老健の認知症短期集中リハビリテーション実施加算は、令和6年度改定で(Ⅰ)240単位・(Ⅱ)120単位の2区分になりました。改定前は240単位の1本でしたから、従来の要件のままでは120単位に半減していることになります。

差を生むのは居宅等への訪問退所後に生活する居宅や社会福祉施設等を訪問し、そこで把握した生活環境を踏まえてリハビリ計画を作成していれば(Ⅰ)です。

そして訪問の手間は、他の加算と共有できます。入所前後訪問指導加算のために行った訪問で把握した生活環境を使っても(Ⅰ)を算定できると通知が明記しています。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)、老企第40号、令和6年度介護報酬改定における改定事項についてを突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • (Ⅰ)240単位・(Ⅱ)120単位という単位数と改定前からの変化
  • 週3日限度・入所後3月以内という算定の枠
  • (Ⅰ)に必要な居宅等への訪問
  • 訪問できる期間と、8日以降に訪問した場合の扱い
  • 入所前後訪問指導加算の訪問を流用できること
  • 1回20分以上・個別であること
  • 対象者の判断を行う医師の条件
  • 対象者はMMSE・HDS-Rでおおむね5点〜25点であること
  • 短期集中リハビリテーション実施加算と別に算定できること
  • 過去3月間の算定歴による制限

単位数は240単位と120単位

区分改定前改定後(令和6年度〜)
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)240単位/日240単位/日(新設)
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)120単位/日(変更)

認知症であると医師が判断した者であって、リハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれると判断されたものに対して、(中略)届出を行った介護老人保健施設において、医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が集中的なリハビリテーションを個別に行った場合に、当該施設基準に掲げる区分に従い、認知症短期集中リハビリテーション実施加算として、入所の日から起算して3月以内の期間に限り、1週に3日を限度として1日につき次に掲げる単位数を所定単位数に加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。

訪問しなければ半減する

改定前は240単位の1区分でした。居宅等への訪問を行わなければ(Ⅱ)の120単位——改定前の半分です。

週3日×3月で最大約36日分。1日120単位の差は約4,320単位(1単位10円換算で約4万3,200円)になります。入所者1人あたりの差としては小さくありません。

算定の枠——週3日・3月以内・20分以上の個別

項目内容
期間入所の日から起算して3月以内
回数1週に3日を限度
実施形態個別(1人の医師等が1人の利用者に対して)
時間20分以上

認知症短期集中リハビリテーションは、認知症入所者の在宅復帰を目的として行うものであり、記憶の訓練、日常生活活動の訓練等を組み合わせたプログラムを週3日、実施することを標準とする。

当該リハビリテーションにあっては、一人の医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が一人の利用者に対して行った場合にのみ算定する。

当該リハビリテーション加算は、利用者に対して個別に20分以上当該リハビリテーションを実施した場合に算定するものであり、時間が20分に満たない場合は、介護保健施設サービス費に含まれる。

  • 目的は在宅復帰
  • 内容は記憶の訓練、日常生活活動の訓練等を組み合わせたプログラム
  • 1人の医師等が1人の利用者に対して行うこと(集団は不可
  • 1回20分以上。19分では算定できない

対象者——医師の条件と点数の目安

当該リハビリテーション加算は、精神科医師若しくは神経内科医師又は認知症に対するリハビリテーションに関する専門的な研修を修了した医師により、認知症の入所者であって生活機能の改善が見込まれると判断された者に対して、在宅復帰に向けた生活機能の改善を目的として、リハビリテーション計画に基づき実施した場合に算定できるものである。

当該リハビリテーションの対象となる入所者はMMSE(Mini Mental State Examination)又はHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)においておおむね5点〜25点に相当する者とする。

判断する医師に条件がある

対象者を選定するのは精神科医師・神経内科医師、または認知症リハビリに関する専門的な研修を修了した医師です。

通知は研修の内容も示しています。「認知症の概念、認知症の診断、及び記憶の訓練、日常生活活動の訓練等の効果的なリハビリテーションのプログラム等から構成されており、認知症に対するリハビリテーションを実施するためにふさわしいと認められるもの」。

配置医師が該当しない場合、誰の判断で対象者を選んだのかを説明できる状態にしておいてください。

(Ⅰ)の追加要件——居宅等への訪問

<認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)>(新設)
(1)リハビリテーションを担当する理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が適切に配置されていること。
(2)リハビリテーションを行うに当たり、入所者数が、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士の数に対して適切なものであること。
(3)入所者が退所後生活する居宅又は社会福祉施設等を訪問し、当該訪問により把握した生活環境を踏まえたリハビリテーション計画を作成していること。

(Ⅱ)は(1)と(2)のみ。(3)の訪問と計画作成が(Ⅰ)と(Ⅱ)を分ける要件です。

訪問できる期間

認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)は、当該入所者の入所予定日前30日以内又は入所後7日以内に、当該入所者の退所後に生活することが想定される居宅又は他の社会福祉施設等を訪問し、当該訪問により把握した生活環境を踏まえ、リハビリテーション計画を作成している場合に算定できる。また、当該入所者の入所後8日以降に居宅等を訪問した場合は、当該訪問日以降に限り、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)を算定できる。

訪問のタイミング(Ⅰ)の算定
入所予定日前30日以内入所日から算定可
入所後7日以内入所日から算定可
入所後8日以降訪問日以降に限り算定可
ちびウルフちびウルフ

7日を過ぎたら(Ⅰ)は諦めるしかないんですか?

リハウルフリハウルフ

諦めなくていい。ここがこの加算の親切なところで、入所後8日以降に訪問した場合も「訪問日以降に限り」(Ⅰ)を算定できる。

つまり、それまでは(Ⅱ)120単位、訪問した日からは(Ⅰ)240単位という形になる。3月の途中からでも切り替えられるんだ。

入所直後は状態が落ち着かず、訪問の段取りまで手が回らないこともある。「いつでも訪問すれば、その日から上位区分になる」と知っていれば、後回しにせず動けるはずだよ。

入所前後訪問指導加算の訪問を流用できる

入所前後訪問指導加算の算定に当たって行う訪問により把握した生活環境を踏まえてリハビリテーション計画を作成している場合についても、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)を算定できる。

1回の訪問が2つの加算につながる

入所前後訪問指導加算(Ⅰ)450単位・(Ⅱ)480単位は、入所予定日前30日以内または入所後7日以内に居宅を訪問する加算です。訪問できる期間がほぼ重なっています。

この訪問で把握した生活環境をリハビリテーション計画に反映させれば、認知症短期集中リハ(Ⅰ)の要件も同時に満たせます。

入所前後訪問指導加算480単位+認知症短期集中リハ(Ⅰ)と(Ⅱ)の差120単位×最大36日分。1回の訪問の価値は5,000単位近くになり得ます。

短期集中リハビリテーション実施加算と別に算定できる

(注10の)短期集中リハビリテーション実施加算を算定している場合であっても、別途当該リハビリテーションを実施した場合は当該リハビリテーション加算を算定することができる。

加算単位数回数
短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)258単位/日週おおむね3日以上
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)240単位/日週3日を限度

いずれも入所後3月以内が算定期間です。両方の(Ⅰ)を算定すれば1日498単位になります。

記録を分けて残す

「別途実施した場合」とあるとおり、同じ訓練を二重に数えることはできません。

通知は認知症短期集中リハについて「実施時間、訓練内容、訓練評価、担当者等の記録を利用者ごとに保管すること」を求めています。短期集中リハとは別の記録として整理してください。

過去3月間の算定歴による制限

当該リハビリテーション加算は、当該入所者が過去3月の間に、当該リハビリテーション加算を算定していない場合に限り算定できることとする。

  • 見るのはこの加算の算定歴(入所歴ではない)
  • 過去3月の間に算定していれば算定できない

短期集中リハビリテーション実施加算が「過去3月間に老健に入所したことがない場合」を要件とするのに対し、こちらは「この加算を算定していない場合」です。見ている対象が違う点に注意してください。

算定にあたっての実務ステップ

  • 精神科医師・神経内科医師または認知症リハの専門研修修了医師に、対象者の判断を依頼する
  • MMSEまたはHDS-Rを実施し、おおむね5点〜25点の範囲を確認する
  • 過去3月の間にこの加算を算定していないかを確認する
  • 入所予定日前30日以内または入所後7日以内に、退所後に生活する居宅等を訪問する
  • 入所前後訪問指導加算のための訪問と兼ねられないか検討する
  • 訪問で把握した生活環境を踏まえてリハビリテーション計画を作成する((Ⅰ)の要件)
  • 7日以内に訪問できなかった場合は、8日以降でも訪問し、訪問日以降は(Ⅰ)に切り替える
  • 記憶の訓練・日常生活活動の訓練等を組み合わせたプログラムを、1回20分以上・個別で、週3日を限度に実施する
  • 実施時間・訓練内容・訓練評価・担当者を利用者ごとに記録し保管する
  • 短期集中リハビリテーションを別途実施する場合は、記録を分ける
  • 入所日から3月以内の期間について算定する

4つ目と5つ目をセットで考えてください。入所前後訪問指導加算のための訪問を、そのまま(Ⅰ)の要件に使えます。

よくある質問

単位数はいくらですか?

(Ⅰ)は1日240単位、(Ⅱ)は1日120単位です。入所の日から起算して3月以内、1週に3日を限度として算定します。

改定前より下がったのですか?

改定前は240単位の1区分でした。居宅等への訪問を行わない場合は(Ⅱ)の120単位となり、改定前の半分になります。

(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?

できません。いずれかを算定している場合は、その他の加算は算定しないとされています。

(Ⅰ)に必要な訪問はいつ行いますか?

入所予定日前30日以内または入所後7日以内です。ただし入所後8日以降に訪問した場合も、訪問日以降に限り(Ⅰ)を算定できます。

入所前後訪問指導加算の訪問と兼ねられますか?

兼ねられます。入所前後訪問指導加算の算定に当たって行う訪問により把握した生活環境を踏まえてリハビリテーション計画を作成している場合も(Ⅰ)を算定できます。

集団リハビリでも算定できますか?

できません。1人の医師または医師の指示を受けたPT・OT・STが1人の利用者に対して行った場合にのみ算定します。

15分の実施でも算定できますか?

できません。個別に20分以上実施した場合に算定するもので、20分に満たない場合は介護保健施設サービス費に含まれます。

対象者はどう選定しますか?

精神科医師・神経内科医師または認知症に対するリハビリテーションに関する専門的な研修を修了した医師が、認知症の入所者であって生活機能の改善が見込まれると判断した者です。

点数の目安はありますか?

MMSEまたはHDS-Rにおいておおむね5点〜25点に相当する者とされています。

短期集中リハビリテーション実施加算と併算定できますか?

できます。別途実施した場合は算定できるとされています。ただし記録は分けて残す必要があります。

過去に算定したことがある場合は?

過去3月の間にこの加算を算定していない場合に限り算定できます。

どんな記録が必要ですか?

実施時間、訓練内容、訓練評価、担当者等の記録を利用者ごとに保管することとされています。

まとめ
  • 老健の認知症短期集中リハビリテーション実施加算は(Ⅰ)240単位・(Ⅱ)120単位
  • 令和6年度改定で240単位の1区分から2区分になった
  • 居宅等への訪問を行わなければ改定前の半分の120単位
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 算定期間は入所日から3月以内、1週に3日が限度
  • 目的は認知症入所者の在宅復帰
  • 記憶の訓練・日常生活活動の訓練等を組み合わせたプログラム
  • 1人の医師等が1人の利用者に対して個別に実施する
  • 1回20分以上。20分未満は施設サービス費に含まれる
  • 対象者を判断するのは精神科医・神経内科医または認知症リハの研修修了医師
  • 対象者の目安はMMSEまたはHDS-Rでおおむね5点〜25点
  • (Ⅰ)は退所後に生活する居宅等を訪問し生活環境を踏まえた計画を作成する
  • 訪問は入所予定日前30日以内または入所後7日以内
  • 8日以降に訪問した場合も訪問日以降は(Ⅰ)を算定できる
  • 入所前後訪問指導加算のための訪問を流用できる
  • 短期集中リハビリテーション実施加算と別に算定できる
  • 両方の(Ⅰ)を算定すれば1日498単位になる
  • ただし記録は分けて残す
  • 過去3月の間にこの加算を算定していないことが要件
  • 実施時間・訓練内容・訓練評価・担当者を利用者ごとに記録する
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、老企第40号の留意事項通知および令和6年度介護報酬改定の資料にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。「認知症に対するリハビリテーションに関する専門的な研修」に該当する研修の範囲、訪問先となる「社会福祉施設等」の範囲、入所前後訪問指導加算の訪問を流用する場合の記録の残し方については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。MMSE・HDS-Rの点数はあくまで対象者の目安として通知に示されているものであり、リハビリテーションの適否は医師が判断します。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用や記録に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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