください。

7日を過ぎたら退所しなければならない、という意味ではない

老企第40号(17)⑤は、7日という限度の意味を説明しています。

七日を限度として算定することとあるのは、本加算が「認知症の行動・心理症状」が認められる利用者を受け入れる際の初期の手間を評価したものであるためであり、利用開始後八日目以降の短期入所生活介護の利用の継続を妨げるものではないことに留意すること。

加算が付くのは7日までですが、8日目以降も基本報酬でショートステイを継続して構いません。「加算が切れるから7日で帰す」という運用は、通知の趣旨に反します。

なお、緊急短期入所受入加算のように「やむを得ない事情があれば14日まで」という延長規定は、この加算にはありません。7日で打ち切りです。

緊急短期入所受入加算・若年性認知症利用者受入加算とは併算定できない

告示19号は、注16(若年性認知症利用者受入加算)と注19(緊急短期入所受入加算)の両方に「注15を算定している場合は、算定しない」というただし書きを置いています。

加算単位数判断する人認知症行動・心理症状緊急対応加算との関係
認知症行動・心理症状緊急対応加算200単位/日・7日医師
緊急短期入所受入加算90単位/日・7日(最大14日)介護支援専門員併算定不可
若年性認知症利用者受入加算120単位/日—(若年性認知症の利用者)併算定不可
若年性認知症の方の緊急受入れは、金額が逆転する

若年性認知症の利用者をBPSDで緊急受け入れた場合、次の2択になります。

①認知症行動・心理症状緊急対応加算200単位(7日限度)②緊急短期入所受入加算90単位+若年性認知症利用者受入加算120単位=210単位

7日以内なら②のほうが1日10単位高く、8日目以降は①が算定できなくなるため②のみが残ります。ただし②は緊急短期入所受入加算の要件(ケアマネジャーが緊急利用を認めた、ケアプランに位置づけられていない日)を満たす必要があります。組み合わせの可否は指定権者にご確認ください。

要支援(介護予防短期入所生活介護)でも200単位で算定できる

介護予防サービスの報酬を定める平成18年厚生労働省告示第127号にも、同じ200単位・7日限度の規定が置かれています(介護予防短期入所生活介護費 注11)。文言も介護給付とほぼ同じです。

ショートステイの緊急受入れ関連の加算では、要支援での扱いが分かれます。

加算要支援での算定
認知症行動・心理症状緊急対応加算○(200単位・7日)
若年性認知症利用者受入加算○(120単位)
緊急短期入所受入加算×
在宅中重度者受入加算・医療連携強化加算・看護体制加算×

要支援1・2の方でも、医師がBPSDにより在宅生活が困難で緊急利用が適当と判断すれば算定できます。要支援だから緊急対応系の加算はすべて対象外、と考えていると取りこぼします。

よくある質問
認知症行動・心理症状緊急対応加算はいくらですか?

1日につき200単位です。利用を開始した日から起算して7日を限度として算定します。延長規定はありません。

誰が「緊急」と判断するのですか?

医師です。BPSDが認められ、在宅での生活が困難であり、緊急にショートステイを利用することが適当であると医師が判断する必要があります。ケアマネジャーの判断で算定する加算ではありません。

医師の判断から何日以内に利用を開始すればよいですか?

医師が判断した当該日、またはその次の日です。3日目以降の利用開始では算定できません。

「認知症の行動・心理症状」とは何ですか?

通知は「認知症による認知機能の障害に伴う、妄想・幻覚・興奮・暴言等の症状」としています。認知症があるだけでは足りず、症状が現に認められていることが必要です。

入院中の方が退院してそのまま利用する場合は算定できますか?

できません。通知は病院または診療所に入院中の者が直接利用を開始した場合を算定不可としています。介護保険施設に入所中の方、グループホームや特定施設を利用中の方も同様です。

他のショートステイから移ってきた場合はどうですか?

算定できません。短期入所生活介護・短期入所療養介護を利用中の者が直接利用を開始した場合も、通知が明示的に除いています。

どこに記録を残せばよいですか?

医師は診療録等に症状と判断の内容等を記録します。事業所は、判断を行った医師名・日付・利用開始に当たっての留意事項等を介護サービス計画書に記録します。

8日目以降は退所しなければなりませんか?

いいえ。通知は「利用開始後八日目以降の短期入所生活介護の利用の継続を妨げるものではない」としています。加算が付かなくなるだけで、利用の継続は可能です。

緊急短期入所受入加算と両方算定できますか?

できません。緊急短期入所受入加算の注に「注15を算定している場合は、算定しない」とあります。若年性認知症利用者受入加算も同様です。

届出は必要ですか?

注15には届出に関する文言がなく、施設基準も設けられていません。条文上は体制の届出を前提としない加算と読めますが、運用は指定権者にご確認ください。

要支援でも算定できますか?

できます。介護予防短期入所生活介護にも同じ200単位・7日限度の規定があります。緊急短期入所受入加算は要支援にありませんが、この加算は算定できます。

ショートではなく入院が必要そうな場合はどうすべきですか?

通知は「医療機関における対応が必要であると判断される場合にあっては、速やかに適当な医療機関の紹介、情報提供を行うことにより、適切な医療が受けられるように取り計らう必要がある」としています。

まとめ
  • 認知症行動・心理症状緊急対応加算は1日200単位、7日を限度に算定する
  • 延長規定はなく、7日で打ち切り
  • 判断するのは医師。BPSD・在宅生活困難・緊急利用が適当の3点を判断する
  • BPSDは「認知機能の障害に伴う、妄想・幻覚・興奮・暴言等の症状」
  • 医師の判断後、介護支援専門員・事業所と連携し、利用者または家族の同意を得る
  • 医師が判断した当日またはその翌日に利用を開始した場合に限る
  • 調整に数日かかって3日目以降の開始になると算定できない
  • 医療機関での対応が必要な場合は、速やかに医療機関の紹介・情報提供を行う
  • 病院・診療所に入院中の者からの直接利用は算定できない
  • 介護保険施設・地域密着型介護老人福祉施設に入所中の者も算定できない
  • グループホーム・特定施設・他のショートを利用中の者も算定できない
  • 在宅生活の破綻に対する緊急受入れを評価する加算である
  • 医師は診療録等に症状と判断の内容を記録する
  • 事業所は医師名・日付・留意事項を介護サービス計画書に記録する
  • 日付の記録が「当日または翌日」要件を証明する唯一の資料になる
  • 7日は初期の手間の評価であり、8日目以降の利用継続は妨げられない
  • 緊急短期入所受入加算・若年性認知症利用者受入加算とは併算定できない
  • 若年性認知症の方では、緊急短期入所受入加算90+若年性120=210単位のほうが高くなる場合がある
  • 注15には届出の文言がなく、条文上は体制届を前提としない
  • 要支援(介護予防短期入所生活介護)でも200単位で算定できる
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。届出の要否、加算の組み合わせの可否、記録の様式は、都道府県・指定都市によって取扱いが異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。受入れ調整の進め方や記録の残し方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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